2015年9月11日
激流の小鳴門海峡を釣る
河のような地形と激流で知られる小鳴門海峡へアオリイカを釣りに出かけた。なかなかいいサイズが釣れないので、少しでも期待の持てる場所はどこかと思案しているとき、その候補のなかの一つに小鳴門海峡を思いついた。潮が速くてベイトフィッシュの多い海域ならグッドサイズのアオリイカが混じるのではないか。そう期待しての釣行だった。
当日は台風一過の秋晴れで、しかも、台風の直接のとおり道からは外れていたにもかかわらず、丸一日経っても風が吹きやまなかったので、エギングには向かぬ天気となった。
「しめしめ」と内心私は二ンマリした。
風の強さにもよるが、風と波を睨みつつも釣りになるなら本当にしめたものである。
最近、エギングを楽しむ人が増えたので、釣りにくくても風が吹く方がましだと考えるようになった。
むろん、それはそれで辛い釣りを強いられるのに決まっている。
そのとおり、今回も思った以上に苦戦した。
最初こそ、入り組んだ地形だから、きっと風の当たりにくい場所を選んで攻めれば大丈夫だろうと高を括っていたが、そうはいかないことに段々気がつき始めた。たしかに、風が弱くて風向きも悪くない場所もあったが、そういう場所にかぎって肝心のアオリイカの姿がなく、試しに仕掛けを入れて広く当たってみてもエギの後を追っても来ない。
加えて、干潮までには、まだ時間がじゅうぶんあったので、本流筋はけっこう潮が速かった。しかも、脇の流れは流速が定まらず、流れ方は複雑を極めた。
ン~もうひとまわり大きいのが欲しいなあ
小ぶりなアオリイカは甘みがあって美味しい
海峡筋の四国本島側は、民家の並びに沿うかたちに舗装路が通じており、その道路の海側は波返しが高い壁を成してつづくため、海峡の流れを眺めるにはそれに登って見るほかない。
じっさい、波返しの上からアオリイカを狙う人も多く、実績ポイントも少なくないので、そうすることは自分を利することにつながるが、あえてそうはしなかった。
それは、訪れる前から決めていた。漁港の波止や岸壁、船着場など労せずに釣りの出来る場所にかぎり、的を絞ってエギングを楽しむつもりで最初から臨んでいた。
使用したラインとリーダー
けっこうアオリイカはいた。居る場所には群れていた。澄んだ潮に透けて見る姿が黒っぽいのは、一説によるとヤル気のある証拠だそうが、だとすればこの状況は悪くない。じっさい、そういうアオリイカを多く目にした。
アオリイカは、速い流れとゆるやかな流れの境の緩い側に、まるで編隊を組む戦闘機みたいにかたまっていた。左右にわずかに揺れて見えるが、まるで自発的動きというものが感じられなかった。潮の流れのなかにその身をとどめている以上は絶えず泳いでいなくてはならぬはずなのに、その姿は楽に静止しているとしか見えない。けっして人間には出来ぬわざであった。
だから、おもしろがって、しばらくその様子を眺めていた。
見れば見るほど、イカというのは変てこな姿をしている。胴の次に大きな目玉の付いた顔というか頭部があって、その下がいきなり足だなんて、どうかしている。だいたい、脚の付け根の股間とおぼしき部分には排泄器官があってしかるべきだろう。ところがそこは硬く鋭いくちばしを秘め持つ口である。
私たちは実際のイカを見慣れているし、イカは美味しいので、そういうことは普段考えないが、姿を目にせず、目を閉じて、その身体部位の並び様を想像してみると、ぞっとしないでもない。
これじゃ、まるで異星人だ。
そいつが、編隊を組んで、私の目と鼻の先の海中から私のことを胡散臭そうに見ている。ほんとうは見ていないかもしれないが、そう思うと不気味でもあり、自分のことをバカにしているのかと少し腹立たしくもあった。
「ええい。成敗してくれるわ!」
気づくと、闘志を燃やす自分がいた。
私はタックルを手に、海へと向かって無意識に身を乗り出していた。
「おおっと、いかん、いかん。これじゃ、海に落ちてしまう」
なんて、そいつは少々大袈裟だが、好敵手を前にただ指を舐めるようにして眺めていても仕方がなかった。
私は、複雑な流れを今いちど冷静に観察した。そして、強弱をつけて吹く風にも注意を払った。
今はまだ釣れるアオリイカのサイズがごく小さいため、しかも連日訪れる大勢の釣り師が与えるプレッシャーが半端でないせいで、重くて大きいエギを投げたのではなかなか触りにも来ない。
だから、効率よく釣るためには出来るかぎり比重の軽い小ぶりなエギを投げて誘うしか手はなさそうだった。だが、ちょっと考えてみればわかるが、複雑で速い流れのなかでこういうエギを使いこなすには勘と慣れが必要である。また、ラインシステムにも通常より注意を払わなくてはならない。私は細めのPEラインを使用する程度だが、PEライン以外のラインの使用も考えるなら、さらに釣りの幅はひろがるだろう。
また、リーダーもナイロンとフロロを使い分け、その長さを状況に応じて変えることで、いっそう繊細な釣りを実現できるはずだ。
あまり神経質になり過ぎてはならないが、小鳴門海峡のような特殊な釣り場のばあい、小さめのエギはサイトフィッシングに向いているので、誘う距離はたいして長くはない。そのため、ラインシステムのちがいがエギの動きに多大な影響を与えることが予想される。流れが速く複雑な時間帯なら尚のことそれは顕著であろう。
激流で知られる小鳴門海峡はアオリもよく釣れる
小鳴門海峡をランガンしての釣果
釣り師は流れが速く複雑な場所での釣り方を説明しようとするとき自然と饒舌になるようだ。何処へ投げて、どう沈めて、どう誘い、どう仕掛けを張るか、等々、聞く方も興味は尽きない。
しかし、そんなことを言いはじめたら延々と説きつづけるほか術がなくなるだろう。なぜなら、速く複雑な流れは刻一刻とその表情を変え、もう二度と同じ表情を見せてはくれない。だから、そんなことを言っても始まらない。
でも、そうだとしても、これだけは言えるだろう。風が吹けば風の助けを借り、流れが生じれば流れを味方につける。これこそ満足いく釣果への近道である。
どうすれば、助けを借りられ味方になってもらえるか。自然の力を呼び込めるのか。それは場数を踏んで体得するよりほかはない。
ようするに、楽をして獲物は得られない、どうもそういうことのようである。
では、みなさんも、よい釣りを!
【今回の使用タックル、ライン】
ロッド : ノリーズ エギングプログラム・ハードジャークスクイッド80
リール : ダイワ エメダルダス2500
ライン : ユニチカ キャスラインエギングスーパーPEⅡWH 0.5号
リーダー: ユニチカ キャスラインエギングリーダー 1.5号