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釣行記

釣行レポート

2015年5月4日

バス日和

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 その人は私くらいの年齢で、ロッドを束にして抱え持ち、私のお気に入りの湖岸にちょくちょく姿を見せる。名前も近くの人かもわからないが、気さくな人柄で最初から印象は悪くなかった。
「なんだか、ゴルフへ行くみたいだな」というのが、その人に対する私の第一印象だった。というのも、ゴルフクラブほどの本数のバスロッドを用意して来ていたからだ。
 私が先に来て釣っていると、まもなくその人が傾斜のきつい踏みつけ道を降りて来て、どさっと道具を岸辺の草の上におろした。
ルアーや小物を入れたバッグが大きい。しかも、それは布地の色が褪せて汚れが目立った。バッグもそうだが束にして樹に立てかけたロッドにも年季のほどがうかがわれた。ロッド一本一本にセットしてあるリールも使いこまれている。すでにガイドにラインを通してあったが、そのラインの太さも微妙にちがっていた。ラインの先にはルアーをすでに結んである。
 私は、バスの道具に詳しくないが、ベイトタックルが四本、スピニングタックルが一本、陸から真面目にバスを釣ろうとするとそれだけの道具が要る。いや、たぶん必要なのであろう。そう信じ込ませるだけの雰囲気をその人は持っていた。

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夜明け前の府中湖

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昆虫が落ちてくるのか、雑木の下にひそむバスは多い

2

 今回も、その人はいつもと同じいでたちで、釣り場に現れた。
「ちょっとそばで観ていていいですか?」と私はその人に訊いた。
「全然かまいませんよ」と、その人は答え、束のなかからロッドを選んで手に取った。
そして、ラインをリールから少し引き出して、宙ぶらりんのミノーを手に受けると、しばらく点検するような眼で眺めた。
 いつもそうなのかはわからない。また、それがワンドの渚のほとりから釣るときの常套手段なのかも私は知らない。ただ、細身の軽いミノーを投げるのにスピニングタックルを使うのは理に適ったやり方だと感心した。
 水ぎわから相当後方に立って、岸からそう遠くない浅瀬を一通り探ったら、トップウォータープラグをセットしたタックルに持ち替えて広い範囲をカバーしていく。無駄のない道具の扱い一つをみても並の釣り師とは思えなかった。
「この時期は、ワームでねちっこくやらないでも、わりと食ってきますからね。ダメなら仕方ないが、ワームは保険みたいなものです」
 私は鱒釣り師なので、淡水の釣りではワームよりもミノーやスプーンに愛着がある。だから、そう聞かされると嬉しかった。
 このところ、ワームを全く使わないのも、そのときこういう言葉のやりとりがあったからである。
 ハードルアーだけでも釣果にありつけるなら、それに越したことはない。

3

 バス用のルアーは想像を絶するほど種類が多いので試し甲斐がある。去年の秋からこっち、自分で買ったり人から貰ったりしたものだから、最近ルアーの数も種類も相当充実してきた。オタマジャクシやカエルやセミやネズミやアライグマを模したもの、小型化したビールの缶に三本鈎を取り付けたヘンテコな代物、水をかき混ぜる金属のプロペラの付いたホットドック型の変わり種。引くと、あいた穴に水が通って、気泡を生じさせるタイプのものまであって創意工夫が素晴らしい。
 小魚そっくりなミノー系のルアーにしても日本製は作りが精巧で、鰭をとりつけたら本物の小魚と見まちがいそうな製品が少なくない。それにくらべてヨーロッパやアメリカの製品は眼や鰓蓋や鱗が手描きされており、しかも、その絵の程度といったら子供とどっこいどっこいである。あるいは絵の才能に秀でない田舎の村のおばさんが内職がてら描いたのではないかと思いたくなるほど筆の運びが雑である。ラパラとかへドンとかボーマーとかレーベルとかいうメーカーにそういう製品が多い。そして、意外なことに、そういう風采のあがらないダメ男みたいなルアーほど水中を闊達に泳ぎ、あるときは精巧な日本製を凌いで、バスのハートをメロメロにとろかしてしまうのだから不思議だ。
 それがなぜだかわからない。
 なかでも、ラパラは私との相性がよく、どのタイプを使っても釣れる。ダイワのピーナッツⅡ同様、私のタックルボックスに必ず入れておきたい優れ物である。

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今回使用の根ズレ対策(超耐摩耗加工)を施したシルバースレッド・SAR 8lb 300m巻(徳用)

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使用したタックルとルアー

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ラパラのルアーもバスを魅了する能力に長けている

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ツツジが見ごろをみ変えていた

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 そんなに待つのかと思うほど、誘ったあと長く放置しておくのには驚いた。間の取り方が想像以上に長い。ちょっと誘っては、また止める。水面にトップウォータープラグのカラフルな背中が覗いている。次またちょっと誘うと、下から突きあげるようにバスが襲いかかってきた。
 しかし、サイズのいいバスだったにもかかわらず、なぜか鈎先がバスの口を捕えるまでには至らなかった。
 その後、何度か誘ってみるも、ついに音沙汰がない。
「あんなバケツみたいな大きな口をして、案外どんくさい魚ですね、バスって」と私は感想を漏らした。
「スズキの仲間ですからね」
 その後、ミノーやトップに反応はなく、その人はついにワームをセットしたロッドに手を伸ばしたが、護岸の壁についているかもしれないバスを狙うもくろみらしい。
「底にオダの沈んだ付近とかは有望ですが、まず壁を攻めておかないとね」と、その人は自信を伺わせる口ぶりだった。
 じっさい、その人は壁ぎわでワームの大袋くらいのサイズのバスを連発させたが、その都度苦笑した。
「これだから嫌になっちゃう」と、その人は照れてか天を仰いでみせた。
 それがその人の芸風でもあるかと思われるほど板についておもしろかったので、私も一緒になって笑った。
 意外と大きなワームに大きくないバスが食いつくものだと私は変に感心してしまった。

5
「今から釣るなら、そこの小さな入江の出口の角からミノーで沖側、あるいは対岸側の出口付近を釣るといいかもしれない」と、その人が言うので、私もそろそろ釣りを開始することにした。
 すると、その場所へ行ってパニッシュという細身の鱒用ミノーを一回投げただけでバスがヒットした。ところが、足元まで寄せて来たとき、がばっと水面を割ってもんどりうったかと思うまもなく、口から鈎がはずれてしまった。大きくはないが、最初のバスだったので悔しがっていると、「どんまい、どんまい。まだ釣れますよ、そこ」という声が聞えてきた。  すると、どこかでウグイスがいい声に鳴いて、その人と同じように自分のことを励ましてくれているみたいに感じた。
 その人は、いつの間にか帰り支度を整えて、束にした道具を手に車へともどる登り口のところまで来ていた。

6
 思いのほか早くその人が帰ってしまったので、私は拍子抜けがした。
 その人の言うとおり、しばらくそこでミノーを投げては巻き、巻いては投げて頑張ってみたが、その後、アタリもなかった。
 私は、その場を見切った。
 そして、その人の帰った後に入って釣りはじめた。
 名人がやってダメなのだから期待薄だなと思いながらも、気になって、横目でちょいちょい様子を窺っていると、そこの水ぎわ近くで水面が炸裂した。小魚が水を脱いで躍りあがった。バスに追われて逃げ惑っているようだ。
 それで、急いでそちらに向かった次第である。
 まず、私は遠巻きにしばらく様子を窺ってみた。
 その後、水面は静かなまま水花火があがることもなかった。
 ベイトはワカサギほどの大きさの細長い小魚だった。
 ボイルのあった付近を探ってみたがアタリもなかった。
「仕方ない。少し遠投してみるか」
 今度は、やや水深のある沖へ向けて、交換したばかりのラパラのシンキングミノーを投げてみた。
 少し沈めてタダ巻きしてみる。
 すると、かなり手前でアタリが来た。向こうアワセで難なくヒットに持ち込めた。けれども、用心に越したことはない。けっこうバスは鈎はずしの名人だ。鱒もヒットしてからのやりとり中に捕り逃がすことが少なくないが、バスもなかなかその点で手ごわい。
「二度アワセしておくか」と私はその通り実行した。
 その甲斐あってかどうかはわからないが、うまく渚の岸へとずりあげることができた。 大物と呼ぶには役不足だが、初心者の私には悪くないサイズのバスだ。
 これに気をよくして、その後も付近を丹念に探ってみたが、アタリもなくて釣れる気がしなくなった。
「でも、まあ、釣れたのだから」と私は自分に言ってみた。
 満更でもなかった。
 遠く雑木の覆った西岸部を、ボートで移動しながらバスを狙っている二人組が、ここに立って目を凝らすとはっきりみえる。朝の澄んだ空気が心地よい。ロッドの先から勢いよくのびていくラインがときおり陽ざしを受けて光った。
「ボートから釣るのも悪くないな」と私は沖を眺めながら思った。

【今回の使用タックル、ライン】

ロッド : ノリーズ ロードランナー ボイス HB680LS
リール : ダイワ トーナメントZ2500C
ライン : ユニチカ  シルバースレッドSAR 8lb

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