ニュースリリース 高分子事業

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高分子事業

2010/6/17

高耐熱性芳香族系ポリアミドフィルムの開発について

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 ユニチカ株式会社は、高機能フィルム分野の事業拡大を目指しております。その一環として、この度、これまでフィルム化が困難とされていた高耐熱性の熱可塑性芳香族系ポリアミド樹脂を原料とする2軸延伸フィルムの開発に成功しました。

1.開発の背景
高耐熱性フィルムは、各種電気・電子部品用途において幅広く応用され、実用化が進んでいます。なかでも、フレキシブルプリント基板(以下FPC)に関連する分野では、携帯電話・携帯音楽機器・プリンター・パーソナルコンピュータなどの各種製品において、小型・軽量化のために必要不可欠な素材として、高耐熱性フィルムの今後の市場拡大が見込まれています。
 現在、ハンダ耐性等の高度な耐熱性を要求されるFPC関連用途においては、ポリイミドフィルムが多用されています。ポリイミドフィルムは、耐熱・耐久性において優れた性能を有し、FPC用途・TABテープ用途等を含め年間数千トン、500億円を超える規模の市場を形成しています。
 その一方で、ポリイミドは一部の特殊なグレードを除いて溶融成形が困難であり、さらに高価であること、また無色透明のフィルムが得られにくいことなどから、これに代わる材料が求められています。一部の比較的要求性能の低い用途においては、液晶ポリマー(LCP)やポリエチレンナフタレート(PEN)など、溶融加工が可能なフィルムの応用が試みられているものの、耐熱性フィルムに関する要求は年々厳しくなりつつあり、ハンダ耐熱などハイレベルの耐熱性を有し、かつコストパフォーマンスに優れた新たな高耐熱性フィルムのニーズが高まっています。
 今回、当社が開発した2軸延伸フィルムは、従来フィルム化が困難とされていた熱可塑性芳香族系ポリアミド樹脂を用い、当社独自の同時2軸延伸を初めとするフィルム成形加工技術を駆使することにより生み出された、新しいタイプの高耐熱性フィルムです。本フィルムは、溶融加工法による生産が可能であり、無色透明でリフローハンダ耐性を有するという特長を持っています。また、Roll to Roll方式の生産が可能であることから工程利便性が高く、より経済的、かつ低環境負荷の耐熱性フィルムとして、FPCを初めとする各種耐熱フィルム用途等への展開が期待できます。

2.新開発耐熱性フィルムの特長
① 融点300℃以上の芳香族系ポリアミドを原料とする2軸延伸フィルム独自に開発した同時2軸延伸技術により、従来は困難とされていた芳香族系ポリアミドを延伸フィルムとすることに成功しました。融点は300℃以上、ガラス転移温度は120℃を示し、従来の熱可塑性フィルムの中でもトップクラスの耐熱性を示します。

② 低吸水性、寸法安定性を兼ね備える本フィルムは低吸水性であるため、従来のポリアミドに比べ寸法安定性に優れています(吸水率は40℃90%RHで1%以下)。また、独自の延伸技術により常温から高温環境での寸法変化が極めて小さく抑えられています(寸法変化は常温~200℃で0.3%以下)。

③ 200℃以上の高温環境において使用可能300℃以上の融点を持つことから、一般的なリフローハンダ工程において使用可能です。また200℃以上におけるコーティング、熱プレス等、各種高温でのフィルム加工工程に使用可能です。

④ 優れた無色透明性
無色で、透明性が高く、光学用途への応用が期待できます。

⑤ 低環境負荷の熱可塑性フィルム
溶融加工法により製造できるため、製造工程で有機溶剤を使用せず、したがって溶剤の乾燥も必要ありません。また、廃材等のリサイクルも可能であり、環境負荷が小さいフィルムです。

⑥ 優れた電気特性
高周波での電気特性に優れ、特に誘電率は広い周波数帯で低く、安定していることから高伝送用基板材料として期待されます(誘電率は周波数10MHzで3.5以下、誘電損失率は周波数1MHzで0.05以下)。

⑦ 優れた接着性、耐薬品性
ポリアミドの構造に由来して、各種接着剤等に対して優れた接着性を示します。また各種有溶媒に対して、高い耐溶剤性を示します。

⑧ 優れたコストパフォーマンス
従来のポリイミドフィルムと比較して、約1/2程度のコストで生産が可能です。その他、難燃グレードについても現在開発中です。

○代表的な耐熱性フィルムの比較

3.用 途
耐熱280℃レベルの耐熱領域をカバーする各種耐熱性フィルム
○電気、電子部品用FPC、およびFPC補強用フィルム
○耐熱性絶縁フィルム
○耐熱離型フィルム、粘着テープ・ラベル
○積層基板成形用耐熱工程紙
○ITO(酸化インジウムスズ)透明導電フィルム用基材

4.事業化計画
現在、ベンチプラントでの製造技術を確立し、2011年春、プレマーケティング開始に向けスケールアップを検討中です。
○2011年度:プレマーケティングおよび試験販売
○2012年度:販売開始
○2017年度:販売目標500トン/年


<製品に関する詳細>
ユニチカ株式会社 フィルム事業部サイト(高耐熱性ポリアミドフィルムページ)

<新規芳香族系耐熱性ポリアミドフィルムに関するお客様からの問い合わせ先>
ユニチカ株式会社 中央研究所
TEL:0774-25-2245
FAX:0774-25-2350
<新規芳香族系耐熱性ポリアミドフィルムに関する報道関係からの問い合わせ先>
ユニチカ株式会社 IR 広報グループ
TEL:06-6281-5695


※掲載されている情報は、発表日現在の情報です。最新の情報と異なる場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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