ニュースリリース 高分子事業

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高分子事業

2015/11/ 4

リチウムイオン電池の熱暴走を防ぐ、電極保護膜形成技術の開発について <簡便プロセスでナノ多孔膜を形成できるポリイミドワニス>

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 ユニチカ株式会社(本社:大阪市中央区 社長:注連 浩行)は、リチウムイオン電池(LiB)の熱暴走対策に有効な耐熱性保護膜を、極めて簡便に形成できる技術を開発いたしました。ワニスを電極上に塗工し、熱処理するだけのプロセスにより、数百ナノメーター径の微細孔を有するポリイミドのナノ多孔膜を積層一体化することが可能です。さらにこの技術は、燃料電池の電解質担持膜や高周波デバイス基板の低誘電率膜等の幅広い用途に適用することができます。

1.開発の背景
 LiBにおける発火等の原因となる熱暴走を防ぐ方策として、耐熱性のセパレータを用いる方法が開発されていますが、より安全性を高めるための技術開発が求められています。当社では、電極そのものに200℃以上の耐熱性を有するポリイミドのナノ多孔膜を形成させる方法に着目しました。
 従来、ポリイミドのナノ多孔膜を形成する技術として、気孔形成用にシリカ等のナノ微粒子をテンプレート(鋳型)とし、これを配合したワニスを基材に塗工、熱処理して被膜を形成した後、フッ酸等で処理して気孔を形成させる方法が知られていましたが、量産が難しい上、廃液の発生等環境適合性からも問題がありました。

2.特長
 新たに開発したポリイミドワニスは、基材に塗工し、熱処理するだけで、ナノ多孔膜を形成させることができます。従来法との対比を図1に示しますが、高価なナノ微粒子や廃液となるフッ酸等を用いることなく、極めて簡便かつクリーンなプロセスであることから、大幅なコストメリットが得られます。

図1)ポリイミドのナノ多孔膜形成法の比較

 LiB電極表層に、ポリイミドのナノ多孔膜を積層一体化した例を、図2に示します。耐熱セパレータ等と比較して、電極と耐熱保護層との密着をより強固に確保することができ、LiBとしての安全性をより高めることができます。
 本用途については、岩手大学との共同開発にも取り組んでおり、詳細につきましては、11月13日に名古屋市で開催される第56回電池討論会において発表いたします。

図2)LiB電極/ポリイミド-ナノ多孔膜積層体(左:断面、右:多孔膜表面)

3.他の適用分野
(1)燃料電池の電解質担持膜
 燃料電池のプロトン伝導性ポリマ-電解質の担持膜として、多孔質のフッ素樹脂膜を用いる方法が実用化段階にありますが、信頼性を高めるため、機械的強度や寸法安定性等の向上が求められています。今回開発したポリイミドワニスから得られる多孔膜は、高い耐熱性に加え、良好な寸法安定性を有していますので、より信頼性の高い電解質担持膜としての利用が期待されます。

(2)低誘電率絶縁膜(基板・電線被覆材)
 電子機器の高性能化による信号の高速・大容量伝送化に応えるために、基板材や電線等の絶縁被覆膜の低誘電率化が求められています。ポリイミドのナノ多孔膜に形成された気孔により、非多孔性ポリイミド膜に比べ誘電率を1/2程度にまで低下させることができます。

4.特許出願
 関連特許含め約20件出願済みです。

5.今後の展開
 今回開発したポリイミドワニスに加え、多孔フィルムとしての展開も進める予定です。
 当社ポリイミド事業においては、他にも各種組成の「Uイミドワニス」やポリイミド粉末「Uイミドパウダー」等を取り揃えており、今後も顧客ニーズにお応えできる材料開発に取り組んでまいります。

以 上


<本件に関するお客様のお問い合わせ先>
ユニチカ株式会社 樹脂事業部 機能樹脂第三グループ
TEL:0774-25-2209
E-mail: uimide@unitika.co.jp

<本件に関する報道関係からのお問い合わせ先>
ユニチカ株式会社 IR広報グループ
TEL:06-6281-5695


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