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釣行記

釣行レポート

2011年6月19日

雨に濡れても

アマゴは、「雨子」とも書くのだそうで、雨のあとがよく釣れるのだと若いころ渓流釣りの先達からよく聞かされた。雨による増水がおさまりかけて、少し水が澄んでくると活性が上がるのはなにもアマゴだけではなくて渓流魚全般にそうだが、「ええっ、この川、こんなにアマゴがいたの」と意外なほどよく釣れることがあり、そういう記憶は後後まで色褪せないから、渓流魚中アマゴが特にその代表格として取りざたされるのだろう。

さて、この雨後のアマゴを釣りに午後からちょっと出かけてみた。
釣り場は吉野川のなかでも屈指の規模を誇る支流で、その上流部の広々とした流れ。強い流れが大ぶりな岩にぶつかりながら下るさまはなかなかよい眺めで、釣りあがっていくうちに、底の見えない広いプールがちょくちょく姿を現す。これは渓流の本流域の釣りを好む者にとっては堪えられない景観であるが、右岸も左岸もコンクリートで護岸されており、のぼり降りの安全を考慮してかところどころ階段が設けてある。好きな所から入渓して、好きな所からお帰りくださいとでも言いたげだが、お節介も甚だしいや!
でも、まあ、文句を言ったところで定年後の恩給の計算に余念のない国土交通省のお役人が目の前にいるわけでもなく、また、徳島河川国道事務所から青い文字で吉野川と涼しげに書かれたタオルや清掃用のごみ袋を貰ったりした手前あまり大っぴらに文句もいえぬので、ここはひとつ黙って階段を利用させていただくことにした。

ここ二、三日、強い雨は降っていないが、昨日も適度には降って、川は増水していた。渓沿いを走る車から見下ろす以上に目の前の流れは水に勢いが感じられた。7ftを持って降りればよかったなと思ったがあとの祭りである。でも、まあ、5ft程度のロッドでも用を足さぬわけではない。川幅いっぱいに流れているわけではなし、流れのなかに頭を出した岩に乗っかったりすれば距離も詰められるだろう。
だいいち、私は春先のようにウェーダーを履いて釣りをしているわけではなかった。私が身につけているのは沢登り専用のウェアだった。これはじつに流れのなかを楽にあるけて、疲れない。
この身軽さに気をよくして、どんどん上流へ向かって歩いていくと、ほぼ川幅いっぱいの水をたたえた底の見えない深いプールに到着した。上流に向かって立つと、左側がやや浅くおぼろげながら底の砂利が仄白くみえる。右のほうは大きな岩が流れを堰いており、勢い余る流れがその大岩にぶつかって白泡が立っている。私は左の岸に沿って歩いてきたが、その大岩のぶっつけを釣るためには手持ちの道具では飛距離が足らなかった。私はプールのすぐ下の強い流れのなかを川のなかほどまで進んでいった。そこには乗っかるのにちょうどいい大きさの岩が流れから頭を出しており、そこからだと釣るのにも好都合だった。プールの落ち込みから右岸のコンクリート壁に沿ってくだるやや幅のある強い流れがプールを堰く大岩にぶつかる辺りはいかにも大物のひそんでいそうな感じがした。いつもなら、ちょっといい流れだな、釣れそうだな、という程度だが、増水のいまはかなり様子がちがっていた。
昨日の雨と増水はあまり関係がないようで、まとまった雨とまとまった雨のあいだに昨日のような雨がぼちぼち降るせいで、それで、なかなか水が減らないのだ。上流にある発電用のダムもおそらく水を持ちきれずにいるのだろう。危うくなるとその都度放水口を開放するのにちがいなかった。

まず、私は右岸沿いの強い流れのなかを流れ込みから白く泡立つ岩のぶっつけまで丹念にツインクル45mmのシンキングタイプで探ってみた。しかし、アタリもなかった。
そこで、私は狙う場所を変えてみた。ぶっつけの太くて強い流れが横方向へと押し出す水流にルアーを入れてみたのだ。さっき、ぶっつけの流れを狙ったときのように、私はルアーにアクションを与えることは考えていなかった。投げて、流れにさらわれないようラインをなるだけ空中に張って、あとはルアーの流れるままに任せてみる。私の手間といってはラインのフケをリールに巻き取るくらいだ。この横に払う流れからはみ出したルアーが本来の下流側へと向かう流れに押された時点で仕掛けを回収する。そして、またキャストするのである。むろん、ルアーを通すコースはその都度変えるが、アタリが来そうだと思えば同じところに投げるばあいも出てくる。いずれにせよルアーを漂わすことのできる距離はそう長くはない。しかし、そのあいだにもシンキングのミノーは徐々に沈んでいき、あるいは湧きあがる流れにもまれて少々浮上したりバランスを崩したりしているにちがいない。
いくら上手にフケをとっても、いくらかラインにスラッグが出るため、たいていは向こうアワセに乗って来るが、今回はルアーをかすめてよぎるようなアタリを一度きり送ってよこしただけだった。私は、ここに来て初めて誘いを入れた。短く鋭くトゥイッチを入れたのだ。まだ、ルアーをかすめたアマゴがそばにいると直感した。
すると、ガツンと来て、乗った!
合わせた後、溜めにかかると、上流方向へと重量感のある抵抗をみせた。強い。これは、ちょっといい型だぞ、と私は胸が高鳴った。水に厚みのある強い流れなので、ほしいままになおアマゴは仕掛けを引いて走った。右岸の強い流れの下に入ったとき、ラインのどこかが底の石に当たったようなショックが手元に来て、焦らされた。しかし、かまわずロッドを引き絞ると、ぶっつけの白泡の付近から水を割って姿をあらわにした。尺はないが、ナイスサイズの本命である。そこから、下の流れに引き落して、水面に顔を出す石をよけながら浅瀬へと持ってくると、流れでよく冷やした手で私はアマゴを捕まえた。

そのときは、まだ雨は降っていなかった。空は曇っていたが、明るくて降るようにはみえなかった。それが、いざ写真を撮ろうというときになって降り出すとは忌々しい。しかも、みるまに本降りである。
もう夕方だったので、雨が降ると薄暗く感じられた。私は一人で来たので、セルフモードで撮影せざるを得なかったが、手でアマゴを持った写真を撮ろうとすると光量不足のため自動的にフラッシュ撮影となってしまい、うまくピンとが合わない。完全防水のデジタルカメラだから雨は気にしなくてよいが、レンズに雨粒が当たるは、もう6月だというのにからだは冷えるはで閉口してしまった。
それで、ご覧のとおりピントの甘い白けた写真になってしまったわけだが、たとえば写真が得意の合場哲也、滝伸介ならそれでもうまく撮影したにちがいない。そう思うとちょっぴり自分が情けなかった。

その後も、同じツインクルのシンキングを使い続けて5尾の本命を手にしたが、出るべき場所から期待以下のサイズが釣れたというだけで、特筆に値するような出来事は何一つおこらなかった。
近所の一人暮らしのおばあさんに持っていくと出がけに聞いていたので2尾だけキープした。
少し待つとやむかと期待したが、その様子はないので、濡れながら着替えを済ませて帰宅の途についた。
帰りの車のなかで、どうにかラジオの電波が届く場所まで来ると、ノイズ混じりに洋楽が聞こえてきた。
『雨に濡れても』である。
「できすぎだぜ!」と私は陽気に言った。



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いいアマゴが釣れた。雨のなか来た甲斐があった。

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広い流れの魚は体高があり迫力満点だ。

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強い流れは大きな魚を隠している。常にそうである。そう信じて釣る。

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今期は春から雨がよく降って、どの河川もダムの放水が相次いだ。

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四国は山が深い。梅雨ころは雨のたびに雲がわき、霧が出る。

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渓流のナイロンラインは、これだ。

【今回の使用タックル】

ロッド : ウエダ STS-501MN-Si
リール : ダイワ セルテート1003
ライン : ユニチカ シルバースレッドトラウトクリアー 4lb

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