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釣行記

釣行レポート

2016年7月6日

アマゴに会いに夏沢へ

 とにかく暑かった。
 元々あまり高くない山を流れる沢ではあるが、夕方になっても気温が30℃をくだらないのは珍しい。
 車の温度計がどの程度正確なのかを私は知らないが、そんなことを言うとトヨタカローラ屋島店の安倍裕児に、「わが社の車はエンジンから温度計まで完璧で非の打ちどころもありません!」と断言口調で言い募られそうな気がして、軽々しく口に出来ぬところがあるが、彼は最近バス釣りに行ったろうか。車を売るのが忙しくて、なかなか内水面へと足を運ぶこともままならぬとか言ってぼやいていたが、晴れて東京都知事となった小池百合子のように崖から飛び降りる気概で臨めば何とかなるのかもしれない(この原稿を書いている今日は8月7日である)。しかし、怖いもの見たさに飛び降りたはいいが、それだと職を失う危険がないともいえぬので、サボってこっそり行けばいいじゃないかと安直には勧められない。
 せめて、このホームページの読者の何人かでも奇特な人がいて、営業の安部に勧められたからと前置いて、トヨタの高級車を二三台まとめ買いしてやれば社長が彼のことを感心して特別休暇を貰えるかもしれない。そうすれば好きなバス釣りに気兼ねなく行けるはずだ。加えて、金一封など頂戴しようものなら、古くなったバスボートの装備品くらいなら新調できるかもしれない。すると、エレキがくずってまともに動かないから内場ダムでボートフィッシングを楽しむことが叶わなかったなどというトラブルも避けられるにちがいない。この話は事実で、私は彼のボートに乗せてもらって優雅に湖上のバスフィッシングを満喫するはずが、そういうトラブルがあってダメになった。
 まぁ、そんなことはどうでもいいが、釣りのウェアに着替えを済ませ、道具を準備し、いったん運転席に戻ってサンドイッチと牛乳で腹拵えしているあいだも、その精度の高いはずのトヨタ車の温度計は30℃のままだった。
 山は、夕方、日が翳ると、それだけで目に見えて気温が下がって、真夏でもだいぶ涼しくなる。ところが、どうだ。今回はちがった。
 これでは、下界から遥々避暑を兼ねてのアマゴ釣りを楽しみに来たのに、のっけから当てが外れたと言わざるを得ない。 

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使用したルアーはツインクルのみ。いい働きをみせた

 沢へ降りてからも額に汗がにじむほど蒸し暑かった。
 しかし、そうは言っても愚痴ばかりこぼしてもいられない。
 私は、まず下流の流れを眺め、上流の流れに目を向けた。例年の今ごろは春先と比べると水量が少なく、水温もあがり気味なので岩に藻が伸び放題になびいて、釣りにくい場所も少なくないのだが、今年は春から雨が多く流れが安定していい感じである。
 こいつはいけそうだと一目見て釣り師を喜ばすような流れであった。
 さっそく、バッグからルアーを入れたケースを取り出して、どれにしようかなと選ぶ。
 今回も、前回の祖谷川同様、いちど結んだらそれっきりルアーの交換はしない方針なので選択にはおのずと慎重になった。
 そうは言っても暗くなるまでには沢から出て車に戻っていないとまずいので悠長に構えてもいられない。流れに勢いを感じてもいたのでシンキングタイプの小型のミノーで釣りあがることにした。このミノーは普段から私が気に入ってよく使うタックルハウス社のツインクルという製品で、フローティングとシンキングがある。奥行きのある流れが連続する場所も少なくないので飛距離も考えてシンキングモデルをチョイスした。

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ミノーは、誘う、タダ巻きする、深く潜らせるなど、状況に向くタイプを使い分ける

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ときおりみられるライズに興奮する筆者

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婚姻色の出たカワムツは闘争心バリバリ。渓の厄介者だ

 ラインはシルバースレッドトラウトクリアー4lb、ショックリーダーは結ばずスイベルを介してミノーを直結した。
 沢に降りてすぐの辺りは流れの速くない浅い瀬がだらだらと続いているが、適当にいい感じの石が流れの底に配られて、いい意味での変化に富んでいる。さっそく、仕掛けを入れてみると第一投目からアタリが来てアマゴがヒットした。次また投げたら、またアマゴが釣れた。次また投げると、カワムツがヒットした。よく肥えた魚体に婚姻色が出て鮮やかだ。しかし、先のアマゴ2尾は、サイズ的にはこのカワムツと似たり寄ったりで精彩を欠いた。おそらく、来季のために漁協が放流した稚魚であろう。世間知らずの養殖場育ちだから容易く釣れる。ためしに、ここぞというコースに仕掛けをトレースしてみると、小童のアマゴが団子状態になってルアーにもぶれついて来た。これには閉口した。どうやら、放流場所に仕掛けを入れてしまったようだ。
 これではつまらないので、少し上流側へ歩くことにした。水温がやや高めなのが祟ってかアマゴ以上にカワムツがヤル気満々だ。いい流れに仕掛けを入れてベストの攻めが出来ていると自負していても、そのいい流れで食って来るのはカワムツが多い。たまに釣れても、アマゴは相変らず小さかった。

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使用したライン

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このサイズなら、まあ、よしとせねばなるまい

 これはまずい。小場所は捨てるべきだと判断した。これだけカワムツにやられてはやむを得ない。丁寧に探っていくのはセオリーではあるが、大場所がつづくところまで途中はすっ飛ばして移動することにした。
 相変わらず暑かった。
 山の向こうに陽が落ちてずいぶん経つのにミンミンゼミが鳴きやまなかった。それも一つや二つではなく、薄く、しかし広く、峰のあちこちから聞こえた。
「この時間帯、カナカナならわかるけどな」と私は訝った。
 その後、岩に腰かけて休んでいると、流れを割って宙に躍りあがる魚があった。アマゴである。しかも、いいサイズであった。まだ、納得できるサイズのアマゴを釣ってなかった私は、「今の魚は本当にアマゴか」と一度は疑ったが、ウグイではなかった。
 アマゴとウグイをまちがえるほどもうろくしてはいない。
 ここは水が冷たそうに澄んで、非情な感じがする。雑魚のカワムツを蹴散らして餌場を独占するナイスサイズのアマゴがフィ-ディングレーンにのさばり出ていても不思議はない。様子を見るため端の方にはずして投げた仕掛けにバイトしてくる魚はいなかった。じっさい、カワムツも子アマゴも流れのなかに姿はなかった。
 安定した流れの筋に仕掛けを入れて、出来るだけラインを流れに触れさせないようにロッドの先を高く掲げ、余分なラインのみをリールに巻き取りながら、自分の立つ下流側へと流れるままルアーを水中にた漂わせてやると、やや流れが緩やかになった辺りでアタリが来た。先にも述べたとおりシンキングタイプのミノーを使っているため放っておいても勝手に棚落ちしつつ流れていくのであるが、中層付近でアマゴが食いついた。 引きからしても、まあまあのサイズのアマゴであろう。さっさと寄せて仕掛けが緩まないよう気を配りながら上手に抜きあげた。長さからすれば大きいと自慢できるほど素敵なサイズではないが、体高のある目の覚めるような魚体のアマゴであった。

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どの位置から仕掛けを投げ入れるかも大事

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さらに奥へと釣り座を移す

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ここぞという流れにシンキングミノーを漂わせて食わせた

 前回、祖谷川のときは食わせの間に気を使ったと言ったが、今回は3尾釣れたまあまあのサイズのアマゴすべてをこの釣り方で仕留めた。釣れたのは大場所の似通った流れで、浅い流れからはカワムツ、子アマゴしか抜きあげることができなかった。
「流しっぱなしじゃ、そんなのルアーではなく木屑にすぎない。きびきびとした動きで最後の最後まで誘ってこそ釣果があがる。それをやっていれば倍以上はものにできたはずだ。もっと大きいアマゴも手に出来たかもしれない」
 そう誰かがおっしゃったとしても、おっしゃるのは容易いが、私はそうは思わない。状況に応じていろいろな攻めがあってもかまわないじゃないかと思うばかりである。どう言おうが、また、どうやろうと、それは人の勝手だから反論はしないが、私はこうやったらこうなったと書くだけだ。この3尾のほかに、これに準ずるサイズのアマゴが数尾釣れたが、3尾同様すべてリリースした。もちろん子アマゴやカワムツも逃がしてあげた。小さなアマゴほど空揚げにして食うとめっぽう旨いと言ってキープする人もいるが、そのような幼児虐待みたいな真似はよすがよかろう。
 なお、ミノーにはタダ巻きでよく釣れるもの、誘ったほうが釣果の稼げるもの、ほかにもいろいろタイプがある。が、しかし、ツインクルはタダ巻きには向かない。私はそう思って、いつもは誘いに誘うが、今回はシンキングタイプを流れの筋に浮かず沈まずの状態を出来るだけ長く保たせながら、ただ流すことでヒットに持ち込んだ。
 だからと言って自慢には値しない。開眼などというわけでもない。私としてはちょいちょい使う手で、奥の手というほどでもない。
 むろん、いつでもどこでも試せばいいというものでもなくて、流れをよく読んでやらないと釣り自体を台無しにしかねない。
 では、どういう流れのときにやるか。それは、気になる人ならご自分がフィールドに出てこつこつ勉強して納得のいくよう、腑に落ちるよう努力すればよい。
 先達、曰く!
「同じ流れは2度とやっては来ない」
 ようするに、この道もまた、生涯勉強ということであろう。
 よくよく肝に銘じておくべきである。

【今回の使用タックル】

ロッド : ウエダ トラウトスティンガーボロンTSS-57
リール : ダイワ セルテート1003
ライン : ユニチカ シルバースレッド トラウトクリアー4lb
ルアー : タックルハウス ツインクル50mm(シンキングタイプ)

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