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釣行記

釣行レポート

2017年1月〜2月

一月のこと、二月のこと

引田坂元海岸

 ここは三月だか四月だか忘れたが、昨年、ルアルアチャンネルのロケをした場所である。メバル対決でさゆりちゃんとワームを使ったルアー釣りを楽しんだ。
 そろそろ一年が来ようとしているが、因縁の対決の決勝戦をやろうぜという挑戦状が届かないともかぎらない時期だ(因縁の対決って何なのとおっしゃる方は昨年の番組の映像をyoutubeでご覧になればおわかりいただけるだろう)。
 むろん、さゆりちゃん本人はタレント業で忙しいだろうからルアチャンスタッフから打診があればやってやろうじゃないかということにちがいないが、魚の釣りにくい厳寒期の二月に妙に私に話を振って来る番組ディレクターには油断も隙もあったものではない。
 そんな嫌な予感が的中した。画策したのがディレクターなのか、ユニチカスタッフの御目付け役なのか、その辺の事情については私の知る由もなかった。
 ただ、電話の向こう側から、「どうもどうもお元気ですか、あのね、アレの話だけど、・・・そうそうルアチャン。 どう?」なんていつもの軽い口調で持ちかけて来た事実は記憶に新しい。
 じゃあ、やりますか。
 そう応じたものの、さて、大阪フィッシングショーが終わってからこっちメバルについてはいい話を耳にしない。
 当然のことながら、うちのヤングどもからは、「また安請け合いして、・・・知りませんよ、いまメバルなんか当てにできるほど釣れてないですからね」と意見されてしまった。

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ジグヘッド0.4gにセットしたワームを捕えた良型

 私は言った。
「メバルは、根掛りしないかぎり重たいジグヘッドを使って釣れ!」
「藪から棒に何ですか?」
 ヤングどもは不審気であったが、いや、ちょっと小言の矛先をかわしてみたまでのこと。大した意味はなかった。
「おまえ、爺さんみたいだな。藪から棒なんて」
「そのくらい知っていますよ。年寄りと長く付き合っていれば、なおさら覚えますから」
「誰が年寄りだ!」
「ご自分でもジイジだのジジイだのとよく口になさるじゃないですか」
 じっさいのところ、浅場で用いるジグヘッドは根掛りしない程度の重さ、もしそれではワームをセットしたジグヘッドの動きが不自然でメバルが警戒して口を使わないなら、もう少し軽くする必要がある。飛距離は減っても、そこは割りきらないと釣りが成立しない。 
 1.5gで根掛りすることなく釣りができ、メバルが釣れるのに、わざわざ0.6gでやる必要はさらさらないが、そのくらいまで重量を落とさないと釣りに支障が出るならそうせざるを得ない。メバルがこちらに合わせてくれないなら、こちらがメバルの機嫌を取るより仕方なかろう。

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使用したラインとリーダー

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今回は繊細な仕掛けでスローな釣りを心がけた

 ほんとうにメバルという魚は食いしん坊なくせに猜疑心が強く、いちど疑るとねちねちじっくりこれでもかというほど辛抱強くあの手この手で攻めでもしないかぎり、なかなか口を使ってくれない。
 こうなると、いくら仕掛けが扱いにくくとも、そうしなければ釣れないわけだから、腕を磨いて軽い仕掛けも臆せず明るかろうが暗がりだろうが扱えるよう修練を積むしか手はない。
 じっさい、食い渋りのひどいときは、軽い仕掛けをおとなしく動かしながら長くメバルに見せてやる以外に口を使わせる手立てが今のところない。
 寒いこの時期は、そうでなくとも辛抱が必要である。辛抱強くなくては務まらない。
 まことに厄介なことである。


身近な根魚

 水産課が力を入れて放流を続けていることもあって香川県内でタケノコメバルが目立ってよく釣れ出した。東北の太平洋沿岸のような大型は稀にしか釣れないが、30cm程度までなら釣り物としてポピュラーな存在になりつつある。

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増えつつあるタケノコメバル。引きの強い好ファイターである

 じっさい、ワームでメバルを狙っているとよくヒットする。カサゴも同様にメバルの外道として馴染み深い魚であるが、タケノコメバルのほうが引くので釣り人にウケがいい。
 香川県の冬は海からの季節風が強く吹いて、凪ぎが好都合とされるメバル釣りを台無しにすることも珍しくないが、増え続けるタケノコメバルは港湾の奥の潮の動きのごく弱いエリアにも居つく根魚だけに釣り人からも歓迎されているようだ。つまり、季節風を避けることの容易な奥まった場所でも良型が釣れやすい。メバルなら居ないか、居ても小型が少し釣れる程度の期待薄なエリアでも、このタケノコメバルはかまわず仕掛けに食いついて来てくれて、大いに私たち釣り人を楽しませてくれる。

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タケノコメバルは風を凌げる漁港の奥まった場所にも少なくない

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メバルを狙っていると最近このサイズがよく釣れる

 じつは、元来の性質として、こういう場所をタケノコメバルが好むことは年配の釣り人ほどよく知っていて、いきなりルアーフィッシングから入門した現代の若手はあまりよくわかっていないようである。ヘビーなベイトタックルによるルアーフィッシングの好敵手としてアコウと共に狙う人が多いタケノコメバルであるが、じつはどんよりと潮が淀んだような浅場にこそ多い。アコウも似た生活スタイルを好む根魚であるが、いかんせんハタの仲間であるから低水温には耐えられない。だから、冬の浅場に出て来て餌をあさることはないが、夏場のアコウは水質のよくない港内の奥まったエリアに意外なほど大きいサイズがひそんでいることがあることからも共に似たタイプであることが窺い知れる。

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メバルもサイズのわりによく引く魚である

 冬の夜。
 外灯の明かりで底があらわになっている漁港内の浅場を丁寧に探ってみる。道具ならメバルタックルでじゅうぶんである。小型のワームで底付近を誘っているといいアタリが来る。食いしん坊らしく、もう待ちきれないとばかりにワームに襲いかかって来たとはっきりわかるような口の使い方である。フッキング後のファイトぶりがこれまたたまらない。グイグイと仕掛けを引いて海中を走りまわる。カサゴほどすぐさま穴や根の裂け目に逃げ込もうと企てないので、じゅうぶん引き味を堪能させてもらえる。

 香川の海の冬の釣り物といえばメバルくらいしか思いつかない。ルアーで狙えるターゲットがとても少ないのだ。しかし、メバルは食い渋ると口を使わせるのが非常に難しい。
 その点、タケノコメバルはイケイケドンドンの魚だからワームを眼前にちらつかされると我慢しきれず食いついて来る。食い気が勝って、スレにくいのも人気の秘密だ。
 そういう魚だから、必要以上にキープすることはせず、とくに小型は速やかにリリースすることが今後永続的にこの魚とつき合っていけるかどうかの分かれ目になるかもしれない。
 このタケノコメバル。春が旬のタケノコが採れ出す時期に味がよくなることからこの名がついたとされる。
 今回も、強風で浅瀬のメバル釣りができなかったので、漁港の奥の奥へと足を運んで遊んでもらった。
 写真くらいのが五つほど。悪くないサイズのカサゴも釣れた。
 メバルもヒットするにはしたが、写真に撮るには役不足のチビ助ばかりだった。
 タケノコメバルカサゴはボトム付近や物陰を、ゆっくりじっくり小さく縦に誘うことで釣果をものにした。

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気が向けば近くの漁港へ出かけてみよう

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カサゴも人気。漁港の奥でも底が荒ければ良型がひそむ

 寒風吹きすさぶ夜は家でコタツに入って蜜柑など食べながらテレビを観て団欒の時を過ごすのも悪くないが、このように寒さを押して海へ出かけてみると予想外におもしろい遊びが実現できたりもする。
 むろん、出かけてみないとわからないのが釣りである。
 けれども、行かないと、ぜったい魚は釣れない。
 やはり、出不精のものぐさ人間には到底務まらないのである。

 では、みなさんも、よい釣りを!


会合のあと

 会場が海に近かったので、そのあと釣りに費やす時間を捻出できそうだった。だから、言いたいことも抑え気味に、口数少なく目立たぬよう席ではおとなしくしていた。
 ただ一度だけ、「あの先生、まっぴらごめんだ。まだご存命なのかも知らないが」とひとりでに口をついて出た言葉をマイクに拾われて、「たしか、ご存命です」と誰かが受けて、いささか雲行きがあやしくなりかけた。
 しまったと悔いたが、出たものはいまさら呑み込めない。
 そこで咄嗟に、こう言った。
「元来、哲学は頓珍漢で、さっぱりわからぬものですから」と。
 このように、私がトーンを抑えた口調で頭を掻いて見せたので、それで一件落着した。
 その先生というのは、もう十数年も前にわかりやすい言葉で哲学を説くとかで評判となった女の著述家で、『14歳からの哲学』とかいう本が話題になった。容姿からして気難しそうで、もの言いがいかにもという感じで、お互い様でどうにかやっていけている世間をわざわざ余計な言葉を費やして混ぜ返さなくてもいいじゃないかと、その当時の私に思わせた。
「十四歳は、遊ばせておけ!」と無責任かもしれないが、当時の私はそんな感想を持った。
 やさしい言葉でわかりやすく哲学をあなたにも説いてしんぜましょうと押し売りされても、そんなことなら子供のころ近所の爺さん婆さんから、さんざん聞かされて育って来た。「世のため人のためになる人間になりなさいよ」と、ことあるごとに聞かされてね。まるでお題目のように。そのことのほうが哲学の女先生の説法よりもよほど身にしみた。
 最近、「世のため人のため」をとんと耳にしなくなったが、そうなってみると、なんだかもういちどとくとくと諭されてみたい気がする。
 哲学は大衆一般に訴えかけているようで、じつは自分を説いて聞かせるばかりで、ひろく世間を語らない学問のようにずっと思って来た。なかには、消えた蝋燭の炎はどこへ行ったかを哲学的に追及しているというグループさえある(ちょっとおもしろそう)。また、いま思い返してみるとサルトルという人はご都合主義的女ったらしだとしか私には映らない。それを、言いすぎだ、偏り過ぎた考えなしの意見だ、見識不足も甚だしいとおっしゃるなら、それでもよい。
 この歳まで生きて、いまさら、哲学も何もあったものじゃない!
 だいたい、哲学を語るのは西欧の人で、東洋では哲学は自然のなかに、日常のなかに溶け込んで、たとえば空気のように意識にのぼることなく、それとなく存在して来たのではなかったか。哲学や思想は日本に有ったためしがないと西欧の先生方は口々におっしゃるが、自我をやかましくまくしたてて相手を黙らせようなんていう野暮をしないことが日本を含むアジア圏の多くの国々の人の良識と美徳であったというだけのことだろう。

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仕掛けを組む間も気持ちが逸る

 とにかく、おとなしく黙って、言いたいことも呑み込んで、先生方の話に横槍を入れて議論の火種に油をそそぐような失態もせず、早々に会場を後にすることが出来たのは幸いだった。
 ただ、現地解散で釣り場へ直行できなかったことは、やや残念であった。
 誰からともなくお茶でもしないかという話になり、ショッピングプラザのなかの喫茶店にのこのこ足を運ぶ羽目になってしまった。
 でも、まあ、いやな野郎は誘って来ないし、気の合う奴ばかりが寄るわけだから気楽なものである。
 その茶の席で、これからちょっと釣りをして帰るのだ、すぐそこの宝の島で根魚でも釣れるかと思ってね、まだ明るいけど小さいのなら釣れそうな気がする、潮も悪くないしね。
 そう打ち明けると、宝の島ってどこだと訊く。
 ここから目と鼻の先に埋め立てて出来た島があって、その島と陸と橋で行き来できるようにしてあるのだと説明すると、おもしろそうだからついていくと興味津津である。どいつもこいつも釣りなんかしないくせに。

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使用したライン

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良型?そんなの期待してません

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やりました。自己最少記録更新の1尾!

 さて、宝の島に到着した。
釣り場は海の沖側ではなく、橋を渡してある水路側の大きな川のように見える、その護岸。そこをふらふらと釣り歩く。
それでも、じっさい仕掛けを入れてみると、護岸の基礎部分の敷石をじゅうぶん潮が浸していたこともあってか、その基礎部分のカケアガリを丁寧にメバル用の仕掛けで探っていくうちにアタリが来て、ごく小さなタケノコメバルが立てつづけに釣れた。

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このサイズでも釣れると楽しい

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増えつつあるタケノコメバルだが、小型はリリースしよう

 いい天気だったので、さほど寒くもなく、会合に出たままの恰好で一時間ほど釣りをした。
「まるで釣りバカ日誌だな」と誰かが言い、「こんなところでも釣れるものだな」と誰かが感想を述べる。
 それを尻目に、ひたすら仕掛けを投げては誘い、小さいのを釣りあげては小さくガッツポーズする。
 そんな私は、他人の言を借りるまでもなく釣りバカである。
 それにしても、日中にこれだけ釣れるのならば、夜はもっといいサイズのタケノコメバルが潮次第で連発するのではないか。こいつは近いうちに出なおしてこなくちゃ、そう思った。


ライフジャケット

 夏沢でイワナを釣って、家へ帰るのが面倒くさくなると、そのまま山で眠ってしまうような人間に、「釣りをする際には、安全のためにライフジャケットの着用を!」と言われても、あまりピンとは来ない。
 むろん、テレビ番組のロケや公開を目的とした写真を撮るばあいは着用せざるを得ないから従うが、プライベートの釣行においては必ずしもライフジャケットを着用するということはない。
 万が一にも開かないでは済まされぬパラシュートでさえちょいちょい仕事をさぼって人を死なせてしまうことがある。ならば、膨張式のライフジャケットが正常に作動しなかったとしても何ら驚くには及ぶまい。じっさい何かのテレビ番組で、タレントの誰かがボートから誤って海に落ちた際、膨張式のライフジャケットが機能せず、笑えそうで笑えない話題を提供したらしい。その製品にはメーカーのロゴが刷り込まれていて、それがばっちりテレビに映ったそうだ。

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松の防風林を抜け、いざ釣り場へ

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浅場を繊細な仕掛けで釣る

 そのボートから落ちた芸能人は、芸として大袈裟に溺れる真似くらいしたかもしれないが、生まれつき泳ぎは達者な方だったろう。だから、おもしろおかしく放映したのにちがいない。
 私のライフジャケットについての考えはこうである。
「自身が必要だと認めたとき黙って着用すればいい。すべては自己責任である」
もし百パーセント金槌なら最初から浮くタイプを、水泳選手として国体に出場した経験の持ち主なら膨張式でも何でも好きなデザインのものを選んで着用すればいい。もちろん、必要と感じたならそうすればいいというだけのことである。

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開始そうそうタケノコメバルがヒットした

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日中の浅瀬はこのサイズが多い

 ちなみに、今回、私が着用している黒いジャケットはライフジャケットである。誤解のないよう記しておく。

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使用したライン

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これぞ本当の意味でライフジャケット!

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穴に逃げ込もうとするのを力ずくで引き抜いた


アタリとアワセ

 バルという魚は大胆不敵の一面を持つ一方で、相当猜疑心の強い魚であることも広く知られている。
 しずかに凪いだ冬の夜の浅瀬は、メバル釣りに持ってこいということで、多くのアングラーで賑わうが、このメバルという魚は好奇心旺盛で食い意地の張った魚だとの印象を抱かせる一方、先に述べたとおり大変疑り深い性格でもあるので、食い渋ると一筋縄ではいかないところがある。

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激渋メバル攻略には細くて強度のじゅうぶんな水馴染みのよいラインが必要

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軽い仕掛けと繊細な攻めで激渋メバルを攻略

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名のとおり目がよく張っている。よく見えそう

 メバルの気配が濃い。 それどころか、アタリを頻繁に送ってよこすのに、けっして本気で口を使わない。こうなると、こちらもむきになり熱くなって、何とかメバルの顎にフックをぶち込んでやろうと時を費やすことになるが、いかんせんどうにもこうにもなかなかうまい解決の手立てがみつからない。
 容易に食って来ないときのメバルのアタリには数種類ある。
 もっともポピュラーなのが、ショートバイトの「コツン」という馴染み深いものである。即アワセするが、乗らない。くちびるの皮一枚どうにかこうにか捕えるも、ファイト中にはずれて残念無念、貴重な一尾をばらしてしまったと冬の夜の海辺で地団駄を踏まされたという経験は誰にもあることだろう。
 ほかにも、ごくゆっくりタダ巻きしているときに、均一にかかっていたテンションがふっと抜ける瞬間があって、これはヘラブナ釣りのウキに見ることのできる「食いあげ」に似るが、このウキに見て取れることがメバリングでは手元が軽くなるという感覚にとらえられる。これを、単に「抜け」とか「抜けアタリ」というが、バランスの良い繊細なタックルで仕掛けを的確に扱えておりさえすれば、誰にも容易に感知できるアタリである。この手のアタリは比較的ヒットにつなげやすい。仕掛けを巻く手を止めて、小さく鋭く空アワセするとよい。まちがっても、大アワセは禁物である。ワームが荒っぽく大きく動くとメバルが驚くのか警戒心を強くするのか、それっきりアタリが来なくなることが多い。とくにシビアな状況下での大アワセは致命的で、まったく相手にしてくれなくなるであろうこと必至である。
 大事だから、くり返し書くが、
「アワセは小さく鋭くおこなう。大アワセは禁物である」

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聞きアワセでものにした1尾

 一般的なアワセについては既に触れた。
 しかし、アワセはアタリを合せる意味からアワセというが、凪いだ夜の浅瀬でメバルを狙っているとき、どうも食いが渋い、渋すぎるじゃないかと頭を痛めるような状況なら、アタリは合わせるものではなく、聞くものであるというのが長年この釣りに入れ込んできた者の言い分である。
「アタリを聞く」
 これは、「聞きアワセ」と表裏一体であり、即アワセでは乗せきれないメバルの口に何とかフックを打ち込もうという目論見から生み出された戦法の一つだということができる。
 夜の浅瀬でタダ巻きの釣りを実践しているとき、アタリとも言われぬアタリを手元に感じる瞬間がある。これは気配ともとれるが、自分の扱うワームのすぐそばにメバルが居て、何かちょっかいを出して来ていそうだが、ちょっとした潮流の変化で仕掛けの抵抗が増しただけなのかもしれないし、何とも答えが出ない。このとき、ごくゆっくりリーリングをつづけて手元にその後もずっと同じ感触が消えずにあるというのなら、メバルがじゃれついて来ている公算が高い。
 経験豊富な釣り師がよく語るのが、こうである。
「ワームの端をくわえたまま、リールを巻くスピードに合わせて、メバルがこちら向きに泳いでくる。アワセを入れても鈎先に触れないため乗らない。ためしに、仕掛けを一瞬止めて空アワセをしてみたらワームが手前にずれて鈎からはずれそうになっていた。ジグヘッドにきちんとセットし直してやってみたが、何度やっても空振り三振か、ワームがずれてあがって来るばかりだ」
 じっさい、これについては私も度々経験している。
 こういうときは、絶対ではないが、送りアワセか聞きアワセが有効である。
 送りアワセは潮下に仕掛けを張らず緩めずの状態で送り込みつつ本アタリを探すというものだが、これは潮が適度に流れていなければ出来ない。つまり、潮流の助けが必要となるアワセのテクニックであるというわけだ。
 竿先を潮下に送っていきながら、そのあいだにフッキング可能なアタリを出させることが目的の送りアワセであるが、リールからラインを放出しないかぎり、仕掛けを送れる距離というのは竿先の移行距離に等しいというわけで、そのあいだにメバルに口を使わせるための微妙な仕掛け操作をおこなう必要がある。そんなことを言っても、やることといえば仕掛けを潮に乗せて送ることのほか手立てなどないではないかと思われるかもしれないが、傍目にはそうとしか見えない仕掛けの扱いのなかにも、じつは微妙な手加減というのがあって、上手な人はそうでない人にくらべ明らかに多くのメバルを手にする。メバルが食い渋るほど釣果に差が生れやすいというわけだ。仮に五十センチ送るとして、この距離内に何がおこなわれているかは、それこそ言葉では説明できない。この微妙さは長く経験を積む過程で苦心して自身が体得するしかない技術である。

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このサイズが連発ることもあったが、時合は短く苦戦を強いられた

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聞きアワセ、送りアワセが功を奏した釣行だった

 では、聞きアワセはどうか。
 送りアワセが潮流を味方につけておこなうのに対して、こちらは潮の流れに関係なく実践できるのが利点であり、いっそう奥が深い。
 ゆっくりタダ巻きする手を止めて、竿の先で仕掛けを引き始める。あるいは巻きながらさびくこともある。いずれにせよ、聞き始めから聞き終るまでのあいだが勝負であり、勝って凱旋の雄叫びをあげられるか、それとも負け戦となって国やぶれ山河がありの心境となるのかの分かれ目ということになる。
 むろん、用もないのに聞きアワセをするわけではない。送りアワセ同様、食いそうで食わないメバルに何とか口を使ってもらいたいからおこなう。
 仕掛けを竿でさびくことによりアタリを聞くこの聞きアワセという方法は、引く方向が自分の意思でどうにでも変えられるという点が優れている。もちろん、仕掛けは海中に延びており、もし流れがない状態だとしても水圧がかかっているため、竿の先を仕掛けに対して直角方向に倒して引っ張ったからといっても、仕掛け全体をその方向へと自在に引き動かせられるわけではないが、目先を変えてメバルをその気にさせるきっかけにしようと目論む程度にならロッドの扱い方次第でどうにでも変えられる。
 まあ、このように詳しく長々書かれても今ひとつピンと来ないという人は、少し前に河原さゆりさんと共に香川県東部でロケをおこなった映像が三月八日にサンテレビで放映されているので、もし番組を見逃した方でもYouTube(ルアルアチャンネルで検索)でご覧になれば聞きアワセでヒットさせたメバルを取り込むまでの一連の流れが一目でわかるはずである。興味のある方は是非ともそちらを参考にしていただきたい。

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煮付けて食べた。この辺のメバルはとくに美味しい

 最後に、アワセには即アワセ、止めアワセ、送りアワセ、聞きアワセ、空アワセなどがあるが、どのアワセも釣り人側が主導しつつもメバルの口に鈎を掛けるという際においては、やや相手側に主導権を譲ったかたちでアワセを入れるのが私個人は望ましいと考える。
曰く。
「アワセは、決めるのではなく、決まるのである」
これは、感覚の問題で、それは微妙であり、攻めの釣り一点張りの主張を通す釣り師の方々には受け入れ難いことかもしれないが、食わせの瞬間は主導権を魚の側に譲るともなく譲りたい。ともすれば所詮それだと向こうアワセじゃないかと揶揄されかねないが、それでもこちらの意思が多少なりとも働いてのことであるならば、ある意味攻めの釣りとみても問題ないのではないか。すなわち、譲るのである。かかりやすくしておくから、自分でかかって頂戴ねというわけなのである。
これには、仕掛けの張りを常に念頭に置いておくことが求められる。
この微妙な張り具合を、昔の釣り師は「張らず緩めず」と言った。
 それにしても、冬の夜の浅瀬のメバル釣りは、いろいろな意味合いにおいて微妙かつ繊細だ。
 まことに、奥の深い釣りであるといえよう。


タケノコメバルは原則リリース!

 タケノコが採れ始めるちょうど今頃からタケノコメバルが美味しくなる。もともと美味しい魚であるが、カサゴとちがってメバルの親戚だから純粋に根魚とは呼べないかもしれない。けれど、釣り方は、根魚の道具と誘い方で、よく釣れる。
ただ、メバリングに出かけ、ジグヘッドにワームをセットして釣りはじめると、メバルに混じって最近はタケノコメバルが高い確率で食いついて来るようになった。メバルの仲間だけあって、海中を泳ぐワームへの追いも悪くないようだ。

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荒い根から良型を剥がして浮かすには高強度のPEを選ぶ必要がある

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餌が豊富なのだろう、根魚の多くがよく肥えていた

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ボトムを丁寧に探るとカサゴが来た

 とはいえ、瀬戸内海でもっともポピュラーな根魚であるカサゴにくらべその生息数の比較の結果はどうかというと、正確なデーターは存在しないであろう。一説ではタケノコメバルはクロソイやカサゴに比べて好戦的であり、攻撃、餌食の両面においても、両者に勝っているという。たしかに、食い意地が張った魚であることは釣りをしていて実感できる。
 それなら釣られやすいわけだから、いくら釣れるからといってキープし過ぎると減ってしまうかもしれない。繁殖力旺盛なのか、どうか。その辺を私自身は詳しくない。県が放流に力を入れているからこそ馴染みの顔となったが、今後いつまでどれだけの数量を放流しつづけるのか、しないのか、わかったものではない。
 第一、普通に漁があったものが獲れなくなったから、水産課が力を入れて増やそうとしている最中なのではないか。それなら一度減るところまで減ると困ったことになるタイプの魚かも知れない。
 だからといって釣ったタケノコメバルを自分がリリースしたところで美味しい魚だから他の釣り人が見逃してやるとはかぎらない。大きいのが釣れることは多くはないが、二十センチ前後なら釣り談議で話題にのぼる程度には釣れているから、味をしめた人が専門に狙いはじめないともかぎらない。
 幸いなことに、このタケノコメバル、習性を詳しく知る人はまだ少ない。こう書くと、私が何か詳しい人かと羨望のまなざしで見られそうであるが、長く釣りをしているぶんどこをどう探れば釣れそうかという程度なら予想できる。
それだって、潮次第でどう転ぶかわからない。

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開始早々にヒットしたタケノコメバル。期待もてそう

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気分屋のメバルだが、わりと反応がよかった

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足元付近を横引きしていると向こうアワセで食ってきた

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煮付けやすいサイズばかりキープすることも

 最初、二十センチ以上はキープしていた。それがけっこう釣れるため二十五センチを超すと持ち帰るようになった。それも、わりとよくヒットするとわかり、釣行を重ねるうちに尺サイズなら煮て食うかとなった。
ところが、尺どころか、それ以下のサイズすら、最近は釣れない。
スランプなのか。
どうか?
 あれほど好戦的で食いしん坊な根魚なのに、ここしばらく私の誘いに容易に乗っては来ないのである。
 だから、ここしばらく煮つけを食っていない。原則リリースと決めてはいるが、サイズはともかく美味いので食いたいものである。
 もうそろそろ釣れるだろうかと期待している。


ジグヘッドリグ

 正直に言ってしまおう。
 メバリングの数あるリグのなかで、いちばん飽きが来ないのがジグヘッドリグである。
 状況に応じてジグヘッドの重さを変え、また、形状の異なるジグヘッドを使い分けることで、やや沖の方から足元付近までを多彩な攻め方でもって探りきることができるのが最大の魅力だが、なかでも繊細な仕掛けと超軽量のジグヘッドを組み合わせて誘うことで食い渋るメバルにまんまと口を使わせ、見事、釣りあげたときの喜びには何ものにも代えがたいものがある。

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外灯の照る港内は明暗部を丁寧に釣る

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今夜も早々にメバルがヒット!

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極小ワームが効果的な夜だった

 とくに厳寒期の一月後半から二月にかけてはメバルの食い渋ることが少なくないので、繊細な仕掛けでじっくりゆっくり当たっていかないと、浅場ではなかなか釣果にありつくことができない。
 なので、こういう釣りを楽しむ人は単独の釣行を好む傾向が強い。
 普段から孤独を好む人だとはかぎらないが、大人数で騒がしくするとメバルは憶病な一面を持つ魚だけに釣りにくさが増さないともかぎらない。
 メバルは凪ぎを釣れというが、とくに凪いだ夜に浅場を釣るばあいは気配を消して静かにアプローチすることが望ましい。

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メバルは物陰を好む。漁船すれすれを狙ってみるのも効果的

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状況が変わればそれに応じて仕掛けを組み直す

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食いの渋いメバルにはワームを出来る限り長く見せる

 さて、今回も東かがわ市の漁港の石積み波止でジグヘッドにセットしたワームを用いて繊細な釣りを短い時間だが楽しんだ。一月中旬以降二月現在まで、多くの中小型に混じって、ときに20cmを超すサイズのメバルがぼちぼちだが釣れている。この「ぼちぼち」が妙なのであって、じつを言うと目的は最初から活性の高い中小型のメバルである。仕掛けの工夫、誘い方の工夫が、どのような結果を生むのか。頭のなかの考えを釣り場で実践して早急に答えを得ようと思うならサイズよりも数の狙えるエリアへと足繁く通うのが手っ取り早い。
 もし、それでいい結果を得られたなら、次は少し癖のある難しい釣り場でも試してみる。食い渋る時期だけに試せることはなるべく多く試してみよう。ほんの思いつきから始めたことが一生の財産にならぬともかぎらないのだから。
 じっさい、暗がりで繊細な仕掛けを扱うのは慣れないとトラブルも多いものである。
 このトラブル回避目的での工夫も、ちょっと考えて試してみたら難なく解消されたという程度のものが少なくないから、自在に仕掛けをあやつることに不得手な人はあれこれ考えて試してみるとよいだろう。何か参考になる一例をと言われるのなら、今回のルアルアチャンネルのロケで河原さゆりさんがやっていたような方法を取ると軽量ジグヘッドリグで浅場のメバルを狙うばあいにおいては効果が認められるのではないか。番組のなかであえて説明はしていないが、映像を観てもらえば気づく人は気づかれるであろう。
 そして、釣り方の肝と言う点で一つ上げるなら、やはり仕掛けは強く張らないということだ。張った方がアタリを早く感知できるので即掛けが可能になるという考えは捨てること。少なくとも浅場で食い渋ったメバルを狙うばあいには念頭に置いておかなくてはならない大事なことの一つである。
 それと、仕掛けを工夫するとき一点に特化した考え方は捨てたほうがよい。いつもトータル的なバランスを念頭に置いて考えないと全体がしっくりこず、ちんちくりんなものになってしまいやすい。
 釣り場の状況というものがあり、それに見合う道具立てや仕掛けの組み方というのがあり、誘い方というのがある。そのなかでの工夫というわけだからサーカスのような離れ業ではなく多くは地味なものである。
 だが、その小さなちがいが大きな釣果の差を生むこともあるので疎かにはできない。
 それこそ、
「何事も小さなことからコツコツと!」というわけである。

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超軽量リグにヒットした良型

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セイゴも釣れた

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ふつうメバルの時合は短い。手返しよく釣ろう

 では、みなさんも、よい釣りを!


仕掛けは張らず緩めず

 仕掛けは張らず緩めずだという。
 なぜ、そうなのか。それがいいのか。
 そもそも、張らず緩めずとは何なの。張るな、緩めるなと、ややこしい。

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よく釣れるけど寒いわぁ

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軽いリグで波止ぎわの根周りを攻めてものにした1尾

 これについての本意は見え透いていて、つまり仕掛けを張り過ぎるなよと言っている。たしかに緩め過ぎはよくないに決まっているが、緩めすぎることに心を砕いて常時釣りにいそしむ人など最初からいるはずないのでバカなことは考えなくていい。
 たとえば潮が速くキャストしたときのままの位置に竿先を置いたままにしておくと、潮下に流れようとする仕掛けが必要以上に張り過ぎてしまうばあい、キャスト後に間を置かず竿先を潮下に送って自分の立つ岸に平行に構え直す。
 その後、リーリングを行わずに竿の先でさらに岸側に仕掛けを引くようにすれば流れに対して角度がつくから理想的な「張り過ぎず」を実現できるだろう。
 さらに潮の流れが速く、それでは間に合わないなら、投げなおす際に少し潮上に投げて時間稼ぎをすればいい。
 横風のせいで仕掛けが張ってしまうばあい、張りを少し抑える方向に持っていくのが理想的だが、少し抑えるというのは手元に来る仕掛けの重みが心地よい程度に張りを弱めるのであって、けっしてあてずっぽうにおこなうのではない。じっさい、少しもどしてみたもののまた張り直す方向へ持っていかなくてはならないことも状況次第で起こり得る。

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ワームは好みで選べばよい

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タケノコメバルは居ればためらうことなく食ってくる

 この張り過ぎない仕掛けのテンションを持続させるためには、いま言ったようなことのほかに、竿先の高さをも念頭に置いて釣りを組み立てる必要が出てくる。要するに、無風のばあいなど、竿先を高くすれば空中にあるラインが多くなるぶん遊びが大きくなり、海面に近いほどその逆になるというのは誰が考えてみても想像しがたいことではないだろう。とくに、モノフィラメント素材のラインのばあいにこの差は顕著であるが、浅場で軽い仕掛けを用いてやるメバリングにおいては、たとえPEラインであってもロッドティップの高さを考えに入れて仕掛けを操作するのとしないのでは理想的な「張り過ぎず」の出来に差が生じるのは言うまでもない。
 仕掛けは張り過ぎない方がメバルの食いつきがいい。張り過ぎない方が、鈎掛かりがいい。どんなに小さなアタリも見逃さず、即刻フッキングに持ち込んでやろうと考え仕掛けを出来るだけ強く張ろうとするその気持ちはよくわかるが、実践してみれば自分の考え違いを思い知ることになるだろう。

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さゆりちゃんは仕掛けを張り過ぎないことでロケ当日は一尾もばらさなかった

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食い渋るほど熱くなる、それがメバリングだ

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食べやすい中クラスだけキープした

 じっさい、百聞は一見にしかずということで、ぜひ擬似体験してみたいという人は、ルアルアチャンネル(3/8放送分)河原さゆりさんが香川県に来て実践している場面をご覧いただければ納得してもらえるかと思う(YouTubeでもサンテレビ公認の映像が常時配信されている)。
 
 では、みなさんも、よい釣りを!


アイナメ

 忘れたころ、ひょっこり姿を見せるのがアイナメという魚である。
 今回は、ワームでメバルを狙っているとき、岩礁帯の浅場で食いついて来た。一月下旬ということで、どうも雌が産んだ卵を外敵から守っていた雄がテリトリー内に侵入して来た私のワームに襲いかかったというのが真相であるようだ。じっさい雄のアイナメは寝食を忘れて卵を守る習性がある。だから、それが長引くほどその魚体は痩せてみすぼらしくなってくる。このことから私が釣ったアイナメは子育てを始めたばかりの雄ではないかと思われる。その証拠に色艶がよく痩せてはいなかった。

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磯ぎわをじっくり探る

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キーホルダーサイズでも釣れると嬉しい

 アイナメは根魚であるが、シーバスを狙っているとミノーのあとを足元まで追って来て、何度か私も驚かされたことがある。とくに攻撃性の強いこの時期のアイナメは子を守る親だからサイズも大きい。
 私の釣ったアイナメは、シーバス用の大型ルアーで40cm、メバル用のワームで35cmくらいが最大だが、もう少し小ぶりなものも数に含めると両手の指に余るくらいは釣っている。
 やはり、一月二月三月が多く、なかには50cm級を手にして仲間を羨ましがらせた者も何人かいる。私の知るかぎり、釣り場は鳴門市である(元来、太平洋沿岸に多い魚だ)。今でも、やはり馴染みの釣り場というと、鳴門市の地磯であるといえよう。

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アイナメはよく引くので釣り応えがある

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写真を撮り速やかにリリースした

 ただし、このたび私が釣ったのは、その徳島県鳴門市と香川県東かがわ市の境目付近。地名でいうと、坂元海岸だから、辛うじて香川県東かがわ市ということになる。あと百メートルほどで県境だから、このアイナメは子育てをはじめる以前は徳島と香川を一日のうちに何度も行き来していたかもしれない。
 ワームが着底したので、軽くロッドをあおって、少しだけ底を切ってみた。その直後に、竿先を押さえ込むようなアタリが来た。メバル用のタックルだったこともあろうが、いいファイトを見せてくれた。寝食忘れてという割には痩せ細っていなかった。けれども婚姻色が出て体色は見ようによってはやや毒々しい。とはいえ、張りのある魚体は艶やかだった。
 子から親を奪うわけにもいかないので、美味そうにも思ったが、写真を撮ったあと速やかにリリースした。
「あばよ。またいつか、さしで勝負しようぜ!」
 見送りざまにそう言ってやったが、二度と会うこともないだろう。
 たとえ何年後かにまた会ったとしても、本人?かどうか見分る自信など私にはない。
 その後、陽が落ちてからはメバルの良型を期待したが、明るいうちにチビ助が数尾釣れただけで、どういうわけか暗くなってからは音沙汰もなかった。
 妙なこともあるものだと首をかしげてみても、なにしろ相手が自然だからどうにも仕方ない。
 べつの場所へと釣り場を移した。


おまけのソゲ

 夕暮れどきにメバルを狙っていると、メバル以外の魚がよく釣れる。いまだ明るいうちに、何かしらアタリを送って来てくれる魚がいるというのは嬉しいものだ。
 今回は、珍しくヒラメの子が釣れた。この辺ではヒラメの子はソゲと呼ばれ、漁獲扱いにはされないが、カレイのように肉厚ではないくせに、けっこういい引きをする。
 むろん、薄っぺらなヒラメの子をキープしても食い甲斐がないので写真撮影後に無罪放免としてやったが、海にもどすとひと跳ねしてから海底へと姿を消した。騙し討ちに対する恨み節か、助けてくれてありがとうとの礼のつもりか、当方としては知る由もないが、元気にお家へ帰ってくれてほっとした。

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エステルはメバリングにも使える

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ソゲが釣れて幸先良いスタートとなった

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まさに珍客。忘れたころにちょいちょい釣れる

 暗くなるとメバルが連発した。
 軽いジグヘッドにセットしたワームを海面直下に漂わせる感じで誘うと、手元が軽くなるようなアタリとも言い難いアタリが来て、おやっと思った。そのあと、持たれた感があって、その直後に手元がふっと軽くなったので、ためしに小さく鋭く空アワセしてみると、あんのじょう乗って来た。

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今回はアジ用のエステルライン0.4号を使用

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このサイズだとよく引く

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メバルは食べても美味しい

 その後も、飽きない程度にメバルが釣れた。
 悪くない傾向である。
 何より上天気なのが心強かった。
 海は凪いで、暖かく、まだまだ釣れそうだったので、むろん帰りたくなかった。が、しかし、この日は夜に高松で人と会う用があった。なので、もう一投、あと一投と仕掛けを振り込んでしまいそうになるのをぐっと堪えて、後ろ髪を引かれる思いで釣り場を後にした。
 仕方ないといえば仕方ない、無念といえば無念である。
 隠遁すればこういう煩わしい目に遭うこともないが、そういうわけにもいかない。
 難しいところである。


細仕掛け

 オープニングの撮影をはじめようとスタンバイしているとき雨が降り出した。やがて、雨はみぞれとなって、南を塞ぐ山なみは舞う雪に白く煙って見えた。
 最強寒波のさなかなので覚悟はしていたが、その後の天気が読めない以上は短期決戦で、どうにか食い渋るメバルに口を使ってもらい、どんな形にせよロケを成功させてさっさと釣り場を後にしたい。そう内心強く思った。

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激渋メバル攻略には細くて強度のじゅうぶんな水馴染みのよいラインが必要

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怒っているのか、怯えているのか、その目は奥深く容易にはみとおせない

 そのためには、繊細な仕掛けを上手に扱うすべを明るいうちに覚えてもらうしか手はない。そう思って、まだ風の出てない夕方に細い仕掛けと軽いジグヘッドの扱い方をさゆりちゃんに習ってもらうことにした。
 まず、私が説明しながらひと通りやって見せてから、それを真似てさゆりちゃんが習うという段取りで撮影を開始。扱い慣れない仕掛けだけに最初からうまく出来るはずはないと誰もが思って疑わなかった。
 ところが、いざ釣りはじめると、十年選手のように慣れた感じに仕掛けを扱うので思わず感嘆の声をあげそうになった。やることなすこと板に付いたものである。
 ロケ前日。
「この寒波のさなか食い渋るメバルがそうやすやすと口を使ってくれるとは思えませんがねえ。素人同然の女の子が釣るのは至難の業でしょ」
 そう仲間の多くが口々に語るのを耳にして相当心を暗くしていたものだから、この意外な好展開に表情が明るんだ。

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とにかく上達するのがはやい。この夜もけっこうメバルを釣りあげ

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メバルも表情に個性が出る?

 ただ、昨年の私とのメバル対決で多くのメバルをばらしているせいもあって、そのことが頭から離れないのか、どうにも仕掛けを強く張り過ぎる様子がさゆりちゃんには見てとれた。アドバイスすると、仕掛けを張っていないとメバルの小さなアタリを逃さず即掛けすることができないのではと言い張るので、もっと緩めろ、張り過ぎるな、と私も負けずに語気を荒げてしまった。
 すると、さゆりちゃんはロッドを高く構えて空中のラインを幾分ふけさせながらリーリングし始めた。まだ、半信半疑といったふうな感じだったが、運よくその仕掛けにメバルが食いついた。雪雲が空を覆うせいで辺りは薄暗かったが、日暮れにはまだ間があった。
 いいスタートが切れたと誰もが喜んだが、さゆりちゃん自身も何か吹っ切れたようだった。
 その後、風が出たので、風を凌げる場所へと釣り場を移した。
 移動後も軽量ジグヘッドリグで繊細に誘わないとなかなか口を使ってくれない状況がつづいたが、さゆりちゃんは最後の最後までヒットさせたメバルカサゴをただの一尾もばらすことなく自分の仕事を精一杯やりきった。
 欲をいえばもう少しサイズのいいメバルを連発させて花を添えたかったが、いい感じに潮が満ちて来て20cm級が釣れ出したところで、「あのう、もう欲しい絵は全部撮れたので、そろそろおしまいにしましょうか」と番組ディレクターが控えめな声に言った。
 明日もどこかでロケがあるらしく、早く帰りたそうにもじもじしていた。
「なに抜かしやがる、この野郎!」と思わぬでもなかったが、それも今回始まったことではないので、もう慣れてしまった。
 こちらとしても、この大寒波のさなか、いい歳をして風邪でも引いたら大損だ。ここは黙ってディレクターの気持ちを汲んで早々に帰路に着くに越したことはない。
 そう思って、そのとおり、さっさと釣り場を後にした。


今後の見通し

 二月十二日におこなわれたルアルアチャンネルのロケ以後にも何度か香川県東部を訪れたが、メバルの食いの渋い状況に変わりはなかった。
 当然、使う仕掛けは繊細を極めた。風がなければそれでも苦はないが、厄介なことに季節風の吹かない日の方が珍しいほど厳寒期の海は荒れ気味であることが多い。
 こうなると風裏を探して限定的にやるしかないので、好釣果を望むのは尚のこと難しい。しかも、妙にメバルのよく釣れるポイントが風表になる。だから、敬遠して他のエリアへ釣り場を移したいところだが、二月下旬現在最もメバルの魚影が濃いと目されているので釣行先の有力候補として香川県東部は外そうにも外せない。
 季節風と縁の切れる春本番まであと少しの辛抱だが、それまでは夜の冷たい風に耐えつつ繊細な仕掛けでじっくり丁寧に時間をかけて釣り探っていくしか手はなさそうである。

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筆者はナイトゲームTHEメバル2lbを使用した

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メバルを釣るのもいいものだ

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メバルは猜疑心が強く、食い渋ると釣るのが難しい

 つい先日も、尾崎晴之とこのエリアを訪れたが、サイズはともかく数的には満足のいく釣行となった。
 尾崎はメバルのほかに良型のタケノコメバルカサゴを釣り、私も良型のメバルカサゴを手にした。わりと暖かく、海も凪いでいたので釣りやすかったし、一緒に釣るのが久しぶりだったこともあって、ついつい長居をしてしまった。釣りをよして駐車場所へもどったときには、午前零時をまわっていた。

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尾崎晴之はナイトゲームTHEメバルPEⅡ0.2g号を使用した

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タケノコメバルは河口の砂泥地も好む

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尾崎は良型のタケノコメバルも手にした

 帰りの車のなかで、近いうちにまた来ようという話になったが、月が変わって三月になってもしばらくのあいだは水温的にみていきなりメバルの活性があがるとは俄かには考えにくい。
 いましばらくは、これまでどおり、辛抱の釣りを余儀なくされそうである。

【今回の使用タックル、ライン】

ロッド : ダイワ 月下美人MX74UL-S
      ダイワ 月下美人MX76L-T
      アピア 風神丸86Sソード
リール : ダイワ ルビアス1003
      ダイワ セルテート1003
      ダイワ セルテート2004
ライン : ユニチカ ナイトゲームTHEメバルPEⅡ0.2号
      ユニチカ ナイトゲームTHEメバルスーパーPE 4lb(0.3号)
      ユニチカ ナイトゲームTHEメバル2lb
      ユニチカ ナイトゲームTHEアジエステル0.4号
リーダー: ユニチカ ナイトゲームTHEメバルリーダーFC 3lb
      ユニチカ アイガーⅢスーパー0.8号

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