2016年7月30日〜9月29日
夏のマダコゲーム(キャスティング編)
足元に仕掛けを落として誘う釣り方でマダコをものにしてきた。
このことで少しばかり自信を得た私は、もう少しちがったやり方を学べばさらなる釣果アップにつながるのではないか、いつ頃からかそう考えるようになっていた。
それで、キャスティングで狙うマダコ釣りを思いついた。
これに当たって、まず私が考えたのは、これまで通り使用するタコエギはそのままに、仕掛けをある程度遠方に投げてマダコを誘うというもの。いま一つは、アオリイカを釣るためのエギをマダコ用に改造することでキャスティング性能を大幅に高め、飛距離を稼ぎ、結果これまでよりもうんと沖の方を狙えるようにしていこうというもの。
いずれの釣り方も、足元のみならずもっと広い範囲を探って更なる釣果アップを図りたい、そのような目論見から思いついたことだが、今回は改造エギではなく従来型のタコエギを用いて試した結果についてのみ、この場を借りて記述してみたい。
サーフからキャスティングでものにした良型
岩場の浅瀬は底をよく見て仕掛けを通すコースを決める
この方法が足元を狙う釣りと異なるのは、港の岸壁や波止のほか磯やサーフも釣りの対象となる点である。今回はタコエギを用いて釣るので、キャスティングといってもせいぜい20mかもう少し沖を狙う程度だが、タナ的には底を大きく切って誘うことはしない。ロッドの先を高い位置に構え、シェイクしつづけることで、タコエギを躍らせながら手前側へと寄せてくる。この際、余ったラインをリールに巻き取るが、リーリングの目的はそれのみである。
このほか、ズル引きで誘うやり方も試してみたが、こちらもリールを巻くことで底のタコエギを動かすのではなく、ロッドをゆっくり少しずつ起こしていくことで手前側へと寄せて来る。次また手前へと寄せようとしてロッドを倒しこむときにラインのふけをリールに巻き取る。また同じようにロッドを起こしつつ仕掛けを手前側へとずるずる引っ張って来る。このくり返しである。つまり、エギングのズル引きのようにリーリングでエギを泳がせるのとはちがったやり方である。
誘うにしても、ずるずると引くにしても、仕掛けが重いためリールが主ではなくあくまでもロッドワークで仕掛けをあやつるようにする。
ちなみに、ダンシング八ちゃんは3.5号で約70gの重量がある。
荒い根のベタ底をこれだけ重い仕掛けで釣ることを考えればリール優位の攻めがいかに不向きであるかが容易に理解できるであろう。
ラインはPE40lb(3号)が基本
さぁ、釣るぞ!
サーフはひろく探って釣果を得るよう努める
サーフ脇には岩場が。魅力的な釣り場だ
猛暑に麦藁帽子は欠かせない
ロッドを起こしながら手前へ寄せているときヒットした
ダンシング八ちゃん。重さ約70g
道具は足元を狙うのと大体同じもの。今回もスピニングタックル、ベイトタックルを使用した。
仕掛けの組み方も足元を狙うときと同じである。
まず、スピニングタックルであるが、ロッドはダイワ・パシフィック・ファントムBG510S 2/3、リールはダイワ・カルディアキックス2500、ダイワ・リーガルZ1500C。ベイトタックルはロッドがメガバス・デストロイヤーオロチF5-70DG、リールがアブガルシア・レッドマックス船である。ラインはユニチカ・シルバースレッドソルトウォーターPE 40lb(3号)、ユニチカ・シルバースレッドショアゲームPE 3号、ユニチカ・シルバースレッドPEトップウォーターゲーム40lb(3号)。リーダーにはユニチカ・シルバースレッドショックリーダーFC25lbを多用した。タコエギはマルシン漁具・ダンシング八ちゃん3.5号(たまに4号を使用)を多用した。
リールは中型。シルバースレッドショアゲームPE3号を巻いて使用
多用したリーダー
根の荒い場所は、釣りにくいけれど、マダコが多い
漁港に隣接する磯の岩礁際でタコエギを抱いた
漁港内で小ぶりなマダコが来た
足元に落とせば仕掛けの角度は底に対してほぼ直角。これなら縦の誘いも思いどおり完璧におこなえる。
しかし、キャスティングゲームのばあいはそうはいかない。遠くへ投げるほど底に対する仕掛けの角度が浅くなるためロッドを高く構えて誘うにしてもこちらの思惑どおりとはなかなかならないわけだ。
加えて、タコエギ自体重量が重いのでメリハリのつく誘い方が有効だと仮定するなら道具立てはヘビーなものにならざるを得ない。仕掛けの重量にロッドが負けてしまうようでは話にはならぬと誰にだって察しがつくだろう。
また、ロッドが丈夫でなくては底の障害物をかわすのにも苦労するに決まっているのでこの点は譲れない。
足元を狙うときよりもキャスティング用のロッドはやや長めが望ましいが、今回はたいして遠投しないので足元を釣るのに用いているものをそのまま使った。
マダコは這うのも泳ぐのも人間が考えているようなのろまではなく、むしろ敏捷であるが、そうかと言って常時テンポよく誘うのは禁物である。誘い方というのは総じてねちねちやるのがよい。ときには超スローテンポの誘いが功を奏して好釣果をもたらすこともある。とにかく、「ねちっこくやれ!」とテグスを直接手に持って誘う手釣りを得意とする老練な年配の名人たちから耳にタコが出来るほど聞き教わった、と、まあ、そう漏らす現代のマダコ釣り師も少なくないようだ。
だから、シェイクで誘うにしても底のタコエギがどんどんテンポよく手前に寄って来るような釣り方はしない。小刻みなシェイクをつづけながらも仕掛け自体の移動距離は抑えたい。ときに試してみるリフト・アンド・フォールや軽い跳ねあげも、そのことを念頭に置いておこなう。つまり、あまり大きく底から浮かせないで、素早く落とすわけだ。
しかし、こういう誘いも、とくに浅瀬でおこなうばあいは、ただでさえ深場に較べて仕掛けの角度が浅くなるため意図するとおりにやれているかどうかが判然としない。それでも、イメージを持つことは大事であるから、海中の仕掛けがどうなっているのか、底でタコエギがどういう動きをしているのか、それを常に想像しながら釣りをおこなう。
要するに、「誘いのバリエーションは多彩に、移動距離は少なめに!」というのがマダコ釣りの基本というわけだ。
タコエギは重い。ロッドは難なくそれをあやつれる強さが必要
底の見える浅瀬は砂と岩礁の境をねちねち釣る
同エリアを角度を変えて狙うため釣り座を移す
岩場の移動は慎重に!
来た! 一気に底を切って寄せる
ナイスサイズの本命。底をねちねちやって仕留めた
底荒れするほど波がある日は風裏の穏やかな場所を釣る。波の高い日のサーフ等浅場は避けるようにしたい。潮が濁るとマダコの活性があがらないとはこの道の名人がよく口にする言葉である。私は経験が浅いため、ほんとうかどうか判断しかねるが、荒れてない日でも潮の濁っていることはけっこうあって、ふだん澄んでいるのにどうしたのだろうと訝りながら試しに仕掛けを入れてみると、やはり教えどおりいい目をした経験がないので、名人の意見は正しいように思える。
なので、これはキャスティングにかぎったことではなく足元を探って釣るばあいも底荒れによる濁りは極力避けて釣りをするよう心がけている。
時間帯については、よく知らない。朝夕のマヅメどきは外せないとか、昼間は釣るのが夜に較べると難しいとか、いろんなことが囁かれているが、いつでも釣れるのではないか。
ただ、一言付け加えるなら、干潮前後の潮の低い時間帯はよくない。それでも、潮が流れていれば望みはあるが、潮が動かず淀んでしまっているようなばあいは経験上も殆んどいい思いをしたことがない(マダコ釣り歴二か月の筆者の意見だから真に受けないように)。
サーフの浅瀬も案外釣れる
ちょっとした底の荒い浅瀬も夜は狙い目
海が荒れるとシーバス釣り師が集う。こんな夜は湾内などが狙い目
蛸壺というのがある。ロープに結んで海に沈めておくとマダコが入って休む。そこを狙って漁師は引き揚げにかかるわけだが、ロープに間隔をあけて結びつけておいた蛸壺を次から次へと引き揚げると、なかで就寝中のマダコをしめしめというぐあいにものにできるという寸法である。
これのどこに疑問を抱くのか、不思議に思う人もあろうかと思う。
しかし、ちょっと頭を働かせてもらうとわかるが、漁師は漁獲高に生活のすべてを委ねていると言っても過言ではないだろうから、マダコ専門の漁師なら、いつ蛸壺を海に沈め、いつ蛸壺を引き揚げると最も多くの水揚げを得られるか、このことに注意を払わないはずはない。もし、マダコが蛸壺のなかでじっと休んでいるときと蛸壺から出て活動しているときがわかってしまえばろくに苦労もせず稼げるわけだから、そうすると漁師がこのことについて考えないはずはなかろう。
すると、漁師が海に沈めた蛸壺を引き揚げにかかるころは、タコエギを使ってマダコを狙っても釣果はさほどあがらないことにならないだろうか。だって、マダコは蛸壺でいい夢を見てお休みになっていらっしゃるのだから、蛸壺を外からノックでもしないかぎり相手にしてくれないだろう。岸から釣るのに蛸壺云々を言っても仕方ないというかもしれないが、荒い底の窪みや穴で寝ているときと、餌を探して海の底をうろついているときと、どちらが釣りやすいかを考えるなら、どちらのときに仕掛けを入れるのが得策か、効率的かは誰にでもすぐわかるはずだ。
磯からも臆せず狙ってみよう
毎度同じ写り方ですんません。でも手に持てませんからマダコは
では、マダコが蛸壺で休んでいる時間帯というのは、いつか。季節的、時間的、潮的、天候的にみて、その傾向にちがいはあるのか。癖みたいなものはあるのか。いわゆる本能がそうさせるというようなマダコ生息域全般に共通する法則のようなもの。それがあって、漁師は口外しないけれど、そのことをよく知っていて漁をしているのなら、私だけにこっそり教えてほしい。
だが、それにはマダコ漁師の多くが一目を置くマダコ王的マダコ漁師を見つけ出して聴く必要があろう。全国のそういうマダコ王を訪ね歩いて蘊蓄を伺う。そうすれば、もっとマダコが釣れるかもしれない。
しかし、悲しいかな、私は多くの漁師と顔見知りであるにもかかわらずマダコ漁の名人に昵懇の者が一人もいない。今までマダコ釣りをしようと考えたこともなかったので無理もないが、せいぜい、「蛸壺を海に沈めておいて気が向いたら引き揚げに行くことで高価なマダコがどっさり獲れて稼げるのなら、それこそ濡れ手に何とやらではないか」と半ば揶揄しつつ「こんな安気な商売があっていいものか」とくらいにしか思っていなかったのだから嘆いてみてもしょうがない。
たいへん失礼な話であるが、マダコ漁師にはマダコ漁師の長けた戦術があるにちがいないなどとは、金輪際マダコを釣るようになる今日まで考えもしなかった。
漁港に行くと蛸壺が気になる今日この頃である
日中も
夜も
今、初心者の自分が釣り場のよしあしを占う目安にしているのは、漁港の岸壁や漁船の上に蛸壺がどのくらいの数積み重ねてあるかを窺うことくらいである。マダコ漁が盛んなら、当然、漁師町全体が潤うほどの獲って余りあるマダコが棲息しているのにちがいない。
このような状況下なら、新米の私にだって大いにチャンスがあるはずだ。
だからこそ、「いま、ここに仕掛けを入れないでどうする!」と漁港に積まれた蛸壺の山を目にするたび心にそう強く言い聞かせるのである。
小ぶりな個体が多い漁港内。イイダコサイズに苦笑させられることも
まだ他にも疑問に思うことは少なからずあるが、年齢のせいか頭に浮かんでもちょっとほか事を考えたりしたりしているうちに思い出せなくなって、それっきりである。書くのを中断してトイレに発ってもどったら、もう何か忘れている。万事こんな具合なので書き加えようにも残念ながらそれ自体思い出せなくなってしまっている。
だから、この辺でこの話は切りあげるが、なにかにつけてどうしてだろうかと疑問に思ったり、考えたりすることは大切である。小さい子のよく口にする、「ねえ、どうして?」というアレであるが、世知辛い日々の生活に追われて暮らしていると忘れがちなのも事実であろう。
しかし、このことは釣りの上達においても大事な要素の一つといえる。だから、くどいようだが念をおしておこう。
疑問とか驚きとかを持つというのは、道具や仕掛け、あるいはその扱い方である技術的なものに較べ軽視されがちだが、われわれは自然を相手にしているのだから、もっと自然を知るために疑問や驚きといったものを大切にするべきではないか。
こういう話は釣り仲間ともあまりしないが、普段からそう思っている。
さて。
長々と書き継いでいるうちに、そろそろ今日も釣りに出かける時間が迫って来た。部屋の時計がそう告げている。
なので、まことに勝手なことではあるが、これにてペンを置くことにする。
さて、今夜は釣れるかな?
釣れましたよ、ほら!
では、みなさんも、よい釣りを!
【今回の使用タックル、ライン】
ロッド : パシフィック ファントムBG510S 2/3
メガバス デストロイヤーオロチF5-70DG
リール : カルディア キックス2500
ダイワ リーガルZ 1500C
シマノ バイオマスター2000
アブガルシア レッドマックス船
ライン : ユニチカ シルバースレッド ソルトウォーターPE40lb(3号)
ユニチカ シルバースレッドPEトップウォーターゲーム40lb(3号)
ユニチカ シルバースレッド ショアゲームPE 3号
リーダー: ユニチカ シルバースレッド ショックリーダーFC25lb
ルアー : マルシン漁具 ダンシング八ちゃん3.5号