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釣行記

釣行レポート

2018年5月20日

一日で二度美味しい野池のバス

白昼、プラグで

 シーバスもそうだが、物陰につくヒラスズキは仕掛けを引くコースを変えてやるだけで反応のよくなることが少なくない。それならバスもストラクチャーに対して角度を変えて仕掛けを通すと口を使わなかった大物が私の投げたルアーにちょっかいを出してこないともかぎらない。
 そう思って、以前から気になっていた野池へと出かけてみた。
 この野池は対岸側が垂直のコンクリート壁、こちら側がブロック護岸。左右の岸辺は主に草と雑木が水辺まで迫っており、釣り座を構えることのできるスペースは少ない。こちら岸には一カ所だけスロープが設けられている。が、しかし、今は水位が高いために完全に水没してしまっている。スロープの長さの程度は水質がクリアではないため目で確かめることはできないが、相当先まで駈け下っていそうに思われた。スロープの上まで樹の枝が覆い被さっているわけではないが、青葉が濃い影を水に映す辺りは夏場にトップウォータープラグで誘うとバスが水面を割って出てきそうな一見して美味しい穴場のように感じられた。
 さっそく仕掛けを組んで、水辺へと降りていき、まず手始めにスロープの傾斜部をバズベイトで丁寧に探ってみた。とくに岸際の青葉が水に影を落とす辺りは念入りに何度か引くスピードにも変化を持たせてやってみたがノーバイトに終わってしまった。
 当日は晴れてはいたが気温は意外と低く厚地のパーカーを羽織っていても汗ばむことはなかった。まだ少し水面を攻める釣りは時期的に早いかとも思われたが、前回の釣行で初めて経験したバズベイトの釣りでナイスサイズのバスを手中に収めているものだから柳の下の二匹目のドジョウを狙って鼻の下を長くしてしまったのだった。スケベ心を丸出しに状況も考えずに使ってしまったわけだが、それでも冷静に考えてみても悪い選択ではなかったと今こうして原稿を書きながら私は思っている。釣れないなら釣れないで、それでも得るものは必ずあるはずである。今はがむしゃらに経験を積むことが何より大事だと考えているので、それはそれでかまいはしなかった。
 今度は先ほどバズベイトでアタリもなかった同じ場所に表層をヨタヨタと泳ぐプラグを入れて、水面ぎりぎりと水面の少し下ではどう変わるかを試してみた。バスの反応を見てみることにしたのだ。これには数回投げただけでアタリが来た。しかし、気のないアタリで、もしかするとブルーギルかもしれなかった。わりと大きいブルーギルの姿が付近に散見できた。
「ギルか?」と私は声にして言った。
 その後、数回投げたが、アタリはなかった。
 ここに来て私はバッグのなかをごそごそやって一つのケースを取り出した。いよいよ相棒のお出ましである。
「頼むぜ、相棒!」
 私はそう言うと、今度ばかりは大いに期待した。
 着水後すぐは、水面に近い位置に竿先を構えて巻き、こちらに近づいて来るほど竿先を高くした。仕掛けを通して、わが相棒のキレよく泳ぐさまがあのブルブル感を伴いつつ手元へと伝わってくる。もしこれで釣れなかったら場所を変えてやってみよう。そう思ってさらに引いて来ると、あるときコツンと手元にアタリが来た。水中の傾斜部に相棒の鼻面がぶつかった衝撃とアタリとがほぼ同時に来たようだった。かなり手前まで引いて来てのアタリだった。前にも経験したことのある食いつき方だ。おそらく、こういう場所でのバスが獲物を狙うときの常套手段なのだろう。だいぶ手前で食って来たので、もし水が澄んでいたならバスがルアーを捕えるのを目の当たり見ることができたかもしれなかった。
 さて、わが相棒に食いついたバスだが、のっけからパワフルな闘い方をするので少々手古摺った。だが、不安はなかった。その日、私はラインを新品に巻き替えてから釣り場に来たので、いつにもまして強気のやり取りができた。そのラインというのは他でもない、強力で根擦れに強いアンブッシュ8lbである。
 首尾よく釣りあげたあと、写真を撮ろうかとも考えたが、とくべつ大きいわけでもなかったし、なによりも時間が惜しかったので早々にお帰りいただいた。
 この日の私も例に漏れず、望めば好きなだけ釣りの出来る安気な身分ではなかった。なので、デカバスに出会おうと考えるなら無駄な時間の浪費は極力避けなくてはならなかった。

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ピーカンの白昼でも口を使うじゃないか!

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日曜のせいか野池のあちこちでバス釣りの若者を見かけた

 ちら岸のブロック護岸の右寄りに、とても魅力的なストラクチャーが水面から顔を覗かせていた。私はその取水塔の周囲が大いに気になっていた。なので、そちらの方へと歩みを急がせた。
 この取水塔。サイコロ型で、コンクリート製である。垂直に四面ある壁のうちの一面は一部分だけ丈夫な金網の覆いが被せられており、それは水をどこかへ落としている穴に大きなゴミが入り込まないようにとの配慮だと思われた。おそらく水は農地へ落ちていくのだろうが、その用水がどこをどのように流れて運ばれていくのかはわからなかった。
 池全体としてはまるで流れのないように見えたが、ここだけは水に動きがあった。まず私は金網の設置された側を壁に添わせるように仕掛けを通しておいてから、反対側の壁ぎわを攻めようと考え実際そうしたが、金網のない側の壁ぎわでアタリが来た。絶対にバスのバイトだと私は思った。ショートバイトであったが、手元に堪えるようなアタリで、もしバスでないならライギョかナマズかコイか、いずれにしても小さい魚ではないと確信できた。
「さっき釣ったのよりも、きっとデカイ!」
 口には出さなかったが、私は些か気持ちが逸った。
 気を取り直し同じコースに何度か仕掛けを通してみたが、それっきりノーバイトであった。
 私は、今いちど金網の設置された側の壁ぎわを攻めてみるもアタリすら拾えなかったので、その後、右の角をかすめるように斜め沖へとキャストし、取水塔のその右角に相棒のピーナッツⅡが軽くぶつかってイレギュラーな動きをしてくれたなら儲けものだと思いながら、そのように仕掛けを引いて来てはみたもののけっきょくうまくいかなかった。次また同じようにやると、今度はうまくいったが、アタリすらなかった。その反対側の角、こちらか見て裏側に当たる側の両方の角にも同じ戦術で臨んではみたもののやはりアタリすらなかった。
 立ち位置を変えて投げると、じつにこのようにずいぶん多くのコースを引き分けることができる。それも、こういう機会を得ることができたからこそ、それに深く気づくことができたわけだ。
 そう思うと、私は素直に嬉しかった。
 だから、私はバスがその気になってくれなくても腐ったりはしなかった。
 私の立ち位置から見て右面の岸は近く、そちらの側から取水塔方向へと投げれば、取水塔を飛び越えてその向こう側まで相棒のピーナッツを届けることができる。なので、左右に投げ分けて引くと、その左右両方の壁に仕掛けを添わせてじっくり探ることができるわけだ。もちろん、うまく投げればそれぞれの角っこをかすめるように引き分けることもじゅうぶん可能であった。
 さて。
 私がついさっきまで立ってバスを狙っていたブロック護岸側、つまり現在の立ち位置から見ると取水塔左の壁ぎわをゆっくり引いて来ると、いきなり抜き打ち強盗的なアタリが来て勝手にバスが乗って来た。しかも、グラス配合の軟らかなロッドだったので、いっそう深くバスの顎にフックが刺さり込んだようだった。その後も重たく強い引きをみせたが、いちども水を割って跳ねあがることはなかった。
 このバスをランディングした時点で、もうとっくに帰宅の途に就いていなくてはならない時刻となっていた。
 私はそれを知っていたが、つい粘ってしまっていたのだ。

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「またピーナッツか!」と先達らに叱責されそうだが、釣れるんです

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使用したアンブッシュ8lb

 雲が出て、陽が陰った。
 すると、沈鬱な表情を見せ始めた池のおもてのあちこちでバスが虫か何かを食べる様子を目にするようになった。バスが浮きあがってくるたびに、釣り師をわくわくさせるような波紋が水面にひろがり消えていく。バスのなかには水を割って体の一部を露出するものもあった。そのたび私は心を奪われた。経験の浅い私にも、この上なくいい状況だということは一目瞭然であった。
「水面にルアーを浮かべて誘えば、たぶん食いつくだろうな」と私は思った。
 視覚に訴えかけてくるという点からも水面の釣りというのは大変おもしろい。
 なので、もう少し遊んでいたかったが、これ以上ここにとどまることは時間的に許されなかった。
 時間切れというやつである。
 うしろ髪を引かれる思いで、私は釣り場を後にした。

夕方、トップで

 夕方、同じ野池へ出かけてみた。
 第一ラウンドの帰りがけにみたような光景を期待しての再チャレンジだが、水面は予想に反して静まり返っていた。西に傾いた陽は雲のうしろに隠され、いっそう薄暗く感じられたが、夕暮れにはまだ間があった。
 昼間は厚地のパーカーを着て釣りをしたが、今はTシャツでちょうどよい。
 私は水辺に降りてしばらく様子をみた。
 そして、クランクを引くかトップを水面に躍らせて誘うか、どちらがバスの口にフックを刺すには最適かと考えた。いや、ほんとうは考えるまでもなかった。クランクを引く方が手堅いのは明白だった。水面にバスの気配がないのなら白昼にバスを仕留めたときと同じ戦術で攻めるのがいいに決まっている。もっとも相性抜群のピーナッツばかり使っていては仲間内で顰蹙を買わないともかぎらないので、目先を変えて別のプラグを用いるという手もじゅうぶん考えられた。さらに趣向を凝らすならスピナーベイトをチョイスしてみてもよい。今日いちども投げてないルアーというのは好奇心旺盛なバスの気を引くのにはうってつけかもしれないのだ。昼間に釣りをする以前に釣り師が来てなくて、私が去ったあとも釣り師が来てないとすれば、スピナーベイトを目にしたバスは今日にかぎっていえばいないわけだから期待していいだろう。
 しかし、それはどうでもいいように思われた。
 白昼堂々投げたプラグで私は素敵なバスを釣りあげていた。それならもう水中を攻めて、あるいはワームでねちねちと底を攻めてバスをものにするようなまねはしなくてもいいはずである。
 私は何としてもバスが欲しいわけではなかった。
 昼過ぎにこの場を去るとき、私は水面に出て虫か何かを食べているバスを見つけてトップで是非とも釣りたいと思った。それなら迷うことはない。思いどおりに水面の釣りに徹すればいいだけだ。

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いかにも出そうでしょ、ここ。出ませんでしたが

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ドッグウォークするタイプを使用した

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水面の駆け引きで食わせた一匹だけに嬉しさもひとしお

 すると、そんな私の気持ちを察してか、水辺の丈高い草の際でゴボッという音がして、水面がわずかに盛りあがった。鯉かもしれないが、バスかもしれなかった。バスならいいなと私は思ったが、その後は何事もなかったような静けさに辺りは包まれたまま相変わらず食う気満々のバスが水の深みから水面を睨むように見ていそうな気配は伺えなかった。
「一回きりでも、水ぎわにそれらしい反応があったわけだから、こいつを見逃す手はない」
 私はそう思って、手ごろな大きさのトップウォータープラグをラインに結んで先ほどボイルの見られた丈高い草の向こう側へと慎重にキャストした。着水したルアーの波紋が消えるまでじゅうぶん待ってから誘いかけてみた。初めてかどうか記憶は定かではないが、このルアーを水面に踊らせてバスを誘ったことは一度もないように思われた。
 浮いた姿勢から高い浮力の持ち主であることが経験の浅い私にもよくわかった。頭の側が半分くらい水面から露出してしまっている。竿先を使って誘いかけてみると軽快なドッグウォークを見せた。ときどき間を置いて、また誘う。もう既にガボッとなったところは過ぎてしまったが、ここで気を抜いてはいけない。気を緩めたときにかぎって不意打ちを食らって慌て、しなくていいことをして失敗してしまう。なかでも早アワセは禁物だが、水面のルアーに襲いかかるバスを目の当たりにすると、よほど心構えが出来てないかぎりは大アワセにアワセを入れて取り返しのつかぬことになってしまいかねない。これをやっても乗るときには乗ってくれるが、手応えは確かにあったのにフッキングしなかったと残念がらされることが往々にしてあるから気をつけないといけない。
 そして、それは水辺の草の影が浅い水面に映るところをそろそろ通過しようかというときだった。
 私が誘いの手を休めたとほぼ同時に、バスが口荒くルアーに襲いかかって来た。静かな水面が炸裂した瞬間も私は心づもりが出来ていたせいか慌てることはなかった。
 軟らかめのロッド、張らず緩めずの状態のナイロンライン、水中へと引き込まれていったルアー、小さくはないだろうバスのその口。どう考えても私に事は有利に働いている。
「今だ!」
 私はアワセのタイミングを自らはかる余裕があった。
 アワセを入れると、確かな手ごたえを感じた。
バスは私のロッドを好き放題曲げて水のなかを泳ぎまわった。ここ数日、私はいいサイズのバスを立てつづけに仕留めていたので、やり取りには余裕があった。
 要領よく足元までバスを寄せた私は、「はい、ご苦労さん」と一声かけてから指で口の端をしっかりつまみ取った。

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水辺の草の生えぎわ近くを次々と攻め歩く

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42.5cm。トップでこのサイズなら文句なし!

 まったく、狙ったコースを狙いどおりに攻めて、バスを首尾よく手中に収めることができたのだ。まさに値千金だった。
 こういうことは年に何度もあることではない。
 私はリリースしたバスが水の深みへと姿を消したあとも、しばらくのあいだその場を立ち去れずにいた。

【今日の使用タックル】

ロッド : メガバス トマホークF3-63 GT3
リール : シマノ アルデバラン50
ライン : ユニチカ・シルバースレッドアンブッシュ8lb

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