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釣行記

釣行レポート

2015年8月28日

その日の傾向を知る

 標高の高い沢では季節が早く移り変わる。秋の産卵に向けてイワナはすでに抱卵しているものと思われた。
 だから、この時期に山へ釣りに出かけることは稀である。ただ、今期は多忙を理由に夏の沢から足が遠のいていたので、ここに来て行かずには済まされないという気持ちが先に立つようになっていた。
 そこで、二年ぶりに穴吹川の上流へイワナを釣りに出かけた。

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奥の流れ込み付近でイワナがヒット!

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同じプールで2尾、3尾とヒットすることも

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夏沢のイワナ。このサイズが多かった

 途中、休憩を取りながら、三時間余りかけて、正午前に釣り場へ到着した。
 車を降りると、空は片寄りに晴れて、峰の高くに雨雲がかかっていた。それが目に見えて膨らんで、あっという間に太陽を覆い隠した。
 釣りの支度が整ったころにはぽろぽろ雨が落ちはじめた。雲の流れゆく方角からして、すぐやむだろうと、雨衣の用意はしなかったが、思ったとおり沢へ降りるまでに、空はふたたび明るくなった。
 ミンミンゼミが腹をしぼるような声に鳴いていた。雨があがると、その声はいっそう力強く聞こえた。
 このところ雨がよく降るせいだろう、沢へ降りてみるとその雨に嵩増しされて勢いづいていた流れは、どことなく釣りにくそうだった。
 眺めるほどに、いっそうやりにくいと感じた。
 そこで私は、いったん指につまんだミノーをケースのなかにもどして、べつのケースから小粒のスプーンを取り出して仕掛けの先に結んだ。
 岩を配した落差のある流れは奥行きがさほどなく、そうすると軽いルアーではあっという間に仕掛けごと押されてポイントを通過してしまうので、これだとイワナやアマゴが目敏く見つけても食いつく暇もなく流れ去ってしまう。だから、形状と重量に注意して、この場に合ったスプーンを選んだ。
 ところが、どんなに用意周到に徹して、「さあ、釣るぞ!」と意気込んでみても、アマゴやイワナのほうが乗り気になってくれないのでは空回りである。
 じっさいそうなって、もうだいぶ釣り歩いたというのに、私の活かしビクのなかには沢へ降りてすぐの堰堤下のプールで食いつかせたイワナが一尾泳いでいるにすぎなかった。

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使用したライン

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スプーンにヒットしたイワナ

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一見よさそうな流れだが、アタリすらなかった

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次の堰堤へと急ぐ

 話は変わるが、釣りあがるとき最も私の注意を引くのは、人の足跡の有無である。それが新しいほど気持ちが滅入りがちだ。踏み越えるとき付いた人の足跡が真新しく岩に濡れていたりしたら、もう誰だって沢の釣り師なら動揺を隠せない。それはつい今しがた自分と同じ目的の釣り師が、これから自分が釣りあげるはずのイワナないしはアマゴを先んじて抜き去ったにちがいないことを意味するのだから、気落ちもさることながら悔しさもひとしおである。
 こうなると、もうあとは先に行った釣り師がジャンルのちがった釣り方をする者か、あるいは沢の釣りというものをじゅうぶん理解し得ている者であることを祈るしかない。
 たとえば、餌釣りの名人なら不用意に流れに立ちこむことは避け、それどころか気配を消すかのようにポイントを遠巻きに攻め落としていくから、フィッシングプレッシャーもほどほどまで抑えられる。加えて、ルアーとは釣り方の重なる部分もあるがちがうところも少なくないため、竿抜けのポイントがけっこう残されているものだ。だから、そこを狙って仕掛けを入れていけばそれなりの釣果を得られないでもない。
 それでも、もし釣れいきがよくないようなら、その辺に腰を下ろして休憩して待てばよい。要するに時間を置くのである。そのあいだに魚の警戒心が薄れてくれるのを期待しようというわけだ。じっさいそうなれば儲けものである。
 ただし、今回、岩を配した好ポイントでアタリも来ないのは、先行者の影響が残っているせいではなさそうだった。だいいち、足跡はあるにはあったが、どれも新しいものではなかった。
 なのに、アタリもないというのはどうにもおかしい。こう言うばあい原因にこだわって理由を明らかにしようと心を砕くタイプの釣り師も少なくないが、まったく私は気にしない。
 着目すべきは、いつも釣れる素敵な流れではアタリすらないという事実のみである。私は思いきって普段いい思いをしてきたポイントをすっ飛ばして、その先ある堰堤下のプールまで一足飛びに歩みを運んだ。
 ずばり! これが、よかった。

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写り映えを考え流れのなかへ。ほんとは立ち込まぬ方がよい

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イワナを釣るのもいいものだ

 堰堤下のプールには、その水量から考えても、多くの魚がストックされているのは明らかである。しかし、池ではないので流れがあるし、その流れもわりと複雑だ。余すところなく釣りきろうとすれば、やはりそれなりのポイントの見極めと釣り方を心得ておく必要があるのは至極当たり前である。
 では、どう釣ればよいか。
 それは、もう場数を踏んで慣れろ、というほかはない。
 小さな流れは攻め方に各人ちがいがあるとはいえ似通わざるを得ない。
 しかし、堰堤下のプールのように狭くないうえに深いところ浅いところのある、しかも複雑な流れの絡むポイントというのは、根っこでは相通じるところがあるにせよ、ちょっとしたところは十人いれば攻め方も十様である。釣りは何でもそうだが、このちょっとしたところの差が大きく出て、ときに釣果を分ける。だから、バカにできないのである。
 まっ、それはともかく、今回は堰堤下のプールと奥行きのあるフラットな流れにかぎってイワナがよくルアーを捕えたアマゴも同じ傾向だったが、その数はいつもの半分にも満たなかった。
 理由はよくわからない。
 たぶん、この先じっくりと考えたとしてもわからないだろう。
 だから、私は考えない。
 ただ、そういう「傾向」にあったので、そのことを記憶にとどめておこうとするのみである。
 ほんと。傾向を知ることは大事である。
 だから、そのことの大切さを読者の皆さんにもお伝えして、今期の渓流釣りの締めとしたい。
 では、みなさん、来季もまたよろしく!

【今回の使用タックル、ライン】

ロッド : ウエダ トラウトスティンガーボロンTSS-57
リール : ダイワ ニューセルテート1500
ライン : ユニチカ シルバースレッドトラウトクリアー4lb

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