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釣行記

釣行レポート

2011年9月29日

カスバートソニーと秋アオリ (2)

後日。
よほど悔しかったのか、最近、オモリをカットして軽くしたエギで海岸の浅瀬を狙う釣り方にご執心の滝伸介が、今夜も行くと言い出した。
「このままでは腹の虫がおさまらないから、今夜も行く。絶対に行くぞ」
あの神経質そうな眉間の縦皺をさらに深く鋭く見せながらいうので、何やら困ったことになりそうだなと私は思った。私には書きかけの仕事がいくつかあったからだ。
「じゃあ、おつき合いするとしましょうか」と、そばで話に耳を傾けていた田所(グスタフ)幸則が案の定いつものあの軽いノリで伸ちゃんの話にパクッと食いついた。
そして、
「長尾さん、あんたも行くんやろ?」と誘ってきた。
「何で、俺に振るのよ」
「だって、証拠の写真を撮ってもらわないと」
「そんなの、グスタフと伸ちゃんと、ラブラブツーショットを撮ってくれというのなら別だが、二人ともカメラに詳しいんだから、撮り合いっこすればいいじゃないか」
「ダメダメ。一緒に行ったあんたが釣れなかったのなら、もし俺たちが釣れなくても皆に言い訳がたつけど、田所さんと二人で玉砕したのでは、『ほら見たことか、まだまだ腕を磨く必要がある。俺なら少なくともなんぼかは釣ったはずだ。きっと、釣ったにちがいない。どんなに渋くても、二晩つづけてボウズってことは、これまでに一度もないからな』。とかなんとか、男爵らに軽口叩かれて嫌な思いをするにきまっている」
「うん、私もそう思いますよ。ぜひ、ご一緒していただかないと」
「あのね。なんで、そういうときだけかしこまった言葉づかいになるの。いつもは口汚いくせに」
そんな馬鹿を言い合っているうちに、立場がだんだん悪くなってきて、とうとう二人に押し切られるまま参戦せざるを得ぬ状況に追い込まれてしまった。
「わかった、わかった。行けばいいんでしょ、行けば」
さて、当日の夜は、二人とも仕事が早く終わりそうだからという話だったので、現地集合午後六時ということで互いに了解した。
「今日はステーキ焼かなくていいのか?」
と、私が訊くと、
「毎晩ステーキを食っていたら、体に悪いわぃ」と伸ちゃんが答えた。
「まあ、年が年だからね、私たち」と田所さんがうなずいた。
今回の釣り場である鎌野の浜は昨夜釣りをした笹尾の浜の東隣に位置する。庵治半島の先端域では浜は小さな岬山のような小磯によって分断されている、あるいは漁港によって左右に分けられているが、それぞれ名がついていて、その名は地名に由来する。

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香川県の海岸にはこのような砂浜が少なからず残されおりアオリイカの絶好のポイントとなっている。

ざっとあげてみると、西から御殿、江の浜、竹居、笹尾、鎌野、篠尾の各浜がある
まず、私たちは海岸道路の広くなったところに車を乗り入れて、仕掛けの準備をし、思い思いの場所へとそれぞれ散っていった。
私は、鎌野漁港のすぐ東の浜から釣りを開始した。ここは夏には「海の家」の居並ぶ海水浴場となる。波打ち際から少し前に出ると、すり鉢状に急に深くなっていて、意外と潮も速い。
「ここは、どうしてだか、普段から誰も釣らないからな」と私はひとりごとを言った。
これは、浜の浅瀬の夜の釣りに限ったことではないが、釣りは先行者がいないに越したことはないのであって、このように今夜も先行者のいないことに私はにんまりした。
田所さんと伸ちゃんは海水浴場の浜の東側ある長大な浜へと支度をととのえ仲良く歩いていったが、すでに車が海岸ぶちに数台止まっていたので、数人のエギ師が広大な浜の暗がりのどこかで釣りをしているはずであった。道から浜へと降りる階段付近に釣りをしている者は一人もないが、外灯の灯りが浜の渚を明るく照らす場所であるだけに素通りするとは考えにくい。おそらく軽く探ってみたが芳しくなかったために奥へと本命のアオリイカを求めて移っていったにちがいない。
そんなことを考えながら、エギを投げては巻き、投げては巻きしていると、五投目くらいに、「コッ」というような小さなアタリがきた。
しかし、私は最初それをアタリだとは思わなかった。底の石の頭にエギの腹が軽く触れたくらいにしか考えていなかったのだ。
だから、そのままリールを巻きつづけた。すると、またもや「コッ」と明確だが底だかアタリだかわからないような感触がラインからロッドへ、ロッドから私の手元へと伝わって来た。
やはり、底にちがいない、と私は思った。そして、そのあとすぐアタリかもしれないと思いなおした。
「アオリが触手でエギに触れたのかもしれない。日を追うごとに大きくなって、賢くなって、スレてきているのかもしれない。それとも、潮が効いてないせいでヤル気がイマイチ出ないのかもな」
潮が効いてくれば、もっと大胆にエギを抱いてくるかも知れないが、いまのこの状況では警戒心のほうがまだまだ食気に勝ってしまっているのにちがいない。
同じような場所に再び投げて、少しエギを沈めて、ゆっくりリールを巻く。浜にしては水深があるので、エギは桐製の浮力に富んだものは避けてユニチカエギS2の3.5号のオモリ部にドリルで穴を二つあけて少し軽くした下地が赤テープのものをチョイスして釣っていたが、仕掛けを三分の一くらい巻き取ったところで底にエギの触れる手ごたえがありありと伝わるようになると、そのなかにまぎれて本命のアオリイカのアタリだと思われる小さな「コッ」が、また何度か来た。

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オモリに穴をあけて軽くしたエギS2。

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カンナの鈎は下側をカットして使う。

私はそのたびに巻く手を休めた。このときグッとのしかかるような重さを感じたら、エギをアオリイカが抱いたのである。
しかし、そういうことは起こらずに、エギはそこに止まったままで何の反応もない。
それでも、アタリだと疑われる小さな「コッ」が手元に伝わってくるたびに、私は仕掛けを止めて、待った。しかし、結果は同じであった。
「アタリではないのか? ここにアオリはいないのか?」
私は、少々いらだち始めていた。
そのとき、また、「コッ」が、来た。
やはり、私は仕掛けを止めたが、その直後に竿先を上方向へとゆっくり持ち上げてエギに動きをくわえてみた。
すると、グッと重みが乗って来た。
「アオリだ!」と私は思った。
仕掛けを緩め、直後に空アワセすると、乗った!
しかも、大きい。
手元に来る重量感、引きの強さ、ロッドの曲がりよう、どれをとっても確かに小さくはないと知れた。私は、慎重になった。最初の獲物だけに、これをバラすわけにはいかなかった。その後も何度か強いしめこみをみせたが、春イカほど大きいわけではないので、波の寄せ返す波打ち際までに寄せてきたときだけ要領よくあしらってやればわりと楽に取り込めそうである。
釣りあげてみると、なかなか素敵なサイズの本命であった。胴だけで3.5号のエギの全長よりも、かなり大きい。
しかし、浜は私一人だったので、カメラは持っていたものの撮り手がいない。
岩場のところまで小走りに行って、東のほうを探してみたが、田所さんも伸ちゃんも姿が見えなかった。
仕方ないので、スーパーの袋のなかに本日第一号のアオリイカを入れて腰にぶらさげた。
その後、何回か投げては巻き、投げては巻きするうちに、潮が急に走りはじめて仕掛けが右へと押され始めた。
このとき、私は海水浴場の浜に見切りをつけて、その東の端の岩場よりも十メートルばかり東側の波打ち際に立って釣りはじめたばかりであった。
「来た!」と私は、反射的にアワセを入れた。
そして、その直後に、しまった!とアワセを入れたことを悔いた。
アオリイカが速い流れのなかで触手を伸ばしてエギを抱き取って走ったようだった。このときアワセを入れると瞬間的にアオリイカがエギを放すことが少なくない。潮流に仕掛けは張っているので、アオリイカがこれはおかしいと瞬時に抱き取りに伸ばした触手をひっこめるのである。
エギは流れに押されて相当岸寄りを潮に逆らう格好で動いていた。それでも、私はすぐに仕掛けを回収することはせずに、ゆっくり、極ゆっくりリールを巻きつづけた。すると、「コッ」という例のアタリが来た。
そして、ひったくるような強いショックが仕掛けを三分の二くらい巻き取ったときに手元に伝わって来た。
私は仕掛けを、少し送った。
そして、流れに逆らうように、エギを止めた。エギはもうすでに流れ切ったに等しいほど波打ち際近くに寄っていることだろう。それでも、たしかにアオリイカがエギを抱き取った重みが手元にズシッと加わって、それが私を心地よくした。
私は、心が躍っていた。そして、アワセを入れた。これほどの遅アワセでも、アオリはエギを抱いて離さない。どのくらいの手ごたえなら離さないのかを口で説明するのは難しい。けれども、アオリの個々の性格、潮の速さや先行者の有無など、状況次第でアタリのパターンは数え切れないくらいもある。これは、仕掛けが張っていないフォール中にエギを抱く頻度の高いシャクリ釣りでは決して味わえないズル引き釣りならではの楽しみである。
じつは、ズル引き釣りでは、即アワセは厳禁! とされている。
なぜか?
長年の試行錯誤から、確実に抱かせるのならば即アワセは禁物だということが経験上明白となったからだ。とくに潮が快活に動いているときは向こうアワセでないかぎりは即アワセをしてはならない。では、潮が動いてないときはどうかというと、これも同じである。
しっかり抱かせてから、バシッとアワセを入れる。これをおろそかにせぬようにすればやりとり中のバラシはぐっと減る。
私はすでに四つ釣りあげていた。まだ、ここに着いて一時間くらいだ。乗せられなかったアタリはその倍くらいはあったろう。
私は、まだまだこの辺りは有望だと思ったが、伸ちゃんの証拠写真を撮ってあげなくてはならないし、田所さんの釣果も気になったので、釣りをやめて浜の奥へと歩き出した。踏みごたえのない砂浜を歩くのは、延々と歩きつづけるのは、なかなか骨折りだ。普段使わない筋肉を使うので足に堪える。
外灯のあかりの及ぶ付近を通り過ぎて、さらに奥へと向かうと、まず伸ちゃんの姿があった。暗がりに目を凝らしてみても伸ちゃんの腰にスーパーマーケットの袋はぶらさげられてはいない。
「どんなぐあい?」と訊くと、眉間の辺りがいっそう険しくなった。
「そんな難しそうな顔はよしなよ」
と私が言うと、
「だって、アタリもないわな」と伸ちゃんは落胆を隠せぬ様子であった。

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ボウズのまま時間だけが過ぎていく。「あたらんなあ」と伸ちゃんは険しい表情をみせた。

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庵治半島で腕を磨いてきた男爵も、もう今夜はお手上げとばかりに目がうつろになる。

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祈るような気持ちでアタリを探す牧くん。

「田所さんは?」
「ずーっと、奥の奥」
「少し巻くのが速くない?」
「速くもなるでぇ。こう当たらんと」
「イライラすると、この釣りは負けなんだよ」
「うん。しかし、流れが速いね」
「しかも、右に行ったり、左に走ったり、今夜はなんだか変なんや」
目と鼻の先を流木が左から右へと流れていく。
「仕掛けの張りが強いと感じられたら、潮下側に竿を倒して巻くといいよ。少しはテンションがやわらぐだろうから」
すると、伸ちゃんは、「潮下側に」と呟くように言うと、ロッドを潮上側から反対方向に倒した。仕掛けが緩んでエギが少し潮下側に流れた。ロッドを移行したことで仕掛けの角度が変わり、同時にエギの進む方向もいくらかは変化したことだろう。
「やった!」と伸ちゃんの声が暗がりに木霊するように聞こえた。
仕掛けが潮に歪曲されて強い張りを失っているほんの少しのあいだに、エギの鼻が少し向きを変えたことで、アオリイカのほうでも獲物が逃げると思いこんだのだろうか、それで警戒心が咄嗟に融けて思わずエギにのしかかってきたのかもしれなかった。
たぶん、そうにちがいない。
「しっかり抱いたのがわかったよ」と、やり取りしながら伸ちゃんが声を弾ませた。
やりとりの様子からみて良型のようである。
釣りあげてみると、やはり私が最初に釣ったくらいのナイスサイズのアオリイカである。
私はカメラを構えて、さっそく釣った証拠の写真を撮ってあげた。
それから、ずんずんと波打ち際を波の舌にブーツの足を舐められないようときどき避けながら、私は田所さんのもとへと向かった。奥の端の岩場にいるものとばかり思っていたが、田所さんはかなり手前で釣っていた。
「どう?」
と尋ねると、
「よくないですねぇ、やる気のあるイカは少ないようです、あたるにはあたりますが、じつに大儀そうに触れてくる、まだ、三つだけです」
腰の袋のなかを覗かせてもらうと、ひとつは大きかったが、二つはコロッケサイズであった。
横で釣ってもいいかと訊くと、「どうぞ」という。
ガイドにカンナの鈎を引っかけて止めたエギS2をはずして、さっそく海の暗がりにキャストすると、エギが落ちた場所がはっきりわかるほど海面に夜光虫がいた。
それはそうと、波打ち際近くで青白くリンが燃えるように、ぼうっと光っては消えていく、あの光はなんだろう。アオリイカなのか、魚なのか、ほかの生き物か? よくみる光景だが、その実態はわからない。
私は、途中から右にロッドを倒してリールを巻きつづけた。潮は左から右へと流れている。この付近ではずっと潮は一定の方向に流れつづけているとのことだ。やや流速が衰えはじめていたので、少しでもメリハリをつけようと思い、私はエギの向きを変えるためにロッドを再び左に素早く倒した。この時点で、エギはなおいっそう潮上へと鼻を向けることになる。
エギの向きが変わったと思われるころ、パシッ! という例のイカパンチを食らった。強烈なパンチにエギがノックアウトされそうになった。
しかし、私のエギはどうやら、どうにか持ちこたえたようである。
その後、仕掛けを送り込まずにただじっと流れのなかで止めていると、ずっしりとした重みが乗って来るのがわかった。私は心がしびれるような気持ちでそれを味わった。小さく、しかし鋭くアワセを入れると、ロッドが綺麗な弧を描いてしなった。
「さっそく、いい型のようじゃないですか」と田所さんが言った。
そのとおり、ランディングしてみると、まあまあのサイズのよく肥えたアオリイカであった。身が分厚い。これだけぷりぷりした若いアオリイカだからこそ、このサイズでもこのパワーを発揮できるのだと、私は今更のように感心した。

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ナイスサイズの本命。秋が深まるほどにこのくらいのがエギを抱くようになる。

今夜、三番目に大きなアオリイカである。
「せっかくだから、撮りましょう」と言って田所さんが写真を撮ってくれた。
そのすぐ後に今度は田所さんが、私がいま釣ったのよりもひとまわり大きな本命をキャッチしてみせた。
今度は私がカメラマン役を買って出る番である。
けっきょく、この夜は、伸ちゃんが一つ、田所さんが四つ、私が五つという釣果でもって納竿時刻を迎えた。

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シーズン初期の9月中旬ころはこのサイズが多い。

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筆者の愛用するラインとリーダー。

時折強く吹いた風も今はすっかり絶えて、風のなごりの波だけが夜の砂浜を延々と洗いつづけていた。
「やっぱ、アワセのタイミングやね。テクニックやね」と軽量エギのズル引き釣りでは新参者の伸ちゃんが、いやにさばさばと納得した声に言った。
「ほんとにね。ちょっかい出してきた本命のアオリイカに、いかに確実にエギを抱いてもらうか、もうどうしたってバレる心配なんか微塵もないほど抱いてもらうか、これなんだよね、ズル引き釣りの妙味は」
「かけひきのおもしろさね」
そう、まさに乗せられるか乗せられないか、そのかけひきのおもしろさが秋の夜の浅瀬におけるズル引き釣りの醍醐味なのである。

【今回の使用タックル】

ライン : ユニチカキャスラインエギングスーパー PE 8 0.6号
リーダー : ユニチカキャスラインエギングリーダー50 2.5号
エギ : ユニチカエギエスツー 3.5号S(パープル/ピンクレッドグラ17g)改、など
ロッド : ノリーズ・エギングプログラム80 ハードジャークスクイッド
リール : ダイワ・トーナメントZ2500(エギスプール装着)

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