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釣行記

釣行レポート

2014年3月19日

妖怪の里・藤川谷川を釣る

 山歩きに重きを置いたせいではない。また、妖怪の里をふらり散策する酔狂から釣りがおろそかになったせいでもなかった。私の腕前が至らなかった。あるいは本命のアマゴの機嫌が必ずしもよくなかった。さて、どっちであろう。おそらく、その両方だったにちがいない。けっきょく、藤川谷川では2尾のアマゴしか釣りあげることができなかった。
 だから、自慢話を聞かせようにも今回はネタに乏しい。
 そこで、これまでの経験上、ここは外せないぞという釣りの穴場を、当地の妖怪伝説とからめながら少しばかり語ってみようと思う。
 藤川谷川は、たいした規模の渓流ではないが、中流より下は落差の少ない奥ゆきのあるゆったりした流れが連続しており、ところどころ水深のある淵が配られている。また、大きな堰堤がいくつかあって、その下のプールも水量たっぷりで、尺を超すアマゴがひそんでいそうな眺めである。
 流れを左下に眺めながら上流へ向かって車を走らせていくと、学校のある集落にたどり着く。その少し先の照明のない短いトンネルを抜けると、やや渓相が険しくなる。さらに奥をめざすと、流れは左に逸れて道からしばし遠ざかるが、そのすぐ手前に急な傾斜の引き込み道が谷底へとくだっているのが見えるだろう。それをくだり、流れに架かる橋を渡る。橋の向こうの猫の額ほどの平地には人家が一軒。車はそこまでしか行けず、その先は踏みつけ道が渓流に沿って細々と奥へつづいているだけだ。それも、山林にまぎれてしまう。この辺まで来ると流れの規模はさらに小さくなり、ポイントをしぼりやすいためフライやルアーで釣ると楽しいにはちがいないが、今年は春が遅くて、餌釣りでも底を舐めるようにじっくり釣らないとアタリもない有様なのだそうだ。まあ、状況はどうであれ、元来藤川谷川の中流域より上流と私は相性がよくないみたいで、5尾以上釣れたためしがないから進んで足を運ぼうという気にはなれない。むろん、もっと足しげく通えばいい思いができるのかもしれないが、カゲロウが宙を舞う絶好の条件の日でもその程度しか釣れないのだから、やはり、なかなか重たい腰があがらない。
だから、いつもあまり奥へは足を運ばずに、トンネルから下の流域で、本命のアマゴを狙っている。フライで釣ることが多いが、今回はルアーでやることにした。

 藤川谷川は、舟くだりで有名な大歩危峡で本流の吉野川と合流する。付近には舟くだりの舟の乗り場があり、ドライブイン、観光ホテル、妖怪屋敷がある。吉野川本流に沿って上流へと向かうと、高知との県境まではもうあと少しだ。
 釣りに出かけた3月19日は、吉野川との合流点から少し上流へ走ったところにある休憩所の駐車場に車を乗り入れて仕掛けの準備に取りかかった。昼食は休憩所の東屋で食べた。東屋のそばにはトイレも完備されている。その傍らに赤い幟が弱い風に揺れていたが、白抜きの文字で「妖怪まつり」と書いてあった。藤川谷川流域の山村には妖怪の言い伝えがいくつもあって、ゲゲゲの鬼太郎で有名な児泣爺のふるさとでもある(児泣爺の言い伝えは剣山系の村落で広く語られてきた)。休憩所の近くには児泣爺の石像が立っている。ほかの木彫の妖怪らも立っている。どれも、藤川谷在住の妖怪ばかりである。
 たとえば、休憩所のちょっと下流にエンコの棲む淵がある。その淵を望む道端にエンコの木彫が立っている。どうにも人を食ったような面構えがなかなか憎めない。エンコとは河童のことで、エンコの淵は河童の棲み家というわけだ。
 私は昼食のあと、釣りを開始する前に、この付近をぶらぶらして妖怪どもにあいさつしてまわった。エンコの木彫にもあいさつした。そして、道から谷底の淵の様子をちらっと窺った。やや増水気味の流れは勢いがあった。そのせいもあって淵は流れが速かった。その流れのなかに、上流を向いて定位する魚影をふたつばかり認めた。アマゴである。
「エンコが出るともっとよかったのだけど」と私は残念がって笑った。
 どうせ、エンコが姿を見せても子河童であろう。じつは、この淵は釣り仲間のあいだで「エンコの淵」と呼ばれてはいるが、大した淵ではなくてせいぜい子河童の遊び場にすぎない。
 本当のエンコの淵は、案内板の説明にもあるように、ここから3キロ半ほど上流にある。昼なお暗いと解説にあるが、そのとおりで、碧く冷たい水を満々とたたえた凄味のある淵である。ここならば親河童がひそんでいるにちがいない。まだ、仕掛けを入れたことはないが、近づくとエンコの餌食にされぬともかぎらないので、やはり釣る気にはなれないのである。

 私は、車を駐車した妖怪まつりの幟の立つ休憩所の裏手にある階段を使って流れのほとりへと降りた。
さっそく、降りたその場所から釣りを開始する。
渓流の釣りは釣りあがるのが基本であるから、下流側から上流側へ向けて仕掛けを投入することをくり返しながらが、上流を目指すのがふつうだ。これは、餌釣り、フライフィッシング、ルアーフィッシングなど釣り方を問わない。
 藤川の下流域は落差の少ない、ゆったりとした流れの連続する渓相で、今回のように少し水量が多めだと流れもなかなかにして速い。すると、仕掛けは下流側へと押されて、あっという間に釣り人の方へと流されてしまいがちである。こういうときは仕掛けをよく考えて組まないと釣りになりにくい。
 私は、ナイロンラインを主に使うが、条件次第ではPEラインとフロロカーボンリーダーの組み合わせも少なからず使用する。今回はわりと奥行きのある浅めの速い流れを攻め落としていく展開を考慮して、ユニチカ・シルバースレッドアイキャッチPEマークス4lbをメインラインに使用し、リーダーはユニチカ・シルバースレッドトラウトリーダーFC4lbを連結した。リーダーに結ぶルアーはスプーンを多用した(ミノーも用いたが今回は話題には取りあげない)。
 PEラインのよさは、重さが軽いために、空中にラインを張ることが容易な点だ。これは、仕掛けが複雑な流れの干渉を受けにくいということを意味し、たとえばナイロンよりも比重の軽いPEの方が操作性において優れていることがよくわかる。PEは軽い編み糸だから風の抵抗を受けやすく、したがって強風時には使いにくいとの指摘があり、またそのとおりだが、そのばあいは仕掛けも釣り方も変更すればよい。
 先に述べたとおり、PEは軽いのでフロロカーボンのリーダー部分だけを水中に入れて釣ることも条件次第で可能である。加えてPEは伸びがほとんどないので、誘いを入れるばあいにアクション付けがしやすいという利点も働く。また、リーダーの長さを変えることでルアーを泳がせる層を深くしたり浅くしたりできるし、流れに押し流されにくくすることも可能だ。
 ルアーは、扱いやすくその場の条件に合う物なら問題はないが、私はハスルアーのように「への字型」をした小型のスプーンを多用する。キャストしたら、ロッドを立て気味にして、なるべくメインラインのPEが流れに触れないよう空中に張った状態で誘いを入れる。ロッドの立てぐあい、誘い方はケースバイケースだが、縦に小刻みに誘うことが多い。いわゆる「縦の誘い」である。スプーンの重さは流れの規模と速さを睨んで選ぶがわりと大まかだ。大きさではなく、厚みのちがいで重量を変える。標準的なもので間に合うならそうするし、重くしたいなら分厚くて重いものに交換する。最近のこのタイプのスプーンは厚みのちがいで重量を変えてある製品が少なくないため同じ大きさで重さだけ軽くしたり重くしたりできて大変重宝している(注・ハスルアーは大きさで重さがかわる)。サイズの目安は、普通規模の渓流なら、いちばん小さいものを買っておけば釣りに支障はない。
 下流から上流に向かって釣るばあいも、まわりこんで横から釣るばあいも、「食い波」と呼ばれる流れの筋に仕掛けを入れて、その食い波から仕掛けが逸脱しないよう、少しでも長く誘いつづけられるよう努力する。落差に乏しい奥行きのある広い流れもよく見ると流れはあんがい複雑である。二つの流れの筋がひとつに合わさって流れていたり、ヨレが生じたり、流れの左右には反転流が生れていたり、ときに渦がぐるぐる巻いて底へと吸い込む流ができることもある。先に述べた「食い波」もその流れ方のバリエーションのひとつだ。食い波は速い流れの筋が幾筋かあるばあいに、速い流れと速い流れのあいだに生じる緩やかな流れのことを言い、この流れの筋に魚がつきやすい。PEラインを空中に張って縦の誘いで攻めるなら、上流に向いて食い波のなかに定位するアマゴを下流側から狙うにしても、誘うのが楽である。横から釣るばあいも比重の重たいリーダー部分以外は空中に張ってあるので手前側に流速のちがう複雑な流れが横たわっていようといまいと何ら釣りには問題がない。比重の重いフロロカーボンのリーダーは流れによく馴染んでアンカーの役割も果たすので、トレースしたいコースから仕掛けが容易にはずれてしまうことも起こりにくい。
 ほかにも、巻き返し、反転流、沈み石の前後もアマゴがつきやすい。いずれも、仕掛けが着水後まもなく食いついてくることがよくあるので、ルアーが着水するよりも一瞬早くにリールのベールを返して、できるだけ糸フケを出さないよう心がけ、いつでもアワセを入れられる態勢をとっておくようにしたい。
いま説明したことは、あくまでも数ある釣り方のなかのひとつにすぎないが、覚えておいて損はないだろう。
では、みなさんも、よい釣りを!

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使用したラインとリーダー

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への字型をした蓮ルアーは縦の誘いに効果大

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おや!目玉おやじ、鬼太郎、元気かい?

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木彫りの妖怪の傍らには説明書きが

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こんな妖怪の休み場があちこちに

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道端に立つ児泣爺の石像

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ぞぞぞっ!エンコに見おろされる

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エンコの木彫りの下にある淵。アマゴが見えた

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どうみるかは意見が分かれようが、枝流桃谷の石組みには息を呑む

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この沢山の目。釣れない日には「下手糞め!」と言われているようだ

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石の沈む浅い流。いかにもアマゴが付いていそうだ

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待望のアマゴがヒット。下流側へと走った

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今回の釣果。2尾ともよく肥えていた

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春本番を待ちわびるような春蘭の花芽

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ショウジョウバカマが早春の光を浴びて咲いていた

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読書。これも釣果のあがらない原因の一つか?

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渓沿いには梅が咲き誇っていた

【今回の使用タックル&ライン】

ロッド : ウエダ・STS-501MN-Si
リール : ダイワ・ニューイグジスト2004
ライン : ユニチカ・ シルバースレッド・アイキャッチPEマークス4lb
リ−ダー : ユニチカ・シルバースレッド・トラウトリーダーFC4lb

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