過去の釣行記TOP > 釣行レポート > 2013年3月26日

釣行記

釣行レポート

2013年3月26日

スプーンの名作、ライトニングウォブラー

吉野川本流では5~10g程度のスプーンをよく使うが、対岸下流に投げて流れを横切らせながらラインをリールに巻き取っていると、このスプーンが流れからとびだしてしまい釣りにならぬことがしばしばある。流れの速さに耐えきれずに跳ねあがってしまうのである。ところが、ティムコのライトニングウォブラーというスプーンを使うと、そのような心配は一気に解消される。ティファのブリリアントもその点において大変よくできたスプーンであるが、こちらはライトニングウォブラーよりも潜行深度が浅めで、ライトニングウォブラーでは底にかかってしまうような場所での使用頻度が高い。
さて、このティムコのライトニングウォブラーであるが、抜群によく飛ぶ。これには秘密があって、鈎のついた側が分厚く、ラインを結ぶ側に行くに従って徐々に厚みが薄くなる。いわゆるテーパーを付けてあるので飛距離が出るのだそうである。私は物理がダメな人間なので、上手に説明できないが、まあ、そういうことだ。
この抜群の飛距離と流からとびださない構造は多くの本流鱒釣り師の信頼を勝ち得ることとなり、長く愛されてきた。ところが、これが数年前に廃番になり、同じ商品名で新型が市場に出まわった。新製品が人の心をくすぐるのは世の常であり、それは昔も今も変わらない。さっそく試しに買ってみた。だが、どういうわけかこの新型の秘密兵器、前の機種にはとうてい及ばない駄作だったために、私の仲間からは「もう買わない」という声が多く聞かれた。あのときは大いに困って心を暗くしたものだが、もう翌年か、その次の年くらいには元のライトニングウォブラーが復活して不評だった新製品の方は姿を消した。メーカーの対応の速さが目を引いた。
ただし、いくら優れ物だといっても、PEラインを使用して速い流れをダウンクロスで釣ろうとするなら条件次第では水からとびだしてくるのも仕方ないことだ。PEラインは糸癖がついたりヨレが生じても釣りへの影響が少ないため、最近川の釣りでも使われ始めたが、私はよほど飛距離を稼ぎたいとき以外はあまり使わない。本流は空間が広くて風が吹きやすいものだが、風が強いときはナイロンラインの方が扱いやすいのは海の釣りも川の釣りも同じである。
ちなみに、PEラインを使用するのに好条件のときは、ユニチカのエギングスーパーPE0.5号かナイトゲームTHEメバルスーパーPE5lb(0.4号)に6~8lbのシルバースレッドトラウトリーダーFC6lb程度を結ぶようにしている。
しかし、なんといっても、汎用性に富むのはナイロンラインである。視認性を重視するばあいはシルバースレッドアイキャッチ(ナイロン)をよく使用する。最も出番の多いナイロンラインはシルバースレッドトラウトクリアーである。
今回は、このシルバースレッドトラウトクリアー4lbに、ライトニングウォブラー5g、7gを結んで、吉野川本流の池田ダムから少し下流にくだった流れで夕方のほんの短い時間ではあるが鱒を狙ってみることにした。その釣り場は、いわゆる瀬の流れで、川幅は広く、流れは適度に速い。それほど深くはないが、底は大小の石で起伏に富み、いかにも鱒がひそんでいそうな場所である。長大な流れなので、ダウンクロスの釣りに適しており、投げては巻き、数歩くだっては再びキャストするというスタイルで広く探ってみるのにおあつらえむきである。ミノーでダウンクロスのトゥイッチングをやってもよいがミノーの飛距離では対岸に近い方を満足に探れないので、短時間に釣果を求めるなら飛距離を出せて手返しよく釣れるスプーンが有利である。つまり、ライトニングウォブラーの出番というわけである。
釣行当日、夕方は風が出て、太陽が河原の竹林の向こうに没すると冷えた。それでも流れに膝のあたりまで立ち込んで、速い流れにライトニングウォブラーを横切らせながらリールにラインを巻き取っていると、対岸寄りの流れで竿先をのすようなアタリが唐突に来た。不覚にもアワセ損ねてヒットさせることはできなかったが、リールを巻かずにそのまま流れに仕掛けを横切らせていると、今度はドスンという重みがロッドから手元に伝わって来て、軽くアワセをくれただけで鈎掛りした。大物ではないが、まあ、悪くないサイズのようである。岸へと後ずさりしながら、手ぎわよくリールを巻いて寄せ、ついには河原にずりあげた。すると岸にあがったとほぼ同時にフックが鱒の顎からはずれて、振り飛ばされたスプーンが石にぶつかる金属音が私の耳にはっきり聞こえた。
「でも、まあ、鱒さんよ。河原で躍っているようでは、俺の勝ちだ」
まだ釣りはじめて5回ほどしか投げていなかったので、この時点でのファーストヒットは正直うれしかった。その後も、同じペースで釣りくだっていき、ときどきアタリを逃したり取り逃がしたりしながら、広い瀬がやがてその先の深いプールに消え入るところまで行き着いた。すでに、このとき私は3尾の鱒を手にしていた。どの鱒も悪くないサイズだったし、よく肥えてもいた。水生昆虫をたらふく食ったと見えて腹は膨れ、脂の乗りもこの上ないものと見えた。すべてキープしようと思って活かしビクに入れておいた。
私は、プールのなかも数回投げて一応探りを入れてみたが、アタリが全くなかったので竿を納めることにした。
私は釣りはじめた場所まで河原を歩いてもどった。そして、ラインをいまいちどリールに綺麗に巻き取ろうと思って、仕掛けを対岸に向けてフルキャストした。すると、その仕掛けに鱒が食いついた。サイズ的には前の3尾と変わらなさそうである。3尾で十分なので、取り逃がしてもかまわないつもりでゴリ巻きにリールを巻いてみたところ、鱒はあっさり足元まで寄せられて来て、ついには河原へとずりあげられてしまった。なんだか他人事みたいな言い草だが、儲けものの1尾であった。
今回は、長大な瀬を夕方の手持ちの短い時間内に釣るということで、釣り方には特に工夫を凝らすことなく、スプーンだけを使って釣り下ったわけだが、釣りとは本来こういうふうに気張ることなく気持ちを大きく持ってやるのが川の釣りでは楽しい。そして、年齢を重ねるごとに、その思いは益々強まった。だから、最近ではルアーで釣るにせよフライで狙うにせよ、あまりガツガツすることはない。若いころは「月に35日は川で頑張っている」と自他ともに認める熱血釣り師だったが、いまは楽しみだけで鱒を釣るようになった。
だから、私が「投げて巻いてりゃ鱒は食いつくさ」なんてうそ吹いたとしても、真剣に真に受けたりはしないようにしてほしい。もし、あなたが私以上に頭を使い、体を使って創意工夫するならば、もっとたくさんの素敵な鱒をその時々に手にすることがきっとできるのだから、あなたはあなたなりに満足のいくやり方で鱒釣りを楽しめばよいのである。
私ならもうじゅうぶん過ぎるくらい鱒を釣って今日まで遊び呆けて来た。だから、ちょっと素敵な場所で竿を出しているときに、あとから来た若者が釣りたそうにしてこちらを見ていたら、私は快く釣り場を明け渡して去って行ってもよいと考えている。それがあなたかどうかはわからないが、もしあなたなら、「長尾のおっさん、いいとこあるぜ。ありがとう」そうきっと心で感謝して、親指をグイと押し立てて、去りゆく私の後ろ姿をほのぼのとした気持ちになって見送ってほしい。
そして、そんな日には、そのあと心ゆくまで、時間の許すかぎりあなた自身じゅうぶんに納得のいく鱒釣りを堪能してほしいものだ。
川は何処へも行かないし、流れが絶えることもこの先何万年ものあいだないであろう。
そして、鱒は流れのなかで鰭をそよがせ、じっと辛抱強く餌がやってくるのを待っている。
しかし、それに引き換えひとりの人間の人生は総じて短い。かつて開高健が嘆いたように、人間の寿命などたかが知れている。
賢人シュニッツラは、こう言ったそうである。「ランプの灯の消えぬ間に生を楽しめよ」と。ランプの灯の消えぬ間に生を楽しめよ、である。
だから、みなさんにも存分に楽しんでもらいたい。もっともっと鱒釣りを楽しんでもらいたい。明日も時間が許すならば川へ出かけて鱒を釣るがよい。
できれば、私もそうしたいものだ。
では、みなさん、いつか川で会える日を楽しみに、今日はこのへんで!

釣行レポート

今回は4lbを使用したがスプーンには6lbが理想的

釣行レポート

リールにはシルバースレッドトラウトクリアー4lbを巻いて挑んだ

釣行レポート

スプーンの名作ライトニングウォブラー

釣行レポート

羽化に失敗したメイフライが目についた

釣行レポート

山は春紅葉して桜が目を惹いた

釣行レポート

川は友達である。しかし、川は魔物でもある。油断すると呑まれる

釣行レポート

長大な流れを釣るのは張り合いがある

釣行レポート

3月の鱒にしては悪くないサイズだ

釣行レポート

夕暮れのひとときを、鱒を釣って楽しんだ

【今回の使用タックル&ライン】

ロッド : UMFウエダ STS-74MN-Si BORON
リール : ダイワ ニュー イグジスト2004
ライン : ユニチカ シルバースレッドトラウトクリアー 4lb

ページのTOPへ

釣行レポート一覧へ