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釣行記

釣行レポート

2018年5月15日

府中湖にて

 昭和の歌が人気らしい。
 先日、音楽の寄合に顔を出したら、全曲オリジナルでライブをおこなうと聞いていたのに、松田聖子とアン・ルイスもやりたいという。
「えらい乗り気やけど、どうしたの」と私。
「もっと古い曲もウケてるようですよ、昭和が」とベーシスト。
 まぁ、そうおっしゃるならそれもありかと黙って様子見していると、どうして大いに不満が募った。
だいたい、松田聖子と、声の裏返る箇所が全然ちがう。
そこで、平成の歌姫ちゃんに注文をつけると、
「ちがうって言われても…」と何だか不服そうである。
 だから、こことここ、それと、ここ、ここ、ここで、裏返るわけよ!
・・・・・
 煮詰めようとすればするほど意見が噛み合わない。
 嫌な空気が狭い空間に満ち満ちて来るのを感じずにはいられなかった。
 雰囲気を察してか、あるとき、バンマスが言った。
「なんだかんだ言い合っても埒があかない。どうです? このへんで一息いれませんか」
 のぞむところである。少し小腹も空いて来た。
「じゃあ、少し早いけど食事休憩ということで、行きますか」
 ベーシストくんの「行きますか」がちょっと気になったので、「行くって、どこへ」とストレートに訊き返した。
「府中湖にバスでも釣りに行きませんか」
 ベース弾きは、小声で念押しするように言った。
 道具は積んでいるのかと尋ねると、同じことを訊き返えされた。
 もちろん、マイカーに道具なら積んであるさ。誘われなくても帰りにちょっと寄ってデカバスをごっつぁんですしちゃう予定でいたからな。
 では、ということで、昼食はコンビニのパンと牛乳で手早く済ませ、一路、府中湖に向け車を走らせた。

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今回使用したライン

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超働き者のピーナッツⅡ、バスハンター

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またピーナッツか、って言われても気にしない!

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足場が高いなら強めのタックルがお勧め

 私たちは東岸の狭い道沿いの広まった場所に駐車して、雑木の下の踏みつけ道をダム湖の畔まで慣れた足取りでくだっていった。
 水辺は明るく、光の子の躍る湖面の沖では鵜が餌の小魚を捕ろうと素潜りをくり返していた。前に訪れたときには、鵜が餌を捕っている辺りを競技用のカヌーだかカヤックだかが湖面を滑るように行ったり来たりして、対岸付近にはバス釣りを楽しむ小型のボートが散見できた。どのボートも釣れているようには見えなかったが、いずれにしても対岸は遠くて、たとえバスとやり合っていたとしても、こちらから確認することは容易ではなかったろう。
「あれっ。それって例の」と交換中の私のルアーを見てベース弾きが言った。
「こいつのことかい」
「ええ。それ、ずいぶん昔から店頭で目にするけど、いい仕事するって評判だけど、ほんとうにいいみたいですね」
「もう今じゃ切っても切れない仲ってやつよ」
「そんなに」
「最近じゃ、こいつのこと、相棒なんて呼んだりしている」
 ベーシストくんは前々から水面の釣りにご執心で、いつかカタログで見たことあるような奇抜で高価そうなトップウォータープラグをそれ専用の竿で投げていたが、雑木の青葉が覆い被さるその岸際の水面へと上手にキャストし終わると、波紋が消えるまで待ってからちょいと誘いをかけた。その後、そのまま放置して息を詰めて待っていると、もう無理だろうというころになってバスが下から水面のルアーめがけて突き上げて来た。
「あっ!」と私は思わず声を漏らした。
 しかし、彼は落ち着いていた。
 食い損ねたかと私は早合点したが、直後にバスが再び浮かんで来て静かに口をあけてルアーを横咥えすると、そのまま浅い角度を保ちながら水の深みへと沈んでいこうとした。
 彼は、落ち着いてアワセを入れた。楽にやり取りして、あっという間に手元へ寄せて口の端を指でつまんでバスを持ちあげた。
 大きくもなく小さくもない。尾鰭の先までどこにも傷のない、きれいなバスだった。
 彼は何食わぬ顔で言った。
 何を言うのかと思ったら、「危なかったですね」
「俺には余裕に見えたけど」
「そうじゃなくて、『男がつんのめって、前のめりにお願いしますと言い寄ってくるくらい、たっぷりその気みせて歌えよ。どうせやるなら!』。あれって、きわどいですよ。時勢が時勢ですから」
「なんだ。セクハラか」
「パワハラかも」と彼は笑って答えた。
そして、ちょっと何か考えるふうな表情を見せたあと、釣ったバスを水にもどした。
私はおどけてみせた。
「おいおい。セクハラのパワハラかよ。完全にアウトじゃねぇか」
 彼は、洗った手をヨモギの葉でさっと拭うと、端正な顔立ちの若々しい面を晴れて眩しい昼さがりの空へと向けた。
「アウトはいいなぁ。麻生さんみたいで」と彼は言って笑った。
「どうこなしていくかは後々の話だろ。オリジナルを理解しないで、好きの一心から勝手に熱あげて歌っても、そのまま聴き手が受け取るともかぎらない。歌謡曲だからって甘く見てはいけない。あんがい耳が肥えているからな、とくに昭和の歌好きは。あっさりと一筋縄ではいかないぜ」
「それはそうですけど、いつになくきびしいなって」
 含みのある彼の言い方に、そうかもと半分苦笑しながらリールをラフに巻いていると、足元近くで私の手にいい感触のアタリが来た。
「ほら、来た。どうよ、なぁ、ドンピシャだろ? おおっ、こんちくしょう、走る、走る!なんだぁ。しぶとくやり合うつもりだな!」
 どんどん沖へ、あっちへ向かって泳いでいく。頭をこちらに向けさせようにも、バスの馬鹿力に為す術がなかった。
「この野郎! パワハラやりたい放題かよ」
 私が言うと、
「重そうだな」とベース弾きが受けて答えた。
「すぐ手前の、急に深く落ち込んでいく、その少し向こう辺りで食いつきやがった。硬い底のカケサガリにコツンと相棒の奴、鼻面をぶっつけたかと思ったら、どっこい同時にバスが口を使っていた。おっしゃるとおり、軽くはないぜ!」
 バスは仕掛けを引いて水中を力強く走った。細仕掛けで臨むことが多い私は癖としてドラグを緩めに設定していたこともあり、リールのスプールからラインを引き出されることもしばしばだった。
 それでも、私はバスのしたいままにさせておいた。主だった障害物もない場所でアンブッシュ10lbという私にしてはやや太めの強力なナイロンラインを用いていたこともあって余裕綽綽という感じでバスとやりあえた。いちど沖へ仕掛けを引いて走ったバスは、引きもどされるとき水を脱いで活きのよいジャンプを披露した。
「太い」と、それを目の当たりにしたベース弾きが端的に言った。
 たしかに、太かった。
「もしや」と、私にある種の期待を抱かせたのは言うまでもない。
 そう思うほど引きの重量感がいっそう増すように感じた。
 前述のとおり強めの仕掛けなので、切られることはないと確信していたが、フックが心配だった。ピーナッツのフックは店頭にぶら下がっていたときについていたものを交換せずにそのまま使っていた。これは相当細いので、無理すると伸ばされてしまいかねない。そのことが私を慎重にさせた。
 私は、やり取りが長引くにつれ更に少しだけドラグを緩めた。
 その後も、緊迫したやりとりがつづいた。
 ようやくバスが音をあげて水辺へと寄せられて来るまで、ずいぶん長い闘いだったように感じた。
 バスが姿をあらわにすると、私は強気に出た。一気に、しかし、複数のフックがしっかりバスの口を捕えていることを確認したうえで、ロッドのパワーを利用して岸まで寄せ切った。

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やった!

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捕った!

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相棒ピーナッツⅡを捕えたバス。騙されちゃったね

 駆け寄ってバスの口の端を指でつかんで持ちあげた。
ずっしりと重たい。
 ランカーだ、まちがいない。私は小さくガッツポーズを決めて思った。
 ところが、ベースくんがメジャーを持っていたので計測してみると惜しくもランカーサイズに1cm足りなかった。それでも、49cmの堂々たるバスである。
 いい歳をして私はベースくんにハイタッチを求め、「やった」、「やりましたね」と水辺でお互い小躍りをして喜びあった。
 二人とも自分の好む釣り方で、バスを仕留めたのだ。
 しかも、時間的制限のあるなかこの場にやって来て、首尾よくバスを手にした。嬉しいのは当然のことであった。

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迫力のあるボディにうっとりさせられた

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今日はこのくらいにしとくか!

「そろそろ行きますか」と時間を気にしてベースくんが言った。
 もう既に釣り師の顔ではなくベース弾きの表情にもどっていた。
「缶コーヒーでも奢るよ」と私は言った。
「俺が奢りますよ」
「いや。ホールインワンした奴が奢るだろ。ふつうは」
「では、遠慮なく」
 私は彼のうしろについて歩いた。傾斜のきつい踏みつけ道を来たときとは逆にたどって駐車場所までもどった。
 寄合の帰りに、もう一度ここへ立ち寄って釣りをしてやろうかとも思ったが、意外にも擦り合わせが長引いたせいで、こちらの思惑どおりには事が運ばなかった。
 残念だが仕方ない。
 いったん勝負はお預けということで、自身の運転する車で夜道を帰宅の途に就いた。

【今日の使用タックル】

ロッド : ノリーズ ロードランナーボイスHB680L
リール : シマノ スコーピオンDC7
ライン : ユニチカ シルバースレッドアンブッシュ10lb

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