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釣行記

釣行レポート

2013年3月15日

勝浦の桜、海部のアマゴ

勝浦川

勝浦川へは桜を見物しようと思って出かけた。場所は勝浦川沿いの国道16号と阿南から来た国道22号が合流するところから数キロ上流で、勝浦川本流に沿う国道16号がほんの少しその本流の流れから離れる辺り。このへんは、夏は友釣りでアユのよく掛かる場所である。道路沿いに商店が散見でき、道端に桜の古木が枝をひろげて立っている。私はその桜が花の見ごろを迎えたときいて出かけたのだが、その古木の立つすぐそばが無料駐車場で、奥の公園には若い桜が植樹されており、ほんとうにちょうど花の見ごろであった。平日の日中ということで人出はそう多くなかったが、それでも地元の人や観光客でいささか賑わうといった場面も見られた。規模の大きくない公園なので見物客は自家用車でさっと来て、またさっと去っていくため混雑することはまずないといってよい。

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この看板が目印だよ!

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道の駅『よってネ市』地産の蜜柑が激安

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粗末なベンチに入れ替わり立ちかわり人が腰掛けにくる。

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勝浦川の桜。幹の荒さに古老の風格がみえる

桜はソメイヨシノではなくて、花も色の濃いピンク色で、何という品種か知らないが、早咲きなので緋寒桜の仲間ではないかと思われる。これまで何度か訪れているのに、地元の人に訊ねればすぐわかりそうなものだが、それもしないのだから横着である。
見物に来る人の多くは、この早咲きの桜のほかに、商店や民家の軒先に飾ってある雛人形を愛でにやってくる。ここは桃の花と雛人形ではなく、桜花と雛人形の取り合わせで見物客を呼んでいる。雛人形は由緒を感じさせる古いものと、そうは古くなさそうな目にも鮮やかな晴れ着をまとった童女の人形も合わせて飾ってある。

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家の軒先に飾られた雛人形。寄って眺めると大事にされてきた事がよくわかる

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可愛さに思わずシャッターを切った

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こんな春らしい装いの別嬪さんもいた

堂々とした姿の桜の古木が道端に立っているとはすでに書いたが、その桜のすぐ横に建つ古いたたずまいの木造家屋は昔ながらの釣り具屋で、店先には勝浦川と那賀川の入漁券を取り扱っている旨を記した看板が出ている。
少し釣りをしてみたくもあったので、状況を訊きに入ると、おやじさんが眠そうな声であいさつした。薄暗い店のなかには川釣りの道具や網や小物が並べてあった。見ると、子供のころよく鮒を釣るのに使ったセルロイドの棒ウキやピンポン玉ウキ、それに木製の唐辛子ウキも売られていた。
「懐かしいなあ、胸がキュンとなるなあ、いやあ、いいものだ」
なんだかほのぼのとして、ふとバラ売りのオモリのそばの棚に目をやると、釣り糸が並んでいる。
どれどれ。
きっとあるぞと思って顔を寄せると、やはりありましたハイループが。それは、少年時代に池や川で鮒や鮠を釣って遊んだ釣り糸である。そして、備讃瀬戸の小さな石積み波止でアイナメやメバル、カサゴなどを三本継ぎか五本継ぎの竹竿で探り歩いた馴染みの深い釣り糸だ。こんな仕掛けでも、昔はけっこう池でも川でも海でも魚がよく釣れた。棚にはハイループに何年か遅れて発売されたグンターも並べてあった。この釣り糸は名前の由来が「グぅーンとタフ」から来ているだけあって相当に強力な製品で、いまも私の好んで使っているイチ押しのハリスである。

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長年の信頼と実績、ハイループ20mと50m(昭和44年発売)

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『グぅーンとタフ』なグンター10mと50m(昭和49年発売)

もう懐かしいやら嬉しいやら、私は学生のころに戻った気分になって、しばらくのあいだ店内を物色してまわった。
そして、釣り具屋を出た私は、途中、道の駅でバラ寿司と飲み物と一袋百円の激安地産の蜜柑を買って、アマゴを釣るべく勝浦川上流へと車を進めたのであった。

桜の古木から上流へ30分も車を走らせると、澄んだ流れの渓流が眼下に見え出して、本流と分流とに分岐する手前辺りはひらけた瀬がつづいている。この瀬でも良い型のアマゴが腕次第でけっこう釣れるそうだが、まだ降りて竿を出したことはない。分岐点から上流部は、本流も分流も釣りをしたことがある。そして、状況次第で楽しい釣りの出来る悪くない釣り場であることを私は経験から知っていた。
しかし、私はそこまで行くあいだにもアマゴの釣れる人里離れた静かな流れがあると聞いて気になっていた。そこは、本流の流れが国道16号に架かる橋の下をくぐって、左の山々のあいだを奥へ奥へと次第に遠ざかり、やがては山林の緑に隠れて見えなくなるといった場所であった。私は、国道16号に架かるその橋の手前を川沿いに折れて、木立の幹越しにときおり覗く流れを気にしつつ、細い山道を奥へと車を進めていった。すると、やがて小さな朽ちかけた小屋が山道と流れのあいだに見えて、左から小沢が山道をくぐって本流の流れに細い流れをそそぎこませているところへと来た。さっそく私は小屋の近くから釣り人が通って出来たのだろう、その踏みつけ道を辿って流れのほとりへと降り立った。そのすぐ上流側には奥行きのあるプールが見え、奥の落ち込みの下は水が暗く澄んで、やや水深がありそうに見えた。下流側から眺めると、手前のほうはフラットな緩い流れで、魚の気配はうかがえない。プールのそばまで詰めて、いまいちど奥を望むと、水が落ちて白く泡立つ手前にアマゴの付きそうな安定した流れの筋がぼんやりと見えた。ミノーをキャストして誘うといいサイズのアマゴが食いついて来そうな雰囲気であった。安定した流れの筋はプールの規模からすると、ごく短かった。減水気味なのが原因でそうなってしまったのだろうが、仕掛けの落とし方を誤れば二度目のチャンスはないと知れた。
ルアーキャスティングに正確度を欠く私は、もう少し距離を詰めたかったが、状況がそれを許さなかった。仕掛けの先にミノーをぶらさげて素振りよろしくロッドのしなり具合を手に確かめてから慎重にキャストした。ミノーが宙を行き、リールのスプールからラインが螺旋を描きながらとびだしていく。
「グッド!」
そう思わず言葉が口をついて出るほど、ミノーは流れの上の宙を運ばれていき、やがて小さな水しぶきをあげて狙い通りの場所に落ちた。手首を強く返して二度、三度と誘いをかける。
すると、さっそく仕掛けが強く引かれ、手元にストライクの感触がズシッと伝わって来た。
「一投目から来たぜ!」
なかなかのサイズと私はみたが、遠投してヒットさせたので、やり取りに少し不安を感じた。魚は鋭角的な走りで流れのなかを奔走した。足が相当速いと感じたが、リーリングがついてゆかれないほどでもなかった。奥の流れ込みへ向かおうとするのを強引にこっちへ頭を向けさせて、私が主導権を握ると、緩い流れに出た魚はわりと嫌がることなく流れをくだって来たので、空中に張られたラインを目で辿って水中の魚の現在地を目測した。
魚影が見えた。
「ナイスサイズ!」と私は歓喜の声をあげた。
でも、まあ、25cmちょいというところだろう。体高があって、この時期にしては身に厚みのあるアマゴのようだった。
魚を見てしまったせいで、ちょっとどぎまぎした。ファーストキャストでナイスサイズのアマゴが来たのだ、胸が高鳴らぬわけはない。しかし、私は胸が躍ったせいもあってか詰めを急ぎ過ぎたようだ。ぐいっと足元へ一気に寄せたらラインの角度がつき過ぎて、水面に躍り出たアマゴは二転、三転、キリをもみ込むように回転して暴れた。悪いパターンだ。水面に水の花火がぱっとはじけて、それっきりラインは緊張感を失ってしまった。
「まずい!」と思ったときにはあとの祭りであった。
私は不覚にも足元近くで、その良型のアマゴを捕り損なってしまった。
ミノーのフックは交換して新品だったし、掛りどころもそう悪くないように見えた。
と、いうことは、つまり私のやりとりに問題があったということになる。私のミスというわけだ。やり取りにせっかちになって、釣りを台無しにしてしまった。途中までは素敵な物語を私は確かな筆致で描けていたのだ。すべては、急ぎ過ぎたことによる失敗だった。そう反省するほどに、私はみるみる気力が萎えていき、ついには釣りをよしてしまった。
「遥々やって来て、一回投げておしまいか」
こんなことは長い釣り人生のなかで初めてだった。
「俺も老いたということか」
私は、今日見た桜の古木の姿を思い出していた。

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奥の流れ込み付近、アマゴがひそんでいそうな流れ

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ファーストキャストに良型がヒットするも足元でバレた!

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勝浦川本流は夏はアユ釣りがたのしめる

海部川

勝浦川から海部川までは、けっこう距離があるが、それでも本線国道を巧みに避けて、山中や川沿いの混雑しない道路を使えば、たぶんそれほど時間は要しないはずだ。というのも、途中、気に入った風景を目にすると車を止めて休憩したり飲み物を買ったり、あるいは時計を気にしなかったこともあって、休憩時間を差し引いた実際の海部川支流相川までの所要時間というのはじつはよくわかっていないのだ。
ただ、相川の中流まで行ったとき16時前だったのは記憶に鮮しい。
釣り場に到着すると、さっそく車を路肩に寄せて、ふたたび仕掛けを組み直し、少し上流へと木洩れ日の林道を、まるで散歩でもするかのように、私はゆっくり歩きだした。すると、どれほども行かないうちに川への降り口が見えてきた。岩の急斜面を削ったり、はつったりして、流れのほとりまで楽に降りていけるよう踏み段を設けてくれている。これは、轟の滝へと向かう海部川本流や多くの支流も同様で、アマゴの棲む釣り場の多くはこの方法で渓流へと楽に降りていけるよう工夫されている。つまり、降りやすく、また道へともどりやすいのであるが、これは通い慣れない釣り人にも、また川をよく知る常連の釣り師にも嬉しい配慮だ。
川へ降りると、落差の大きくない流れは、規模のわりに広く感じられて、ルアーで釣るほかにフライでゆっくり釣りあがるのにもうってつけである。
もしフライで釣るなら、少しスローなアクションのバンブーロッドで、のんびり釣り歩くのが楽しいだろう。
たとえば、ドライフライだけをベストのポケットに忍ばせて、ロッドを手に流れのほとりへと降りて行く。すると、木洩れ日でキラキラする澄んだ流れのなかを、さっとアマゴの影がよぎり過ぎる。息を殺して物陰から様子を窺っていると、そのうち流れからちょこんと頭を出した石の近くで、ピシャッ、パシャッと、アマゴがライズしはじめる。宙にはカゲロウが舞い、流れの音に混じって野鳥のさえずりが聞こえる。どこからかカワセミが飛んで来て、流れのなかの石にちょこんと止まる。近づく私の気配に驚いたのか、やがてカワセミは石を離れて、さっと上流に向かって飛び去った。--------------------
これは去年の4月中旬、相川とはまた別の流れを釣ったときのことを思い出しながら今こうして書き進めているのであるが、翔け去ったカワセミの美しい色彩が、今こうして思い返していると目の底にはっきりと甦ってきて、とてもよい気分である。
そして、その日はアマゴがたくさん釣れて、春本番の流れを心ゆくまで満喫したのだった。
しかし、今回は勝浦川のあとに海部川を釣ることになるだろうとは思ってもみなかったので、無計画なままこんな遅い時間に入渓することとなった。
私は、手持ちの時間でどこまで釣りあがっていけるかを、ざっと頭のなかに思い描いてみた。そして、その距離内にある絶好の流ればかりを記憶の抽斗から抜き出してみて、「3尾か、いや、5尾くらいはなんとかなるだろう」と取らぬ狸の皮算用をした(若い人は、取らぬ狸の・・・・・、と言ってもわからぬかもしれないが、まあ、辞典でも引いて調べてみるといい)。
けっきょく、この日は川が大きく蛇行する辺りを過ぎてすぐの小さな集落のそばに架かる橋の近くから入渓して、17時半まで釣りをしたが、釣れたのはほんの数尾であった。
それでも、夕方の短時間で1尾も獲り逃がすことなくいい気分のまま釣りを終えることができたのは思いつきでやってきた私にとっては幸いであった。
まだ春は始まったばかり。山の桜が見ごろとなる4月初旬には轟の滝の少し手前辺りまで足を延ばして、渓相抜群の澄んだ流れでアマゴを狙って存分に釣りを楽しみたいものだ。
では、みなさん、よい釣りを!

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トラブルが少なく高強度のトラウト定番ライン。
今回もいい仕事をした。

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いいアマゴがひそんでいそうな堰堤下のプール

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持っていった小型のミノー

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強い引きをみせるアマゴ。元気あまって下流側へと走った

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いいサイズのアマゴが出た。魚体も綺麗だ

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水の澄んだ瀬は夏に友釣でアユがよく掛かる

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昨年、本流上流での釣果。今期も期待したい

【今回の使用タックル&ライン】

ロッド : シマノ カーディフ・エクスリード
リール : シマノ ツインパワー C 2000 HGS
ライン : ユニチカ シルバースレッドトラウトクリアー 4lb

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