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釣行記

釣行レポート

2012年3月14日

浦山川、水深20センチを攻略

私は重度の花粉症なので、「渓流で釣りなど狂気の沙汰です」と言って人からよくあきれられる。
けれども、じっさいはそうでもない。山は空気がきれいなので、いくら杉花粉が飛散しても症状がひどくなることは稀である。
むしろ、問題は山から街へと車で降りて来たときだ。人間関係の空気感はともかく、俗世間は車が尋常でないくらい往来して、相当排気ガスだらけで空気がよろしくなさすぎる。だから、下界へくだって来るほど、にわかに目が痒くなりだし、鼻がむずむずしはじめ、やがてくしゃみ連発の憂き目にあってしまう。
いつかも、最悪の状態のときにうちのクラブのメンバーの四駆の助手席で、「鼻水は垂れ放題、生まれた土地は荒れ放題」なんて膝を手で打って口上をぶっていると、そんなひどいことになっているというのに、よくもまあ駄洒落みたいなことを言えるものだ、やっぱり狂っている、そう言って冷めた目で一瞥された。
あの頃は、まだ若くて、「花粉症は病気じゃない。季節が過ぎれば何ともなくなる」と強がって、とくに予防対策もせぬまま春の渓へとアマゴを釣りに出かけていたが、あるとき人づてに腕のいい耳鼻咽喉科をみつけて治療を受け、薬を処方してもらったら、ぐんと症状が軽くなった。
「春の山など行くときは絶対マスクが必要です」と、そのとき先生に諭された。
目薬もさすようにと言われた。そのほか留意すべき点についてもいろいろ教わった。
だから、私は杉花粉、檜花粉の飛散時期には必ずマスクをして春の渓でアマゴを釣り歩いているようなわけだ。飲食は窓を閉めきった車内で釣りをする前にすませるので、マスクをはずしているのは写真を撮られるときくらいである。
さて、3月14日(水)、朝のうちに家の用事をすませて飛ぶように出かけていった愛媛の浦山川でも、私はマスクをしてアマゴ釣りを楽しんだ。
この川は山岳部よりも下流の方がアマゴの魚影が濃いため、渓流の釣りに関していうとほかの釣り場よりも春が早く訪れる。今年は寒さが厳しいので遅れたが、例年だと2月下旬には浅い瀬に出て流下するカゲロウなど水生昆虫をむさぼり食う姿が目撃できる。いわゆる、いうところのライズである。そっと水の裏側から水面の羽虫に忍び寄っていき、あんぐりと呑み込んでしまうわけだが、そのとき水の輪が生れては消える。このライズリングを目撃するとフライフィッシャーマンなら誰もが胸をときめかせるだろう。ライズは春の陽の光にきらきらする少し速い流れのなかでも起こるが、このばあい勢い余って流れを割って飛び出てくる奴もいる。

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強度があって撚れにくい筆者愛用のライン。

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ノリーズ・鱒玄人ウィーパー1.2g。

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浅い瀬のヒラキで良型がヒット。

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軽量スプーンで水面直下を誘って出た、よく肥えた精悍な面持ちのアマゴ。

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流から頭を出した石の周りを釣る。

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水深のある見るからに釣れそうなプールだが、反応はなかった。

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カゲロウの成虫。アマゴの大好物だ。

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すでに早咲き種の桜が咲きだしていた。

3月12日に、浦山川の下流域へフライタックルを持って様子を見に行ったときも、やはり浅い瀬で、あるいは水深のある緩やかな流れのなかで、ライズするアマゴを容易に見つけることができた。
この日は、釣り仲間と西条市の加茂川の分流の谷川という大変景観のよい渓流へフライでアマゴを釣りに行く途中だったので、ほんの30分ほどしか釣りをしなかったが、車を駐車した公園のすぐ横の流れで小ぶりなアマゴが2尾釣れた。ちょうど昼過ぎで、陽の光のなかをカゲロウが舞っていたが、それと同じ大きなカゲロウが流れに乗って上流からも次々に流下してきた。羽化したてのカゲロウは、まだ羽根が皺くちゃで伸びきっていなかったり乾いていなかったりして、すぐには飛びたてない。じつに危うげに流れのおもてに乗っかって飛べるようになるまで漂いつづけるほかすべがないのである。そいつをアマゴは虎視眈々と水中から狙い澄ませているのであるが、そこをそのカゲロウに似せたフライで騙して釣るのだ。
このばあいフライは水面に浮かぶドライフライを使う人がほとんどだが、私は沈むタイプのフライで水面下を攻めて釣りあげた。水面下にも羽化に失敗したカゲロウがはかない姿で流れに揉まれてくだっているはずである。その数も大した数にのぼるはずだ。私は春の日なかに舞うカゲロウを見てそう想像した。
そのあと、車で現在地よりも西に位置する加茂川とへ向かったが、分流の谷川でもウェットフライで本命のアマゴをけっこう釣りあげた。
「これなら、軽量のスプーンで水面直下を攻めれば、わりと簡単に食いつくかもしれないぞ」
そのとき、私はそう思ったものだが、それが帰宅してからも頭を離れないでいた。
そこで、ルアータックルを持って14日に再度浦山川に出撃することにしたのだ。
ただし、今回ルアーで釣ったのは前々日よりも上流で、ちょうど高速道路が流れを跨いで横切る付近からはじめた。橋のたもとに駐車して、昼食を車のなかで食べ、マスクをして橋の向こう側の踏みつけ道を利用して入渓した。
その辺りは全体が岩場で、大きな石が据わっていて、流れの底も石で敷き詰められている。ところどころ流から石が頭を出しているが、その下流側でかすかなライズを発見した。
「ちぇっ、小さいな」と私は声に出して言った。
川岸の手ごろな石に腰をおろして、もうしばらく様子を見ていると、今度は浅い瀬のヒラキでバシャっと派手にしぶきがあがった。そのとき、流れのなかでギラッと閃いた魚体は決して小さくはないようだった。
私は、仕掛けの準備を急いだ。
ラインは、ユニチカ シルバースレッドトラウトクリアー4lb。ラインに結ぶルアーは、ノリーズの鱒玄人ウィーパー1.2g。この仕掛けで、水面を、あるいは表層を流れる水生昆虫にライズするアマゴを騙して釣ろうというわけだ。
仕掛けを組みながらも、またライズしやないかと流れの様子が気になった。
「瀬のヒラキでバシャっとやった奴、あいつをものにできたらいいのに」と心のなかでそう思いながら、もうしばらく流れに注意を払ってみたが、奴は姿をあらわさない。
おととい下流域で見かけたのと同じ地味な色のカゲロウが宙に舞い、流れに乗ってくだって来るのに、その後ちっとも流れを割って姿を見せないのである。
もう待ちきれない気分だった。私は、ポイントの下流側に立って陽の光できらきらする浅い瀬の少し上流へとスプーンを投げ入れた。着水と同時にリールのベールを返し、さっそく竿の穂先を小刻みに動かしてチョンチョンと誘いながら、それと同時にラインをリールに巻き取っていく。着水した辺りはやや深いが、瀬尻は浅くて水深20cmくらいである。
フライなら誘わずにナチュラルドリフトで食わせるところだ。しかし、スプーンのばあいは少しひらひらさせてわずかな誘いと金属のかがやきでアマゴをその気にさせたいものである。
あまりに浅い瀬なので、ポイントに近づきすぎぬよう注意して立ち位置を決めた。上流へ投げて、ひらひらさせはじめてまもなく、コツッという感じのアタリが来た。かまわずに誘いつづけていると、ヒラキのごく浅い流れのなかでアマゴが私のあやつる仕掛けにとびついた。逆光で、水面下の様子が全くわからなかったので、食いついた瞬間を目の当たりに見ることはできなかったが、水しぶきがあがった場所の水深は30cmを切っていたろう。
強引に引き寄せて岸へとずりあげてみると、なるほどナイスサイズのアマゴである。
「よく肥えているなあ」と思わず口に出た。
まったく、惚れ惚れするような綺麗な魚体である。パーマークと朱点の冴えたアマゴである。
この後も、浅い流れのアマゴを同じ誘い方で釣ったが、全体に魚影がうすく、良型は写真の2尾だけに終わった。あとはチビ助ばかりで、しかも全くアタリを送ってよこさない区間が長くつづいた。午前中に餌で釣りを楽しんだ人がいたのかもしれない。それとも、もともと魚影が薄いエリアを私は釣り歩いたのだろうか。
それでも、用を済ませてゆっくり出かけて来たことを考え合わせるなら、まあ、楽しい釣行だったといえるだろう。
こんど来るときは、もっと、ずっと上流の山岳部でいかつい顔つきの大物を狙ってみたいものだ。

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浦山川下流部はやや小ぶりなアマゴが多い。

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大きくはないがきれいなアマゴが出た。

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沈み石のすぐ上でフライを捕えたアマゴ。

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表層のナチュラルドリフトで食わせた。

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対岸寄りの流れの筋を狙う。

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12日、西条市の加茂川。フライでの釣果。

【今回の使用タックル】

ロッド : ウエダ STS-501MN-Si
リール : ダイワ ニューイグジスト2004
ライン : ユニチカ シルバースレッドトラウトクリアー 4lb

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