2014年4月2日
行き去るもの、迫りくるもの
渓流は釣りあがるのが基本なので、釣り終えて上流側へと向かうとき、いま攻めた流れを横に見ながらどちら側かの岸辺を歩くことになる。そのとき、ラインをリールに巻き取らず、仕掛けを後方に流したまま上流側へと向かうフライマンも少なくないだろう。フライを投げるのに必要な長さのラインを後方に流しておけば、次またキャストする際にリールからラインを引き出す手間が省けるのだから手返しがよい。
このとき、後ろに流したフライは水面付近でふらふらしながら歩く釣り師につられて上流側へと移動する。上流側へと仕掛けに引かれたフライが、まるで流れに逆らうかのように動くのは、餌をつけ狙う鱒からすればとても魅力的に映るだろう。
だが、いま釣り終えた流れの脇を通る釣り師の姿も見てしまっているわけだから、いくら鱒が食いしん坊だとしても、どうだろう、食いつくはずなどないのではないか。
ところが、その仕掛けにアマゴが食いついて唖然としたことが私には一度ならずある。しかも、流れのなかを遡行中に釣れたことさえあった。その後も、幾度か同じ経験をした。アマゴのほかにイワナが食いついて来たこともある。釣り仲間のなかにも同じ経験を持つ者がいる。
しかし、これも、自分の方へと迫りくるものには警戒心を相当強く抱くけれど、背を向けて去って行くものに対してはそれほど関心を払わない、そういうところが鱒にあるのだ、そう理解すれば首をかしげなくてもすむのではないか。
昨年のこと。後ろに流したままのフライにイワナが食いついた
イワナは力持ちでよく引く
つい先日、このことを思い出して、上流へ移動する際にわざと後方に仕掛けを流しておいたら、何の冗談かアマゴがミノーに食いついた。
この日は、アマゴが5尾、イワナが1尾釣れたが、小さいのはリリースしたので、活かしビクのなかには2尾のアマゴと1尾のイワナが残った。しかも、後方に流しておいたミノーに食いついたアマゴがこの日の最大魚だった。わざと狙ってやったことなので、自慢してみたくもなるが、仲間に話すとどんな難癖をつけられるかわからない。だから、今日まで黙っていた。
渓流の定番、シルバースレッドトラウトクリアー4lb
シルバースレッドトラウトクリアー4lbを使用
使用したミノー
遊漁承認証。今年は黄色だ
速い複雑な流れのなかにも魚のひそむ緩い流れがある
白く泡立つ流れの筋の向こうの緩い反転流を釣る
浅い瀬でヒットしたレギュラーサイズ
いいサイズのアマゴが出た。ミノーはツインクル
鮮やかな朱点がアマゴの特徴だ
流れから頭を出した石の前側でイワナがヒットした
アマゴもイワナも釣れた
【今回の使用タックル&ライン】
ロッド : シマノ カーディフ・エクスリードHKS59UL/F
リール : シマノ ツインパワーC2000HGS
ライン : ユニチカ シルバースレッドトラウトクリアー4lb