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釣行記

釣行レポート

2012年7月13日

ぶっこみ釣りで夏チヌをねらうはずが

風蘭の花が咲くころになると、そろそろ夏チヌが釣れはじめる。
釣り仲間のなかには、この夏チヌ釣りにぞっこんの者が少なからずいて、そのなかでもとりわけ熱心な尾崎晴之と、つい先日、引田港へ雑誌の取材に出かけてみたが、塩焼きサイズの25cm前後の夏チヌはたいして食いつかなった。しかし、そのかわりに、春の乗っ込みシーズンに釣れるような大きいのがけっこう釣れて、なんだか複雑な気持ちにさせられた。これについてはKG情報の月刊レジャーフィッシング9月号(8月5日発売予定)に詳しく書いたので触れるのはよすが、この取材の前にも複数の大きなチヌを私は釣りあげている。
だから、贅沢な話だが、もう大きいチヌはいらないと思った。
そこで、銀ピカのかっこいいチヌをずらっと並べた写真が撮りたくて、ミキカツさんこと三木勝利氏に連絡を取ってみた。
そのとき私は、野生の風蘭を見に郊外へと出かけていたが、樹上の清楚な風蘭の白い花を仰ぎ見ながら、今年も夏チヌの季節が来たと思って嬉しくなった。
「あんたの腕を買いたいのだがね。夏チヌを釣りたい」と私は電話でミキカツさんに告げた。
「こないだ尾崎くんと行ったそうだが・・・・・」
「ああ、あれね。でも、フカセで狙うようなサイズが多くてさ。とても、本命満喫とまではいかなかった」
「大きいほうが雑誌は喜ぶだろう」
「そうかもしれんが、こうして風蘭の花を見あげていると、ああ、夏が来たと思って、無性に銀ピカのチヌに会いたくなったのさ」
「詩人のようなことを言うね。あんたらしくもない」
「だからさぁ、行くの、行かないの」
「近場なら行ってもいい」
「じゃあ、行こう。本津川の河口はどうだい」
「そうだね。いいかもしれない」
ミキカツさんはウキを使う紀州釣りはやらない。だから、今回も穂先の繊細な筏用のチヌ竿で挑むに決まっているので、サシエを包んで海に投げ込むダンゴ餌のブレンドは、私が従来使用しているウキ釣り用のものとは配合が異なる。
ミキカツさんのダンゴ餌のレシピは次の通りである。
まず、マルキューの荒びきさなぎ2kgをバッカンに移し、オカラだんご1/2袋を加え、よく混ぜ合わせる。これに海水1.5ℓを加えて、水分が均一に行き渡るよう混ぜ合わせる。さらに、紀州マッハ攻め深場1/2袋を加えて均一に混ぜ合わせる。最後に市販のチヌ釣り用の白土を1袋加えてムラなく混ぜ合わせて完成となる。
「まあ、配合は潮の速さや水深次第で少しは変わるけどね。ここは干潮時には水深が3メートル足らずになるから少し割れやすくしてある」
ミキカツさんは、慣れた手つきでダンゴ餌を仕上げながら、そう私に説明した。
釣り場は、高松の市街地の西のはずれ。本津川河口の東岸につづく高い波返しの上である。釣り座は、河口と弦打木材港のあいだに壁のようにつづく波返しのなかほどに据えた。
少し早いが昼の弁当を食べてから釣りを開始した。たしか、11時過ぎだったように記憶している。
夏チヌを狙うには意外にも曇って涼しい昼下がりで、汗をかかないのはよいのだが、梅雨の湿っぽい風が少し気分を憂鬱にした。
すると、「夏は、かっと照ってほしいよなぁ」とミキカツさんが唐突に気のふれた様なことを叫んだ。
「バカ言え。お肌によくない」
「何が」
「だから、日に焼けてシミになるだろ。あんた、もういい年なのだよ」
午後からは好天に向かうとテレビが言ったので、私はこっそり日焼け止めを塗ってやって来たのだが、それでも照ったら蒸し暑い。
「男がなんだ!日焼けくらい」
「でも、午後から照るかもよ」
「嘘」
「嘘じゃない」
「そうかなぁ」
「ならば、好きにするさ。日焼け止め、持ってないだろ、今日は」
「あんた・・・・・」
「そうだよ。そんな、ため口きくなら、貸さないよ」
「か、貸して」
「いやだ」
「貸して、貸してちょうだい」
「いやだよ」
「意地悪!」
大人げないことばかり言い合っていると、ダンゴ餌を入れたバッカンの上に寝かせておいたミキカツさんの短い筏竿の尻が突如として浮き上がりそうになった。見ると、穂先が海面に向かって大きくお辞儀をしている。
「や、やった!」
慌ててアワセを入れたミキカツさんがのけぞった。
仕掛けを引き絞ると、穂先が繊細なせいで竿がUの字にグイッと曲がった。ジッ、ジジッ、とドラグが鳴って、スプールから道糸が剥ぎとられていく。ミキカツさんは巧みに仕掛けをあやつりながら徐々に魚を浮かせにかかった。海中でヒラを打った瞬間ギラッと魚体が光った。
「チヌだ」
まさしく、大きなチヌであった。
ミキカツさんは磯のグレでも名をはせた達人だから、玉網の扱いはお手のものである。
ミキカツさんは海面に浮かんで空気を吸ったチヌを足元へと誘導すると、無駄のない動作で掬い捕った。
「30cm後半。いや、40cmは楽に超えている」
「フカセで釣れるサイズだね」と私は玉網のなかのチヌを覗き込んで言った。
この釣り場、昔からよく夏チヌを釣りに来ているので、まさか最初からこのサイズが釣れるとは思っていなかった。というのも、半日釣りをして25cm前後の綺麗なチヌが10尾程度、潮次第でこれに30cm級が2つか3つほど混じるというのが普通なのだ。
だから、私たちは顔を見合わせて、手の親指をグイと立てた。
お互い、「よし、今日はいけるぞ!」という気持ちの表れである。
「さあ、記念撮影や」と私は言った。
「ちょっと待って、よそいきの帽子に替えるから」
「・・・・・?」
ミキカツさんは日よけ垂れのついた帽子を脱ぐと車からユニチカのキャップを取り出してかぶった。
「ほほう。ちゃんと立場をわきまえてらっしゃる」
「あはは」
三木さんは上機嫌でカメラの前にチヌを手にしてしゃがんだが、写真を撮ったあとはまた日よけ垂れのついた帽子をかぶって釣りを再開した。
ところが、すぐまたアタリが来て、今度も大きなチヌが仕掛けを引き絞った。あまりに引くので竿をのされそうになりながらのやり取りがつづいた。スリリングといえばそうだが、チヌに苦戦しているともいえた。
しかも、上手に浮かせたまではよかったが、足元へと寄せるのを焦って、このチヌは惜しくもバラしてしまった。
そのあとしばらくアタリが遠のいたが、次に釣れたチヌも大きかった。その次も大きかった。そのまた次に大きいのが釣れて、その次やっと夏チヌらしいのが1尾釣れた。
「不気味だよ、こう大きいのばかりが釣れると」
私から缶コーヒーを受け取ったミキカツさんが言った。
「今日は、13日の金曜日だからな。なにもおこらなければいいが」
「ここは日本だぜ」とミキカツさんは真顔になった。
「じゃあ、悪魔が来りて笛を吹く、だ」
「それを言うなら、釣り師が来りて法螺を吹く、だろ」
「御尤も」
潮は下げ止まって、いまは満ち込みの潮が左から右へとゆっくり動いている。
その後も、アタリの全く来ない時間とアタリの出る時間が交互に来て、アタリが出はじめると大きなチヌがサシエのオキアミに食いついて来た。
私は、ぶっこみ釣りを滅多にやらないが、三木さんが、「大きいのばかりで、腕がしびれそうだ」というので、竿を借りてやってみると、海底に沈んだダンゴがパカッと割れるとほぼ同時に穂先を押さえ込む明確なアタリが出て、アワセを入れるとズシッと重たい手応えが仕掛けから竿へ、竿から私の手元へと小気味よく伝わってきた。
このチヌも相当良い型だったが、やる気のあるチヌが多いらしく、その後も着底したダンゴが割れてすぐか、仕掛けが流れだして少しすると、すぐまた穂先にチヌだとわかるアタリが出た。
竿をミキカツさんに返上してからも、最初ほどではないが本命のチヌが食ってきた。
しばらくして、そろそろダンゴ餌が尽きて来たので、新たに作ろうとミキカツさんが配合餌の袋を車に取りにもどろうとすると、いきなりピカッと空に閃光が走り、とたんにゴロゴロッと雷鳴が轟いた。
ミキカツさんと私と、顔を見合わせた。
「や、やばいぜ」
「ああ」
私たちは、きびきびとした動作で避難準備をした。
すると、道具を一カ所にまとめ、車のなかへと逃げ込むのが速いか降りだすのが速いかというタイミングで雨が落ちはじめた。まもなく雨は驟雨となって景色を白く染めた。ワイパーをハイスピードで動かさないと外の様子がわからないほどの強い雨脚だ。
この雨は30分ほどであがったが、しまいそびれた道具がびしょ濡れになってしまったのをみると、ミキカツさんも私もとても釣りを再開する気にはなれなかった。
「今日は、もういいだろ」とミキカツさんが言った。
「ああ、もうよさそうだよ」と私は言った。
潮が落ち着く夕方の時合を待つことなく、私たちは釣り場をあとにした。

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使用した道糸、ハリス。

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樹上で花を咲かせはじめた野生の風蘭。そろそろ夏チヌが釣れだす頃だ。

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夏に芳香を放つ風蘭。花の命は二週間ほど。

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アタリを待つ三木さん。夏が旬の釣りなので陽ざし対策は万全に。

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40cm級を浮かせようと仕掛を引き絞る。

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足場が高いので玉網は柄の長いものを準備する。

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三木さんはこのサイズを連発させた。

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三木さんの道具でちゃっかり釣らせてもらいました。

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夏チヌとは思えない大きさ。二人が持ち帰る分だけキープした。

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釣果の一部を二人で分けた私の取り分。

【今回の使用タックル】

釣り竿 : みきかつ工房オリジナルちぬ筏180
リール : ダイワ エンブレムX2000C
道 糸 : ユニチカ ユーテック波止 2号 【新製品】
ハリス : ユニチカ アイガーIIIスーパー 1.2号

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