ニュースリリース 高分子事業

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高分子事業

2005/1/26

世界初!高耐熱性ポリ乳酸の押出し発泡用樹脂の技術開発について

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 この度、ユニチカ株式会社は、バイオマス由来の生分解性樹脂であるポリ乳酸に耐熱性を付与すると同時に、押出し発泡成形に適した発泡特性をも付与することに世界で初めて成功いたしました。
 本技術による樹脂製品は、熱湯注入や電子レンジ加熱が可能なポリ乳酸系耐熱性押出し発泡用樹脂であり、これを用いて成形される押出し発泡シートの真空・圧空成形品の耐熱性は、既存のポリスチレン系押出し発泡シート(PSP)はもとより、近年耐熱性を有する押出し発泡用樹脂として急伸しているポリプロピレン・フィラー系(PPF)に匹敵するものです。また、一切の石油系樹脂を含まず100%植物系であると同時に、堆肥化が可能な完全生分解性樹脂組成物から構成されています。

1. 技術開発の背景
 近年のプラスチックス廃棄物問題の中で、コンポスト化などによる再資源化が可能な生分解性プラスチックスが注目されています。なかでもトウモロコシのような再生可能な植物資源から誘導されるポリ乳酸は、近い将来、従来の石油系プラスチックスの一部に取って代わるものとして期待されています。しかしながら、ポリ乳酸は、樹脂を溶融した時の粘度が低く、伸張粘度に歪硬化性が発現しないため、発泡やブロー成形といった溶融張力を必要とする成形には不向きでした。また、ポリ乳酸は耐熱性を付与することが難しく、熱湯注入や電子レンジ加熱はもとより、倉庫保管時や船舶での輸送時に長期間高温(60℃以上)にさらされた場合に熱変形を受けるケース等が報告されていました。
このような背景下で、これまでいくつかの方法によりポリ乳酸系発泡シートの作製が試みられて来ましたが、従来のポリ乳酸系発泡シートの耐熱性は60℃程度と既存の石油系発泡シートと比較しても極めて低く、用途展開に著しい制限を受けるのが実情でした。

2. 技術開発の内容と特長
 今回のポリ乳酸を押出し発泡成形に適した樹脂に改質する技術は、当社の中央研究所において、先に開発した耐熱性付与に関するナノコンポジット技術に加え、ナノレベルでの分子設計・化学修飾技術をベースに特殊な溶融混練技術を駆使して、ポリ乳酸に溶融張力を持たせ、伸張粘度に歪硬化性を発現させることに成功したものです。
 これらの技術に基づき開発されたポリ乳酸系樹脂により、高発泡倍率の均一な押出し発泡シートが得られ、発泡シート成形後のサーモフォーミング成形性にも優れ、その工程で特定の金型温度で成形することで120℃以上という耐熱成形品を作製することが可能となりました。本技術につきましては、すでに国内外に10 件以上の関連特許を出願しています。
 なお、発泡倍率やセル径は発泡剤の種類や設備仕様、製造条件により異なりますが、一般的に炭酸ガスを用いた場合には5〜10 倍、セル径が0.1〜0.3mm の外観の良好な発泡シートが得られ、ブタンまたはペンタン等の炭化水素系発泡剤を使用した場合には10〜50 倍の高倍率発泡シートが得られます。
 本技術によるポリ乳酸樹脂組成物は一切の石油系樹脂を用いない100%植物系樹脂から成る完全生分解性樹脂であり、BPS(生分解性プラスチック研究会)のポジティブ・リストにも掲載されています。使い捨ての食品容器に用いた場合には、使用後に食品残渣や生ごみとともに堆肥化が可能です。

3. 期待される効果と応用分野
 今回の技術開発により高発泡倍率の押出し発泡シートを作製することができ、耐熱性が求められる容器類その他へ成形可能なことから、耐熱性と剛性が求められる各種発泡成形品(弁当容器、食品トレー、インスタントラーメン容器、カップ、自動車や建材などの断熱材、緩衝材、ボード)への応用が期待されます。特にポリ乳酸は剛性に優れることから、比較的肉薄の高発泡倍率成形品でも一定の強度が保てるために、各種容器への応用に適しています。

4.今後の予定
 当社は、ポリ乳酸を主成分とする環境低負荷のバイオマス由来製品「テラマック?」を、フィルム、シート、繊維、スパンボンド、射出成形・押出し成形用樹脂等で幅広く展開しています。本技術による樹脂は、将来的には「テラマック?」事業の最も重要な柱の一つとなることが期待されます。なお、当社ではすでに年間 1,000 トン以上の生産能力を備えた樹脂生産設備を完成させ、国内外の有力顧客向けの生産・販売体制を整えました。今後は開発樹脂の更なるコストダウンを図るとともに、日本国内のみならず海外への技術ライセンスを含むグローバルな事業展開を図って行く所存です。


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