※ご覧になるにはAdobe Acrobat Readerが必要です。
こちらからダウンロードしてください。
高分子事業
2024/4/ 4
世界最高レベルの高表面積を有するハイエントロピー合金の開発に成功<次世代エネルギーに貢献できる新たな材料開発>
ユニチカ株式会社(本社:大阪市中央区 社長:上埜修司)は、世界最高レベルの非常に高い比表面積を有するハイエントロピー合金を合成する技術を開発しました。 この技術は、様々な組成のハイエントロピー合金に応用できるため、次世代エネルギーとして期待される水素利用を促進する高性能な水素生成電極や燃料電池用電極触媒などの創出が期待されます。
1.開発の背景について
ハイエントロピー合金とは5種類以上の元素が同程度含まれる主成分を持たない多元系合金です。近年、ハイエントロピー合金は、新しい金属材料として注目されており、これまでの研究によって、(ⅰ)不規則な固溶体相の安定化(ⅱ)不均一に歪んだ結晶格子(ⅲ)遅い原子拡散(ⅳ)カクテル効果の特徴を持つと考えられています[1]。中でも(ⅳ)カクテル効果は、単純混合則では説明できない物性発現をもたらし、従来の二元系や三元系の合金には見られない特性が数多く報告されています。また、ハイエントロピー合金の中には、触媒として、活性と耐久性を飛躍的に向上させるものも発見されており、次世代エネルギーの利用を促進する材料として期待されています。
2.高表面積ハイエントロピー合金の特長
当社が開発した合成技術により、1gでテニスコートの約260m²を超える面積のハイエントロピー合金の粉末が得られています(BET吸着法にて測定した比表面積の例:CrFeCoNiCu=262m²/g、CrFeCoNiZrLa=314m²/g)。これは、これまでの多孔型の高表面積ハイエントロピー合金と比較して飛躍的に表面積を拡大させた世界に類を見ないものであります。表面積の拡大は、不均一触媒等の材料界面で効果が発現する用途において、その触媒効果を格段に向上させることが期待できます。例えば、当社の合成技術で作製した高表面積ハイエントロピー合金の触媒は、従来型ハイエントロピー合金[2] と比較しても約9倍の反応速度の向上が得られております。
本技術は、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、イットリウム(Y)、ジルコニウム(Zr)、ランタン(La)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)、白金(Pt)、金(Au)などの様々な金属を組み合わせた高表面積ハイエントロピー合金の合成に適用でき、特許出願済みです。これらは、水素生成、水素添加、アンモニア生成などの反応触媒や燃料電池の電極触媒において、触媒効率や高温強度、耐酸強度の向上、白金等の貴金属の使用量抑制が期待できます。
図1.当社が合成した高表面積ハイエントロピー合金の電子顕微鏡画像とSEM-EDS(走査型電子顕微鏡エネルギー分散型X線分光法)による元素マップ(クロム、鉄、コバルト、ニッケルおよび銅の元素すべてが均一に存在していた)
図2.還元反応における高表面積化の触媒性向上効果※
(ハイエントロピー合金=CrMnFeCoNi)
3.今後の予定について
当社が開発した高表面積ハイエントロピー合金の合成技術は、様々な組成、用途に応用が可能です。今後、貴金属も含めた各種触媒等の用途に最適な組成検討や各効果の実証を進めながら、実用化に向けた研究開発を進めます。
※触媒性を評価するためのモデル実験として、p-ニトロフェノールの還元反応を実施しました。
[1] K. Li, W. Chen, Mater. Today Energy 2021, 20, 100638.
[2] H. Peng, Y. Xie, Z. Xie, Y. Wu, W. Zhu, S. Liang, L. Wang, J. Mater. Chem. A 2020, 8, 18318-18326
以上
<本件に関するお客様からの問い合わせ先>
ユニチカ株式会社 総合研究所
TEL:0774-25-2764
E-mail:info-rd2@unitika.co.jp
<本件に関する報道関係からの問い合わせ先>
ユニチカ株式会社 広報グループ
TEL:06-6281-5695
※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。最新の情報と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。