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釣行記

釣行レポート

2018年6月14日~11月2日

マダコ釣り近況

 膵という姓はあるか。もし、あるとしても日本以外のアジア諸国にあるとは考えにくい。膵臓の「膵」は国字で、『医範提綱』に初めて登場する。これより三十年前くらいに書かれた『解体新書』に膵臓という記述はなく、それがないということは膵臓を知らなかった。西洋医学は知っていたけれども東洋医学は知らなかった。学者が、そう書いている。
 なぜこんなことを話題にするかというと、アジアには金、李、朴など漢字一文字の姓が少なくないが、五臓六腑の一字をあてた姓で、こいつはありそうだなと思われるものをあげてみよ、と少し前に出席した会合の司会進行役が言い出した。話が横道にそれてしまったのがなぜかは今ではもう思い出せないのだが、まぁ、ちょいちょいある脱線ではある。
 それにしても、姓名判断の会合でもあるまいし、バカバカしいとも思ったが、出席者の一人の女性が「肝さん、どうでしょう?」と答えると、勢いを得たか、中年男性が「腎さん」と答えた。また別の何人目かの大学生が手をあげて「では、膵さん」と臆せずに声を張った。
 内心、まずないだろうと私は思った。
 膵臓の「膵」の字は文化二年までは存在しなかった。私は本で読んだことがあるから知っていた。その本に『医範提綱』のことも載っていた。私は記憶のいい方ではないが、宇田川玄真についていささか知ってもいたので、ああその話かと思ったことで記憶していたのだ。
 宇田川玄真が『医範提綱』で初めて使ったのであるなら、それ以前にはなかった。また国字である以上わが国発祥ということになるわけで、日本以外のアジア諸国に膵さんが居ようはずもないと考え自身で納得した。「膵」の字は、この医学書のために使用が認められた国字だったのである。というかわざわざ作った漢字なのだ。姓は明治に名乗り始めた国民がわが国には多いとか聞くが、それでも馴染みの薄い膵の字をわざわざ当てたりしないだろう(むろん、確証はないが)。
「だからどうだというのか?」
 そう読者は当惑するかもしれないが、たしかにどうってことはない。
 ましてや釣りには何の関係もない。それは当然で、もしもマダコが膵臓でものを考え、あなたが海の底へと沈めたタコエギに断固たる意志と行動力でもって襲いかかって来るというなら話はちがってくるが、マダコに膵臓があるのかも私は知らないのである。
ただし、内臓のことはともあれ、マダコはじつに立派な目を持っている。人間を高等な動物だと仮に考えるなら、下等な部類にカテゴリーされるはずのマダコの目がなぜ人間の目と同等の機能を有する優れたつくりなのか。高等なパーツは高等な動物に備わるという説を私は耳にしたことがある。あれは何だったのか。まちがいか?
 それと考え合わせてみると、この事実はちょっとばかり面白い。
 釣りの世界では、たとえばルアーの生み出す波動が魚の感覚器の一つである側線を刺激して食い気を誘発するとかよく言われる。が、しかし、マダコは人間のように目でものを捕える能力がほかの魚介類より優れているというのだ。それなら、マダコを誘惑するために海底に沈めるタコエギにも、その扱い方にも、私たち釣り師は人並み以上の気を使わざるを得ない。どう気を働かせるかは人によってちがってくるだろうけど。

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ラインとリーダー

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あまり使わない白いタコエギでゲット!

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夏の日中は麦藁帽子が欠かせない

 これも、よく聞くフレーズである。
「一般にタコの仲間が最も興味を示すカラーは白である」と言うやつ。
 たとえば、イイダコ用もマダコ用もタコテンヤは昔から白い色をしているものが多い。確かに白というのは目につきやすいように思える。戦闘で瓦礫と化した街から白旗を掲げて投降してくる兵士の姿を想像してもわかるように白は見やすいにちがいない。降参するから撃つなというのである。
 マダコがひそんでいそうな浅い海の底は、この瓦礫と化した戦場の街に似てなくもないので、白い色をしたタコエギを躍らせて誘ってやれば、白はよく目立つということで、マダコがちょっかいを出してきやすいのではあるまいか。
 しかし、これにも異論があって、昼間は白がよいが、夜間は逆効果だという釣り師や漁師も少なくない。いわゆる膨張色論であるが、この論自体が私には腑に落ちない。まぁ、それはいいとして、ピンクやオレンジのタコエギは昼夜を問わずオールマイティーに使えるが、夜間に白を使うと釣果が激減する。そう述べる釣り師もわりといるから意見は意見として尊重しないわけにもいかないだろう。
 私は白いタコエギを使うこと自体が多くないので比較してみたことはないが、そうかもしれないと思いつつも、やはり納得しきれない。こういう話は直接マダコから聞かないことには判然としない。なので、聞く能力をお持ちの方は、ぜひ聞いて私に教えてもらいたいものだ。
 ちなみに、夜間に白いタコエギを使って何度かマダコを釣ったことがある。常夜灯が浅い底をあらわにする漁港内で釣っていた時のことだ。底で躍る白いタコエギめがけて何処からともなくマダコがすっ飛んできた。マタコは野呂間と思われがちだが、けっしてそうではない。忍者のように素早く近づいて来てタコエギの上から覆いかぶさった。何かに風呂敷をかぶせるようなものである。すかさずアワセを入れて底から剥がしにかかると不意をつかれたマダコは為す術がなかった。簡単に釣られてしまった。しかも、良型だった。あの時の情景を思い浮かべてみるに、夜は白いタコエギに期待しても殆んど効果はないというのはどうだろう。その辺については各自が判断して釣りを組み立ててもらいたいと考える。

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「よし、来た!」いいサイズだ

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漁港でこのサイズなら大満足!

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フックを折られたタコエギ。マダコは力も強い

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誘いは小さくシャープにが基本だが、ときに跳ねあげるように誘うことも

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足元ほど雑にならぬよう丁寧に探ろう

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この夜、若いマダコが複数釣れたが良型以外はリリースした

 私個人は、使うタコエギがほぼ決まっている。
 マルシン漁具のダンシング八ちゃん、オクトパスタップの二種類が主力である。
 下オモリのついたダンシング八ちゃんは素早く真っ直ぐ沈んでいくので深い場所やピンポイントを手早く探っていきたいときに多用する。アオリイカを釣るエギと同様に下オモリのないタイプのオクトパスタップはキャスティングで付近を広く探っていくばあいや根掛りの多い場所など、おもに浅場で多用する。
 マダコのアタリなどわからなくても釣れる、とよく言われるが、そのとおりである。ただし、底かマダコかを判別できないようでは根掛りが多発してタコエギを損する可能性が高まる。底の荒くないと思われがちな漁港内でも油断はできない。根掛かりするとどうにもならぬほど重たい不法投棄物が沈んでいたり、使いものにならなくなったロープや漁具のたぐいが捨てられていたりもするので、違和感をアタリと考えてアワセを入れまくっていたのではタコエギを取られて泣きをみる。この点、メガバスのタコーレをチョイスするとタコエギの部分は浮力が高いので、下オモリで底をトントン叩きながらも浮力体である本体は底から常に切れている。なので、マダコが覆い被さって来たときのアタリを手元に感じやすい。性能もよくて、よく釣れもする。ただし、鈎に返しがついているので釣りあげたマダコからはずそうにもはずしにくい。マダコはイカ同様その肉質からフックの返しが身に深く刺さり込むと本当にはずすのに難儀する。返しをわざわざつぶして使うのも面倒だ。価格もマルシンの方が安価なので、使い慣れていることもあって、どうしてもそちらに手が伸びてしまう。
 私のタコエギ選びはその程度の理由からであり、自分が扱いやすければよいのであり、市販されているタコエギのどれを使ってもマダコは釣れると思っている。なので、みなさんが気に入った製品を購入すればよいわけだ。私は使ったことはないが、ワームをセットすることで優れ物のタコテンヤに変身するというなんだか面白そうな製品まで市販されている。まぁ、いろいろ試してみるとよいだろう。

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タコエギはオクトパスタップ(上)、ダンシング八ちゃん(下)を多用

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へへぇ〜鼻をこすって自慢げ。というより釣れてホッとしてるんです

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好きなカラーは黄色とオレンジ。実釣でカラーを気にすることはないが

 そんなタコエギ、タコテンヤだが、では、どういうふうに誘うとマダコから見て魅力的なのか、いまだにそれが私にはよくわからない。しかし、どう誘うにしても、どれくらいの時間をかけてやるのがよいかは日によっても、場所によっても、その時々の傾向みたいなものがあることに私自身薄々気づいてもいる。重点的にどこをどう攻めたらよいかということも何となくわかるようになって来た。ただし、これについても口を割りたくないという以上に、じつは釣りをしながらのその日その夜の傾向みたいなものを肌感覚で感じ取りながら攻める場所、攻め方、攻める順番みたいなところをてきぱき決めていかないかぎり好釣果にはつながりにくい。
 そもそも、よほど豊漁の年でもないかぎり日本産高級魚介類の一つであるマダコが十も二十も釣れるわけがない。それどころか香川県では、マダコ漁は許可制であり、漁師なら誰が獲ってもよいというものではない。遊漁船によるマダコ釣りは禁止である。もちろんマイボートで釣るのもダメである。ようするにボートに乗らず岸から釣るのなら、まぁ、許してやろうというのである。

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夜間が釣りやすく、型もいいとは言うものの、真意や如何に!?

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贔屓のタコエギはマルシン漁具製。日中は黄、白の出番も多い

 それにしても今期は絶不調であるとの声が多く聞かれる。マダコの数が少ない。沖の蛸壺も不漁である。五十ばかりも蛸壺を沈めて売り物になるサイズのマダコが一つか二つしかとれないこともよくあるのだと聞くから、細々と岸から足元の海の底にタコエギを垂らしてちまちま釣っているようでは埒があかないことくらい容易に想像できる。じっさい全然ダメだとの声も多い。たしかに漁港で例年通りやってみるならせいぜい三百グラム前後が一つ二つ、どんなによくても三つ釣れたら大ラッキーだ。この程度の数、サイズであっても、今期にかぎっては一日たっぷり時間をかけて辛抱した甲斐があったというもの、そう皆納得して帰路につくらしい。
 そこまで全然ダメだとは思わないが、例年の倍の時間をかけて釣果は三分の一ほどなので、個人的にもやはり手放しに喜べる状況には程遠い。それは認めるが、そうかと言って狙う場所、狙い方、狙う時間帯を見直すことで、不調は不調なりにボウズを引くという憂き目だけは殆んど見ないで済んでいる。

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絶不漁の今期。漁港でこのサイズを狙っても難しいだろう

 それより何より、目下最大の悩みにして憂慮すべき問題は、最近マダコ釣りに費やす時間がなかなかとれないということである。これについては大いに不満である。このマダコ釣り。手を染めてみると予想以上におもしろい。
 なので、とっくに夏は過ぎたけれども、今後しばらくのあいだは時間をどうにか工面して出来るだけ回数多くマダコを釣りに出かけたい。もしも、新発見や好釣果に恵まれたときには、むろん、レポート書く気でいるので、どうぞ楽しみに!
 では、本日の講釈はここまで。(笑)
 みなさんも、よい釣りを!

【今日の使用タックル】

ロッド : ダイワ・パシフィック・ファントムBg 510S
      ダイワ・パシフィック・ファントムBg 70S
リール : ダイワ・カルディア・キックス2500
ライン : ユニチカ シルバースレッドソルトウォーターPE40lb
リーダー: ユニチカ シルバースレッドショックリーダーFC25lb
タコエギ: マルシン漁具・ダンシング八ちゃん3.5号
      マルシン漁具・オクトパスタップ3.5号

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