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釣行記

釣行レポート

2019年8月10日~9月24日

ライギョハンティング!

ランカーとは

 子供のころライギョを釣るのに太く縒ったシブ糸を使った。糸に結ぶ鈎は何鈎だったか・・・・・、とにかく、大きくしっかりした鈎を用い、餌のカエルや小魚を口掛けにして、水面を覆う菱藻の上や水辺の葦、蒲といった植物の根元めがけて投げ込んでおくと、あるときガボッという度肝を抜かれるような捕食音が聞こえ、あるいは手元に直接強烈なアタリが来て、それを合図にライギョとの壮絶な引っ張り合いっこがはじまるのであった。
 子供の私は相当手を持てあました。そのくらい大きいライギョが池や川や湖沼に普通に居た。もちろん手釣りであるから手袋を履く。履かないと手を傷めるおそれがある。どれくらい大きいライギョかというと、八十センチくらいのはざらに居た。
 昭和のころは竹を薄く削って拵えたものさしが多くの家庭にあって、そのうち長尺のものだと一メートルまで長さをはかることができた。この竹製のものさしを捕獲したライギョに当ててみたところ、尾鰭の半分ほどがはみ出て計測できないこともあった。
 私はライギョ専用のタックルを使ってライギョを釣るなど考えたこともなかったので、ライギョの現状についてはこれっぽっちしか知らないが、今はもう一メートルもある巨大なライギョにお目にかかることなどまずないというのが専門家の見解であった。

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どうだぁ! 参ったかぁ〜

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頭を働かせて仕留めた思い出深い一匹

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丸々肥えた肥えたライギョ。菱藻に逃げ込まれ、手こずらされた

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鰓蓋の穴は空気を呼吸するための器官か?

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一番頼りにしているフロッグがこれだ!

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水面の多くがカバーに覆われた野池は攻め甲斐がある

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なにかと近づいてみたら菱が小花を咲かせていた

 では、ランカーとは何センチ以上か?
 私にライギョ専用の釣り竿を貸してくれた友人に訊ねてみたところ、人によって若干のちがいはあるだろうと前置いたうえで、「まぁ、八十センチあればランカーを仕留めたと胸を張って自慢していい」と言ったので、それならその八十センチを是非ともやっつけたいと意気込んで釣り場通いがはじまった。



棲息域

 ライギョは何処に行けば釣れるのか。ただ釣りたいというのなら野池、ダム湖、沼、河川淡水域及び汽水域で釣ることができるが、専門の釣り師の本心はというと、やはりカバーを攻めて食わせ、闘い、獲ってなんぼであるということになるだろう。それ以外の釣り方、つまりオープンウォーターを攻めて獲っても意味がないと公言するライギョハンターも少なくない。
 ついライギョハンターと書いてしまったので今後これで通すが、私はライギョマンという言い方をしていた。今も個人的にはライギョを専門に狙う人のことをそう呼んでいる。ただ、私に釣り竿を貸してくれた友人が、「気に入らないな」と漏らしたので、じゃあ何と呼べばいいかとなって、それでマンは却下されてハンターが採用された。
 なので、ライギョは釣るのではなく狩るというわけで、ライギョフィッシングと記述するのはよすが、しかし、そうは言っても釣りというワードを全く用いずに書くというのには難があるので、これについてはご了承賜りたい。

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菱藻と浮き草の境をねちねち攻めて口を使わせた

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ガガブタもライギョはひそむには好都合

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ガマの生い茂る泥地の浅い川

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睡蓮がらみのフィールドでライギョを釣った経験はない

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対岸に大きな穴がある魅力的な蓮池

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菱藻のカバーもこの規模だと狙いやすいが、釣れるのはバスばかり

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蓮、菱、ホテアオイの混合カバーもここまで濃いと勝負にならない



カバーを撃つ

 カバーというのはヒシやスイレン、ガガブタ、アサザなど、葉を繁らせ水面を覆ってしまう水生植物のことを主にいう。このほか、水辺のアシやガマのなかにもライギョは身をひそめるので、こういった場所もカバーに含めてよいし、ハスの大きな葉が風に揺らぐ皿池というのも趣があって人気が高いので、カバーからハスをはずすことはできないだろう。
 四国は南国なので、野池のカバーの代表格というとヒシということになろうかと思うが、私は昔から親しみを込めてヒシのことを菱藻と呼んでいる。
 そして、最近取り組み始めた専用のタックルでライギョを狩るというやり方においてはこの菱藻の絡むフィールドへ出向いての実釣しか経験していないので、ほぼほぼそれについての記述しかできないが、この先はハスやガマの幅を利かせるフィールドにも進出しようと考えているので、腕前があがっていい成績を残せるようになればレポート第二弾を書くことになるかもしれない。

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傷ひとつないナイスなボディーに満足

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小ぶりだが模様の美しさがピカイチ

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蓮の絶え間を菱藻が覆って攻めづらい

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蓮の花咲き、ライギョの夏がやって来た

 さて、菱藻がらみのライギョハンティングであるが、これはもう精神的にも肉体的にもフィッシングというよりはライギョ歴二ヶ月足らずの新米の私からしてもハンティングと呼ばざるを得ない。
 一口に菱藻と言っても、その厚みには幅がある。平面的にとらえるなら繁茂の密度も一様ではない。
 なかでも密生の度合いが高く硬質な印象を与えるヘビーカバーのばあいは攻略が困難なだけでなく、もしライギョに見事口を使わせることができたとしてもそのあとが大変である。分厚いカバーの下から突き上げてフロッグを捕えたライギョは、自分が嵌められたと認識した瞬間あり余る力にものを言わせて菱藻のなかへと潜り込む。こうなると面倒なことになるのは必至であった。

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フロッグもこだわるといろいろ見えてくる

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フロッグをフロッグに交換する。大して意味はないが

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ライギョの口を閉じさせないマウスオープナーは必需品だ

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岸近くに捕食音は聞かれない。遠投を強いられる

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赤が浮き草、緑が菱藻。

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別嬪すぎるライギョ。このまま巨大に育ってほしい



ライギョタックルは伊達じゃない

 このライギョのパワーと菱藻のことを甘く見ていた私は初陣のとき手痛い目に遭った。相当いいサイズのライギョを三匹ヒットさせて三匹とも取り逃がした。そのとき私は手持ちのバス用のなかで二番目に強力なロッドに60lbのPEラインを巻いたベイトリールをセットして菱藻のカバー撃ちに臨んだ。もうすでに友人のライギョロッドを持たせてもらっていた私は、たかがライギョと引っ張り合いっこをするのに「ここまで棒みたいに硬い竿が要るものか」と軽く見て、手持ちのなかから適当だと思われるバスロッドを選んで菱藻の池へと向かった。五月にバスを釣りに行ってライギョを何度も釣っていたのでどこへ行けばライギョが居るのはわかっていた。あとは夏になってから水面を覆い尽くしてしまった菱藻の上にフロッグを投げて、誘い、食わせて引きずり出すだけだ。私は意気込んで目当ての野池へと乗り込んだ。そして、この上もなく強いと自信を持って使ったバスロッドを飴のようにひん曲げられて完敗の憂き目を見させられた。まさに、完敗だった。一匹目は食いが浅かったか、口の硬い部分に鈎先がはじかれてアッと思ったときにはもう取り逃がしていた。二匹目はしっかり鈎掛かりしたようだったが、菱藻の奥深くへと力ずくで引きずり込まれ、長期戦の末に藻化けして手痛い二敗目を期した。藻化けというのはライギョと渡り合っているようで、じつはもうとっくにフックアウトしてしまっているのに、こっちはまだライギョと闘っているつもりでいる。でも、ほんとうは菱藻に絡んだ仕掛けの重さに難儀しているのに過ぎない。と、まぁ、こういう間抜けな失態のことを指す用語だ。なので、決して褒められたことではない。そして、三匹目も鈎が顎をとらえきれず、ジャンプを一発食らっただけでフロッグを振り飛ばされて、あえなく敗北という不名誉な結果となった。

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タックルは質実剛健。ルアーはフロッグ

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バイトがあった場所へ立ち戻り、攻めに攻める

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フロッグにはバスも食いつく

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よく肥えた夏のライギョ。体高が出ピラルクみたい

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ライギョタックルは重いが体に堪えるかは扱い方次第である

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重量があって大きいフロッグ。カバーを圧して存在感を発揮する

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食い損ねが多いとはいえ、カバー撃ちは楽しい

 これもひとえに私の不徳の致すところ、というわけで大いに反省をし、それ以後は友人に借りたライギョロッドに自前の質実剛健なベイトリールをセットして万全を期すようになった。
 まったく、ライギョタックルは伊達じゃないということを実感した一幕であった。



なぜカバー撃ちなのか

 なぜカバー撃ちなのか。その理由は簡単だ。ほかのどの釣り方よりも断然面白いからである(*あくまでも個人の感想です)。
 夢の1メートルオーバーを手中に収めたい一心で通っている筋金入りのライギョハンターとはちがい、馬力を発揮するコンディションのいいライギョとガチで引っ張り合いっこをしたいだけの私はシュチエーションを厳選する。大いに手段を選ぶ。フロッグでカバーを叩いてものにしたライギョでないと納得がいかないのだ。
 とにかく、自分の意志を貫いたうえで、願わくは巨大なライギョと闘いたい。そして、あわよくばランカーサイズを手に写真に収まって、この道の先達らをあっと驚かせてやりたい。むろん、そのランカーが超ランカーのメーター級なら尚よいが、それもカバーを撃っての一匹でないと意味がない。
 要するに他人はどうでもいいのである。
 私にかぎっていうなら、フロッグを用いてのカバー撃ち。くどいようだがこれこそが私流ライギョハンティングの唯一の道であり、またすべてなのである。

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雷魚釣りの主役といえばフロッグだ

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抽象画をを彷彿とさせる複合カバー

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食いが浅くて手こずった

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フロッグをガブッ!「騙されましたね、御苦労さん」

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尾鰭からは想像しがたいパワーを秘めた魚。それがライギョだ

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水から出しておいても体表が湿っていれば死なない



カバー撃ちの好期は

 前にも述べたが、四国の野池等でカバーというとその代表格は菱藻である。では、カバー撃ちを菱藻に限定するなら好期はいつか。そんなの決まっているじゃないか。菱藻が池のおもてを覆っているあいだは釣果に波こそあれ通っていれば胸のすくような捕食音を聞けるだろうし、ライギョを仕留めることができるに決まっている。そう考えるかもしれないが、あんがいそうでもない。
 じつは私も最初菱藻が水面を覆っているあいだは余裕でライギョを狙える。ものにできると思っていた。ところが、通っているうちにそうでもないぞと気がついた。
 九月下旬の現在、菱藻のカバー撃ちが成立するかしないかはフィールド次第である。
 相変わらず吸引の盛んな池がある。かなり散漫になったなと感じる川がある。ここに通っていてはもう埒があかないと匙を投げてしまった湖沼もある。
 そして、私の知るかぎりにおいては、知らず知らずのうちにじわじわと活性が下がって来たなと感じることは殆んどない。たいていのばあいあるときを境に活性が急降下する。水面に対するライギョの意識が減退する。
 最初、何がなんだかさっぱりわからなかった。気がつくと急に釣り場全域が静かになっていた。捕食音がしなくなったり、してもごく稀だったりと、水面、菱藻の上に対するライギョの関心が急激に薄れてしまった。そういう釣り場はフロッグを投げて誘ってみても好戦的にライギョがこちらの相手をしてくれることなど期待できない。食い損ねる以前に襲って来ないからである。
 この低活性に、私は頭を痛めた。
 しかし、注意深く観察していくうちにあることに気がついた。いまだ捕食音が頻繁に聞こえ、フロッグへの反応も悪くない釣り場というのは、たとえば菱藻に子蛙がたくさん隠れている。ライギョはこの子蛙どもを時に威嚇し、葉かげから追い出し、拾い食いをすることで腹を満腹にしている。
 しかし、何らかの原因によって餌にしやすい子蛙の多くがそこから姿を消すと水面を覆うカバーに注意を払ったところでメリットは少ない。ライギョにしてみれば効率よく餌を捕ってなんぼであるから、運動量以上にカロリーを摂取できない状況というのは危機的との見方もできよう。
 これではライギョからすれば、「やってられねえよ」と愚痴って当然である。

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使用したライン

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数キロ規模のカバーを有することもある河川は攻め甲斐あり!

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水面のフロッグが菱藻に乗っかる直前に食いついた

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腹が減っていたのか、フロッグを丸呑み

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ワンパターンの攻めはライギョをスレさせるので要注意

 要するに話はこうである。夏場は菱藻のカバー全体に、ほとんど無数と誇ってよい数の子蛙がひそんでいる。だから、フロッグを菱藻の上に投げて誘うと、それに驚いた子蛙が葉かげから跳ね出たり散ったりする。この子蛙が俄かに姿を消してしまうと、ライギョのほうでも水面に対する意識が散漫になってしまう。
 その逆に菱藻が目に見えて減りはじめたフィールドであっても子蛙がまだ一定数残っているばあいは捕食に伴う吸引が多少減ったなと感じてもまだまだ釣れる。
 また、気温、水温の低下が著しいであろう山間部の釣り場から順に活性が下がるにちがいないと思われる点についても、データが不十分なので明言は避けたいが、あながち的外れとは言えまい。
 私はライギョハンティング歴二ヶ月足らずの新米で、前述したようなことは感想にすぎないかもしれないし一蹴されても仕方ないが、それでも、まぁ、個人的には当たらずとも遠からずではないかと現時点においては思っている。
 さて。
 真相や、如何に!



心に残る一匹

 釣り場に着いたら、やたら捕食音がする。岸辺のガマの付近で、水面を覆う菱藻や浮き草のひろがるエリアで、ライギョが水面に出て荒食いをしている。
 もうこうなればしめたもので、八割方こっちのものである。
 しかし、釣りもいい日ばかりではない。せっかくやって来たのに、付近は静まり返り、水面は波ひとつ立たず、仕掛けを投げてもアタリすら拾えないというようなこともよくある話だ。
 じつはそういう憂き目を見てまだ間もないころ、その日と同じような状況でライギョを狙うはめになったのだが、足を使って一時間ほど攻め歩いてみたもののライギョからの音沙汰はまったくなかった。
 思いきって釣り場を変え心機一転攻め直してみようかとも思ったが、こういうことはこの先何度もあるにちがいない。今のうちに対策を講じておかないと先はないのではないか。そう思って無い知恵をふり絞ってみた。
 まず、疑問を持ったのは、フロッグである。私はフロッグを使ってカバー撃ちをする。と、いうよりも、これしか興味がない。だから、フロッグについて深くこだわるということが逆になかった。
 当日もいろんなフロッグをケースにひとまとめにして持参していた。活性があまりに低く、苦境に立たされた私は、もちろん実績ナンバーワン、信頼度ナンバーワンのフロッグを用いて、誘い方にも相当工夫を凝らして内容の濃い釣りに没頭していた。それにしても蒸し暑い。そこで車にもどってクーラーボックスから飲み物を取り出して一息入れることにしたが、飲み物を口にしながらふと考えた。前回もノー吸引で玉砕している。今回も似たような状況でフロッグを見に来てもくれない。いつもどおりやっていたのでは皆目埒があかないのではないか。ならどうする。形状のちがったフロッグに交換するか、あるいはサイズを小さくするか。いや、待てよ、サイズを大きくして存在感を与える方がいいのではないか。それならこいつがうってつけだ。
 私はひときわ大きいフロッグを手にとって、「こいつなら分厚い菱藻も強く圧して水中のライギョにアピールできるにちがいない。こいつは使えそうだ」と名案に酔った。
しかし、そうこうしているうちにまたちがった疑問が芽をもたげて来た。これだから素人はいけない。これはどうだ、あれはどうなる、と兎に角経験の抽斗が少ないものだから想像ばかりが翼をひろげ考えがまとまらない。そのうち、フロッグの足にあたる部分、このヒラヒラの長さや一本一本の太さまでもが気になりだした。このヒラヒラはバス釣りのラバージグを巻くのに使う糸状のシリコンゴムと同じか否かは知らないが、まぁ、ゴムだ。
 私はヒラヒラの一本一本が細くて長いフロッグのなかから吸い込みやすそうな形状と大きさのものを指につまんで、「こいつをカバーの上に投げ、手ごろな大きさの穴まで誘導して、その穴に浮かべておいたらどうなるだろう」と想像してみた。
 誘ってダメなら、ダメ元で誘わない方がましだ。穴とは、菱藻がそこだけ抜け落ちて水面が顔を覗かせているところを指す。

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フロッグも状況次第で使い分けが必要

 さっそく菱藻の上に仕掛けを投げて、誘いながらその穴にフロッグを誘導していく。菱藻の下にひそむライギョがフロッグを追って来てないともかぎらないので、穴にフロッグを落とす瞬間は息を呑んだ。水面に無防備に姿を現した瞬間のフロッグというのはライギョからすると襲いやすいにちがいない。しかし、このときは何も起こらなかった。
 放置しておくとフロッグは後部をいくらか水面下に入れた状態で静かに浮かんでいた。ヒラヒラの部分もゆっくり沈んで水に馴染んだ。なお、そのままにしておく。このときフロッグは太いPEラインに直結されており、風云々にかかわらず水にナチュラルな状態で浮かんでいるとは考えにくい。竿先の微妙な揺れが仕掛けを通して糸電話で結ばれた向こうとこっちのような関係で作用し合っていないともかぎらないのだ。
 すると、フロッグが不自然に動く。微妙に揺らぐ。そのありさまというのは敵に察知されぬよう息詰め浮かぶ生き物のように見えなくもない。なお、故意に少し誘って動かすと、水中のヒラヒラがなまめかしく揺れていっそうライギョの気を引く。ボディーが微弱な波紋を生むことからも水に浮かんだ生身の餌だと勘違いするだろう。派手に誘ってダメなのだから、逆に敵から見つからぬよう息をひそめているように見せる方が食い気を誘うのではないか。これらは希望的観測に過ぎないが、私は賭けた。
 だって、どうしようもないではないか。経験の少ない私の抽斗のなかは出すものを出しきるとすぐに空っぽとなった。それなら自分の頭に浮かんだことは、思いつきでも何でも試してみるしか手はない。
 そして、ラッキーなことに、こいつが功を奏した。
 この日はじめてライギョが私の仕掛けに興味を示したのだ。バスが水面の餌を、あんぐり口をあけて丸呑みするときのような、あれに似て静かな出方だった。不意に私の視界からフロッグが消えた。大アワセせずに手元で聞いてみると、妙な違和感とともに、ふっと仕掛けがふけた。そのとたん手元が軽くなった。
 「野郎。やっぱりヒラヒラを引っぱってやがった。水中に引き込んで食い直すつもりが、こっちの手に来た違和感と同じ違和感を、さっそく野郎も感じたにちがいない。感づいて離しやがった」
 あんのじょう、そのままにしておくと、プカッというぐあいにフロッグが浮いて来た。私は焦らなかった。仕掛けを回収せずに、試しに、ちょっと手元で誘ってみる。水中でヒラヒラが揺らめく程度に。
 すると、やや間があって、ふたたびフロッグが視界から消えた。水面の盛りあがり方が迫りくる水面下のライギョの本気さを表しているかのように見えたので、視界からフロッグが消えると私は迷わずアワセを入れた。

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攻め甲斐のある対岸。菱藻と岸際のガマが魅力的

 「フィッシュ・オン!」
 もうそのあとは無我夢中だった。菱藻の穴は私からするとやや沖の方にその口を開いていた。しかも、手応えからして掛けたライギョは小さくないとすぐ知れた。当然のこと菱藻に巻かれ、何度か動かなくなったが、その都度うまく切り抜けて、藻化けさせることもなく足元まで引き寄せることができたのは本当に幸いであった。
 この本命のライギョを手にしたときの重さと興奮ぶりを、今でも私は思い出すことができる。
 まさに、感無量であった。

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策を講じて菱藻の穴を攻めた答えが、こいつ



水面下の釣り

 季節が進み、今後カバーが池のおもてから姿を消してしまったのちも水面の釣りがこれまでどおり成立するか否か。それについては大いに疑問である。
 ただ、バスにくらべると格段に口を使わせることが困難になるであろうということくらいは想像がつく。
 まず、バスとライギョが混在する野池のばあい、カバーのない状況なら圧倒的にバスのほうが先に口を使ってくるだろうから、ライギョのみを狙って釣るのは難しいにちがいない。 だいいち、ライギョよりもバスの数のほうが多いし、低水温にも強いにちがいないから、年間を通して見たばあいもバスが食いつく確率が一段と高い。ライギョしか棲息しない沼でもあれば話はべつだが、四国の野池はバスの勢力がライギョを圧倒的に凌ぐという事実がある以上オープンウォーターを攻めてライギョを高確率で獲るのは至難の業だと言わざるを得ない。
 それなら水面下の釣りはどうかというと、五月、六月はバスを狙いに出かけて、けっこうライギョを釣りあげた。むろん、バスを狙ってライギョでは不本意というほかないが、こうしてライギョについてレポートを書きはじめると、気持ちを暗くさせたライギョというのも興味の対象として浮上して来るから人の気持ちというのは不思議である。

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暗くなって、まずバスがヒット

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夜は釣れるバスのサイズも大きい

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ロッドが軟らかいとジャンプしないのでばれにくい

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オープンウォーターならロッドは軟らかめが有利 

 専門家の話では、この時期がライギョの産卵そして子育ての時期に当たるということだ。なので、テリトリーに侵入してくるものは魚だろうが亀だろうがルアーだろうが何だろうが体を張って排除する。食えそうなら食ってしまう。じっさい、プラグでもワームでもこの時期にライギョをよく釣った。障害物の少ない皿池が多い四国では、カバーの存在しない季節ならバスタックルの方がやり取りしやすい。とくにバス用のフックにワームをセットして釣るばあいはスピニングタックルでも余裕のやり取りが可能である。鈎掛かりさえしっかりしていれば、ある程度軟らかいスピニング用のロッドの方が相手の力をいなしやすく、追従性も高いので取り逃がしも少なくて逆にいいくらいである。晩春から初夏のころは、とくに夜釣りで大型のライギョがよく釣れた。日中はバスばかりでも夜間にかぎってライギョが多く混じるということも経験している。そういう野池はあんがい少なくないようだ。
 ランカーサイズのバスを効率よく釣りたいなら夜釣りがいいと友人から聞いて三回つき合った。なぜ三回かというと、三回つきあうなら案内してやろうと友人に言われたからだ。

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夜は見えないので軟らかめのロッドでじっくり勝負して確実に捕る

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数投で余裕のランカーサイズをものにした 

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たしかに夜に釣れるバスはデカイ

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強い波動を生むチャター系は夜釣りの定番ルアーだ

 そして、バスの夜釣りは三回でよしてしまった。たしかに大型のバスを仕留めやすいが、日中以上にライギョやナマズがちょっかいを出してくる。とくにナマズが頻繁に食らいつく。夏場ならなおさらだろう。それもあったが、ほんとうの理由は性に合わなかったということだ。
 私のカウントにまちがいないなら夜釣り三回で大小九匹のライギョを釣りあげている。このことからもプラグやワームを使った水面下の釣りというのが今後は有効なのにちがいない。
 春同様、水面にあまり注意を払わなくなっても、生きているかぎりは腹が減るので、当然ライギョも獲物を狙う。冬場は泥にもぐって冬眠するという話だが、そうすると秋は食いだめの季節ということでいっそう荒食いするかもしれない。
 だいいち、カバーの消滅したオープンウォーターなら仕掛けも選び放題だし、多様な攻めが可能である。

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蓮畑のなかの水路にもライギョは棲む

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魚のくせに空気を吸わないとおぼれ死ぬ

 なので、興味のある人は通い詰めるとよい。釣りは現場主義が基本であり、またこれ以外に釣果を得る手立てはないのだからとことんやってみるべきだ。
 むろん、私は興味がないので遠慮しておくが。

あとがき

 以上が二か月足らずにわたって取り組んできたライギョハンティングの私なりの見解であり、またバス釣りの外道として釣れたライギョから想像に難くないその習性と、それを利用しての釣獲の可能性について考察を重ねた全記述である。
 じつは写真にかぎっていうと、掲載した写真のほかにもっと写り映えのいい写真が多数あったにもかかわらず掲載できなかった。理由は先達らによって掲載不可の裁定のくだった点数が半端なく多かったことによる。
 ライギョの生息数が激減し、大型のライギョをカバー撃ちで仕留めにくくなった現状を踏まえると致し方ないが、それにしても民家や特徴的な山の稜線が映り込んでいるくらいで掲載するなと平気で要望して来るライギョハンターどもというのは確かに一風変わっている。

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今日も明日もカバーを撃つ。撃ちまくる!

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一匹釣ったらもうじゅうぶん。帰って祝杯だ

 なので、来期はこの写真の撮り方にもじゅうぶん気を配り、さらに内容の濃いレポートが書けたらと思っているので、どうか楽しみにお待ちいただきたい。

 では、みなさんも、よい釣りを!



【今日の使用タックル】

ロッド:バレーヒル・ガンガン73 クリーク シューター
    オフト・ライギョ七八飛強
    OHNO・ウィード ベッド モンスター TR80 super BORON
リール:アブ・アンバサダー5500Cクラシック
    アブ・アンバサダー6500CSH スネークヘッド
    アブガルシア・アンバサダー6500C
ライン:ユニチカ シルバースレッドPEトップウォーターゲーム60lb、80lb

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