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釣行記

釣行レポート

好き勝手、書く

2014年12月10日

 最近よく言われることがある。
「こんな好き勝手釣りに関係ないことまで長々と書いて、よく掲載してもらえるもんだ。ユニチカって変わってるなぁ」
 たしかに変わっている。大阪に社を構えているだけあって、灰汁の強いおもろさがる。
 しかし、その社員の多くは、ほんとうは大して変っていないのかもしれない。大きな企業というのは、その大きさゆえの似かよった性質を有するのかもしれないし、私は企業人でないので推し量りようもないが、それでもユニチカのテグスを一手に取り扱っている日紅商事の社員のなかには相当変態的に絶対危ない、いや、おもろいおじさんが働いていたりする。数年前に比べるとその層は薄くなったが、定年に近い年齢のおじさんほどその変人ぶりを発揮してやまないようである。
 
「うちのホームページに何か書いてくれへん?」
ははぁ、おいでなすった。どうせ釣りの手柄話にユニチカのラインは素晴らしいとでも一言添えて、ついでに写真も載せて、宣伝をしろという魂胆かと私は思ったので、「何か書けとは、何を書いても文句を言わず載せるぜということかい?」と言葉の刃を返した。
「そうです」と担当者は答えた。
「じゃあ、書いてもいいが、書いたことに責任は持つが、いっさい書き変えはなしだ。それでもいいならやるけど、ホームページには載せられることと載せられないことがあるだろう。そういうばあいはどうする?」
すると、
「たしかにホームページはユニチカ本社サイドが運営に携わっているわけで、こちらの意向ではどうにもならないので、これは掲載しかねるというばあいもあるでしょう。そのばあいは、載せない。そのかわり、こういう内容のものを書けとか、文字数はいくらくらいとか、写真は何点ほどとか、注文は一切つけません。やりたいようにやってよろしい。そんなところでいかがでしょう?」
 こうしたいきさつから、私のホームページ上での執筆活動が産声をあげた。
 それ以来、約束は守られて、何を書いても何か不服を申し立てて来るでもない。いくらか没になった作品もあるにはあるが、約束どおりこちらから文句をつけることもしない。載せられないなら、丸ごとの掲載しなければよいだけの話である。
 かくして、まだ数年にすぎないが、今日までつづいている。

 書くにあたっては、読者がどういうのを読みたがっているか、そんなことは知ったことではない。そもそも誰か人に調子を合わせて書くのはまっぴらごめんである。
 とにかく、書きたいことを書き足りるまで書く。これがスタイルだ。予定調和的なもの、こんな話を書けば興味を持って読む読者が増える。読者受けするだろうし、メーカーも商品の宣伝になって喜ぶだろうというようなスケベこころは出さないように、努め努めて、ひたすら書く。もはや、これしかやりようがない。
 むろん、書くからには読んで欲しいわけで、そこは隠せないが、「読みたければ読んでください。無理につき合うこともないけれど」という姿勢がいちばんのびのびと書けて、それは作品の出来栄えに何かしら好影響を及ぼすと信じて、書く。ひたすら、書く。
 本年も、こういう姿勢を崩さずに書いていきたい。
 そう思っているので、どうぞ、よろしく!

 今日は、一月四日。まだ初釣りには出かけていない。
 雑誌の取材にメバルを考えているので、情報を集めているが、どうも今期の瀬戸内のメバル事情というと、ちっともいい話が聞かれない。
 たとえば、あす発売の月刊レジャーフィッシングの取材のときも、メバルがイマイチということもあって、ミノーで釣る鳴門のシーバスに変更したくらいだ。
 この取材釣行には、もうずいぶんつき合いの長いミキカツさんこと三木勝利氏、中村正樹氏を頼んで、万全の態勢で臨んだ。私の体調のこともあって失敗したら後日また出かければいいやというわけにもいかないので、見映えのする本命のシーバスをさっさと釣りあげて、写真を撮って、早々にひきあげたい。そういう算用もあって名人お二方に声をかけてみたのであった。
「どう、何とかなりそう?」とミキカツさんに訊ねると、「なるもならないも、このあいだ中村さんがランカーサイズを三尾もやっつけて、もう突っかえ棒がないと後ろ向きに倒れて後頭部を強打しそうなくらいに、そっくりかえっているよ。連絡すればわかる。昨日会ったときも、ご満悦の様子だったからな。ちなみに、俺はボウズだったが」
「でも、その前あたりに、三尾、それより少し前にも一尾。あんた、ランカーをものにしているそうじゃないか。中村さんに聞いたよ」
「それはそれ、これはこれだ。しかし、やるものだ。三連発だ。判で捺したようにランカーサイズばかり。やってくれますなあ。御老体も」
「ご機嫌損ねるぜ、御老体なんて言っちゃぁ」
 小鳴門海峡の話である。
 この水道は幅が狭く、規模の大きな川といった景観だが、北に抜けると瀬戸内海、反対側に抜けると紀伊水道に出る。
 今回は、瀬戸内海の出入り口付近で竿を出した。
 ミキカツさん、中村さんが四国本島側を担当。私は対岸の島田島の地磯の岩場とゴロタ浜でシーバスを狙った。
 お互い釣り慣れた場所なので、気軽に仕掛けを組みあげさえすれば、あとはもう、投げてリールに巻き取るだけという単純作業をくり返すだけのことなのだが、潮の流れ方や地形や風の強弱や吹く方向なども考慮に入れて釣らないといい結果にはつながらない。しかし、そういうことは目から得た情報を体が勝手に処理するかたちで働くので、取材といっても極度の緊張状態に陥ることもなかった。
 このときは満ち潮を釣ったが、北泊漁港近くの四国側はいつになく流れが緩めで、外灯の照る付近を覗いてみるも魚影を確認できなかった。付近一帯にボイルするシーバスも皆無であった。小メバルがピチャピチャやってはいたが、「気配がないな」とミキカツさんが心配そうな顔でいうほど状況的にはよくないようだった。
 それでも、天気は上々だし、あまり寒くないし、風もほとんど吹かなかったので、釣る方としては体にこたえるような過酷さはまるで感じなかった。
「大丈夫や。何とかなるでぇ。三人寄れば何とやら、や」と中村さんが言った。
 とりあえず、やってみようということで一決。それぞれ持ち場について釣りを開始した。
 対岸の島田島へは、海峡に架かる橋を渡ればすぐ行ける。駐車場所から地磯の岩場やゴロタ浜までは人家のかたまる山道を徒歩で海岸まで出て、そこから横に歩いてようやく到着となる。私は腰まで浸かって釣るような釣り方は好まないので、もっぱらウェーダーは移動を楽におこなうために履くのだが、今回もその目的で着用した。ウェーダーは保温性にも富んで、冬の地磯の釣りには欠かせない。
 ネオプレーンのウェーダーは生地が厚く、重く、動きがいくらか制約されるが、保温性に優れており、冬の釣りにはもってこいである。ゴアテックスなどの透湿防水素材のウェーダーは軽くて動きやすく、通気性があるので肌が蒸れないため、とくに冬場は湿気で足腰が冷えるのを防いでくれもする。膝の上あたりまでがネオプレーンでそれより上部が透湿防水素材というタイプもあるが、これは水温の低い冬場に浅場にウェーディングして釣るばあいに重宝する。私も一着所有しているが、すべてがネオプレーン素材のタイプに比べて格段に動きやすくて気に入っている。地磯の岩場やゴロタ浜では、海藻の付着した岩や石の上を歩くので、滑って転ばないためにも靴裏はフェルトスパイクがいちばんだ。私はフェルトタイプとフェルトスパイクタイプを状況に応じて履き分けている。スパイクの鋲は硬い地面や岩場を歩くことで、足に堪える。知らず知らずのうちに足腰にダメージを与えがちだ。若いときはそうでもないが、私くらいの年齢になると、けっこう後になって堪える。
 取材当日の夜は、生地に透湿素材を用いたフェルト底のオーソドックスなタイプを履いてシーバスとの対戦に臨んだ。

 戦術的に特筆すべきことは何もない。
 ただ、それでは、ここまで何も釣りの話をしてくれないのに読んできた読者はおもしろくないだろう。そこで、ひとつ書き添えておくとするなら、一本筋の通った流れを見つけるということだ。いい流れを探す。むろん、夜だから目で見て探せるとは限らない。とくに地磯の岩場やゴロタ浜は集落や漁港や道路からも離れているばあいが多く、暗い場所が多い。だから、仕掛けを投げてみて、手元に来る感触から流れ方を知るよう努めたい。海のなかに川のようなはっきりした細長い流れがあるばあいは、そこを重点的にとりあえずは釣ってみよう。流れのその向こう側へと仕掛けを投入する。その流が緩ければリールにラインを巻き取りながらアタリを待つ。むろん、リールを巻かずに立ち位置の下流側の流れに仕掛けを横切らせるという選択もありだ。要は流れ次第なのだが、このような流のなかで、わりとアタリが来ることも少なくない。仕掛けが自分の側へと流れきった辺りで、アタリが出る。あるいは、流れきってからのちに仕掛けをリールに巻き取り出してからアタリが出る。このばあいも、しっかりフッキングさえさせることができれば、「今日は来てよかったぜ!」ということになるだろう。
 手元に来る感覚としては、リールに仕掛けを巻き取るとき、リップが水を拾うことでミノーがその身をブルブルさせて躍るように泳いでいることを実感できることが、まずは大切である。こういう流れを探して釣る。すなわち、引かれ潮を釣るわけだ。もしくは、出ていく流れの脇に現れる手前へと押してくる流れ、これは反転流と呼ばれているが、この流れにミノーを乗せて、流れの速さに応じた巻きスピードで、ラインを張り過ぎず緩めすぎずの感を保ちつつ、必要以上にミノーが海面へと浮きあがらないよう気を配りながら、丁寧にリトリーブしつづける。この二つのタイプの流れをどうにかこうにか攻略することで釣果はおのずとついてくる。
 あと、ゴロタ浜を釣るようなばあいは、横移動しながら端から端まで広く釣り探っていくのも一つの手だ。とくに初めて訪れる場所では、これは有効な手段である。広々とした浜であっても、よく釣れる場所は大体決まっている。潮が出来さえすれば、その場所がポイントになる。あらかじめその場所がわかっているなら的を絞って狙えるが、そうでないならそれを見つけるべく相応の努力が必要である。
 釣りは、ポイントと時合の見極めが八割方勝敗を左右する。乱暴にいえば、それさえつかんでおけば、投げて巻くだけでシーバスは釣れる。あとは信頼できる仕掛けでもって無駄のないやり取りを心がけさえすれば高確率で取り込むことができるだろう。

 では、この雑誌のために書いた記事を最後に掲載して、今日はペンを置くことにしよう。


 小鳴門海峡の北の出入口付近で大型のシーバスが釣れている。
 ここ一か月ほどのあいだに、ミキカツさんが4匹、中村さんが3匹、北泊漁港のある四国側で釣りあげて若手の仲間たちを驚かせた。けれども、ベテランの御両人にとってはどうということはない。
「そりゃあ、三十年近くもルアーでシーバスを狙っていれば、ちょいちょい起こることさ」というわけである。
 当日の夜は、取材には悪くない天気で、さほど寒くもなかった。
 いつもはメバル用のタックルで、メバルやマダイやシーバスを一緒くたにして狙っているミキカツさんと中村さんだが、今宵ばかりはシーバスタックルをわざわざ持参して、ヤル気満々である。

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小鳴門海峡の北泊付近

 今回の釣り場の時合は、四国側が引き潮、島田島側が満ち潮だ。だから、島田島側を担当する私の方が有利だと言えなくもない。
 しかし、数を競うならともかく、ランカーシーバスを目的に狙うにはややこちらが劣勢かもしれなかった。潮通しのよい地磯や、地磯に付属するゴロタ場というのは、若くて元気溌剌のシーバスがベイトフィッシュをむさぼり食おうと集まって来るので、動きのいくぶん衰えかけた年配のランカーサイズは少ない。80cm前後なら普通に釣れるが、85cmを超すサイズは、河川の河口部とか人家に近い外灯でわりに明るい水道部の奥まった辺りのほうが釣れる確率が高いようである。一見してこんなところで大型のシーバスが釣れるはずはないと誰もが疑うような場所に、もしベイトフィッシュが多く集まっているならば、その夜は竿を出す価値がじゅうぶんある。
 ただし、この時期の海峡筋は、毎年のように雑誌にメバルの特集が組まれ、また、マダイをルアーで手軽に狙えるとの評判から、近年、釣り師の数が劇的なまでに増えた。

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松浦宏紀も小鳴門のメバルに魅了された一人だ

 当日の夜もメバルを狙うルアーマン、それからグレがよく釣れていることもあってオキアミや青ゴカイで良型のグレを釣ろうとやってきた地元の餌釣り師で賑わっていた。
「でも、まあ、ルアーを惜しまないでやるなら、まちがいなく釣果は望める。ワカメの養殖棚のロープが縦横に海中を走っているこういう場所は、仕掛けを引っ掛けやすいから、みんな竿を出したがらないんだ」
 それは、そのとおり。ミキカツさんの言うとおりだ。
 そして、高価なミノーを何個か失っても、それと引き換えに大型のシーバスをものにしてみせるとの豪胆さを、ミキカツさん、中村さんは誰から受け継ぐとはなく備えていた。
 そんな、二人の仕掛けだが、ラインがユニチカ・シルバースレッドソルトウォーターPE20lb、リーダーがユニチカ・シルバースレッドmini(ミニ)ショックリーダー-FC(フロロカーボン)20lb、ルアーはボディがやや太めのミノー(アスリートなど)14cm。ロッドとリールは標準的なシーバス用である。

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使用したライン

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このリーダー、どの位置でも引き出した糸端を止められ大変便利だ

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ミノーを多用した

 速い海峡特有の潮が、いい感じに流れていた。流れ同士がぶつかったり合わさったりして出来る潮の変化を睨みつつ、ミノーを投入する位置を割り出すのには、少なからず経験が必要だ。投げ損なうとロープに仕掛けを盗られてしまいかねない。それに、シーバスの捕食レーンにミノーを正確に泳がせないと、なかなか上手に口を使ってくれない。障害物が多くて、しかも複雑な流れ方をする場所で釣果を得るには、第一に正確なキャスト、巧妙な誘い方(といっても、リーリングはタダ巻きだが)、そして、手返しの無駄のなさが要求される。
 けっきょく、当日の夜は満ち潮だったので、引き潮時に釣りの成立する好ポイントを攻めることは叶わなかった。
 それでも、ミキカツさんは公約どおりにランカーサイズのシーバスを釣りあげてみせた。
 前回の釣行では3匹のランカーをものにした中村さんは、残念ながら今回は取材の趣旨にみあうサイズの本命を最後まで手にすることはできなかった。
 対岸の島田島の岩場でシーバスを狙った私はコンディション抜群の本命を数匹釣りあげたが、ミキカツさんのランカーサイズには及ばなかった。

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ワカメ棚のロープ際を丹念に探るミキカツさん

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ミキカツさんは、ランカーを仕留め超ご機嫌!

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ん〜今日はダメだ、と中村さん

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浅い磯の流れを味方につけ仕掛けを引き倒した

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中に着込めるネオプレンのライジャケなら保温性抜群

 私の仕掛けについては最後にまとめて記すことにするが、ラインの太さについては強度的に少々心もとなく感じられるかもしれない。たしかに、8lbは細いといえる。ナイロンラインのばあい根の荒い釣り場では、12lbか16lbを使うのが本来妥当であろう。だから、胸を張って薦めることはしない。みんな自分が楽しいようにやれば、それでいいのだ。
 では、みなさんも、よい釣りを!

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ウチノ海側の地磯では青物が好調

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青物はこのサイズが多い

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日中は青物も楽しめる

【今回のタックル、ライン】

ロッド:UFMウエダ STB-962HS-Ti

リール:ダイワ セルテートハイパーカスタム2508

ライン:ユニチカ シルバースレッドソルトウォーターⅡ 8lb

リーダー:ユニチカ シルバースレッドmini(ミニ)ショックリーダーN 20lb
     ユニチカ シルバースレッドmini(ミニ)ショックリーダーFC 20lb

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