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釣行記

釣行レポート

2011年7月〜9月

香川県瀬戸内海のアコウ(キジハタ)事情7月〜9月

魚類に詳しいデーブ鎌田の話によると、香川県沖で獲れるアコウには2タイプあるという。これらを魚介類を扱う業者間で取引するばあい、いっぽうをアコウ、もういっぽうをノミノクチと呼んでいるそうだ。
しかし、このノミノクチだが、日本の魚類図鑑でみるノミノクチ、つまり本州の北のほうに多く棲むハタの仲間のノミノクチとは少しちがうという。まず、斑点のばらつきぐあいや色がちがうし、体の特徴もちがっていて、魚の目利きがみれば容易に判別できるそうである。
私は北のほうに棲む本家のノミノクチの実物を見たことはないが、瀬戸内に棲むノミノクチならこれまでに何尾か釣ったことがある。最近では、今年の7月に庵治半島の地磯で釣りあげた。

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庵治漁港周辺もロックフィッシュの宝庫だ。

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わりと知られていないが香川県東部でもアコウは釣れる。

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ワームはホグ系がメイン。

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根魚の多い庵治半島。浜も見過ごせない。

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地磯の浅い場所で日中に釣れたノミノクチ。

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浅い岩場は根がかりを軽減できるテキサスリグが有効。

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庵治半島の地磯でキャッチしたノミノクチ。

この魚は、斑点はアコウのようにオレンジ色をしているが、アコウにくらべて頭が大きく、口も大きく感じられ、頭の付け根からぐっと盛りあがるあのアコウ特有の体高に乏しい。どちらかというとやや寸胴気味に尾のほうへとゆるやかに流れるスラッとしたボディに特色がある。
「それは、地域による個体差が顕著なだけで、じつはアコウなのだよ」
そう説く人も少なくないが、デーブ鎌田に言わせると、あきらかに似て非なるものであるそうだ。
そして、アコウもノミノクチも釣ったことのある私も、デーブ鎌田の意見に賛成である。遺伝子レベルではどうか知らないが、分類学上学者がどういう判断を下すのか、それも私はよく知らないが、姿も味も違うし、それ故に市場で取引される価格が全く異なる以上は、少なくとも我々釣り師レベルの判定するところは、この得体の知れないアコウでないほうのアコウは、やはりアコウとは認めないほうが自然であろう。なぜなら、私たち釣り師は学者の側よりも漁師の側に近い存在なのだから。

さて、この瀬戸内のノミノクチであるが、元来なかなか釣ることのできないアコウにも増してそう簡単に岸から釣れる魚ではないので、滅多にお目にかかれるものではないが、アコウと同じく初夏のころ産卵のために海岸近くへと寄ってくるらしい。なので、夏場にヒットする確率が高いといえよう。これもデーブ鎌田の受け売りなのだが、彼の話を聞いていると、いちいちそのとおりだとうなずかされる節が多い。
たしかに、記憶をたどってみるかぎり、私が釣った何尾かのノミノクチは梅雨から8月いっぱいに多いようだ。アコウは梅雨前から場所によっては年末近くまで釣れるが、ノミノクチは夏場にちょくちょく釣れるだけだという印象が強い。むろん、そうだと断言できるほどの数のノミノクチを釣った経験があるわけでない以上は、「それは偶然かも知れない」そう言われてしまえばそれまでなのだが。
アコウにくらべて瀬戸内のノミノクチは、ベイトを追従する距離が長い。相当長い距離追ってくる。しかも安住の地であるボトムを離れて中層、時と場合によっては表層付近まで追っかけてくる。仕掛けのワームに対しても同様で、浅場では表層で食ってきたことも稀にだがあった。
すると、
「アコウは巣穴の付近を容易に離れようとはしません。船で上から釣ってもそうです。ばあいによっては上へ回収されていく仕掛けに下から追って来て食いつくことはありますが、中層や表層をリトリーブしているときに食ってくるなど稀も稀でしょう。そこへいくとノミノクチは食うためなら躊躇せずに底を離れて果敢にベイトを追って横移動も辞さない。このことは釣りを本職とする漁師の話とも一致します」
そう説くデーブ鎌田の見立ては正しいことになる。
そして、これは私の感じるところであるが、本来、昼の魚であるアコウ以上に瀬戸内のノミノクチは日中にもよくワームを捕える。
そして、香川県の瀬戸内海沿岸では、日中にアコウやノミノクチを狙って釣行を重ねるゲームフィッシャーマンは極稀である。
どうしてなのか理由はよくわからないが香川のアコウ釣り師の多くは夜行性なのである。

ついでに釣り方を説明しておくと、アコウは岩礁地帯、根の点在する砂泥地や堤防の基礎部分の穴や窪み、石積み波止の根周りに多く、ノミノクチとアコウは棲息圏がほぼ重なるとみてよい。

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スピニングタックルを多用するのでPEラインを多用。

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実績の高いフォグ系ワーム。

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穴を好むアコウだけに堤防のテトラ地帯も見逃せない。

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漁港の奥の船溜まりにもアコウはひそんでいる。

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波止場は石でごつごつした足元の基礎部分も丁寧に狙う。

ただ、アコウは底からかけ離れた層に仕掛けを通しても釣果はあまり期待できないが、ノミノクチは中層を底に対して平行に引いているときにもヒットする確率がわりと高い。むろん、アコウもノミノクチもリトリーブのほかリフト&フォール、ボトムバンピング、シェイク&ステイ、流れに任せて底に仕掛けを漂わせる「ほっとけ釣り」などにも反応がよい。しかし、リフトするのも、ボトムバンピングで誘うのも、シェイクを加えるのも、じつは海底の障害物を交わす行為がそのような誘いとして現れるだけで、じつは根掛りさせずにすむなら底をゆっくりズル引きするだけでアコウもノミノクチもじゅうぶん口を使ってくれる。

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リーリング中にアコウがヒット!。

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パワーシャッド4inに食いついたアコウ。

そして、これら多彩な誘い方のほかに、もう一つの選択肢である「誘わない、何もしない」という誘い方が近年注目されるようになってきた。むろん、最初からいっさい誘わないというのではない。ロッドを巧みに操って誘ったり底をズル引きしたりするのをちょっとやめて、つまり手を休めて、何もせず放っておく時間を作ってやるのである。よく聞く用語の、「ステイ」である。これが意外によく食う。では、どのくらいの時間ステイさせればよいのか。これは時と場合によるが、相当長い時間仕掛けを放置していても食ってくることが経験上わかっている。ストップウォッチではかったわけではないが、おそらくステイ開始後30秒ののちにパクッと食いついてきたことがあるのは確かだ。ある夏の日の夕刻、腹の減った私は仕掛けを投げ込んだロッドを堤防の上に寝かせてパンをかじっていた。これは、餌釣りでいうところのブッコミ釣りそのものである。ただ、ブッコミ釣りと少しちがうのは仕掛けの先についているのがカニやエビなどの生きた餌ではなく擬似餌のワームであるという点だ。まさか、これにアコウが食いついてくるとは夢にも思わなかったので、ロッドが海のほうへと引かれて動いたときには何事が起ったのかすぐには理解できなかった。それでも、私は海に仕掛けを盗まれないよう咄嗟に立って行ってロッドを素早く手で押さえた。その後、竿先を上げて仕掛けを軽く引っ張ってみると、グッと押さえ込むようなアタリがきた。魚だとわかった。私は儲けたとばかりに、そこで強くアワセを入れた。まさか、ほったらかしにしておいた疑似餌のワームに食いつく魚がいるなんて、「なんて間抜けなやつだ!」と、やり取りしながら吹き出しそうになったりもしたが、やがて海面を割って出た魚がアコウだと知って私は少々泡を食った。アコウは海面に浮くと顔や体を激しく振って暴れることが多い。このとき鈎が口からはずれて逃がしてしまうことが少なくないのだ。だから、アコウを確率よく獲るには、アコウが海面に顔を出す直前までに、こちらとしてはすでにもういつでも抜きあげの出来る状態を整えておかねばならない。足場の高い堤防では、とくに注意が必要である。

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遠投した仕掛けにアコウがヒットした。

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喰い渋るなかどうにかゲット。キャスティングで広範囲に探った結果コウ。

まあ、このときは、無事取り込んだわけだが、それまでアタリもなかった釣りが、その後一変した。仕掛けを底に長くステイさせることでアコウが口を使うようになったのだ。
そして、その日、運よく私は3尾のアコウを手にすることができた。
しかし、このアコウという魚。食わないときには頑として食わない。底まで潜って行ってこの目で確かめたわけではないが、おそらく鼻面に餌が落ちて来ても気が乗らないと決して口を使おうとしないタイプの魚だと見てまずまちがいなかろう。あの偏屈極まりないカレイと同じような習性なのにちがいない。まったくもって釣り師泣かせの気難しい魚である。

それでも、このアコウという魚は居心地のよい巣穴を見つけるとその場に居つく習性があり、しかも、夫婦魚といわれるようにペアで住み着くことで知られている。これも潜って実際に見てきたわけではないので断言はできないが、「雄が釣れると、次また雌が食いつく」と言われるように、ペアでいるというのが定説となっている。
むろん、先に誰かが釣ってしまっていたら、その巣穴で釣れるはずはないのだが、住みよい巣穴はどのアコウにとっても住みよいらしく、空き家になるとあとからあとから引っ越してくる。だから、釣り師は釣りのテクニックを磨くことも大事だけれど、アコウの巣穴をいくつおさえているかで勝負が決まるようなところがあるので、アコウの魚影の濃いエリアに足しげく通って、たえず巣穴の新規開拓を推し進める必要が多分にある。実際、通いに通っていると足元近くの同じ場所でたびたびアコウが釣れることがある。そういう場所はなるだけ人には教えずに秘密にしておきたいものである。

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良型をゲットした山田さん。

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アコウをキャッチした佐藤さん。

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アコウをゲットした三木さん高松市内では大きい方だ。

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こんな小さなのもよく釣れる。弱らないうちにリリースしよう。

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このサイズになると引きは強烈。

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筆者が生まれて初めてワームで釣った記念すべき1尾。

たとえ、
「教えろよ。なぜ黙っている。この腹の黒いやつめ!」と唾を飛ばして誹られようとも、やはり黙っておくがよい。
ちなみに、香川県の瀬戸内海沿岸では、西部、すなわち西讃地区にアコウは多く棲息している。ノミノクチも同様である。

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移動しやすいように道具はコンパクトにまとめる。

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ウバメガシのなかを抜けて地磯へと向かう。

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アコウの宝庫である荘内半島。ウェーダーを履いて地磯を歩いてみるのも面白い。

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むろん、島、沖堤防は魚影が濃い。渡船を利用するのも手である。

【今回の使用タックル】

ロッド : ノリーズRBD610MS
リール : ダイワセルテートハイパーカスタム2508
ライン : ユニチカナイトゲームザロックPE 16lb (1.2号)
リーダー : ユニチカシルバースレッドショックリーダーFC 20lb
        ユニチカアイガーIIIスーパー 3号

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