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釣行記

釣行レポート

2014年4月24日

祖谷川(いやがわ)近況2

夕刻、イワナが次々ヒット!

 今時分のイワナは夕方からが勝負なので、べつに急いで車を走らせなくてはならぬ必要はまるでなかった。
なので、祖谷川上流へは、昼食をすませてからゆっくり出かけた。
到着早々、林道脇のいつもの空き地に車を乗り入れて、からだの筋を伸ばす運動を念入りにおこなったのち、釣りの準備をして、急な山の斜面を、いま流れのほとりへと降りていく。ルアーや小物を詰めたバッグのせいで腰の辺りがやや重たい。車から降りてすぐは外気が冷たく感じられたが、こうしてウェーダーを履いて山の斜面を歩いていると、暑くもなく寒くもなくちょうどよかった。
 釣りはじめて15分ほどでイワナが釣れた。大きくはないが小さくもない。
それでも、折角だから、写真を撮ろうという話が出た。が、しかし、さっとよぎる魚影を流れのなかに一度ならず目にしているので、もう少し辺りが薄暗くなって、大きいイワナが釣れ出すまでは、時間を惜しんで釣りに専念しょう。きっと、大きいのが釣れるはずだ。そう考えて先を急いだ。
 すると、だんだん空がひらけて見通しのよい場所に出たと思ったら、その先の奥行きのある流れの瀬尻ぎりぎりのところで、イワナが下流側にまわりこむようにして、私のあやつるフローティングミノーにパクッと食いついた。冷たく澄んだ水の流れを透かして、その様子を私は目にはっきり捕えていた。あまりに瀬のヒラキぎりぎりで食ったので、下の流れに落ちるかと見ていたら、イワナは難なく態勢を立て直し、脇の緩い流れのなかに造作もないような余裕を見せて戻っていこうとした。
それは、イワナが元々ひそんでいた場所で、そこから素早く何か影が走り出たかと思ったら、私のあやつるミノーに躊躇なく襲いかかったのだった。
「アマゴなら、ヘマをして、きっと下の流れに落っこちているところだ」と私は感想を漏らした。
 イワナだから、上手にやってのけた。そう私は確信にも似た思いを持った。
しかし、イワナのその器用さが、イワナ自身に災難を招いてしまった。
私は食いつくさまを確認しながらアワセを入れたので、その後のやり取りに余裕があった。
冬の呪縛を解かれて久しいイワナは力強い引きをみせたが、私は慌てずに対戦相手をあしらうことができた。
 このイワナは写真を撮って、活かしビクに入れてキープした。正真正銘本日第一号の素敵なサイズのイワナである。これに弾みがついて、その後も飽きない程度に中くらいのイワナやアマゴ、それにチビ助のイワナがルアーにちょっかいを出して来て、私は釣りあげたり釣り落としたりしながら楽しい時間を過ごした。
 上空に、山林に画された、裂け目のような細長い空が、一際明るかった。
 私の釣り歩く谷の底は夕暮れの気配が濃かった。
「そろそろだな」と私は独り呟いて、ずりこけ気味なウエストバッグのベルトを、キュッと引き絞ってから、ふたたび同じフローティングタイプのミノーを流れに投げ込んだ。
 水中でミノーがヒラを打つよう竿先を小刻みに動かす。そうしながらもう片方の手でリールにラインを巻き取っていく。すると、私のあやつるミノーが弱った小魚のように見えるので、イワナは尾鰭の辺りがむずむずっとしてきて、どうにも我慢しきれなくなって、ついにはガブッと食いついてしまうというわけだ。
ところがどっこい!
  そいつは当然のこと死にかけの小魚などではなくて、三本鈎の付いた偽物で、パクッとやっちまったが最後、顎を捕えられて、水の無い別世界へと、その身を吊りあげられてしまう羽目になっちまうのである。
 付近が薄暗くなるまでに、もう何尾のイワナを釣ったろうか。はっきり憶えてはいないが、そのうちのイワナ4尾アマゴ1尾の計5尾は、氷の入ったクーラーに入れて、ありがたく持ち帰ることにした。
 イワナは、塩焼きにするとおいしい。炭火でじっくりこんがり焼きあげるのが正統派の料理法だが、ガスならごくごく弱火で時間をかけて炙りたい。
 また、そのモチモチした食感の身を存分に味わったなら、あとは日本酒をそそいで、骨酒にして酔っぱらうのが通の作法というものだ。だが、まあ、酔うのもほどほどにしておかないと、二日酔いして明日の仕事に支障が出ないともかぎらない。
まったく。
深酒は禁物である。
 どうぞ、ご注意あれ!

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ラインを使い分けてみた。カラーに関係なく釣れた

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ミノーはツインクルを使用

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フローティングミノーにヒットした良型

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平均して今回は型がよかった

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イワナもアマゴも肥えていた。餌が豊富なのだろう

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かずら橋タクシー所有のボンネットバス

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杉の立ち並ぶ林床にシャガが咲いていた


奥祖谷かずら橋

 釣りとは関係ないが、源流に架かる奥祖谷かずら橋は観光名所として有名。しかし、観光客のなかには、中流に架かる祖谷のかずら橋がそれだと勘違いして源流域まで足を運ばない人も少なくない。源流に架かる元祖かずら橋は有料であるが、中流の規模の大きい方は渡るのに料金は要らない。
 なお、冬期は積雪と路面凍結で道路が通行止めとなるため春まで閉鎖される。

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吊り橋の材料のかずら

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徳島の山は深く険しい(剣山系)

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名所・奥祖谷かずら橋

男爵、ミノーイング初挑戦でイワナをキャッチ

 5月4日、日曜。
 男爵こと三木一正とイワナを釣りに出かけることになった。午前中は自社の修理場でトラック(男爵は稼業が運送屋)を少しいじらなくてはならないとのことで、高松を発ったのは正午過ぎ。
 十日ほど前、祖谷川でいい思いをしたと私が話したら、「俺も釣りたいぜ」と男爵が話に食いついて来て、では「行こう、行こう」と意気投合しての釣行だった。
私は言った。「ゴールデンウィークだから、どこも混み合って釣り場を探すのに一苦労するだろう。大きな川にはちがいないが、人気の釣り場だから、前回と同じ場所へ入渓できるとはかぎらない。だが、夕方遅くに着いて、さっさとやっつけて、暗くなりかけた杉の木立のなかを道路までもどれるなら、あるいは楽しい思いができるかもしれない。まっ、出かけてみての都合だがね」
「急がなくても間に合うか?」
「大丈夫さ。夕方5時半くらいに流れのほとりで仕掛けを組みはじめれば、それから1時間半は、まあ、どうにか釣りを楽しむことができるだろう。その後、楽に道路へと出られるところまで、さて、そこへ行きつくまでの時間を逆算すると、どの辺へ降りて釣りはじめればいいか、今、それを思案中ってわけさ」
「まっ、生きて帰れるよう、頼むぜ」
「せめて畳の上で死にたいなってことか?」
「残り少ない人生だ。大事に生きなくちゃ」
「ふふっ、なに柄にもないこと言ってやがる」
 釣り場へは貞光川沿いを行くルートを選んだ。しかし、どのルートを辿ろうが、ゴールデンウィーク中だから車が多いと予想される。しかも、その多くは土地勘のない観光客の車だ。普段から山道になれているとも思われない。国道といっても道路は狭いところが多く、見通しも効きにくい。貞光川沿いのルートは剣山へ行くのに近道だけに、ここを通るドライバーが最も多いのは、まずまちがいないだろう。そこで、出合い頭の事故を避けるため、最大の難所であるヘアピンカーブが連続する山頂近くを通らずに釣り場へと行ける林道に逸れて、あまり知られていない峠を越え、一路目的地をめざした。
 男爵は、これが三度目の渓流釣りだが、木製のミノーでイワナを狙うのは初めてである。これまでのように投げて巻くだけのスプーンとは勝手がちがって、いくぶん要領がいる。べつにミノーでなくても、スプーンでもスピナーでも釣れるが、小魚に似せたミノーで釣るのがカッコよく思われたのだろう、「俺もミノーで釣ってみたい」とせがまれては首を縦に振らぬわけにもいかなかった。 「木で拵えた小型のミノーは軽いから慣れないと扱いにくい。とくに浮くタイプは沈むタイプに比べて汎用性に乏しいから、上手に釣らないと獲物にはなかなかありつけないよ。投げたら、着水前に糸がピンと空中で張るように、まずは心がける。そうしないと、着水と同時にきびきびした誘いかけができないぜ」
「なるほど。ちょっと試させてくれ」
組みあがったばかりの仕掛けを手に男爵は流れの方へと大股で歩いていく。
さっそく、ロッドを強く振って、目の前の流れにパシャッと仕掛けを打ちつけるかと思って見ていたら、男爵は曲げた竿の反発力を利用して上手に投げてみせた。
竿先をチョンチョンと小刻みに動かして誘いかける。すると、奥行きのある流れをミノーがヒラを打ちながら半分ほど泳ぎくだって来たときに、イワナが食いついた。10cmくらいのチビ助だ。
「おいおい、やめてくれ。もう1尾、デカいのが見えたぜ。どうして、よりにもよって・・・・・、ちくしょう!」
「あらまあ、そいつはお気の毒さま。折角だから撮ってやるよ」
 私はカメラを取り出して構えようとした。
「こんなチビと一緒に写るのは御免だよ」
「そういうな。カメラを向けたら、スマイル。スマイルだ」
「笑えません!」
 男爵は苦虫をかみつぶしたような表情をみせた。
「よせ、いかつい顔が余計にいかつく写るだろ。笑えってば」
 その後、同じ場所で何回か投げて誘っていると、いちどだけ大きいのが足元近くまで追って来た。が、しかし、残念ながらそのイワナに口を使わせることはできなかった。
 それでも、のっけからイワナの顔を拝めるとは、来た甲斐があるというものだ。
 男爵は釣りのセンスが元来よいが、繊細な渓流の釣りにもその才能をいかんなく発揮した。
 暗くなるまでの時間を逆算して、釣りあがるコースを決めたので、よもよもしていては林道へ出るまでに真っ暗になってしまいかねない。私はそれでもかまわないが、男爵は不安だろう。だから、ペースを守って手返しよく釣る必要があった。
 キャストに正確さを要求されるなかでも、とくに流れに勢いのある小場所は釣るのが難しいので意識して避けた。そうでなくても小さなポイントまでをこまめに攻め落としながら釣りあがるには到底時間が足りなかった。
 その後も、男爵は奥行きのある緩やかな流れにミノーを躍らせて中くらいのイワナ3尾、少し大きなのを1尾。小さいのを合わせると7つか8つ釣りあげた
 アワセ損ねや釣り落としたのを合わせると両手の指に余る数のイワナを相手にしたことになる。
「あんたは運がいい。ツイてる。つくづくそう思うな」と私は言った。
「そうかな」
「きっと、死ぬときは畳の上だ」
「願わくは、もっと、いいモノの上で逝きたいな」
「阿保か。そんなバカ言ってやがると、ユニチカに・・・・・」
「載せてもらえませんかね?」
「いや。あんがい喜ぶだろう」
「なんじゃ、そりゃあ」
もう辺りは薄暗かった。瀬の音が冷たく聞こえていた。
山の杉の林のなかは、なおいっそう薄暗い。
私は男爵が辿るべきルートを誤らぬよう先立って歩いた。
もう何も語らず、ただ黙々と。

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男爵が使用したライン

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ポイントを下流側から攻め落としていく

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奥の白泡の手前側でライズをみつけ男爵。俄然、ヤル気に!

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男爵はミノーで初めてイワナを釣った

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笑うしかないサイズ。「あちゃー、チビやがなぁ」

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ちっちゃいのはすぐさまリリースした

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てきぱき釣って、さっさと移動する。見極めが肝心

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石は動くものと仮定して慎重に歩みを運ぶこと

【今回の使用タックル&ライン】

ロッド : シマノ カーディフ・エクスリードHKS59UL/F

リール : シマノ ツインパワーC2000HGS
ライン : ユニチカ シルバースレッドトラウトクリアー4lb
      シルバースレッドアイキャッチ4lb

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