繊維事業

　ユニチカ株式会社は、放射線に対し遮蔽性を有する高強度防水シート材を開発しました。今後、放射線に対する遮蔽要求のある、除染物の仮置き場や保管場所、あるいは運搬工程で使用される袋体やシートとしての用途開拓を図ります。
　今回開発した放射線遮蔽高強度防水シートは、基布に放射線遮蔽性があり、かつ人体に対して安全性の高い無機材料を高濃度に練り込んだ繊維を使用し、同じく放射線遮蔽性を有する無機材料を高濃度に練り込んだ難燃性樹脂で加工した厚さ約2mmのシート材です。

１． 開発の背景について
　現在、一般的に使用されている放射線遮蔽シートは、材料にレアメタルを用いるため、遮蔽性の効果は得られるが高価であり、また補強材がないために機械的強度が弱く、難燃性、加工性が乏しいために用途は限られていました。このような中、高い性能および物性を持ちながら、コストを抑えられる製品への要望が高まっています。 　このニーズに応えるべく開発した放射線遮蔽高強度防水シートは、高い放射線遮蔽性、防水性、防炎性に加え十分な強度も併せ持っており、適用用途が幅広いシート材として期待できます。

２．放射線遮蔽高強度防水シートの概要
　放射線遮蔽高強度防水シートは、繊維の生産から基布の製織はユニチカが行い、樹脂加工につきましてはカンボウプラス（株）が行います。このシートは、高い放射線遮蔽性、防水性、防炎性があり、瓦礫等の運搬・保管等の現場での作業において、十分に使用に耐える強度を持たせることができます。また、柔軟性があり容易に曲げることができるため、ロール状で現場に運搬し、広げて使用することが可能です。さらに、熱風や高周波での溶着縫製も可能であり、用途や現場に応じて大型のシートや袋体などの様々な形状に加工することもできます。

　放射線の遮蔽率としては、線源が100k電子ボルトのエックス線であれば、このシート1枚で60％、5枚重ねると95％以上遮蔽します。さらに、線源セシウム137を用いた662k電子ボルトのガンマ線に対しても、このシート材10枚で約16％遮蔽します。これら遮蔽率は、地方独立行政法人東京都立産業技術研究センターの測定結果（24依開バ第173号及び24依開バ第116号）から確認されています。
　このように放射線遮蔽高強度防水シートは、要求される様々な遮蔽性能に対し、1枚から複数枚積層して使用することで、各用途に柔軟に的確に対応することができます。

３．今後の展開について
　今後は、放射線を発する瓦礫、残土、残灰などの一次保管場所、仮置き場あるいは運搬において放射線被爆を軽減するための袋体、シート等への用途展開を図ります。

以 上

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