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釣行記

釣行レポート

2015年6月15日〜8月1日

バス釣り日記

1

 たまたまそちら方面に用事があって五名ダムでトップウォータープラグの釣りに初挑戦してみた。このダムは、さほど山奥でもないのに、付近に民家が殆んどなく、車の往来も少なくて、なにより水が澄んで美しい。地形も単純で、ただ川の流れを横に堰いただけの、しかも規模的に大きくないダム湖だから、バスの当りもよさそうに思えた。
 バックウォーター側の道路わきから水辺へ降りていける場所を見つけたので、さっそくその付近でまずは竿を出してみることにした。

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ダム湖の地形は単純だ

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トップで釣るのもおもしろい

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張り出す雑木の枝の下は一級のポイント

 使う道具はベイトタックル。ユニチカ・シルバースレッド・アンブッシュ12lbをリールに巻いて持って来た。焦げ茶色のこのラインは最初見たときごわごわして硬い印象を持ったが、釣りに使ってみると適度にしなやかさで、初心者の私にも大変使いやすい。
 バス用のナイロンラインとしては、他に同シリーズのメイサイ、S.A.R.があるが、本編(『バス釣り日記』全編)ではこの三種類のナイロンラインを主に使ってバス釣りを楽しんだ。
 このほか、ナイロンラインとはまるで性格のちがうPEラインも使用した。ただし、PEラインはトラブルを恐れ、扱い慣れたスピニングリールのみに巻いて使った。リーダーにはナイロンハリスのグンターを用いた。
 伸びの殆んどないPEラインの、その感度のよさはナイロンラインの比ではない。バスは物陰につく習性があるので、感度のよさを武器に底の地形の変化をありあり私の手元へとまるで目に見るように伝えてくれるPEラインの存在は、とくに底を釣るワームの釣りには心強いばかりの助っ人である。
 しかし、フロロカーボンラインについては、バス釣り経験の浅い私には、どういったメリットがあるのか、まだまだ不明な点も少なくない。むろん、キャリアの長い人の説明を耳にするたび、目から鱗というわけで、ああそうかなるほどと思う節も多々あるが、なにしろまだ本腰を入れて使ったことがないので、現時点ではコメントのしようがない。

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シルバースレッドアンブッシュはビギナーの筆者にも扱いやすい

 バス釣りに初めて使うトップウォータープラグは、メガバス社のポップX。この優れ物ルアーは、そのあんぐりと開けた丸っこい口で水をけちらし、水上を前へ前へと進んでいく。強く誘うと、ポッコン、パッコンといい音を出したりもするが、バスは音に異常なまでに興味を示す魚だそうで、ルアーが生み出す音色の良し悪しで食いついたり食いつかなかったりもするそうだ。
 さて、このポップXだが、じつは購入したものではない。藤本釣り具の社長からの貰い物である。藤本釣り具には店番のハッピーという名の飼い犬が居る。ハッピーはビーグルという種類の狩猟犬で、だいたいいつも売り物のルアーを並べたショーケースのそばで寝そべっているが、どうしてこれが曲者で、うっかり社長がショーケースの戸を閉め忘れると、こっそり新品の売り物を失敬して、パッケージを食い破り器用に中身のルアーを取り出しておもちゃにして遊ぶ。
 これまでに同じことを三度やらかして、その都度ルアーを売り物にならなくしてしまったそうだ。
 しかも、三度とも三本鈎を二つ取り付けたルアーに食いついたにもかかわらず鈎が口に刺さったことがいちどもない。要するに痛い目をしたことがないのである。運がいいというのか、なので、どれだけ叱っても、一向に懲りないそうだ。
「まさしく狩漁犬ですわ」
 そう言って社長はわざわざ渋い表情を作ってみせたが、でも、まあ、そのおかげでメガバスの高価なルアーが棚ボタ式に私の手に落ちてきたのだから、ハッピーには感謝、感謝である。

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岸寄りを攻める筆者

 見渡すかぎり水面は穏やかだった。さっそく沖へと仕掛けを投入してみる。私の投げたルアーが描く水の輪のほか水面を乱すものはなにもなかった。私は波紋が消えてしまうのを待った。
 むろん、すぐに仕掛けを動かして誘いかけてもよいが、ぽかんと阿呆面をして水面が静かになるのを待ってから誘うのも有効な手段である。生粋のトップウォーターアングラーなら水面がおとなしくなったのを機に、ルアーの口に水を押させて、その音色に耳を傾け、「うん。悪くない」なんて一人悦にいったりもするだろうが、こちらはズブの素人である。そのような境地には、ほど遠かった。
 それはまあともかく、どうにかして一尾くらいはものにして帰りたいと強く願った。それがいいサイズのバスなら仲間に自慢もできるし、たとえ小さくても笑い話のネタくらいにはなるだろう。
 まずは、一尾というわけである。
 水域がダム湖から川側へ絞り込まれる付近は対岸が近いので、そちら側を釣ることも出来た。対岸側は雑木が水辺まで迫り、まあまあ水深もありそうに見えた。
「あっちも釣ってみるとするか」
 私はこちらからあちらの岸際へとルアーを投げた。雑木の青葉が水面に暗い影を落とす辺り。私はその辺に目星をつけて執拗に攻めてみた。そのうち、私のすぐ目と鼻の先をバスが三尾仲よく横切って過ぎた。まあまあのサイズだった。対岸の雑木の下には、今見たバスよりも、もっとずっと大きいのがひそんでいそうに思え、ルアーを投げる手にも力が入った。
 しかし、一生懸命釣っては見るものの、まったくバスは相手にしてくれない。その後も何度か誘い方を変えてやってみたが、ぜんぜん音沙汰がなかった。
 トップでバスをものにするのは簡単じゃないよ、そう聞いてはいたが、全くそのとおりのようで、なかなか骨が折れそうだ。
 このままやっていても気が滅入るだけだから、休憩をとることにした。
 草の斜面に腰をおろしたまま辺りを窺うと、左の奥に小さな流れ込みがあった。私はその流れ込みが、ちょっと気になりだしていた。流れは山から細く落ちて、短く切れ込んだ湖水の入江にそそいでいる。
 立って行って、遠巻きに覗くと、そこに子バスが五尾ほどいた。
「なあんだ、チビばかりじゃないか」
 がっかりしていると、チビの近くに少しはましなお兄ちゃんクラスが別に三尾泳いでおり、そのなかの一尾と私と目が合った。
「あっ、来た。俺たちを痛い目にあわそうっていう魂胆にちがいない。おい、気をつけろ。ああいう面にはいくら注意してもし過ぎということはない。けっ、誰がその手に乗るものか!」
 バスどもは今いちどこちらの様子を窺うと、しかしべつに慌てるそぶりを見せることもなく、悠々湖水の深みへと姿を消した。
 ためしに居残ったチビにルアーを投げてみたら完全無視である。
「こんなチビまで俺をバカにする!」と私は腹が立った。
 むこうの雑木林のなかで鳴くウグイスの声さえ、どこか私の不甲斐なさを嗤っているようだった。
 益々腹が立って、私は何もない沖めがけ、力いっぱい仕掛けを投げた。
「バスのバカ野郎!」という気持ちである。
 ところが、まだ誘ってもいないのに、パシャッと水しぶきが水面上に火の粉のように散って、それが着水したルアーの間近だったので、少々泡を食ってしまった。
 竿先をチョチョイと動かす。相棒のポップXが、ポッコン!といい音を出して前につんのめるように動いて止まった。
 一瞬後、今度は水面が大きく盛りあがって、私の視界から相棒の姿が消えた。
 慌ててアワセを入れたが、悔しくもバスの口を鈎に捕えることはできなかった。
 まだチャンスはあると踏んで、腐ることなく誘いつづけていると、またもや水の花火があがった。もいちど誘う。さらにバスは派手な出方をした。手応えから、しっかりフッキングしたことがわかった。
 しかし、どうも大きくはないようである。水面を割って出た派手さに見合うだけのサイズでないことは、やり取りを開始してすぐに知れた。
 それでも、生まれて初めてトップウォータープラグでヒットさせたバスである。足元まで寄せたバスの口を指でつまんでランディングしたときの喜びは尋常ではなかった。

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このサイズでもトップに出ると嬉しい

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ダム湖のバックウォーター

 五名ダムに寄ったあと、用事を済ませ、今度はワームでバスを釣ってみようと引田町の小路池へ立ち寄った。海岸を走る国道から山側へと車で十分も走ればもう釣り場である。規模の大きくない谷川を堰いただけのこの貯水池は鱒が泳いでいそうなほど水が澄んでいて、底から立ちあがる水草の繁茂の様子も偏光グラスをかけさえすれば一目瞭然で、その藻の林の上を行ったり来たりするバスの姿も容易に見つけることが出来る。ここでの釣りは今回が初めてだが、20cmクラスのバスの姿があちこちに見られ、しかも数匹単位でうろうろしているのは初心者の私には心強かった。

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民話に出てきそうなおむすび型の山が印象的

「子バスが群れている池は、残念だが巨大なのはまず居ないよ」
 そう釣り仲間から聞いてはいても、小さいのがいるということはそれを産んだ大きいバスも少しはいるわけで、そんな夢の大物がたまたま回遊して来て、私の投げた仕掛けに食いつかないともかぎらない。ここは一つプラス思考でやり抜こう、そう考えた。
 陽ざしがけっこう強かった。寝不足気味なせいか、それが目に堪えた。
「こりゃ、たまらんな」
 私は車へもどってダッシュボードのなかからサングラスを取り出して掛けた。
 サングラスのレンズ越しに見ると、よりいっそう水のなかがはっきり見えた。バスの動きばかりか表情まで窺うことができる。
 こちらとしては釣ってやろうと狙いをつけて覗きこんでいるわけだから、その虎視眈々の心情を見透かしてか、「おっちゃん、そんな素知らぬふりしても、あかんでぇ。魂胆見え見えやわ」とばかりにこちらの様子を窺っていくバスも少なからずいて、私としてもバツが悪かった。
 付近を探してみても、イモリの姿はなかった。
 けれども、私はイモリのワームを使って釣ることにした。
 イモリパターンのワームを買って持っていたので、要するに試してみたかったのだ。
 まあ、イモリに似せたワームでバスを騙してやろうとするとき、じっさいに付近にイモリが居るか居ないかはさほど関係ないように思われたので、正直不安はなかった。
 そんなことより、もし釣れたら、「なあ、バスくん。よく見てみろよ。これのどこがイモリそっくりだというのだい? 腹だって赤くないし、だいたい君は、もっと利口にならなくちゃいけないぜ」そんな説教のひとつもぶちかまして対戦相手を悔しがらせてやろうと考えていただけに、その後の苦しい展開には言葉もなかった。
 けっきょく、イモリのワームで釣ったのは粘り抜いた末の一尾のみであった。
 私はイモリに見切りをつけて、同じメーカーの別のワームをオフセットフックにセットしなおして、ふたたび釣りはじめた。

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ワームで釣るのもおもしろい

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私に遅れて来た若者が取水小屋前で釣りをはじめた

 オモリをつけない軽い仕掛けなので、トラブルなく投入できるようにと、今回はスピニングタックルを使用していた。扱い慣れた道具だけに、まだまだ釣り慣れしていないバスといえども気が楽だった。

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本編使用のPEラインとリーダー

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このサイズが多い

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ワームのほかにバイブレーションも試したが不発に終わった

 さっそく藻の林の上へとワームを投げ落としてみると、沈むワームが藻場のてっぺんに到達する前に子バスがちょっかいを出して来た。その子バスは他の子バスに獲物を奪われまいとして、横くわえにかっさらうと、そのまま勢いに乗じて泳ぎ去ろうとした。そのとき、勝手に鈎が口の端に掛かって、こっちが頼んだわけでもないのに、さっそく元気のいい子バスが釣れた。
 ふたたび仕掛けを投げると、同じサイズの子バスが食いついた。
 私はたまらなくなって、バックウォーター側へと徒歩で移動することにした。その途中、水門の小屋の付近で今さっき釣ったバスよりひとまわり大きいバスを見つけて、ちょっとドキッとした。そのバスは雑木の青葉が涼しげに影を落とす水面下に浮くともなく沈むともなくぼうっとしていた。うまく投げれば釣れる距離だが、その覆い被さる青葉と水面のあいだにうまく仕掛けをねじ込む自信のない私はちょっぴりキャストするのをためらった。いくらスピニングリール用とはいえ、このバスロッドはふだん私が使っているトラウト用やメバル用に比べるとかなり張りがある。しかも、何本か所有するバスロッドは手に入れたのがどれも最近で、手に馴染むほど扱いなれてもいなかった。
 あんのじょうミスキャストをして、雑木の枝に引っ掛けてしまった。
 しかし、私はあせらない。
 じわじわ仕掛けを張って引っ張ると、思ったとおり枝からはずれて水面へ落ちた。オフセットフックのよさはここにある。針先がワームから外に突き出ていないぶん、ひっ掛かりにくいのである。
 水に落ちたワームがゆっくり沈みはじめると、見る間に見えなくなった。
「よし、いいぞ。その調子だ」
 あまりにうまく事が運んだので、私は上機嫌だった。大いに期待を持った。
 しかし、ちょっとだけそれは虫がよすぎたようである。バスは落ちてきたワームに近寄って行きはしたものの、ゆっくり底へ沈んでいくワームを深追いすることはせず、やがてどこかへ泳ぎ去ったしまった。
 悪くないサイズだっただけに、私はがっかりした。
 ところが、その直後、それとは別のバスがどこからか現れて、沈んだワームを追うようにもぐっていくのが見えた。
 食ったか、食わずに終わったか。なにしろ水の底のことなので判断がつきかねた。
 仕掛けが大きく動かぬよう気をつけながら、ときに小さく誘いかけ、仕掛けを張り過ぎぬよう気をつけて、私はアタリが来るのを待った。
 空中にふけたラインが徐々に動いて張りはじめるのにそれほど時間はかからなかった。
「しめしめ」
 私は儲けたと思った。
 けれども、焦りは禁物である。
 もう少し呑ませたほうがいいだろう、そう思ってさらにアワセを遅らせた。
 どうやら、バスはワームを本物の餌と勘違いしているらしい。美味しい御馳走のミミズだと思っているのだろう。もう口にした獲物を吐き出す恐れはないと思われた。
 満を持してアワセを入れると、がっちり鈎掛かりした。
 釣れたなかでは一番のサイズだが、見映えのよさという点からすれば、手放しでは喜べない。私はさらなる大物を探しにその場を後にした。
 これだけ水が澄んでいるからには、きっと流れ込み付近にはバスの活性を高めてくれそうな悪くない流れが動いているのにちがいない。そう思うほど、足取りも軽かった。
 ところが、いざ到着してみると、予想に反して谷川の水は枯れ気味で、釣り師の興味を引く何物も見出すことはできなかった。水の底にはご飯に載せて食べると美味しいあの壜詰めの海苔みたいな藻がどろりと繁茂するばかりであった。藻のないところは泥で底が汚れて見えた。
 おまけに、バスなどただの一尾も泳いではいなかった。せっかく来てみたのに、骨折り損のくたびれ儲けである。
 けっきょく、最初の場所にもどって、堰堤そばのブロック護岸の傾斜部を横に移動しながら水の底の藻場の上を探ってみたが、釣り始め同様いいサイズのバスは釣れなかった。

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水が澄んでいるせいか、魚体はきれいだった

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いい眺めの小路池。また来たい


2

6月20日(土)
 小路池の上流側の山中にあるのが川股ダムである。規模は大きくないが、付近に人家はなく、目立った建造物といえばコンクリート造りの堰堤と無人の管理小屋だけである。
 この日、私は初めてここの水辺に立った。引田町馬宿地区の農耕用水源として昭和の時代につくられたこの貯水湖は、川股池と命名された。

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小さなダム湖だが水が澄んで深い

 水の透明度は、むろん高い。バスのほかにも鯉と雑魚を見かけた。魚以外では、草亀がいた。舗装してない雑木のなかの林道で雉に出くわしたりもした。水辺に来る野鳥は小鳥ばかりで、見かけない種類もいた。
 猪や鹿は見なかったが、流れ込み付近の湿地には野生動物がつけたらしい足跡が水際までつづいていた。
 さて、そんな川股池であるが、地形的には入り組んだ入江を多く持つリザーバー型のダム湖とは異なり、シンプルなつくりをしている。簡単にいうとブーメランみたいな形状だ。徐々にすぼまっていく両翼の先端の両方に流れ込みを持つ。
 今回、私はその片方の流れ込みに近い側でワームの釣りを楽しんだ。釣れたバスは大きくなかったが、すでに紹介した小路池でもワームでバスが釣れておもしろかったので、今回もワームを試してみようと思ってやって来た。長さはイモリワームと同寸で4インチ足らずだが、ドバミミズに色も形も似ている。
 私はオフセットフックにワームをセットしてみて、「こっちの方がイモリよりも吸い込みがよさそうだぞ」と小路池のときにも増して好釣果を期待した。
 結果を先に述べおくと、数的にはまあまあ釣れたが小路池同様大きいバスは食いついて来なかった。
 仕掛けはスプリットショットリグ、道具はスピニングタックルを用いた。鈎に刺したワームから40cmほど離してガン玉オモリ6Bをラインにしっかりと挟みつけた。
 ラインは、ユニチカ・シルバースレッドS.A.R.6lbである。

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使用したライン

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ワームにヒットしたレギュラーサイズのバス

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大物は見かけないが魚影は濃い

 今回は下見を兼ねた釣行なので、釣りは早めにきりあげて、散策がてら水辺を見てまわった。舗装されてない道は、場所によっては歩きにくかったが、それでも雑木の幹のあいだからそっと澄んだ水のなかを覗くと、ついさっきワームで釣ったくらいのバスがけっこう見えた。
 昼の日なかに釣ったので、大型は深場や物陰に身をひそめたまま動かなかったのかもしれないが、もしある程度の数の大型がじっさいに居るとしても、この様子では相当通い詰めないかぎり、そうやすやすと釣れてくれはしないだろう。
 ちょいと気晴らしにバスを釣りに来るには距離があるので、帰路の車の中でどうしたものかと思案した。


3

6月22日(月)
 高松空港付近にある野池。ここはわりと水が澄んでいて、釣り人が少なく、中の下クラスのバスをけっこう見かけるので、ここ最近贔屓の釣り場の一つとなった。
 水ぎわに降りて来て、しゃがむ。すると、昼間じりじりと肌を焼いて照った西日は、もうすでに背後の土手の向こう側である。まあ、いつもこのタイミングで晴れた日にはやって来る。暑さよけ対策ということもあるが、じつはこの時間帯以降、バスが水面を意識してうわずり出すので、ルアーを買って来て試すのにもってこいというわけだ。

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この池のバスは精悍なボディをしている

 今回は、新しくスピナーベイトを買って来た。季節が季節だし、なかなか日が暮れないので、釣り場が日陰になる時間を睨んで訪れても釣りを楽しむ時間に不足のないのが嬉しい。
「ようし。バリバリ試すぞ!」
 私は車から道具を降ろすと、土手の上まで持っていき、その場で仕掛けを組んだ。全体に黒っぽく、地味なスピナーベイトだが、売り場にぶらさげてあるのを見て一目惚れした。どこがどうほかのスピナーベイトとちがうのか、なぜ私の気を惹いたのか、釣り場に到着早々パッケージから取り出してしげしげ眺めてみたが、そもそも何の変哲もないスピナーベイトであって、惚れこんだ理由がわれながらにしてよくわからない。
 ただ、重さが7gくらいで、私が所有しているスピナーベイトのなかで最軽量である。
 これならうわずったバスを狙うのも楽そうだし、底の方にひそんでいるかもしれない立派なサイズのバスの鼻面に仕掛けを持っていくにしても時間をかけて沈めてやれば、さほど問題がない。
 いろんな層を自在に引けて、根掛りしにくく、おまけにバスへのアピール度が抜群となれば、誰にとってもいうことなしだろう。むろん、まだバス釣りを始めて日の浅い私にとっても頼もしい相棒である。
 この日は、夕方遅くに出かけて、土手のブロック護岸の水辺を横移動しながら端から端まで、沖へ投げ、斜めに投げ、表層を引き、中層を狙い、いったん底まで落としてから巻くなどして、いちおうそつなく釣ったつもりであるが、腕が未熟なせいか釣れたのは写真のサイズのバスが二尾、それより小さいバスが一尾だけであった。

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土手のなかほどで待望のバスがヒット!

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ぷりぷりとよく肥えたバス。引きも強い

 バスが群で泳いでいるのが見え、小魚を追いまわすところも何度か目撃したにもかかわらず、三尾という成績が筋金入りのバサーの目にどう映ったかは別にして、自分としては上々の出来ではなかったかと考えている。
 写真を見てもおわりのように、この池のバスは体高のある暗緑色のボデイが魅力的で、サイズのわりに引きの醍醐味を味あわせてくれる。
 だから、帰る早々、次またすぐに出向いて来たくなるのである。


4

6月23日(火)
 しばらくバイブレーションプラグを使っていなかった。そこで、スピナーベイト同様にあれば重宝するバイブレーションプラグを使って今回は釣ることにした。
 これから試そうというバイブレーションプラグは、陸っぱり専門のバスプロの金森隆志という兄ちゃんが制作した当人自慢の力作で、水平姿勢を保ったままきびきびと泳ぐことでバスのヤル気スイッチをオンにする優れ物である(らしい)。少なくとも前評判はそのようなことであった。貰ったDVDを観ると、なるほど野池で大きなバスを次々仕留めてガッツポーズを決めまくっていた。
「これ、欲しいな」
 観ているうちにそう思いはじめ、観終わるころには所持していそうな友人の顔が目の前にちらつくというありさまだった。
 ところが、有名なルアーだとの噂なのに、不思議と誰も持ってないし使ったこともないという。
 どうしてなのかはわからない。
 それなら、本当にみんな使わないなら、私が買って試してみよう。
 ということで、じっさい釣り具店に出かけて購入したが、値が張るのには驚いた。
 しかも、かたちが独特で、小粒である。

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バイブレーションにヒットしたバス

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活性が高く、連続ヒットも経験した

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合歓のが花の盛りを迎えていた

 さっそく、使ってみると、よく飛ぶし扱いやすい。しかも、泳ぎの達者さからして、こいつは釣れそうだなと即座にピーンと来た。
 使ってみると、前評判どおり、たしかに根掛りもしにくかった。
 ただ、この日はバスの機嫌がすこぶるよくて、バスの居そうなところに投げると、巻くより以前のフォール中にバスが食いつくことが少なくなかった。
 これだけ活性が高いならほかの無名な安価のバイブレーションプラグでもじゅうぶん勝負になったのではないか、そう思わないでもなかった。
 同じ条件下で同じ人間が同時に種類のちがうルアーを複数試せたら言うことはないのだが、そんなことは出来っこない。だから、ほかの製品と比較することなど出来ぬ相談であった。
 でも、まあ、そうは言っても、値段だけのことはあると感心した。そう思わせる働きをしたということもあるが、正直、この価格で、ろくに仕事もしないごく潰しルアーであったなら、それこそ製作者である金森の兄ちゃんを恨まなくてはならなくなる。
 だから、まあ、ホッとしている。


5

6月27日(土)
 まだまだ試さなくてはならないリグがたくさんあるのは事実だが、バスの姿をよく見かける野池をいくつか知ってしまって、しかもだいたいいつも同じ時間帯に水面近くで小魚を追いまわしたりするものだから、つい色気が出てしまい、それならいっそいつかのようにトップウォータープラグで釣ってしまおうじゃないかと思うようになって、じっさいそのような運びとなった。
 このルアーはかたちも色も仕様もまちまちで、水面で使用するということを除けば一貫性に欠けるところがあるが、段々に見慣れて来るといくつかのカテゴリーに分けて当てはめることができそうだとわかってくる。
 今回は写真のトップウォータープラグでバスを狙ってみることにした。

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サイズはイマイチ。雑木が影を落とす岸際でヒットした

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使用したルアー。目がなんとも可愛らしい

 べつに意図するところは何もなくて、ただ目を瞑ってやみくもに指でつまみあげたのがこいつだったというわけだ。と、いうことで、今回はこいつが私の相棒である。
 この野池もわりと近所で、南へ車で二十分も走れば到着できる。まだ釣りあげたことはないが、大きなバスを何度か目撃しているので、もしかしたら運よく私のような未熟な腕前の者のあやつるルアーにも食いついてくれるかもしれないと思って、少しでも時間があれば道具を手に、ついやって来てしまう。

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重量感ある引きで楽しませてくれた

 トップウォーターの釣りに使うラインは、ナイロンならなるべく太いほうがよいという話だが、大きなルアーを投げて誘うわけではないので、リールにはアンブッシュ12lbを巻いて来た。この池では或るときまでは飛距離の出やすい10lbでやっていたが、大物を目撃してからはもう少し太くしたいものだと考えるようになった。ちょうど、相当傷んできて巻き替えどきでもあったので、それで12lbに巻き替えた。
 ラインの伸び云々というなら、べつにナイロンを太くして飛距離を犠牲にしないでもPEラインを使えば済む話ではないかと素人の私などはつい考えてしまいがちだが、それについて訊ねてみると、やはりPEラインも選択肢の一つだそうで、じっさい使用頻度の高いラインでもあるそうだ。トップしかやらない知り合いのバス釣り師もPEラインは使えると推奨していた。
 でも、まあ、ベイトタックルにPEラインでは、バックラッシュさせてしまったときに、ほどくのが大変そうである。
 そんな考えもあって、ルアーの種類や釣り方を問わず、ベイトタックルで釣るかぎりにおいてはナイロンラインを使用することにしているので、今回もそうした。

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シルバースレッドアンブッシュを使用した。バス用ナイロンで一番気に入っている

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黒味を帯びた精悍なバス。控えめに水面のルアーを捕えた

 土手のなかほどにある階段を利用して水辺に降りた私は、すぐには仕掛けを投げずに、静かにそこにしゃがんで様子を窺った。あんのじょう数分ほどそうしていると目と鼻の先にバスが泳いで来て、そのままゆきすぎた。バスは三尾、サイズは大きくなかった。護岸された土手の右端に吹き寄せられた漂流物が集まってカバーを成している、その方へとバスは泳ぎ去ったが、もっとたくさんのバスがそのカバーを隠れ蓑にしてひそんでいそうであった。
 いつもは、そっちへ忍び寄り、プラグを投げて引いたり、ワームを沈めて誘ったりして、是が非でも一尾、あるいは二尾くらいは釣ってやるぞと意気込むのだが、今回は水面を釣るので、ちょっと躊躇った。出もしないのに、ただむやみやたらと仕掛けを投じてスレさせてしまってよいものかどうか、これまでよその釣り場でも判断に困ってしまったのと同じことがここでも気になった。
 考えたあげく、少し待ってみることにした。
 水面を思い思いの方角へと、快活にアメンボウが滑っていく。ほかに目新しい現象を目にすることはなかった。
「どうしちまったんだ」
 あんまり何も起こらないので、私は不安になった。
 しかし、状況が好転するのを待つにしてもいつになるかはわからない。
 一か八か、釣ってみることにした。悠長に構えてもいられなかった。
 用事があって、釣りに費やせる時間はせいぜい一時間ほどである。なけなしの時間を無駄に過ごすわけにはいかなかった。
 もう、やるしかなかった。
 初めて使うルアーなので、どう扱えばよいか思案のしどころだが、自分なりに工夫してやってみた。リールのハンドルを数回巻いて、止める。また、巻いて、止める。竿先でちょいと誘う。そのまま誘いつづけるのも手ではあろうが、間の取り方の是非で勝負が決まることの少なくない釣りだと聞かされているので、そのことが頭を離れなかった。

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水面の釣りの面白さが少しわかった気がする

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あ~楽しかった

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土手には蘭科植物のネジバナの姿があった

 私は漂流物の集まって出来たカバーめがけてルアーを投げた。そして、ルアーがカバーの手前の水面に無事着水するよう指でラインの出を調整しながら目星をつけた場所へとルアーを落とした。私は波紋が消えるまで待って、リールのハンドルを回転させて、止めた。また、少し巻いた。何回かくり返すうち、その巻きはじめに意表をついてバスが出た。派手に水面を割って出たにもかかわらず手元に衝撃は来なかった。間髪を入れずに竿の先でチョンチョンと誘いかけた。すると、絵に描いたようにバスが食いついて来た。
 バスはいちどきり水を脱いで高く躍りあがったが、あとはわりとすんなり足元まで寄って来た。水辺にしゃがんで口の端を指でつまみあげランディングした。
 その後、しばらくのあいだバスが水面を割って出ることはなかったが、それでも熱心にやっていると、帰る間際になってもう一尾、さっきと同じくらいのバスがヒットした。このバスは足元まで寄せたとき暴れて逃げてしまったが、水面のルアーに襲いかかるその勇猛果敢さを帰り際になってふたたび目に出来ただけでも儲けものである。
 前にも述べたかと思うが、やはり視覚に訴えかけてくる釣りはおもしろい。
 今回もつくづくそう思った。


6

6月29日(月)
 川股池に、また出かけた。
 このまえ訪れたときはけっこうバスが泳いでいたので、トップウォータープラグでもなんとか本命をものにできるのではないかと思って、ふたたび釣りにやって来た。五名ダムでバスをすでに釣っているとはいえ、ほとんど素人なので、トップにバスがちょっかいを出してこなかったときの保険として、例のドバミミズワームも用意していった。
 まあ、釣る気満々と言ったところだ。
 ところが、どうしたものか今日はバスの姿が見当たらない。このまえ釣れた場所でもバスを目にすることはなかった。
 私は、のっけから暗い気持ちになった。
 すでに到着して一時間が過ぎたというのに、アタリすらなく、それどころか一尾のバスもまだ見ていない。
 昼間でもバスが浮いて来て何か食べているようなら、素人の私にもじゅうぶんトップでバスをものにできるチャンスはあるだろうとバス歴の長い友人が嬉しいことを言って送り出してくれたので、相当期待して来たのだが、水面はおろか底をねちねちとワームで探ってすらアタリも来ない状況に、正直、私は焦りの色を濃くした。
「待てよ。今日は対岸側かもしれないぞ」
 私は気持ちを暗くしながらも、ふと思い当った。
 もし対岸側でもないとすれば、香川県の東の端の山奥までわざわざやって来た甲斐がない。とにかく、こちら側がダメなら、思いきってあちら側へと移動である。
 細い流れに架かる小橋をわたって、道とも思われぬ荒れた泥道を私は進んでいった。雑木の切れた所から下を覗くと小さな土砂崩れの跡が水際までつづいていた。切り立った岸のつづくなかに、釣りの出来る足場をやっと見つけたかたちである。
 さっそく私は竿を出すことにした。

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ザウルス社の名品。バルサで出来ている

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水辺に降りて釣りの出来る場所は意外に少ない

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林床に生をはぐくむカンアオイ

  ここでもバスの姿を見ることはなかった。
 覗いてみるかぎりバスの気配がなかったので、まずは底を当たってみようと考えて、ドバミミズのワームを沈めてみた。沖遠くではなくて、岸に近く角度をつけて投げた。
「おっ!」と私は思わず息を飲んだ。
 予想に反して、バスがちょっかいを出してきた。意識してラインをゆるめると、ふけたぶんだけひっぱって持っていく。また少しゆるめる。持っていく。このかけひきがたまらない。じゅうぶん待って、待って、アワセを入れた。
 サイズ的には予想どおり大きくはなかったが、一尾は一尾である。
 ところが、幸先いいぞと調子に乗って次また投げたら、今度はうんともすんとも応答がない。
 その後、まったく音沙汰がなかった。

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スピニングタックルに使用したライン

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スプリットショットリグで底を叩いてものにした

 木洩れ日が、シャツの肩に揺れて、心地よかった。
 裏腹に気持ちは重かった。
 金属のプロペラのついたスイッシャータイプのトップウォータープラグを仕掛けにセットしたベイトタックルが樹に立てかけられたまま暇そうにしている。
「おい。まだかい。俺にも仕事させろよ」と、そんな声が聞こえてきそうだった。
 すると、幸か不幸か、最初に竿を出した向こう岸の雑木の下陰で、水しぶきがあがった。金属片が散ったように見えたのは、逃げ惑う小魚であろう。きっと、バスに追われたのにちがいない。その少し沖でもボイルが見られた。今さっきワームで釣れたバスと大して変わらないサイズのようだが、トップで騙せたら胸がすかっとするにちがいない。
「おい! 出番が来たようだぜ。もどるぞ」
 私は道具に一声かけて、それを手に取ると、急ぎ足に来た道をもどっていった。
 遠巻きに様子を窺うと、青葉の影を映す水のなかに、バスが二尾、三尾、泳ぐともなくじっと身構えているのが見えた。
 私は、バスを脅かさぬように、バスの外れへと仕掛けを投げ入れた。その音にバスらはいくらか動揺したようだったが、すぐに平静をとりもどした。
 私は水面のルアーをほんの少しだけ、しかし強く引いて動かせた。リアフックの付け根に取りつけられた小さなプロペラが水をつかんで回転した。バスは音に敏感な魚だそうだから、ざわつく水面に興味を示さぬ道理がなかった。あんのじょう、少し動かしては止め、少し動かしては止めして、徐々に間を詰めていくと、青葉の下のバスらがそわそわしはじめた。
 ルアーの方へ寄って来るかとその様子に注意を払いながら、ときに竿先を動かして誘う。水面に静止していたルアーがまた少しこちら側へとプロペラに水をかき混ぜ滑るように泳いだ。と、その瞬間、ガバッと下からバスが突きあげるように襲いかかって来た。手元にアタリが来る前に、目で見てアワセを入れた。ロッドを引き絞ると、水面を割ってバスが躍り出た。ミミズのワームで釣ったのと似たサイズのバスである。
 沖でヒットしたわけではないので、私は仕掛けを半ば強引に絞りあげ、バスに反撃の間を与えないよう努めた。

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ベイトタックルに用いたライン

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ルアーをセットする。期待は膨らむ

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水面を割ってバスが襲いかかって来た

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トップで二尾は悪くない

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サイズはともかくトップで釣れると嬉しさ二倍だ

 このあと、もう一尾、似たサイズのバスが釣れて、さらなる期待に胸が躍ったが、ぴたりとアタリが止まってしまった。
 計、三匹
それでも、このうち二尾はトップで釣れたので嬉しさもひとしおだった。サイズ的には不満が残ったが、視覚に訴えかけてくる釣りほどおもしろいものはない。そのことをあらためて実感した。


7

7月2日(木)
 田所さんからワームを頂戴した。さっそく袋から出して手に取って調べてみると断面が円形ではなくてやや平たい。ずいぶん昔に流行ったバス用で、ご本人にとっても五本の指に入る大物釣り師御用達の優れ物であるとのことだった。
 これは、ひょっとして大物を釣りたくても釣れない私が気落ちしてやしないかと案じてくださったのではないかと察するが、「これで(大物が)釣れなきゃ、もうバス釣りやめたほうがいいのとちがう?」と最後通告を突きつけられているようでもあり、なんだか貰って得したというよりも、瀬戸際に追いやられてしまった気がしないでもなかった。
 だから、今回は誰にも告げずにこっそり出かけた。
行き先は、上羽床池。とても小さな山間の野池だが水はきれいである。
 バスの魚影が濃く、早春のころ、友人が46cm、38cmを同じ日の白昼に釣っている。
 しかし、彼の説明によると、夏場は異様なほど数の多い子バスがルアーに猛烈にアタックしてくるので声を大にして行ってみろとは言えないが、それでも、大きな池ではないのでしらみつぶしに当たって行けば、そのときの46cmが食いつかないともかぎらない。もしかすると47cmに成長しているかもしれない。もっと大きいのもいるはずだ。と、まあ、そうおっしゃるので、不安半分期待半分で出かけてみた。
 日差しの強い白昼に竿を出すのは気が進まなかったが、用事を済ませて来てみると友人の言うように子バスがそこかしこに泳いでいた。車を土手に乗り入れて、ブロック護岸の土手を水辺まで降りていき、適当に投げてみたが、底にワームをセットした仕掛けが沈みきらないうちに子バスが食いついてきた。それでも、さすがに同じワームを投げつづけたら嫌気がさして食わなくなるだろうと、動じず気にせず気楽にやっていると、同じ立ち位置から同じワームで釣りつづけているにもかかわらず十尾近い子バスをあっという間にキャッチするという何とも不名誉な経験をさせられた。
「子バスといっても程があるぞ」と私は吐き捨てるように言った。
 じっさい、そのとおりで、小さいにも程がある。
 しかも、いちばん水深のある側で、こんなチビ助しか釣れないようでは、先が思いやられる。

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ファーストキャストにヒットしたのは・・・・・

 とにかく、じっと立っているだけでも暑かった。衣服が汗で重く感じられた。
 そんなことだから、ほんとうはもう帰りたかったが、そうはいってもワームをくれた田所さんの手前もあって、簡単にあきらめるわけにもいかなかった。
 釣り座から奥を眺めると、山からの枯れかけた細い流れが丈の高い葉を茂らせた水生植物のあいだに一筋見える。きっと、あの辺りの浅場の底は水草や藻が多く、子バスのほかにブルーギルがたむろしていそうだった。
 ただでさえ暑くてやりきれないのに、あちら側までどうにか歩いて行って、チビ助のバスとブルーギルの猛攻撃に遭ったのではたまらない。
 どうせなら、もう少しこちらの深場で頑張ってみて、早春のころ友人がガッツポーズを決めたような幸運を授かりたいものだと虫のいいことを思ったりもした。
 しかし、そんなうまい話などはなからないとわかっていた。
 これだけあちらこちらに投げて、子バスしか釣れないのに、この先、何を期待しろというのか。
 だいたいこういうマイナス思考に陥っていること自体、万事休すの感があった。
 それでも一応、釣れそうな場所は一通りまわって仕掛けを入れてみた。
 けれども、いくら頑張っても釣れるのは子バスばかりであった。

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・・・・・!?

 せっかくいいワームをいただいたのに、不甲斐ない。
 帰ってから田所さんに一部始終を報告すると、以下のような返信が届いた。
「百匹でも二百匹でも釣ればいい。そうすれば、子バスも一目置くようになる。そのとき大物が群でまわってくればしめたもの。連続ヒットも夢ではありません」
 まあ、たぶん、そうなのかもしれない。
 返そうにも、返す言葉が見つからなかった。


8

7月13日(月)
 それにしてもこのルアー、発売当初からどういうわけかよく釣れるので、いまだに世界じゅうのバス釣り師に人気があるそうだ。
 最近水面にルアーを泳がせてバスを釣るのに凝っているので、釣れると聞けば何だってさっそく使ってみたくなる。それで、へドン社のビッグバドを持って釣り場へ出かけた。
 機関車トーマスでもあるまいし、顔のついたビール缶なんて馬鹿げてやしないか。それよりなにより、どうして涙型をした金属のしっぽなんぞ必要だというのか。よたよた水面付近をよたよたと泳ぎはするが、そのときしっぽが自らの尻を叩くせいで、うるさくて仕方ない。何とも賑やかなトップウォータープラグである。
 ところが、このビッグバド。二回投げただけでバスが釣れたものだから忽ちのぼせあがってしまった。それも出方が半端ではなかった。迷いなく真横から近づいて、躊躇なくバスが食いついてきた。
 ボリューム感満点の寸胴なルアーだから、きっと釣れたら大きいぞと決めてかかっていたから、ご覧のとおりのチビ助なのはいささかなりとも不満であるが、やはり釣れると嬉しい。
 この日は三尾釣ったが、似たサイズばかりで、どれもガッツリ鈎掛かりしていた。

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釣れたはいいが小さ過ぎ。今に見ておれ!


9

7月28日(火)
 八栗寺と山麓の八栗寺駐車場はケーブルカーで行き来できる。ケーブルカー乗り場にはトイレが完備され、ちょっとした土産物屋、食堂もある。夏のこの時期は「ところ天あります!」との貼り紙をしてあるばあいもあるが、その小さなたたずまいの食堂の真下に日中は強い日差しを嫌ってバスが集まって来る。
 つまり、その店は池のほとりに立地するとみえて、じつは池の上に宙に浮くようなかたちで建っているわけである。
 ここを訪れるのは数年ぶりだが、いつかもきつねうどんを注文して、張り出しの手摺り越しに水のなかを覗いてみると、水生植物の繁茂する付近にバスやブルーギルや由緒正しい日本の雑魚たちがたくさんいた。

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池のほとりには歌碑が建っている

 観光バスを仕立ててお参りに訪れる団体もあれば、マイカーで乗り付け八栗寺のある五剣山に観光目的で登る人もある。そんな人たちでにぎわう駐車場と隣り合う小さな池で釣りをする者がいるとは考えにくかった。
 ところが、つい先日、近くに用があって訪れたとき、この池のことが気になって、それでちょっと立ち寄ってみた。すると、池の向こう側とこっち側で若者が二人釣りをしていた。
 二人ともトップウォータープラグを巧みにあやつってバスを狙っていた。傍らに置いたプラノのルアーボックスが私の目を惹いた。とても上等そうで、私のトランク型のものよりも多くのルアーが収納できるようになっていた。
 その立派なプラノを所有する方の若者に話を聞いてみると、いま時分はちょいちょい夕暮れの涼しい時間帯にこうして釣りにやって来るのだという。もう少し早い時間でも釣れるが、小ぶりなバスが多いと教えてくれた。小ぶりでもトップで釣れるなら楽しいにきまっている。
 遠くもないので時間をつくって、近いうちに釣りに来ようとそのとき思った。

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バイブレーションで表層を引くとよく釣れた

 今回は、そのときの若者二人に倣って、トップウォータープラグとバイブレーションプラグのみを用いてバスを狙ってみたわけだが、一時間半ほど池の周囲を釣り歩いて片手の指に余る数のバスをキャッチした。ライズが遠かったので、楽に遠投できるスピニングタックルで終始釣った。沖へ投げて誘うとおもしろいようにアタリが来た。
 じつをいうと、釣り損ねたバスも少なくなかった。
 夕方もまだ早い時間だったが、サイズこそ全然奮わなかったものの、水面のルアーに襲いかかるバスを目にするたび心が躍った。

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ジャイアントドッグXにヒット

 先にも述べたように小さな池なので、大きなバスはほんの少ししかいないかもしれない。けれども、中くらいのバスならけっこういそうである。たぶん、そのようないいサイズのバスのよく釣れる時間帯がこの池にもあるにちがいない。
 次回は朝早くにやって来て、トップの釣りばかりでなく、藻場のなかも攻めてみたいものだ。重たい仕掛けに大きいワームをセットして深場を探ると案外悪くないサイズのバスが釣れるのではなかろうか。
 今から楽しみである。


10

8月1日(土)
 今年は冷夏だという気象庁の予報を、気象庁自ら早急に修正したほどの猛暑となったが、今も暑い日がつづいている。
 門入ダムで夕暮れにバスを狙ったこの日も一日中うだるような暑さで、ダム湖の水もどんより淀んだ感じがして、酸素の不足がちな夏の淡水止水域の体をみせていた。
 立派なトイレの横にある駐車場に車を乗り入れ、そこで釣りの準備をして、さっそくダムサイト側の西岸に降りてみると、石組の護岸の傾斜部に沿って悪くないサイズのバスが群れをつくって回遊していた。一団が過ぎ去ると、ややあって次の群れがまわってくる。右から来た群と左から来た群が、ときにはすれちがったりもした。むろん、単独で泳ぐバスもいたが、それは決まってサイズがよかった。水ぎわの浅場には小さなブルーギルやミニバスの姿があった。
 沖の方ではライズも確認できたが、バスかどうかはわからなかった。なにか水面に落ちた虫を食っているようだったが、それが沖のあちらこちらでぽつぽつ見られた。

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ダムサイト付近で釣りを楽しんだ

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大きくはないが釣れると、やはり嬉しい

 今回は温泉にくつろぎに来たついでの釣りなので、根がかりの心配をせずにあらゆる層をてきぱきと当たっていけるスピナーベイトだけを使って三十分ほど狙ってみた。すると、二投目に見慣れたサイズのバスが沖の中層付近で食いついた。

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不思議でならない。回転しながら光るブレードに食いつかないのはなぜだろう?

 開始早々バスが釣れたので、三尾くらいは釣れるのではないかと期待したが、その後は全く駄目であった。
 聞くところによると、夏は夜釣りがいいらしい。日中はなかなか口を使わないランカーバスも、闇に乗じて攻めれば、わりと簡単に食いつくそうだ。
 そう聞くと、やってみたくならないでもない。
 近いうちに出かけてみようかと考えている。

【今回の使用タックル、ライン】

ロッド : ノリーズ ロードランナーボイスHB560L
      ノリーズ ロードランナーボイスHB680L
      ノリーズ ロードランナーボイス680LS
      ノリーズ ロードランナーボイス630MLS
      メガバス トマホークF3-63GT3
リール : シマノ メタニュームXG
      シマノ アルデバラン50
      ダイワ トーナメントZ2500C
      ダイワ ルビアス2004
ライン : ユニチカ シルバースレッドアンブッシュ10lb、12lb
      ユニチカ シルバースレッドメイサイ6lb、8lb
      ユニチカ シルバースレッドS.A.R.6lb、8lb

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