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釣行記

釣行レポート

2019年4月3日

今回のルアチャンは香川県東部の根魚釣り

 新元号が決まった。
 平成が終わり、この五月から令和の時代がはじまる。令和元年である。典拠が『万葉集』であることについてはマスコミの大々的な報道により誰もが知るところとなったが、つい先日、「大伴旅人って大伴家持の息子?」と知人に訊かれた。
 おそらく私を歌人の端くれとみて訊ねられたのだろうが、「いいえ。父親です。家持は有名な歌人ですが、父の旅人も立派な歌人でした。なので、太宰府坂本天満宮で父の旅人が催した梅花の宴で読まれたとされる梅の歌が(万葉集に)収められていることも決して身内の依怙贔屓ではありません」
 たしかに、令和の典拠が『万葉集』であるのはまちがいない。ただし、和歌集なので和文のイメージが強いかもしれないけれども、新元号のもとになった梅の花のうた三十二首の序文は漢文で書かれている。
 その一節に、「気淑風和」とある。
 まさに、そういう四月三日の穏やかな日和の午後にルアチャンの香川ロケはおこなわれた。
 しかも、放映が五月一日、すなわち令和元年はじまりの日である。何とも光栄なことだが、ロケは困難を極めた。
 当日の潮汐は抜群によかった。中潮で、夕方に干潮時刻を迎える。満潮は日付の変わる一時間半くらい前である。干潮時満潮時の潮位差も百四十センチ近くある。瀬戸内香川では中潮はいい潮と目され、これだけの潮位差があれば潮もよく動いてメバルカサゴタケノコメバルの活性もあがらないはずはないと思われた。
 一緒に釣りをする高木采実さんは以前大学院で水産学を専攻、サメの研究もしていたとの事。事前に腕前はどんなものかと問いあわせると、「仕掛けは上手に扱えます。心配ないです」とロケ隊スタッフから返信が来た、そうユニチカのF氏から連絡があった。
 上手とはどの程度上手なのか、「サメだって、ただ泳いでいるだけで、ジョーズ(上手)と呼ばれ褒められる」そう独り冗談をつぶやきながら、まぁ、上手なのだろうと自身を納得させた。
 第一、疑えばきりがないし、そんな余裕もない。
 これは後で聞いた話だが、メバリングはフロートリグの釣りしかやったことがないという。
 またもや不安が頭をもたげてきた。フロートリグは軽量リグとはいえない。一グラムに満たないジグヘッドにセットしたワームを自在に扱えるか心配だ。そうこうしているうちにロケ当日となった。

 まだ明るい夕方のうちに石積み波止のある海浜公園へと待ち合わせ場所から車で移動した。
 ここは整地して海岸を遊歩道にし、大きな波やうねりに洗われないよう沖側に消波ブロックを設けている。頑丈な一文字が三つか四つ、海岸から沖を眺めると横一列に並んでいる。その同じ並びに、他と比較して少し短い消波ブロックの一文字がなかほどに配されている。海岸から沖へと伸びる石積み波止と、その消波一文字をつなげることでT字型の波止が成った。むろん、自由に行き来できるので散歩の人や釣り師に喜ばれている。
 このT字型の石積み波止が練習場所である。ただし、沖向きはテトラ仕立てなので、ルアチャンではロケ禁止である。漁船が居並ぶ船溜まり、危ない磯場、高くて転落すると怪我しそうな波返し、テトラ地帯、これらに立ち入っての釣りは認めないというのが制作者側の意向なので仕方がない。誰でも気軽に行ける海岸からの岸釣りにおいて、いま挙げた禁止エリアは重要なフィールドとなっており、釣果も稼ぎやすい穴場が少なくない。なので、それらすべてを除外して頑張れと言われてしまうと、こちらとしては辛いというほかないわけだ。
 まぁ、苦情を言っても通る話ではないので覚悟を決めて黙ってやるしかない。

 ライトタックルの釣りのなかでも瀬戸内の浅瀬で超軽量の仕掛けを用いてメバル根魚に口を使わせるのはそんなに容易いことではない。食い渋ったときには、繊細な仕掛けをさらに微調整し、攻め方自体を見直していかないと釣果は遠のくばかりである。
 シーバスのルアーなら重量があるので、その重量に任せて幾分ラフな投げ方をしても仕掛けは飛んでいく。しかし、超軽量の仕掛けでは、どうタックルを扱えば仕掛けを自在にあやつれるか、それを理論的にわかっておこなわないと難しい。
 なので、心配ないと先方から連絡があったその腕前を明るいうちに拝見しておこうと、さっそく采実ちゃんに仕掛けを投げてもらった。
 失礼な言い方かもしれないが、「やっぱりな」と声を漏らしそうになった。べつに失望はしなかった。私は人が悪いので素直に他人を信じない。なので、悪くはないと聞かされていた腕前がたいしたことなくても動揺などしない。
 驚いたのは、むしろそのあとだった。
 なぜ、投げた仕掛けが山なりに飛んでしまうのか、飛距離も少ししか出ないのか、その原因について説明すると、「なるほど、そうなのですね」と、すぐさま頷き、さっそく練習を再開した。
 素直な態度についてはよい印象を持った。しかし、正直、ものになるかどうかは知れたものではない、と思ったのも正直なところである。少し様になるまで波止に腰を降ろして休んでいようか。本気でそう考えもした。
 ところが練習を始めて五回ほど投げただけで、まるで十年選手が見せるような無駄のない素晴らしいキャストを披露するまでになった。
 仕掛けの扱い方、誘い方を教えると、すぐ覚えた。とても呑み込みが早い。
 しかし、采実ちゃんの上達ぶりをよそに、明るいうちアタリは殆んどなく、やがて潮は引き底となってまったく動かなくなった。それでも、たった一回だけアタリが来た。 私にではなく、采実ちゃんに来たのである。ただ、ヒットさせたのはよかったが、やり取りの途中でフックアウトしてしまい、その後は音沙汰すらなくて、けっきょく明るいうちに釣果を得ることは叶わなかった。

 本番は夜になってから、場所も移して開始した。
 休憩を挟んでの本番なので、干潮からすでに二時間経っていた。それなのに、潮が満ちて来ない。ほとんど干潮も同然だった。当然、潮も流れない。ただでさえ潮の動きのよくない港内の奥の浅場なのに、これでは根魚がヤル気を起こしてくれない。長い経験から、「こいつはまずいな」と心を暗くした。
 まったく、「潮汐表に騙された!」と言わんばかりに意気消沈してしまった。
 潮順が中潮で、干潮と満潮の潮位差が百四十センチほどあることについては先にも述べた。くり返し言うが、潮的には疑うべくもなく良かったのだ。
 ただ、なぜか裏切られてしまった。幸運の女神にそっぽを向かれてしまった。
 けれども、こういう裏切りに遭うのは今回が最初ではない。なので、最悪の事態も想定して、この釣りに精通する心強い助っ人を招いておいた。軽量の仕掛けで波止周りの浅い底を探らせると右に出る者はいないと評判の尾崎晴之である。
 ロケ本番では、浅くて根の荒い底をゆっくり探るのに適したジグヘッドワッキーというリグを用いて根魚を狙ったが、私にはアタリひとつ来ないのに、コツンと小さなアタリだけはある。しかし、なかなかヒットに持ち込めない。どうやら食い気に乏しいうえに魚が小さいようだと浮かぬ顔で尾崎は語った。
 それもこれも潮が快活に動かないせいだろう。
 少し経って尾崎にカサゴが釣れた。タケノコメバルも釣ったようだ。テレビカメラの前で魚を手に、何やら語る尾崎の姿が向こうの方に見えた。
 采実ちゃんは、私の傍らで竿を出していたが、やはりダメなようだった。
「尾崎さん、また釣ったみたいですよ」と言うので、「釣れるどころかアタリも拾えないジジイ(筆者)の傍でやっていても仕方がない。尾崎のところへ行って、どうやって釣っているか観察しろ。よく見て、それでもわからないところは根掘り葉掘り聞き出せ」と私はアドバイスをした。
 さっそく、采実ちゃんは尾崎が釣りをする波止の真ん中辺りへと場を移して釣り始めた。アタリだけは頻繁にあるというのだ、それならそのうち采実ちゃんにもアタリが来て釣れるにちがいない。
 そう思って、ちょいちょい様子を窺っていると、采実ちゃんが竿を曲げた。しかし、明るいとき同様またもやファイト中に鈎が外れて取り逃がしてしまった。その後、またしばらくして彼女は同じ憂き目に遭った。  そうこうするうちにアタリもなくなってしまった。

 こいつはよくない兆候である。
 なんとか手を打たないとロケが成立しなくなる。
 私は場所替えを考えていた。
 すると電話が来て、「いま釣り場に来てダウンショットリグでやり始めたところです。一投目、二投目にメバルが釣れました。その後、あれやこれやと試してみましたが、だいたいパターンがつかめたので、場を休ませています」と井原博一が明るい話題を提供してくれた。  ダウンショットリグで、少々遠投しないといけないけれども、メバルの反応はかなり良い。釣り場も波止ではなく、水深のある港内の岸壁で、三~五グラム程度の仕掛けをフルキャストできさえすれば澪筋の傾斜部へと仕掛けを届けることができる。あとは誘いのコツを会得しさえすれば女の子でもメバルを手にするのもそれほど難しくないだろう、そう井原は説明してくれた。
 むろん、誰が釣ってもいいわけで、見栄えのする本命の魚が複数釣れたら尚いいのは言うまでもないが、これまでに四回ヒットさせ四回つづけて釣り損ねている采実ちゃんに私としては花を持たせてあげたかった。
 釣り場に到着したのは満潮前だった。
「教えてやってくれ」と井原に頼むと、レクチャーがよかったのか、まもなくアタリが来て待望のメバルを釣りあげた。
「でかした。よくやった」ということで、重苦しい雰囲気が一掃された。
 その後も、アタリが来て、アワセを入れるとメバルの小気味よい引きが仕掛けから手元へと伝わって、やがて海中からメバルが姿を見せた。采実ちゃんのほかにも、誰かの仕掛けにアタリが来て、誰かがメバルを釣りあげる。そういう場面展開で時間が過ぎていった。
 ここでも、采実ちゃんは本命の魚を取り逃がしたが、「逃がした数だけ釣ったら差し引きゼロ匹。一匹目はそのあと釣った分から数えることにする。さしあたり、まだマイナスだ」とか言って私がからかうと、采実ちゃんの「本気」に火が点いた。
 ぜったいボウズは嫌だ。マイナス分を取り返してプラス一匹にしたい。最低でもそうしたいとキャストする手にも力が入った。
 もう午前零時が近かった。うちのロケにしては長丁場だといえる。なので、正直、私はしんどかった。スタッフの多くがそう若くもないせいか私に同感というふうに見えた。  もう今では采実ちゃん以外に釣りをしてないという状況である。アタリが来なければ納得して終了しようとなるのにちがいなかったが、ろくに潮も動いてないのにアタリだけはある。
 もう既にマイナス分をとりもどして釣果がプラスに転じたのだし、その意味でもボウズは免れたわけだから納竿してもいいだろう。
「なぁ、あやみちゃん。釣る方も撮る方も、おじさんたちは皆お疲れのご様子だ。内心、早くやめてくれないかなって思っているみたいだぜ。さて、どうしようか?」
 そう遠まわしに納竿を促しても、もう一回投げたいと言って聞かない。
 やれやれ。キャストが上達し過ぎるのもいかがなものかとタジタジになった。
 それはそうと、本日の本命は根魚である。なのに、これほどメバルばかりが、しかも予定していなかったダウンショットリグで釣れてしまうと、これまでの流れと併せてどうまとめてよいか番組を編集する側も弱るのではないか。
 じっさい、高垣ディレクターも困惑気味だった。
「なんとか、うまくまとめます」
 そう言い残して、終了後、岸壁をあとに関西へと帰って行ったが、どうやってうまくまとめあげるつもりだろうか。素人の私には想像もつかないが、釣り師の側の立場としては、サイズはどうであれ、魚の数だけは揃えることが出来てホッとした。
 尾崎にしろ、井原にしろ、同じ思いが表情にあらわれていた。
 どんな番組に仕上がっているか、放映日が楽しみである。
 みなさんも、とくとご覧あれ!

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【今日の使用タックル】

ロッド : ブリーデン・グラマーロックフィッシュTX78M
      ゴールデンミーン・JJマスク68Rリミテッド
リール : ダイワ・セルテート2004
      ダイワ・ルビアス1003
ライン : ユニチカ ナイトゲームTHEスーパーPE.SP(スペシャル)0.2号、0.4号
      ユニチカ ナイトゲームTHEメバルPEⅡ0.3号
リーダー: ユニチカ ナイトゲームTHEメバルリーダーFC4lb、5lb、6lb

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