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釣行記

釣行レポート

高松市街地沿岸のシーバス

2014年12月4日、1月13日

 かつては四国の玄関と呼ばれた時代もあった高松市だが、本州四国連絡橋の三ルート開通後は、交通の要衝としての役割をほぼ終えたといってよいようだ。連絡船が廃止になり、フェリーの便数も、観光名所に足を運ぶ旅行者の数も、ずいぶん減った。讃岐うどんブームは相変わらず人気の衰えを知らぬところではあるが、それでも高松築港に隣接する繁華街などお世辞にも活気があるとはいえない。ほんとうに、いろいろ苦戦を強いられている。
 ところが、そんな人間様の悩ましい実情など解せぬといわんばかりに、その数を増しつつ沿岸の海をわがもの顔にのし歩く(泳ぐ、か)魚がじつをいうといて、そのことが私たち釣り師を少なからず嬉しがらせてくれている。
 その魚は、シーバス。
 近年、備讃瀬戸全域においても、その勢力拡大ぶりには目をみはるものがある。
 そこで、このシーバスのルアーフィッシングを私が連載している雑誌で紹介しようと思って、情報を得るべく釣り仲間に連絡してみた。
 ところが、その道に明るい仲間の誰に訊ねても、高松市内の港や河口付近で釣れていると自信を持って語るものは一人もなかった。
「近場で釣れているという話は聞かないです」と誰もが口を揃えて言う。
 ベイ・エリアや河川河口域でシーバスを、それこそ一年を通して熱心に狙っているルアーマンたちが、まったく釣れていないというのだからお手あげだ。だから、そのときは、「こいつはやめておいた方がよさそうだぞ」と正直思った。
 そもそも、ベイトフィッシュが少なすぎるらしい。当然、ボイルもないそうだ。
「来月ならよかったのですが」と仲間の一人が言った。
 それはたしかにそうだろう。いつものことだ。もう一カ月先なら任せてくださいという話に誰もがなる。今はまだ少し早すぎやしませんか、と。
 しかし、旬の魚を手にした写真を見映えよく雑誌に掲載するためには、悠長に事を構えてもいられない。取材は旬の時期に常に記事が載るように行われるのが必定。どうしたって先行しておこなわざるを得ない。
 なんとも頭の痛い話であるが愚痴っている暇はない。雑誌の発売日を睨んで旬を先取りしなくては成り立たないところがある。困った話だが仕方ない。
 ところが、今回ばかりは、これまでみたいに、そう言いながらもなんとかなるさ、ほらね、なったでしょ、と、そう都合よくは当然のこといきそうにはなかった。
 そこで、11月上旬発売の12月号の雑誌の取材は、田所さんを誘って鳴門市の北泊新港へ秋アオリを狙いに出かけることにした。その様子は、べつに記事として当ホームページにすでに書き込んであるので興味のある人は読んでもらいたい。
 ところが、である。
 ベイトフィッシュのイワシの回遊が少々遅れ気味なので気を揉みはしたが、十月下旬には屋島大橋より下流の河口エリアやG地区、F地区、高松築港内でもシーバスのボイルが見られるようになった。やはり、ベイトフィッシュはイワシであった。むろん、サヨリも群で入って来るには来るのだが、その時点ではイワシだけであった。
 男爵こと三木一正の自宅がすぐ近所なので、なおのこと情報は逐一入手可能である。
 しかし、ランカーサイズも夢じゃないと男爵が連絡して来たときは半信半疑であった。でも、待てよと思って考え直した。長年自分の庭のように考えて釣りをしてきたフィールドである。男爵には男爵なりの根拠があって誘ってくれたのだろう。
 こいつは話に乗ってみるしかないと思った。
 ただし、干潟の河口域をメインに釣るというのに、私の体調がイマイチ思わしくないこともあって、当日の夜はウェーダーを履かずに岸から狙うことになった。これには、男爵も難色を示した。ここの浅瀬は潮が引きだすと浅いところと溝になった少し深いところがあちこちに見られ、その深いラインに沿ってシーバスがベイトを求めて動くそうなので、ウェーダーを履いて立ち込むことをしないでは釣果が減る。それどころか、もしもベイトフィッシュが沖のほうにかたまってしまうと、お手上げである。シーバスがイワシを追ってボイルをくり返していたとしても、射程距離外では意味がない。それなら、何処から狙えば釣りになりそうか。仕掛けがじゅうぶん届くのか。そんな場所が何カ所くらいあるのか。もし複数あったとして、どの順番でまわればいいのか。それらの判断は男爵にゆだねられることに。
 でも考えても見よ。これを自分に当て嵌めて考えるなら、「ウェーダーも履かずに、冗談じゃねえ!」ということに、やはりなるだろう。男爵には気を揉ませてしまったかもしれないと、ちょっぴり反省した。
 それでも、そこは男爵である。
 どうにかこうにか記事の体を整えてくれたのはいうまでもない。
 では、その屋島大橋下流付近を取材したレポートを、これより紹介してみたい。


「デカいシーバスの写真撮らせるから釣りに行かないか」と男爵が連絡してきた。電話の声は、明るく弾み、自信満々だった。
 長年の経験から察するところ、明晩なら確率が高いという。
「ハゼならすぐにでも話に乗るが、シーバスはもともと数の釣れる魚じゃないし、ほんとうに大丈夫かな」と私はちょっと疑った。
 すると、男爵が言った。「まったく釣れないということは、まず、ないさ。ベイトは多いし、シーバスの追いも活発だから」
 今回の釣り場のG地区東岸付近は、男爵の自宅のすぐ近くである。それだけに、男爵は毎日のように様子を見に出かけている。その上で条件的に申しぶんないと判断したようだった。わざわざ電話をかけて来たのも、俺の目に狂いはないぜという自信のあらわれからだろう。
「よし、乗った!」と私はきっぱり答えた。

 釣り場には22時前に到着した。そこは屋島大橋河口の船溜まりの東端で、G地区東岸の南端にあたる。男爵はまだ来てなかったので、先に仕掛けの準備を始めた。
 ウェーダーを履いて河口域にウェーディングすれば釣果はいっそう約束されるとのことだったが、そもそも夜間釣行禁止令が出ているのを、無理を言って出してもらったので、体調の万全でない私としては、海に腰まで浸かって釣るというわけにもいかなかった。
「釣りは二時間だけで、しかも、干潟の浅瀬に立ち込むのはなし。そのくせ、できればランカーサイズをよろしくなんて、どうかしてるぜ。まったく」
 こちらの都合を電話で聞いた男爵の、あのあきれかえったようなもの言いが今さらながら思い出される。
 男爵の話では岸から狙うにはボイルしているシーバスまでの距離は近くない。だから、仕掛けを細くし、遠投できるルアーも用意する必要があった。また、G地区の岸壁は足元の深みにもシーバスがひそんでいるので、かなり潜るタイプのルアーも欠かせない。
 ロッドはウエダ・シューティングシャフト〈ボロン〉962、ラインはユニチカ・シルバースレッドソルトウォーターⅡ8lb、リーダーはユニチカ・アイガーⅢスーパー3号。ルアーは14cm程度の細身のミノーを多用した。このほか、もう1セット、仕掛けの異なるタックルも使用した。
 釣り開始早々、私に普通サイズのシーバスが釣れた。その後、移動したG地区東岸先端の少し手前で、私が同クラスを取り逃がしたところで潮が速く流れはじめた。
 これを機に、男爵の提案で、屋島大橋西岸の小波止に移動した。ここでは船溜まりを背にして私が小波止のなかほどから河口向きを、男爵が先端に陣取って船溜まりの出入口付近を広く探ってみることに。すると、数投しただけで男爵に普通サイズのシーバスが釣れた。その後、私にも同クラスのシーバスがヒットした。
 潮は川から海へと速く流れていた。この速い引き潮の流れが、地形と相まって、潮目や流れのヨレを生んでいるようだ。ベイトのイワシの多くは潮目に沿って移動し、流れのヨレに揉まれてバランスを崩すのだろう、シーバスはそれを食おうとつけ狙っているようだった。ボイル音のする方へとルアーを投げて、ゆっくりリールにラインを巻き取っていると、ガツンと目の覚めるようなアタリが来た。見ると、男爵もロッドを曲げ、その身をのけ反らせていた。晩秋のイワシ回遊劇は、ランカーサイズのシーバスを狙う男爵のような釣り師には相当魅力的であるようで、釣りをする後姿からもそれが感じられた。

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地区から見た屋島大橋下流

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強い引きをみせた中クラス

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船溜まりの小波止からも狙える

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筆者もシーバスをキャッチ

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多用したルアー

 その後、アタリが遠のいてしばらく経った23時ころ、男爵のロッドが綺麗な弧を描いて撓った。少し沖の暗がりで海面が炸裂した。その様子から相当巨大なシーバスだと知れた。
「大きそうじゃないか」と私は問うた。
「まあまあだ」
 男爵は余裕でそう答えたが、足元に寄せられたシーバスはでっぷり肥えた大物だった。
「85cm以下はランカーと呼ばない」と男爵がそっけなく言った。
「メジャーを当ててみろよ」
「85cm以下は測らない」
 言うじゃないか、と思った。
 男爵は、向けられたカメラの前で笑顔を見せはしたが、あくまでもランカーサイズにこだわっている様子だった。
 しかし、この1匹を最後に、潮位がうんとさがり、流れが弱くなった途端、アタリが遠のいた。
もう今夜は、これ以上粘っても、どうにも無駄なようである。私たちは船溜まりの岸壁を歩いて車へともどっていった。

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使用したライン

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男爵が仕留めたデカ太シーバス

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男爵の釣果

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シーバスは早朝も狙い目

 正月三が日以降、G地区付近でシーバスが釣れているという噂はあまり聞かれなくなった。ベイトのイワシが沖へ出たとのことだった。それでも高松築港エリアはバイブレーションを用いて層を意識した釣りを心がけるとシーバスが狙えるそうだ。
 そこで、1月13日の夜に少しだけ竿を出してみた。ルアーは海面下50cm前後をタダ巻きで誘うのにちょうどよい大き目のミノーをチョイス。当然、水深は浅めでないとこの時期としては効果が薄いので、街の灯りを遠くに見る暗めの場所がいいと思って、港内の東に位置する造船所の奥の方へ出かけてみた。このエリアはストラクチャーも少なくない。
 すると、やはりバイブレーションなど小さめで縦方向にも横方向にも自在に誘えるルアーが有利なのはまちがいない。けれども、そのことはじゅうぶん承知の上で、私は14cmの深く潜らないフローティングミノーを選択した。
 そして、嬉しいことに数回投げただけでシーバスを手にすることに成功したのだ。
 サイズ的にも、まずまずだったので、タックルを添えて写真を撮った。
 すぐにリリースして、また釣りはじめた。
 けれども、その後、アタリはなかった。
 風はなかったが、寒さがひとしおだった。
 じっさい、もう少しねばれば釣れるのかもしれなかった。
 けれども、もともとふと思い立ってやって来た近場の釣り場である。あったかいコーヒーを飲みたくもあったので、これを機に、道具をたたんで早々に退散することにした。

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高松築港東側でシーバスを狙う

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まあまあのサイズが1尾釣れた

【今回のタックル、ライン】

ロッド : UFMウエダ COS-902L

リール : ダイワ セルテートハイパーカスタム2500

ライン : ユニチカ シルバースレッドソルトウォ-ターPE 12lb
      ユニチカ シルバースレッドソルトウォーターⅡ 8lb

リーダー: ユニチカ アイガーⅢスーパー3号

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