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釣行記

釣行レポート

2012年3月4日

落合谷のジュエルトラウト

落合谷は富郷ダムにそそぎこむ銅山川の一支流である。たいした規模の沢ではないが、ダムとの合流点からほんの少し上流へ向かうだけで、もうその流れは荒い岩を配した源流の相をおびてくる。魚影が濃いのは、流れが分岐する前後辺りで、とくに梅雨明け以降は良型も混じる。
さきにも述べたがこじんまりした沢なので、たとえば餌釣りの人が足しげく通うとすぐに釣り荒れして釣れなくなってしまいそうに思うが、それがどうして、夏場も、それ以降禁漁直前まで、出かけて行くたびけっこう遊ばせてもらえるので、一日のうち多く時間を割けないときに高速道路に乗っかってすっ飛んで来ることが少なくない。
ようするに交通の便がよくて、入渓が楽な、ちょっとした私の遊び場なのである。
梅雨ころからは、むろん気温の上がる白昼の釣りはよろしくないので、小雨でもないかぎりは夕刻にやって来て独り気安く竿を出すのだが、長年慣れ親しんできた釣り場だというのに、早春の3月に訪れるのは今回が初めてである。なんだか不思議な気もするが、初めてなのであった。
さて、釣行当日の3月4日(日)だが、この日は、雨上がりの曇空の下で2時間程度釣りをした。
この日も時間に余裕がなく、それでもどこかの渓流でアマゴを釣りたいと思ってやって来た。
釣り場には、午後3時前に到着した。
やって来る途中、雨がぱらつくことがあって、「春先の夕方に雨だと鬱陶しいな」なんて少し暗い気分にもなったが、どうやらその心配はなさそうだ。道路の脇に車を寄せて流れを覗き込んでいると、ぱっと辺りが明るくなった。西陽が雲のたえまから洩れて来る。
これに気をよくした私は、車から道具を取り出して、さっそく仕掛けを組みはじめた。
ラインは、シルバースレッドトラウトクリアー4lb、リーダーは用いずスナップを介して小型のフローティングミノーをセットした。
消防活動の際にポンプ車に水を素早く引くために設けられたコンクリートの階段を使って降りてみると、かなり増水していた。最近、雨がよく降るせいかとも思ったが、山の奥の方に消え残った雪が、春めいた陽気のせいで解けだして、さらに流れを勢いあるものにしているのかも知れなかった。じっさい、澄んだ流れは、よくみるとわずかながら乳色の濁りをおびている。これは、雪代の徴ではないか、そうであるにちがいないと思われた。
ダムのバックウォーターのすぐ上流側には大きなプールがいくつかあるが、時間の都合で釣るのはよして、降りた場所から釣りあがることに決めたが、その最初の流れでコツッという感じのショートバイトがあった。落ち込みの流れにミノーを投げ入れて、白く泡立つ流れの下を釣っているときにアタリが来た。フッキングしなかったので、そのまま誘いつづけてみたが、その後、無情にもアタリはなかった。
それから、微妙に角度を変えたりして数回ばかり攻めてみたが、反応がなかったので、その場を見切って上流側のポイントへと歩みを進めた。
ところが、次のポイントでも、そのまた次のポイントでも、とりあえずちょっかいを出してはくるが、顎を鈎の先が引っ掻くばかりで一向に釣れてくれない。これには、少々イライラさせられた。
その後も、夏場によくヒットする勢いのある浅い流れの場所ではアタリもなかったが、やや水深のあるゆったりした流れの中層にミノーを躍らせてみると、やはり明確なアタリがラインからロッドへ、手元へと送られてきた。意識して即アワセを試みてみたが、元来反射神経の鈍い私には、どうしても最初の1尾をものにすることができなかった。
ここに来て、私は少し焦りをおぼえはじめていた。夕方にやってきた私に、「そのうち食うさ。なあに、心配無用さ」などという悠長さなどかけらもなかった。日が暮れるまでに何としても釣って写真を撮って気分よく帰路につきたかった。追っては来るのだ。何度か魚影をこの目にとらえもした。アタリだって何度もあった。
しかし、釣れない。
私は、いったん林道まで出て、釣りはじめの場所まで後もどりしてみた。理由は簡単でアタリの最も多い区間だったからである。この付近でもういちどルアーを交換して釣ってみたかった。私はミノーをあきらめて小型のスプーンで釣ってみることにした。
「これなら口を使わないわけにはいかないだろう」
さっそく、落ち込みの流れにスプーンを投げ入れてみる。うまく落ち込みの流れに乗ると、いかに軽量のスプーンといえども一瞬にして底へと運ばれていく。頃あいをみて小刻みに誘いかけてみると、ロッドの先がお辞儀するほど明確なアタリが来た。とくにアワセを入れなくても、グリップをギュッと握りしめるだけでフッキングした。
「やった!」と私は声を漏らした。
しかし、大きくないようで、激しい抵抗もみせず、こちらのあしらうままに寄って来る。そのまま抜きあげたが、15cmくらいのジュエルフィッシュである。このサイズのアマゴはパーマークと朱点がひときわ美しいため、しばしばそう呼ばれるのである。
「きれいなアマゴだ」
しかし、もう少し大きいのが釣りたい、と私は思った。
まだ、1時間は釣りができる。アマゴはたくさんいる。目にしたアマゴはどれもジュエリーだが、たとえばルパン三世が盗みにきそうなデカイのだって少しはひそんでいるにちがいない。
私は、期待した。「大いに」というわけでもないが、期待するは悪いことじゃない。
そうして、ミノーで誘ってアタリを得た場所に再びやって来るたび、私は胸を高鳴らせた。
「よし、食った!」
けれども、さっきと似たようなサイズ
「やった!」
また、小さい
そうとはいえ、いったん小型のスプーンをうまく流れを利用して底まで落とした後そこから水面方向へと誘いあげてみるとか、中層をキープしながら小刻みに誘いつつ流れの筋をはずさないようきっちり通すというのは口でいうほどやさしくはない。
失敗すると、まず釣れない。うまくいくと、ヒットの確率は、ぐんと上がる。そこが腕の見せ所である。
「できればミノーで、大きいのを釣りたかったな」と私は思ったが、なかなか梅雨ころのようなわけにはいかない。
そう、いいサイズは、夏までおあずけである。
その後も、綺麗なジュエリーたちを釣っては逃がし、逃がしては釣りしながら、楽しんだ。
よく遊んだ。
「ちっちゃいな、ちっちゃいな」とアマゴが食いつくたび大はしゃぎしながら。

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ラインはシルバースレッドトラウトクリアー4lbを使用した。

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使用したスプーン。

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雨がよく降るので水は多かった。

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白い泡が消える辺りでアタリが来た。

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ちょっかいを出してくるのも釣れるのもこのサイズばかりだった。

【今回の使用タックル】

ロッド : ウエダ STS-501MN-Si
リール : ダイワ ニューイグジスト2004
ライン : ユニチカ シルバースレッドトラウトクリアー 3lb

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