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釣行記

釣行レポート

2012年6月19日

台風直後に

道路の水たまりに雨が描く波紋を眺めていた。ついさっきまで街に斜線を引いて落ちていた雨もずいぶん小降りになった。風が凪いだせいで、いまはまっすぐ鉛色の空から雨が落ちている。雨の波紋は素早くひろがって、波紋と波紋がぶつかると、おしあう力によって、揺れたり、いびつにゆがんだりするだろうかと見ていると、波紋どうしはかたちそのまま交わったり、あるいは距離を残したまま消えたりした。
私は雨の描く波紋の芸術に魅入っていたわけではなかった。
「台風の警報は、そのすべてが解除されていない。警報は出されたままだ。しかし、台風はそれた。しかも四国から遠ざかりつつある。吹きかえしの風も雨も、すでに私たちを脅かすだけの力を残してはいまい。予報を出す機関は、もしもの事態を恐れて、ナーバスになり過ぎているのにちがいないが、多くの釣り師は予報を信じて出張って来る者はほとんどないだろう」
やれる、と私は判断した。
そこで、今回のマダイ釣りを心待ちにしていた松浦宏紀に、出撃する旨をメールで伝えた。彼は、いつでも出られますと返信してきたが、どうやら準備を整え自宅で待機していたようだ。
男爵こと三木一正も誘って、私たちは時合に間に合うかどうか微妙だという時刻に高松を発って庵治半島先端部の竹居観音の浜へと車を走らせた。
途中、私は立ち寄った行きつけの藤本つりぐ店で話し込んでしまったために到着が男爵、松浦くんよりも一時間あまり遅れたが、たぶん、男爵と松浦くんは19時半くらいには到着して釣りを開始したのにちがいなかった。
私が遅れて到着すると、「ようやくお出ましになりましたかの」と男爵がいかつい顔に微笑を浮かべて言うので、「知らない人が見たらふるえあがるぜ」と切り返したら、男爵はべつに悪びれる様子もなく、「鯛ならそこに転がしてあるよ」と馬頭観音の祠へとつづく浜の後ろの狭い舗装路の上に寝かせたマダイを指さした。
「さすがゴルゴ48だ。腕は確かなようだな」と私は褒めた。
「なんな、それ?」
「だから、AKBよ」
「AKB?」
「そう。48よ」
「ゴルゴは13やろ」
「まあ、それは、そうだが・・・・・」
西の端の岩場の境付近に、薄ぼんやりと松浦くんの姿が見えた。彼は、たしかに会話を耳にしているはずだが、どうも話題に入ってくるには人間がまじめ過ぎたようだ。
「どうだ、アタリは?」と松浦くんに訊ねると、全くダメですと言った。
仕掛けをみせてみろよ、というと彼は少しでも沖へ投げ込もうとして遠投が効く飛ばしウキ仕掛けで本命のマダイを狙っていた。
マダイの仕掛けや誘い方については、すでに同ホームページに記事にして掲載してあるので省きたいところだが、浜からマダイを狙うのが初めての松浦くんには一応説明しておく必要があった。
私は、メバルを釣るときと同じように仕掛けを組み直すよう伝えた。
「そんなにすぐ目と鼻の先で、砂浜から狙ってマダイが食いつくのですか?」
「そうだ。潮流にもよるが2g程度のジグヘッドでメバル用かアジ用のワームを投げるんだ。そして、常に底を感じながらゆっくり、極ゆっくり、ズルズル引くのさ」
私はそう説明してから、自分の仕掛けを急いで組みあげた。すでに、潮はかなり満ちて来ていた。潮がゆるくなりすぎるとこの釣りは釣り師の方が劣勢に追い込まれることが少なくない。
「メバルのジグヘッドって、それペンシルじゃないですか。メバル用のペンシルですよね」
 松浦くんは私の仕掛けを一見して意見を述べた。
「あはは。男爵は君にお手本を示さなくてはならないからな。マダイの仕掛けでマダイを狙っている。君はマダイを釣りたいわけだし・・・・・。だが、おれは、マダイはもういいのだ。おいしいメバルを少し釣ったら、それで満足さ」
その後、仕掛けを男爵に教わって組み替えた松浦くんにアタリが来た。
「なかなか食いつきませんが、ウソみたいにアタリが増えました」
「アタリが来ても、向こうアワセに持っていかないかぎり強くあわせてはいけない」なんて男爵が松浦くんに教えている。
その声が岩場の脇でメバルを狙う私の耳にとぎれとぎれに聞えて来る。風も波の音も、その程度の穏やかな夜であった。
誰も釣りをしていない浜は、私たちの貸し切りだった。
たしかに、いま男爵が注意したように、アタリが来たからといって、すぐにアワセを入れるのはよい結果につながらないことが多いようだ。コツンとか、モソモソッとか、そういうアタリのばあいは、即アワセせずに仕掛けを止めたり送ったり、竿先で聞いてやるようにするとよい。すると、あからさまではないまでもグイッと押さえ込むようなアタリが来るので、そこを逃さずシャープなアワセを入れる。ヒットするとマダイは竿の先を叩くような絞め込みをみせながら暴れまわるので、ドラグ調整はきちんとしておかないと仕掛けを切られて泣きをみることにもなりかねないので注意が必要だ。加えて、マダイも大きいものになると波打ち際まで寄せてからもうひと暴れすることがままあるので気を抜かぬよう慎重にやり取りしてほしい。
当日の夜は、マダイの食いが浅くて、アタリが来てもなかなかヒットに持ち込めなかったり、ヒットしてもすぐにバレたりした。
それでも、今回はマダイを釣りたい者にはマダイが釣れ、メバルを狙う者にはメバルが希望通りに食いついて、出撃を決断してよかったと誰もが顔をほころばせた。
マダイは庵治半島先端部の浜の浅瀬のあちこちで釣れているが、まだしばらくは釣れつづくだろう。なぜなら、マダイが夕暮れになると浜の浅瀬の砂に寝床を求めてやって来るイカナゴの群れを追って沖からやって来ているのではないらしいからだ。どうも、マダイが夜に浜の浅瀬に寄ってくるのには別の目的があるのではないか。そりゃあ、イカナゴはマダイにとっても御馳走だから居れば食うだろう。じっさい、釣ったマダイの腹を裂くとイカナゴが出てくることも少なくない。しかし、それと同じように消化されかけたカニや他の餌も腹から出てくることを考え合わせると、マダイの餌になる生物が浅瀬の底にけっこういるのだと推察できる。
じっさい、イカナゴの寄りのよくない日の夜でも潮次第でマダイがよく釣れる。暮れ方にボイルもなく、スズキもメバルも釣れないのに潮の時合さえつかんでおけばマダイだけは釣ることができるのである。
しかも、食いつくのは、ほとんどが底である。
イカナゴパターンが終了し、一時的に食いが遠のいたとしても、「ああ、終わった。来年のイカナゴ接岸までスズキもマダイもおあずけだ」なんて単純に事を処理したりせずに、根気よく釣り場に足を運んでさえいれば、いい思いを味わえるチャンスがこの先何度かあるのかもしれない。
いや、「何度も」あるのではないか。
いま、私は、ひそかにそう思っている。

これは釣りとは何ら関係ない話だが、台風直後のこの蒸し蒸し感はどうもキャップをかぶった僕の髪の毛には些かよくないようだなどと松浦くんが男爵に話しかけているのを聞いて、松浦くんも随分髪の毛が危うくなって来たと思って私は失笑してしまったが、男爵が、「すっかり無くなってしまったら、俺の弟分にしてやるから心配するな」と無茶苦茶なことを口にした。
「なっ」などと男爵は松浦くんの肩をぽんと叩いたりした。
すると、何を思ったか、
「はい。光栄です」と松浦くんは答えた。
これを見て、松浦くんも言葉の選び方がずいぶん大人になったものだと私は感心したりアホらしくなったりで、もう話題に素直に加わる気持ちには到底なれなかった。
だから、それが何なのだ! そう言われてしまえば身も蓋もないが、まんざら冗談とも思えぬ男爵の松浦くんへの励ましと、松浦くんの生真面目なちょっと間抜けな姿勢がなんとも微笑ましかったので、ちょっと記しておくことにしたのである。
あしからず!

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「あっ、いま当たりましたねぇ」と松浦君。

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マダイのほかメバルも良型が出る。

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マダイを手にした男爵と松浦君。

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マダイもチヌもよく引くのでやりとりを堪能できる。

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50㎝級も、今期は珍しくない、エコギア・グラスミノーSにヒット。

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イカナゴ接岸時はフライで狙ってみるのも一興。

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最近数が増えつつあるサワラだが海岸から釣れるのは中クラスが多い。

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本釣行前々日の17日は笹尾の浜でヒラメがヒット。

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日の出直後の竹居観音の浜早朝も見逃せない。

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中川君もマダイを手に満足げ(17日)。

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17日の夜はマダイとチヌが釣れた。

【今回の使用タックル&ライン】

ライン : ユニチカ ナイトゲームTHEメバルスーパーPE 4lb(0.3号)
リーダー : ユニチカ ナイトゲームTHEメバルリーダーFC 8lb
ロッド : ノリーズ スローリトリーブSR710F
       ティクト ラルゴ
リール : ダイワ カルディアキックス2000など

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