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釣行記

釣行レポート

2012年8月10日

夏沢で痛い目に遭う

アブはハチのなかまで刺されると痛い。ブヨはハエの親戚で刺されると痒いのだそうだ。最近はインターネットで何でもわかるから、私が刺されたというと何人かがアブとブヨのちがいについて連絡してくれた。
じつは、先日、源流の沢へイワナを釣りに出かけて、ばっちり刺された。釣りをしているあいだじゅうたかられて鬱陶しい思いをした。夏なので沢登り用のウェアで入渓したのだが、それが無謀だった。分の厚いウエット地の半ズボンは針が通らないからよいが、膝の辺りはタイツで生地が薄くて刺し放題だ。露出している首まわり、手の甲、手のひらはもちろん、着替えのときに足の甲やくるぶしもやられた。
「それで、痒いの、痛いの」
「痛くて痒い」
「最悪やね。アブとブヨと、両方にやられたな」
「集って来たのは、三種類くらい。目の色がハエみたいな地味なのもいたし、緑色のやつもいた。相当腫れている」
「やりたい放題やね」
「連合軍や。まっ、やつら、刺すのが商売みたいなものだから」
「ずいぶん仕事熱心なやつらだ。で、病院、行ったの」
「行かねえ」
「そんなに刺されて、行った方がいいんじゃないか」
「四、五日もすれば腫れはおさまる」
まったく、さんざんな目に遭ったものだ。手の甲は左がひどく腫れている。たくさん刺されたから、いくつもの小さな腫れと小さな腫れがくっついて、手の甲全部がパンパンに腫れあがったのだ。首はちょうど喉仏の腫れがひどくて、ピンポン玉を半分に切ってくっつけたような腫れようである。
しかし、すべて自分の不注意なので、痒かろうが痛かろうが、苦情を言っていく先がない。
アブやブヨの襲来が予測される沢へ出かけるときは、首まで覆えるネット付きの帽子、分厚い長袖の上着、手袋、ウェーダーを車に積んでおくべきなのである。それを、怠った私の失態である。
まったく、アブもブヨも、よく働くものだ。「身を粉にして働く」とはあいつらのことを言うのだろう。われら日本人もあれくらい文句を言わずに本気で働いたなら少しは景気がよくなるだろうか。
まあ、それでもアブやブヨは腫れあがる程度で済むが、マムシにばったり会ったら命を落としかねぬので、これは大いに注意が必要だ。
マムシは相当標高の高い場所にもいる。四国では、イワナの棲息域にもその数は少なくない。
イメージ的にマムシは鬱蒼と茂った草のなかに身をひそめているように思われがちだが、むしろ、日当たりのよいやや湿りがちな、草が、ぽさっ、ぽさっ、と生えた見通しのよい場所に多いものだ。ガレ場を這っていたりもする。石の上にとぐろを巻いていることも少なくない。樹の枝に止まっていることもある。
マムシの群れている場所では、マムシ独特の臭気が立つ。生臭いというか、何とも危ないにおいが鼻にくる。
だから、マムシを獲って生計を立てているプロは、マムシが臭うと、抜き足差し足で忍び寄っていき、股になった棒でもって首根っこを押さえつけ、啼くまで痛めつける。
私はその声を聞いたことはないが、マムシはいじめると啼き声をあげるそうだ。
すると、近くにひそんでいる仲間がぞろぞろ這い出て来て、「おっさん、うちの若い者に何するねん」というふうにすごんでくるので、そこを待ってましたとばかりに一網打尽につかまえる。
むろん、聞いた話だが、そういうことのようである。
こう考えてみると、夏の沢も爽快とばかりは言ってはいられない。ほかにも突進されるとひとたまりもないイノシシ、ばったり出会うと八つ裂きにされかねないツキノワグマ、狡猾で石を投げつけてくるかもしれないニホンザルなど、遠くに姿をみるとワクワクするが、けしてお近づきにはなりたくない動物も沢筋には少なくない。
そうはいっても、イワナを釣る私たち釣り人にとっても、水を飲みにやってくる動物たちにとっても、沢はとても魅力的な場所だ。なによりも、夏の沢は涼しくて居心地がいい。だから、厄介な動物たちに運悪く遭遇してしまうのは仕方ないとしても、できうるかぎり出くわさぬための対策は講じて出かけないと、それこそ命が危ない。
私は山で釣りをするとき、バックに山の豆柿の実ほどの大きさの鈴をぶらさげている。
「ここに人間がいますよ。出てこないでね」という程度の気休めに過ぎないかもしれぬが、何もしないよりはましだろう。
まあ、長く山で釣りをしていると、いろいろなことがあるものだ。ほんとうは山にかぎったことではないのかもしれぬが。

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使用したライン。

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山の必需品、魔除けならぬ動物よけの鈴。

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体重を吊り下げる強度はないが細引きのロープを持ち歩いている。

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田所さんにもらった小型のナイフ、あると便利だ。

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流れの落下する付近は絶えず冷気が動いている。

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清冽な流れをさらに上流へと向う。イワナを求め。

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頭のバンダナは、いざというとき包帯にもなる。

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強い引きをみせた、尺に迫るイワナ。

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リリースは慈悲深い行為かもしれぬが、持ち帰って食べるのも悪くない。(ラインは魚の大きさを表す為置いてみました)

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沢の冷気が当たる岩盤で、イワタバコが花の盛りを迎えていた。

【今回の使用タックル&ライン】

ロッド : ウエダ STS-501MN-Si
リール : ダイワ ニューイグジスト2004
ライン : ユニチカ シルバースレッドトラウトクリアー4lb

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