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釣行記

釣行レポート

2016年1月

最強寒波の翌日に

 この日、私たちは鳴門市の海辺にあるコンビニエンスストアーの駐車場で待ち合わせることにしていた。
 到着早々、ディレクターが挨拶もそこそこに浮かぬ顔でこう言った。
「今日もし魚が釣れないと非常に厳しい状況に追い込まれるんです」
「何を言ってやがるんだ。この男は」と私はむっとした。
 ところが、彼の話を聞くうちに、彼の置かれた切羽詰まった状況に同情心が湧いてきた。
 私だって締め切りのある仕事をすることがある。
 だから、爆弾低気圧到来以降、天気が荒れて、今回の最強寒波に至るまでの十日間ほど全くロケになっていない。放映しようにも逆さにして振っても鼻血も出ない。ぜひとも今日は成功させて、一日で編集してあさってにはサンテレビに渡さないと困ったことになる。そう聞かされると心労察するに余りあるという心境になってしまった。

 しかし、そうは言っても、皆さんもよくご存じのとおり、奄美大島に百十五年ぶりの雪を降らせ、沖縄に観測史上はじめての降雪をもたらした最強寒波のすぐあとだけに、使える映像を撮らせてあげられるか自信が持てなかった。
 四国でも雪が四十センチ積もったところがある。気温がマイナス七度まで下がったところがある。平野部でも連日最低気温が零度を切った。海水温が一週間で二度ほど下がった。強い風が吹いて、海岸の浅瀬は底荒れした。おまけに満月の大潮まわりというメバル釣りには適さないとされる条件下でのロケである。
 前日の天気予報では、寒波は明後日くらいから緩んで暖かくなるとのことだったが、ロケ当日の明日は、風が強く波が出て、寒さは依然厳しいとのことだった。
 これではメバルは無理である。風裏を探せばやってやれないことはないかもしれないが、一発勝負の、しかも切羽詰まった状況でのロケだから絶対取りこぼせない。となるとメバル釣り決行は無謀というものだ。そう考えなおして小松島の友人に連絡した。
 すると、友人が言った。
「ヒラスズキでもやったらどうです。美波の方の磯なら釣れますよ。それなら少々荒れても関係ないし、悪くないと思うけど」
「たしかに言うとおりだと思う。だが、こっちにも事情というのがあってね。足場のいい釣りやすい場所でタレントのおねえちゃんにも大いに竿を曲げさせてあげなくちゃならないんだ」
 私の話に友人も弱った様子だった。
 この友人は、私が用事で近くへ行ったとき、時間があるなら漁港内でカサゴでも釣って気晴らししていくといい、そう言って釣り場を紹介してくれたことがあった。
 その記憶もまだ新しかったので、「あそこはどうだ?」と訊いてみた。
 すると、風がまる当たりだから無理だと友人は答え、べつの漁港を二つほど新たに紹介してくれた。
 こうして、ほんとうは香川県と徳島県の県境付近の海岸や漁港でメバルを釣るはずが、急遽阿南でカサゴを狙うことになった。
 海が太平洋だけに阿南の漁港はその付近の漁港同様、例に漏れず丈夫な造りをしている。波止の波返しも瀬戸内海のそれとは比較にならないほど高く、風をさえぎるのにも最適だ。
 これなら風にも波にも影響されず釣りができそうだぞ、と到着早々嬉しくなった。

 昼間は、さほどでもなかったが、夕暮れ以降は寒さが身にしみた。
 暗くなってすぐくらいに波止ぎわの底を探っていた私にミニサイズのカサゴが釣れた。何かコツンと当たったように思って、聞きアワセをすると、乗って来た。普段なら苦笑いのところだが、ワームに食いついてきたということは、けっして活性は低くないということだ。
 しかも、満潮時刻に近く、潮はすでに動いていなかったにもかかわらず、その後も、私にまあまあの大きさのカサゴがヒットし、リポーターのちゃこちゃんにも待望のカサゴが釣れて、スタッフ一同ホッと胸をなでおろしていたところ、近所の中学生二人が自転車でやって来て、常夜灯で明るい港内の岸壁からメバルを狙いはじめた。様子を見に行くと、ちょうどメバルを釣りあげたところだった。しかし、サイズがいただけない。10cmあるなしというミニサイズである。
「もう少し大きいのは釣れないの?」と訊ねると、外のテトラからなら釣れるけど寒いし風が強く波も出そうなので危なくてやれないとのことだった。
 そういえば、夕方まだ明るい時間にメバルを狙いに来ていた若者も、「外向き一帯をざっと当たってみましたが、いつになくアタリもありませんでした」と答えて暗くならないうちに車で去ってしまった。
 そんなものかなと思い、まだ、風も波もあがってなかったので、外の岩場に降りて仕掛けを入れてみたが、彼のいうとおり生体反応すら感じられなかった。
 
 それで、日が暮れたら港内の底を探り歩いてカサゴを釣ることに専念するぞと思いを固めたわけだが、勝負は引きの潮が動きはじめてからと心に決めていた。ところが、前述したとおり満潮の潮止まりにもかかわらずぽつぽつと私にカサゴが釣れ、ちゃこちゃんにも釣れたので気持ちが相当和らいだ。
 しかも、ちゃこちゃんが釣りあげるカサゴのほうが私のよりも毎回大きい。満潮時刻の十九時半ころに釣りあげたカサゴはそのなかでも見事なサイズであった。
「どうしても、尾鰭が曲がっちゃいますねえ」と、ちゃこちゃん。
 気温が低いので、カサゴも参って体を丸めてしまうのだ。人間だって、こう寒いと身をすくめてしまう。
「ちゃこちゃん、やりますねえ」とユニチカのスタッフが寄って来て私に囁いた。
「今何時?」と私は訊いた。
 すると、「七時半です」と時計を見て答えたので、「よし!」と気合が入った。
 あと一時間も経たないうちに引きの潮が動いて、その流れが波止の下のスリッド部を抜けて、テトラを積んだ漁港の外側へと出ていくにちがいない。その底へと仕掛けを流し込めれば、さらなる釣果が期待できるであろう。潮が動いていない二時間足らずのあいだにおいても悪くない釣果が出たのだ、この先、状況がよくなれば入れ食いになるかもしれない。
 そう思って、ニンマリしていると、ディレクターが寄って来て、「あのう、もう番組的にはじゅうぶん映像が撮れたので、一刻も早く帰って編集したいのですが、いかがなものでしょう」と言いにくげに私に言った。
「何を抜かすか、この野郎!」と私は内心むっとした。
 これじゃ立場が逆だろう。
 まあまあ釣れたし、めちゃくちゃ冷えるし、もうやめましょうよ、と釣り師の側が言いだそうものなら、「てめえ! なにしに来た。何様のつもりだ。これから入れ食いになるんだろうが」と、けんもほろろに叱りつけるのがディレクターの役目ではないか。
 これじゃ、イントロを聴いたところでコンサートが終わってしまったようなものだ。第一、潮がよくなったら一生懸命釣ろうと思って体力を温存しつつ適当に仕掛けを動かしていた私の立場はどうなる。そりゃあ、私だって真剣に釣ればあんなものじゃない。もう少し腕が立つ。自慢するほどじゃないとしても、素人とはちがうのだ。
 ほんま。ほんまやでぇ。おいちゃん、もう五十年に余って釣りしてるよってなぁ、もうちいとは上手なんやで。まったく、そのようにもぼやきたくなるではないか!
 でも、まあ、それはそれとして、たしかに、いいところを見せそびれたというのは残念だけど、あの刺すような寒さのなか、正味宵の口の二時間ほどでロケを終えて帰れたというのも楽できたと思えば喜ぶべきかもしれない。
 帰る途中にふらりと入った店のラーメンは旨かったし、それだって早めに切り上げたからこそ閉店時刻に間に合ったのだ。みんな体が芯から冷えていたので、注文の品が運ばれてくると笑顔の花が咲いたようだった。
「また来たいなぁ」と、ちゃこちゃんは言って餃子を追加注文した。
 まったく、小柄なわりに、よく食う娘だ。(笑)
 しかし、また来たいと言われても、カサゴを釣りに阿南はちと遠すぎる。
 どうせ足を運ぶのなら、それこそ友人が勧めてくれたようにヒラスズキでも狙ってみたいものだ。
 伊島では、いまヒラスズキが釣れているという。美波の磯場でも悪くない釣果が出ているそうだ。
 そう聞くと、今後が大いに楽しみである。
 さっそく明日にでも出なおしてきたい気持ちでいっぱいになった。
 食べながら、冗談が飛び交った。
 みんな口には出さないけれど、冗談が言い合える結果となってホッとしている様子だ。表情までがまるでちがっていた。

まあ、ロケのあらましを書くと、こんな調子である。
 あとは、二月三日放映のルアルアチャンネルを、ご覧あれ!
 もし観そびれたなら、YouTubeにもアップされる予定なので、こちらもご覧あれ!

では、みなさんも、よい釣りを!

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寒いけど、頑張りましょう! 

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指がかじかんでラインが通し辛い

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・・・・・・・・反応なし

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・・・・・・・・・・・・・

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日が落ちてようやく魚も動き出したか?

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続いてちゃこちゃんにもヒット!

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まあまあやな 

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寒い中お疲れさまでした。

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本日一番の良型はちゃこちゃんの手に!

【今回の使用タックル、ライン】

著者
ロッド  : ノリーズ スローリトリーブSR710 F
リール  : シマノ ツインパワーC2000 HGS
ライン  : ユニチカ ナイトゲームTHEメバルPEⅡ 0.3号
リーダー : ユニチカ ナイトゲームTHEメバルリーダーFC 5lb(1.2号)
ジグヘッド: 自作3b
ルアー  : マルキュー エコギア グラスミノ―S

釣女ちゃこさん
ロッド  : メジャークラフト ソルパラ メバルモデルSPS-S732M
リール  : ダイワ カルディアキックス2004
ライン  : ユニチカ ナイトゲームTHEメバルPEⅡ 0.3号
リーダー : ユニチカ ナイトゲームTHEメバルリーダーFC 5lb(1.2号)
ジグヘッド: 著者自作3b
ルアー  : マルキュー エコギア グラスミノ― S

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