HOME > 釣行記 > 釣行レポート > 2017年7月25日~10月30日

釣行記

釣行レポート

2017年11月2日、6日ほか

シーバスフィッシング☆サヨリパターン考察

1

  カラスが鳴きわめくので、起きて窓をあけてみると、街を瓦礫の山に変えてしまうべく戦車が土煙をあげつつこちらへと向かって来る。主人公の少年は急いで両親に知らせるために階段を速足で降りていくのだが、街の住人たちは知る由もなかった。朝早くのことで、まだ界隈は静まり返っていた。
 私は席に腰を落ち着けて、「ほう?」と息を漏らす。
 そう、私は映画を観ていた。
「滑稽だな」と観客の私は声に出して言った。すると、
「何が滑稽なのでしょうねぇ、はい、どの辺がですかねぇ」
 背後で聞き覚えのある声がこのときとばかりに問うて来た。
ふり返ると、席はがらがらで、ちょうど私の真後ろの席に淀川長治がちょこんと腰かけて、こちらを見ていた。深いまなざしの眼光が鋭かった。
「怖いですね、なのに、どこが滑稽なのでしょうねぇ」と淀川長治はトレードマークの黒ぶち眼鏡のフレームを指で上げ下げしながら言った。
「どこがって」
「ハイ。どこでしょう」
 淀川長治はあの名調子でもって尚も畳みかけて来た。
 私は下を向いたまま黙っていた。
「ハイ、どこでしょう。どこですか。ああ、そうですか。すぐにはお考えがまとまらないご様子ですねぇ。では、わたくし用を足して参りますので、そのあいだにおまとめいただければと思います。どうも年を取るとトイレが近くていけません」
 淀川長治が席を立つとき、あの決め台詞、「それでは、さよなら、さよなら、さよなら」が聞けるかと期待したが、映画評論の大御所は用を足したらもどってくると宣言して発ったのだから、名調子のさよならを口にするはずはない。そのとおりになった。
 ただ、決め台詞が聞かれないのはちょっと残念だが、大御所の姿が見えなくなると、私は気持ちがホッとした。
 手持ちの紙カップのなかのポップコーンがポップコーンらしい良いにおいでもって私の鼻をくすぐる。このことからももう既に今の自分は冷静に落ち着けていると自覚することができた。
 銀幕のなかでは砲撃が始まっていた。戦車のぶっ放す物凄い音に向き直ると、ついさっきまで熱心に映画を観ていた席の客が全員居なくなって、スクリーンいっぱい砂の嵐が吹き荒れていた。戦車の砲撃の音もやんでしまった。むろん、砂嵐と言っても本物の砂の嵐などではなくて、放送終了後にテレビの画面に吹き荒れるあの真夜中の磁気の嵐と同じである。
「馬鹿げている」
 私は憮然とした。
 夢にちがいない、そう思った。
 夢の中で、夢かと訝しく思う端から目が覚めた。
 どうやら人から貰ったDVDを観ながら眠り込んでしまったようだ。それで、映像つながりの夢を見た。
 その日は夕方からシーバスを狙いに行く約束をしていたので、少しでもいい意味でイメージを膨らませておこうと思って観始めたのだが、主演の釣り師がまだ一尾のシーバスも手にしないうちに眠りこけてしまった。
 だからといって、終わってしまったDVDを、また最初から観直すのも億劫だ。
 ちょっと早いが車で釣り場へと向かうことにした。

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ルアーは個人の嗜好の問題。主観で選べばよい

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移動には細心の注意を払おう

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到着時にはボイルの気配もなかった

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高い確率でランカーが狙えるのが魅力だ

  待ち合わせ場所には一時間以上も早く着いてしまった。
二週続けて週末に台風が襲来して、その前後も天候が不穏だったので、秋晴れが身に沁みてありがたかった。
 陽ざしに背中を温められながら私は仕掛けを組みあげた。もう何十年も同じことをしてきたので、目を瞑っていても組めるほど仕掛けづくりというのは慣れたものである。空き地は、草の緑に枯れ色がところどころ目について、移ろう季節を感じさせた。日暮れにはまだじゅうぶん間があったが、風が動くとひんやりした。
 仕掛けを組んだタックルを車の屋根に乗せると、私は車内で原稿に目を通しはじめた。これから年内いっぱいは海の釣りが忙しい。それなのにそれと同じくらい書くことに手を取られてしまっているのが現実で、潮のいい時間帯に必ずしも釣り場で魚とやり合うことが叶わない。
 だから、一時間でも三十分でも時間が惜しい。
 私はプリントしてきた自分の原稿を丁寧に読みながら、赤鉛筆で線を引いて無かったことにしたり、あるいは新たに書き加えたり、反転の矢印をつけて文章の前後を入れ替えてみたりした。
 すると、あっという間に一時間が過ぎて、遅ればせながらと尾崎が車でやって来た。

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使用したライン

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潮の低い時間帯は沖目でボイルが散発した

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ボイルが足元近くでも炸裂し始めてまもなく、尾崎にランカーが来た

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いいのが釣れたがな! と顔のほころぶ尾崎晴之

 ウェーダーを履いて着る物を着終わると、尾崎と私は浜へと降りて辺りの様子を窺った。そろそろ浅瀬の海面がざわつき始めてもいい頃であった。この時期、流れの緩やかな浅瀬にサヨリの群れが回遊してくると、そいつをつけ狙うシーバスたちも沖から徒党を組んでやってくる。
 見るかぎり駐車場所から近い側ではナブラが立つことは一切なかった。夕空を映した海は一枚の布みたいに平らで、これっぽっちのほころびすら見出せなかった。もう一週間も前からここにサヨリがまわって来ており、それを食おうと大型のシーバスも数多く接岸しているとの情報は得ていたが、じっさい竿を出すのは今季初めてなので、のっけからこのようにしんと静まり返る浅瀬を眼前にすると少なからず不安が芽をもたげる。とりあえず様子を見ようということで、そこら辺を探ってみることにした。
 ベイトがサヨリと決まっているので、ミノーは細身をチョイスした。ミノーのフックに引っ掛かってくるサヨリのサイズがずいぶん大きいと事前に聞いていたので17~21cmのあいだでその場に即したものを使う計画を当初は立てていたが、夕暮れには間があり、しかもボイルが全く見られないこともあって、投げるのにもそれなりに力の必要な重たい大型のミノーを投げて巻いたところで体力の無駄遣いのほか何ものでもない。そう思って普段からよく使う14cmの細身のフローティングミノーをパイロットルアーとして選んでみた。
 尾崎は、この釣り場でシーバスを狙うのが初めてのため、私に倣って似たようなミノーをリーダーの先にスイベルを介してセットした。
 手前のサーフでアタリひとつ得られなかった私たちは張り出した岩場の縁をまわって奥側の石積み護岸のつづく辺りまで歩みを進めた。この辺はずいぶんと沖の方まで遠浅で、砂底のあちらこちらに沈み根や海藻の生い茂るさまを容易に見ることができた。
 長い石積み護岸が終わるとちょうどそこはゴロタが足元を埋める小さな岬の岩場で、石積みが終わる付近はとくに浅くて底の様子がよく見てとれた。
「シーバスというよりもロックフィッシュが釣れそうな場所だな」と仕掛けの先にミノーをぶらぶらさせながら付近を見まわしていた尾崎が感想を漏らした。
「こういう場所は要注意なんだ。沖側からこちら側に向かってベイトのサヨリを追いこんで食うのさ。楽して多くのエネルギーを得ることが、奴らシーバスの最重要課題だから有利な場所で餌をつけ狙う」
「じゃあ、俺はここに根を生やすとしよう」
 そう言うと、尾崎晴之は石がごろごろしている波打ち際に陣取って、真剣に釣りを開始した。
 やや沖の海面がざわつき始めていた。底から海面近くへと追いたてられたベイトの群れが海面直下で八方に散り散りに逃げ惑う様のようにも思える。これに尾崎も私も触発されて本気モードのスイッチがオンになった。
 これまではアタリひとつなかったが、ラインにベイトが頻繁に触れて、そのつどアタリと思わせられて、つい体が反応したりもした。
 さすがに、長年の経験がものを言ってか、大アワセにアワセを入れて苦笑いするようなことだけはなかったが、ずいぶんやきもきさせられた。
 ベイトの気配はじゅうぶんである。それを追ってシーバスも入って来ているのはまずまちがいなかった。海面下ではすでに食う側と食われる側の追いかけっこが熾烈さを増して来たようだった。それに伴い、私たち釣り師のテンションもあがる。付近は、まだじゅうぶん明るかったが、そろそろ空からとなく海からとなく山の緑からとなく、まるで分泌物のように夕暮れが染み出して来て、時合の到来を私たちにより濃く実感させた。
 私は沖へ向けてミノーをフルキャストした。
 これからというときに仕掛けのトラブルに見舞われては元も子もない。いろいろ策を弄して臨んでもライントラブルで時間を食ってはすべてが台無しである。
 そのためにもリールのスプールに収まっているラインにだらしない緩みがあってはならない。それで、出来るだけラインをスプールから放出し、今いちど巻き直しておこうとした。ところが、そのミノーに着水後まもなくシーバスがヒットした。水面直下で仕掛けをひったくって行ったシーバスはサイズこそ大きくはなかったが、ベイトのサヨリをたらふく食って精をつけているためか滅茶苦茶よく引いた。パワーのわりに重量感に欠けるなと頭の隅で思いながらやり取りしたが、それでも波打ち際へ寄せられてからも、なおよく暴れた。
 私は尾崎の右側で、尾崎から少し離れて釣っていたが、尾崎が立つ辺りは沖も、足元に近い辺りも、頻繁にボイルが炸裂するようになっていた。
 「これだけシーバスが居ても、簡単にはいかんもんやなぁ」
 そう尾崎はこぼしながら、それでも熱心に仕掛けを投げたり巻いたりしながら辛抱強くつづけていると、ついにアタリが来て待望の第一匹目が釣れた。シーバスではなかったが、サイズ的に申しぶんのないタケノコメバルである。
 これに弾みをつけた尾崎は夕暮れを前にランカーサイズのシーバスをついに手中に収めることに成功した。
 この日は、すっかり暗くなってからもシーバスのボイルがつづき、二人とも複数のシーバスを手にした。尾崎の釣りあげたランカーサイズのほか70cm級もヒットした。
「これで、お互い二魚種ずつや」と私は暗がりのなか魚をゴロタ場にずりあげたあと近くに居た尾崎に向かって言った。
「えっ、何、それ?」
「ざっと、こんなものさ!」
「うわぁ、デカイなぁ、そのサヨリ!」
「アホ。おもろいこと抜かしやがって」
「いやいや。でも、ほんとデカイ」
 その正体は、大きなダツだった。
 私はこれまでにも何匹か釣ったことがあるが、これほど大きなダツを仕留めたのは初めてのことである。
 尾崎も、このサイズを間近で目にするのは初めてらしく、その珍しさから写真撮影にも力が入った。
 何枚か写したあとで、再生してみると、たしかに臨場感じゅうぶん、相当迫力のある出来映えである。
 闇が深くなるにつれて、そこかしことなくボイルも激しさを増して来たので、そろそろ車の近くへと帰ろうかと話していた矢先に私たちを足止めしたこのダツの親玉は無論のこと逃がしてやったが、その恩を忘れ仕掛けのリーダーを噛み切って私のミノーを海の藻屑と帰すようなことだけは遠慮申し上げたいものである(ほんま。その辺のご配慮、お願いしますわ。ダツさん)。
 じっさい、こんな奴がシーバスに混じってたくさん泳ぎまわって居てはたまらない。そう心配したが、今回はそれも取り越し苦労に終わってホッとした。
 みると、到着したときは全然ダメだったサーフの少し沖でもボイルは明らかに激しさを増すばかりであった。
「これ以上潮が高くなると、あの岩場付近は胸くらいまでウェーディングしないと向こう側のサーフまで戻れなくなる。幸い浜からでもまだしばらくは釣れそうだから、帰り仕度を整えてから仕切り直そうじゃないか」
 尾崎はランカーサイズを仕留めている余裕からか、私が何を言っても終始ニコニコして頷くばかり。
 彼は、サーフに場所を移してからもシーバスを二尾仕留め、上機嫌であった。

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暗くなるとサイズがダウンした

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巨大なダツがヒット、ちょっと複雑な心境に

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尾崎はいいペースで本命をキャッチ!

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今回の釣果の一部

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 尾崎晴之と一緒にサヨリを捕食するシーバスを狙いに出かけ、今期初の釣行にも関わらず悪くない釣果を得ることができた私は、同じ場所へと今度は一人で行ってみた。
 釣り師が攻め立てていない場所というのは、たとえこちらの目論見どおりにシーバスがヒットしたとしても、それが絶対に正解パターンだとは言い切れない。むしろ、大いに疑ってかかるべきである。
 私は、このサヨリパターンの釣りというのは、釣れるときには労せずに数釣りができるが、その多くは目の前にサヨリを追いまわすたくさんのシーバスがいるにもかかわらず容易にヒットに持ち込むことができない大変難しい釣りだと心得ているので、もうそろそろ同好の士たちに苛められて少しはスレたろうと思われる頃合いを見計らってその差を確かめるべく今回は出かけて行った。

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ラインはPE、ナイロンを使用する

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明るいうちから食いが立つことも

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暗くなるとアタリが増え、良型がヒット!

 ところが、今回は前回にもまして早い時間からサヨリの群れを追いまわすシーバスをワンドの広い範囲で確認でき、しかも追いの派手さにおいても前回とは比較にならないほど凄かったのであっけに取られてしまった。おまけに、誰一人釣りをしていない。瀬戸内の浅瀬で夕方から宵の口までサヨリパターンの釣りをして、同じ目的を持ってやって来ている釣り師の姿を全く見ないなどということはまずないことである。
 むしろ、人が多すぎて投げたいように好き勝手投げると、他人の仕掛けと自分の仕掛けがこんがらがって釣りにならない。
 だから、「もし自由気ままに投げられたなら、絶対釣れていた!」と愚痴めいたことを言って釣れなかった自分を慰める場面に遭遇したりもするわけだが、こういう人たちに私は訊きたい。それは本当か、と。
 そもそも、サヨリパターンは決定打を欠く不確実な釣りだという認識しか未だ私は持てずにいるので、負け惜しみのような発言を耳にするたびに疑いが芽をもたげて来る。そのたびに、まだ覗けないでいる秘密の奥深くが気になって仕方ない。だから、やめられずに長く続けているのかもしれないが、飽きもせずによくやるよと自分自身呆れなくもない。

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ド迫力の一匹。この夜一番のサイズだった

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脂の乗った二匹のみキープした

 それでも、多くの釣り師がボウズで帰っていくなか、大体いつも釣果を得て、「ボウズだけは免れた」と胸を撫でおろしている人を見るにつけ、まったく手立てがないというわけでもないことに薄々気づいている自分がいるというのも確かである。じっさい、こういう攻略方法なら、まぁ、一つでも二つでも獲ることができるとか、大失敗をしでかすことは避けられるとか、そう言う蘊蓄もよく耳にする。
 ただ、それだって他の多くの人よりも高確率にシーバスを釣り上げることができるという程度のことであり、あれだけ目の前に餌のサヨリを食ってやろうと多くのシーバスが集まっているにもかかわらず、多く釣ったとしても数匹というのが実際のところである。もちろん、十も二十も釣れる珍しい日もなくはないが、そんな日にはそれこそ居合わせた人の誰もが釣果を得ているというありさまだから、何か世界中が狂ってしまっているようなものである。こんなふうでは釣れたという事実以外今後に何の確証も持てないし、あてになど到底できない。
 それでも、何かの参考になるかもしれないから、私の釣り仲間の自信を持って語るところをここに少し紹介してみたいと思う。

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 井原博一は、「海面を割って出たシーバスが、どちら方向に餌のサヨリを追って移動しそうかを予測して、その進行方向へ先回りして仕掛けを投入します。群で同じ方向へとサヨリを追って泳ぐシーバスに狙いをつけます。夕方まだ明るい時間帯なら容易に目で追えますし、灯りのある場所なら夜間も大丈夫です。確実に予想できるときにしかキャストはしません。もちろんはずすこともありますが、確信の持てる動きを発見したら躊躇せずそいつに向けて仕掛けを投げ入れますね。それでも予想がはずれたら仕方ありませんが、ぼくは居合わせたほかの連中よりは多くのシーバスを手にする自信が、まぁ、あります」と言っている。

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ミノーは14cm、サヨリの方が大きい

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井原博一、曰く。自分を信じて投げ倒せ!

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似たような考え方の者が釣ると結果も似通うか?どうか

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釣りたい一心で通い詰める。今日も明日も

 また、オレンジジャムのマスターの野村は、「バス用のビッグベイト(むろん、ビッグベイトその物でもかまわないが)くらいもある大きくてボリュウーム満点のルアーを天に向かってキャストするといい。出来るだけ高く投げあげる。シーバスがサヨリの群れを追いまわしている付近の海面に、そいつがドッカーンと降ってきたらどうなると思う。大きな音と水しぶきがあがって、たとえ闇夜の暗がりであってもスズキや餌のサヨリや釣りをする人間の気を大いにひくにちがいない。落ちてきたルアーに驚いて大量のサヨリが海面を乱して逃げ惑うこともある。そいつに狂喜したスズキの親玉衆がところかまわず食い散らかして、そのときついでに俺の投げ落したルアーにも口を使うって寸法さ。落ちた直後に反射食いすることも少なくない。しばらく動かさずにおいておくと食いつくこともある。とにかく、大きくてボリュームのあるルアーはシーバスに発見されやすく興味をひきやすい。だから、多くの人が眼前に多くのシーバスと大量のサヨリを確認していながら手も足も出ずボウズでその場を去ることが普通に起こったとしても、俺は断固釣る。一つでも、二つでも、釣って帰るさ。ちなみにこの戦法は、月の大きい夜で、海は凪いでいる方が釣果を得やすい。内緒だが、こっそりお前だけには耳打ちしておくさ」こうのたまうのである。

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何匹釣っても嬉しい。それがシーバスという魚だ

 また、今は故郷の静岡で釣りとメダカ飼育にいそしんでいる水野雅章は、「サヨリと同じかそれ以上に長くて細いフローティングミノーのリップを八割方削って短くし、海面直下をヨタヨタとゆっくり引いて泳がせる。ときに海面ぎりぎりを、V字波を起こさせながら極ゆっくり泳がせる。このばあい、ルアーは棒のように前進するだけでよく、餌のサヨリと、それを追いまわすシーバスが確認できる場所なら日中だろうが夜間だろうが灯りがあろうがなかろうが関係なくひたすらやりつづけるのがこの方法の肝というわけさ。ああいう一見してパターンも何もないような状況でも、時合というのがあって、シーバスがルアーに対して口を遣いやすい時間帯が必ずある。たぶん、まちがっていないと思う。それがいつ何時かはわからないけど、釣りに出たら最後、やり終えて帰るまでは熱心に同じことをやり通すことで釣果を期待する。こういう粘りも時として必要なのじゃないかな。とにかく、決め撃ちに徹するというわけ。自慢じゃないけど、サヨリパターンの釣りは不得意じゃないよ、俺は。まぁ、そう自慢じゃないが言いたいのさ」

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年じゅうシーバスを狙う水野雅章。仕留めたランカーは数知れず

 とにかく、みなさん、こういうふうに聞き書きしてみるとよくわかるが、自信ありげですな。自信満々と言ってもいい。まぁ、他にも興味の尽きない意見を多数お聞かせいただいたが、おもしろそうなのを数件ここに記述してみた。参考になるかどうかは不明だが、興味のある方は倣ってやってみるといいだろう。
 ちなみに私は地の利を生かしていつでも行きたくなったら出かけていける近場に的を絞って時間の許すかぎり毎日でも出かけていく。とにかく通いまくる。人よりも早く行ってたくさん回数を投げ、回数を巻き、付近を広く探っていく。心がけていることは、日中は少し速めに巻いて、夜間はほとんど動かないくらいにゆっくりミノーを泳がせる。ミノーは細身で長めのフローティングミノーをチョイスするようにしているが、日中に物凄くボイルしているのにアタリがないならジグを投入して表層を早巻きしてみることもある。沖の方でもボイルしているならミノーよりも格段に飛距離の出るジグは有利である。水深があればフリーフォールやテンションフォールさせてみるのも悪くない。向こうアワセに食いつくことも少なくないからだ。しかし、これでたまたま釣果を得たとしても完璧なサヨリパターンとは認めてくれないだろう。

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 このように決定打を欠くサヨリパターンだが、そのなかでも高確率で釣果を得られるシュチエーションというのがある。
 規模の大きい河川の河口部は満潮から潮が下げに転じると川の流れと相まって安定した流れが期待できる。河川から遠い場所では日によって潮の流れにちがいが生じるせいで釣果が安定しないが、河口部は大雨などの気象的要因を除けば潮汐表を参考に潮流が読みやすいというメリットがある。
 満潮時刻に釣り場へ着けば、そろそろ川から海へ向かって流れが生まれそうな気配が濃い。浮かぶゴミに目を凝らすと、暗闇のなか海へ向かってごくゆっくり下っていく。シーバスは向かい風を釣れだとか海面は荒れている方が好都合だとかいろいろ言われるが、関係ない。流れが生じ、流れに大量のサヨリがついているならもうそれだけでシーバスが釣れる確率は高いのだ。
このようにサヨリが季節になると一定の期間逗留する河口部を知っているのといないのとではサヨリパターンでどの程度のシーバスを釣ることができるかに差が出る。
 それが、地の利を最大限に生かせる場所なら集中して通ってみるべきだ。毎晩でも通う。仕事を終えたら家族の冷たい視線をものともせずに帰宅などは避け、あるいは帰宅しても飯を食ったら道具を積んで車を走らせる。今しかないと思って、通って、通って、通い倒すがよかろう。
 むろん、そのことが原因で皆さんのご自宅の表札が掛け変わったとしても私は責任を負わない。一家離散の憂き目を見ても私にかかわりはないのだから、その辺りは自己責任でやるよう願いたい。
 どのみち、行かないとシーバスは釣れない。ルアーは道具箱のなかに眠らせておいては意味がない。ルアーは海のなかに泳がせてこそシーバスを誘惑するのだし、もし食いついてくれたらしめしめというわけである。
 ではここで、「通い詰に通う」。これを実践して、いまなお家庭を健全な状態に保ちつづけている二人のつわものを紹介してみたく思う。この二人は釣りのテクニック以上に家族の不満を募らせないで回数釣りに出かけるという特殊技能の方がむしろ高く評価されているほどである。すなわち、この芸についてなら達人の域に達している。そう断言できるお二方である。(笑)
 では、登場していただこう。
 男爵こと三木一正。
 そして、DIY佐々木である。
 この二名の者は自宅から河口の釣り場が近いのをいいことに、競い合うように出かけて行って、平成十七年の秋から冬にかけて大変美味しい目をして仲間を大いに妬ましい気持ちにさせた張本人である。
 とくに、DIY佐々木は男爵に教わってやってみたらいきなり複数のシーバスが彼の投げたルアーに次々と食いついて、それで虜になってしまった。彼は当時、まだ道具を持っていなかったので男爵からの借り物でやっていたが、離婚の危機を招かない程度の金額におさえた道具選びと、離婚の危機を招かない程度に家庭サービスを心がけて毎晩のように時合と思われる時間帯を狙って釣行を重ねたところ、仕事が忙しすぎて釣行回数をやや減らせていた男爵に大きく水をあける成果をあげることに成功し、大いに鼻高々であった。
 平成十七年度は、年末近くには寒波のせいで水温が目に見えて下がってしまったので、河口域からサヨリが姿をさっさと消してしまった。なので、出だしのサヨリのまだ少ない日数を引いて計算すると約一か月余りでシーズンが終わってしまったことになる。
 その後、イワシやボラの子のイナも思ったほど多くはやって来ず、たまに釣れてもサイズがサヨリパターンのときとは比較にならないほど小さかったため、玄人肌の釣り師は足を向けなくなっていた。それでも、やりはじめて間のないDIY佐々木にしてみれば、とにかく釣れたらもうサイズはともかくそれだけでうれしくて仕方がない。一週間のあいだアタリすらなくても、「明日は釣れるかもしれないぞ」と彼だけは通い続けた。
 そんな努力の甲斐もあって、彼はおそらくシーズン中に五十匹ほどのシーバスを手にしたようだ。彼も数えてないし、誰も初心者の釣果など気にしないので、正確な数字は不明だが、もしかするともっと多くの本数を稼いでいるかもしれなかった。

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ベテランの男爵はいつもどおり沈着冷静

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やったぜ! と頬が赤らむ。アンパンマンか!

 海の浅瀬に向かってライトを照らせばサヨリが跳ねまわる。するとまだヤル気スイッチの入っていなかったシーバスが、「なんや、なんや!」とばかりに反射的に大きな口をあんぐりとあけて、もう闇雲に海水ごと餌のサヨリを吸い込みにかかる。
 こうなればしめたものである。潮が河口から海へ向かってメリハリを持って流れ出せば投げて巻くだけでシーバスが釣れるのである。これは、たとえば地磯でいい流れができたときと同じような確率でアタリが来て、釣れる。つまり、まるっきりサヨリパターンらしくないのである。それでも、ベイトがサヨリである以上はサヨリパターンのシーバスフィッシングの一形態だと言って何らさし障りはない。
 DIY佐々木は男爵から定評のあるルアーと、その扱い方について詳しく聞いていたので、もう釣れて当たり前だと信じ込んでしまっている節があった。それで、アタリさえもない日があると、彼としては納得がいかない。餌のサヨリがたくさんいてシーバスがそいつをつけ狙っている状況で、「おれの仕掛けを見切るはずがない!」と頭から信じ込んでいるのである。
「あのなぁ、そう毎回いくたびに釣れると思ってもらっては困るぜ。もし、そんな簡単に釣れるなら、誰も飽きてしまってシーバスなんか狙わないよ」
 男爵がそう言って聞かせるが、佐々木本人は首をかしげるばかりであった。

 よくよく考えてみるに、この河口域のサヨリパターンが海岸から狙うばあいに比較して当りのいいわけがイマイチよくわからない。ただ、同じタイミングで流れが生じる河口域なので、餌を追いまわす時間帯がはっきりしていて、そのときならボラの子だろうがイワシだろうがサヨリだろうが餌になる小魚がおりさえすれば関係なく口を使う。そうとも言えなくはないが、海のばあいは盛大なボイルが目の前にくりひろげられていてもルアーにはまったく無反応だということが普通に起こるので、ボイルした付近にルアーを投げて巻けば高反応を見せてくれる河口域のシーバスと海のワンドなどにサヨリを追い求めて回遊してきたシーバスの癖のちがいがどこにあるのかを、やはり誰も明確には説明しきれないにちがいない。

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この夜、男爵は次々といいサイズを釣りあげた

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ざっとこんなものさ、と男爵もにんまり

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ボイルが遠かったので飛距離を稼げるルアーで攻めた

 まだ年齢的にも若いDIY佐々木は、今年度も秋が深まりを見せるころになると得意の河口域に陣取って、おそらく毎夜のごとくシーバスを狙うことだろう。じつは、こういう熱心な新人は大事にしなくてはならないのであって、経験が浅いからこそベテランがやらないようなことを考えついたりもするので、どうして目が離れなせない。
 じっさい、彼は男爵に教わって揃えたルアーのほかに自分で選んで買ったルアーを複数用意していたが、そのルアーを使って私の見ている前で大きなシーバスを何匹か仕留めて見せた。
「なぜそれを買った?」
「店で見ていて欲しくなったからです」
「なぜそんなに速く巻く?」
「流が緩いときに速く巻くとアタリが来ます。アタリだけで終わることもあるけど、かまわず巻いていたら知らない間に乗っていることもあります」
 そういう使い方をすると好成績につながるルアーかと気にはなったが、いまだ私はそのルアーを購入していない。
「そうか」と私は彼の話すままに聞いて、うなずいた。
「抜き打ち強盗的ではありません。しっかりと口を使って来ます。流れが緩いときにそうなることが多いみたいです」
 まぁ、そういうこともあるのだろう。
 彼は概ね細身の長いミノーをチョイスしてサヨリパターンの攻略につなげているが、緩い流れでは角っぽい形状の少し太めのものの方が、結果的に効果が高いとみているようだった。
 私とは考え方がちがうが、釣れたら正解だ。結果オーライというところである。
「じゃあ、人は人だということにして、おまえはどうなの?」
 そう尋ねられたら私はどう返答するか。
 むろん、私はニヤニヤしながら何も語らない。
 河口のサヨリパターンではルアーのチョイスが結果の半分以上を左右する。私の意見が正しいか否かは別にして、ルアーの種類や色には普段無頓着な私でも、やはりルアーの選択には気を使う。それが、河口域のサヨリパターンのシーバスフィッシングの肝であり、あとはもうシーバスがいそうなところに投げて巻くだけである。

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釣って釣って釣りまくるDIY佐々木。そのくらいにしとけ!

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土産に2匹キープした

 ただ、厄介なのは、どこの河口でも通用するルアーを私は発見出来てないことである。恐らくそんな虫のいい話はないにちがいないが、かなり共通してよく釣れるルアーがないとはいえない。しかし、いまのところ河口が変わればシーバスに好かれるルアーも変わるようだということしかはっきり言うことができない。
 しかも、そうだとしても、シーバスが夢中で食っているのはサヨリである。サヨリを食っているシーバスを狙って釣行するのだから当たり前だが、それなら同じタイプのルアーに同じように反応してもいいはずではないか。
 けっきょく、その辺のところがわからないのである。要するに河口域にしろ、海にしろ、サヨリパターンは難しいとか言う以前に、決定的に決定打を欠く。そのことだけが決定的にわかっていると自負できる唯一の事実なのである。
 以上。
 たいして参考にならなくて、すみません!

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この夜、DIY佐々木は7匹仕留めた

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これぞサヨリパターンの醍醐味。今シーズンも大いに期待したい

 では、みなさんも、よい釣りを!


*今回の取材とは無関係の写真も何点か掲載しています。

【今日の使用タックル】

ロッド : UFMウエダ CPS-932SX-Ti BORON
      UFMウエダ CPS-962EX-Ti BORON
      UFMウエダ ソルティープラッガー962
リール : ダイワ イグジスト2510
      ダイワ セルテートハイパーカスタム2508
      ダイワ トーナメントZ2500
ライン : ユニチカ ショアゲームPEX8 0.8号、1.2
      ユニチカ シルバースレッドソルトウォ-ターPE20lb
      ユニチカ シルバースレッドソルトウォーターⅡ12lb
リーダー: ユニチカ シルバースレッドminiショックリーダーN20lb、25lb

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