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釣行記

釣行レポート

2011年3月25日

祖谷川支流でアマゴを1尾だけ釣る

途中休憩を取りながら行くと、祖谷川の分流谷道川までは、高松からだと3時間程度かかる。

3月25日(金)は、午前中から時間が取れたので、11時には栃ノ瀬橋の少し上流までやって来ていた。
渓流沿いの林道脇に車を駐車し、さっそく杉の急斜面を足元に十分注意しながら流のほとりまで降りていくと、澄んだ水の流れがきらきらと眩しい。春の日差しに暖められた座りよい石に腰かけて仕掛けを組んでいると、目の前の流れのなかを、さっと魚影がよぎった。どうやら瀬尻に出て餌が流れて来るのを辛抱強く待っていたのだろう、アマゴにちがいなかった。
「食い意地の張った奴だな」
私は、ちょっとあきれてしまった。
私に気づかれる前に上流の深みへ走ったアマゴをそんなふうに笑っていると、対岸の山林から一頭の鹿が姿を現した。水でも飲みに来たのだろうか、しかし、鹿はすぐに私に気づいてその場に立ち止まった。
鹿と私と目が合った。
「やあ」と言って手をあげると、鹿は耳を動かして、なおまじまじとこちらを見た。
そして、そのすぐあと、べつに慌てる様子もなく再び山林のなかへと消えていった。

渓流沿いには新しい踏みあとが目についた。先行者がいるのは覚悟の上だが、餌釣りの人は朝が早いから、もう老人ホーム辺りまで釣りきって、とっくに帰ってしまったのだろう。渓へ降りる前に見た限りでは林道沿いに車はなかった。
まあ、二番川でも三番川でもいいのだ。目の覚めるような綺麗な魚体のアマゴが1尾でも2尾でもルアーにじゃれついて来て、ぱくっ、と食いついてくれたならそれでもうじゅうぶんである。今日はおかずを釣りに来たのではなくて、純粋に遊びを楽しむためにやって来た。気晴らし、現実逃避、世俗からの離脱など、いろいろ理由づけをして、それぞれ人は渓へやってくるのだろうが、私は単純な人間なので世の中にたいした不満もなければ、自己矛盾に苦しむこともそうそうない。
「とにかく、1尾でいい。釣れたら嬉しいなあ」
私の願いは、それだけだった。

ロッドは、5ft程度のトラウト用。ラインはシルバースレッドトラウトクリアー4lb。使うルアーは小型のスプーン数種類。上着のポケットにはわずかばかりの飲食物。腰にはルアーと小物を入れたポーチ。ずいぶん軽装だ。
さすがに、餌釣りの人のあとを釣ってみると感じのよい深みでは全くアタリがなかった。
少し釣り歩いてのち、いつもアマゴの付き場の傾向を頭にイメージするのだが、今日は瀬の脇のごく浅いたるみ、いわゆる餌釣り師の仕掛けがあまり入ってなさそうな場所をねらって釣るのが得策のようだという結論を得た。
「竿抜けを打っていくか」
そうひとり呟いて、スプーンを4gから2gにつけ替えた。
それにしても、渓へ降りてすぐに、いい流れの筋で餌を捕っていたろうと思われる例のアマゴをみたものだから、少しは期待して釣り始めたのはいうまでもない。それなのに、あれ1尾だけで、上流の似たような場所でノーバイトというのは、ちょっとがっかりといえばがっかりだ。そんなことを考えながら、浅い流れの脇の反転流にスプーンを落としてラインを張ると、いきなり素敵な感触のアタリが手元に来た。気を抜いていたのであわを食ったが、勝手に体が反応してアワセをくれていた。フッキングしたと思ったら、いきなりジャンプした。「まずい!」と口を衝いて出たときには、すでにフックをはずされていた。

それから後も、似たような浅いながれの脇でちょくちょくアタリが来たが、乗らない。
すでに、私は全行程の半分ほどを釣りあがって来たわけだが、岩の木陰に腰かけてサンドイッチと缶コーヒーの休憩を取りながら、「鈎はずれの、あの1尾が悔やまれるな」と、つくづくそう思った。

そのあとも、深い場所、浅い場所、速い流れ、緩い流れ、淀み、いろいろ試したが、アタリすらない。春先だというのに妙に太陽がぎらぎらして、額が汗ばんだ。
もう老人ホームが近い。のこすところは、堰堤下のプールがふたつ。そこに賭けるしか手はないようだ。
案の定、その手前の大場所は餌釣り師に抜かれてしまったかアマゴのアタリは皆無であった。
ウェーダーの膝に瀬の流れを押し分けながら上流へと進むのは快かった。本来釣るべき流れなのだが、すべてキャンセルして堰堤下のプールを攻める魂胆だから瀬のなかをじゃぶじゃぶと歩くことなど全く平気である。
少し遠巻きに堰堤下のプールの様子を眺めたが、下側の堰堤下ではライズはなかった。ここも餌釣り師が舐めるように釣ったにちがいない。が、それでも仕掛けの探れる範囲に制約のある餌釣り師がすべてを釣り切ることは不可能だ。
余り近づかないようにして岩の陰から堰堤の右端のポケットにスプーンを投げて、着水寸前に仕掛けを張った。少し沈めてリールを巻きだすと、小さなアタリがきた。底の石に触れたのかと思ったが、そのあと向こうアワセでアマゴが食いついた。
「やった!」
今度こそ逃がさないぞ、と思いながら懸命にやり取りをした。
サイズがたいしたことなかったぶん、ちょっと鋭角的なアマゴらしい引きを見せただけで簡単に寄って来た。
それでも、今日初めての渓流魚らしい綺麗なアマゴである。
さっそく写真を撮って、素早くリリースした。
何だか、一気に気分がほぐれて、体が軽くなった。瀬の響が高まった。さっきから吹いていたろうに、いまはじめて身に風を心地よく感じる。
私は、もういいや、という気分だった。念願の1尾が釣れたのだ、もう帰ってしまおう。このすぐ上流にこの川筋で一番大きい堰堤がある。堰堤も立派ならその下のプールがまた広くて深くて息をのむほど立派である。
「あそこをやらずに帰るなんて、ちょっと考えにくいな」と私は声に出して言った。
しかし、たしかに声に出して言ってはみたが、そこまで行くことはせずに、山の斜面を道へと登り始めた。正気かと自分を疑った。杉の木立のなかの踏みつけ道をたどっていくとき、雉の姿をみた。地味な羽のメスで、丈のある草にまぎれるように最初はじっとしていたが、私に見つかったと感じたのだろう、飛ばずに素早く奥の暗がりに小走りで姿を消した。

私は、林道に出た。
ここから渓沿いに釣って来たのと反対方向へくだっていくわけだが、くだると言ってもアップダウンのある舗装された路面は釣り歩いた後の足にはけっこうこたえるものだ。
でも、今回は全然苦にならなかった。気温も予想外に高かったが、気分は涼しかった。もどる道すがら、山側の湿った斜面にショウジョウバカマの白い花が群れ咲いていた。 その小さな火花のような花を私は通りすがりにちょっと眺めたにすぎなかったが、そのあと山の蕎麦屋で少し早い夕食を食べているとき、その白い火花に似た花の様子がしきりに思い出された。
不思議と蕎麦を食い終わるまで、釣りのことは頭からすっかり消えていた。


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待望の鰭ピンをキャッチ。感無量だ。

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谷筋には大小の堰堤がいくつかある

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綺麗なアマゴ。写真撮影後にリリースした

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植物の豊かな剣山系。あちこちに福寿草が咲いていた

【今回の使用タックル】

ロッド : ウエダ サーフェイストゥイッチャー STS-501MN-Si
リール : ダイワ セルテート1003
ライン : ユニチカ シルバースレッドトラウトクリアー 4lb

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