
事業再生計画の着実な遂行と
成果のご報告を通じて、
皆様の信頼回復に努めます。
代表取締役社長執行役員 藤井 実
撤退事業の譲渡と継続事業の自信回復に全力を投じています。
私はユニチカに入社して38年、キャリアの中で繊維事業が22年で半分以上を占めます。開発・製造の経験を積み、その後はガラス繊維事業部を担当しました。直近の2年間はコーポレートの技術開発や生産技術を統括する役職を務めてきました。2009年にはナイロン長繊維の自社製造からの撤退を責任者として進めました。撤退発表後、現場との対話を重ねたことにより、従業員の方々は最後まで意識を高く持ち取り組んでくれました。そのおかげで、品質問題も起こらず最後の1年間を1つの事故もなく終えることができました。こうした経験は本来、今回のような局面に至らないために活かすべきですが、活かせなかった反省を踏まえて、再生計画に強い決意を持って取り組んでいく所存です。 今回の事業再生計画は、社内外の全てのステークホルダーの皆様に非常に大きな負担をおかけした上で成り立っていることを肝に銘じています。当社グループ内では、昨年11月28日に計画を公表したときには大きな動揺が走りました。その中でまずは不安を取り除き、自信を取り戻すことが重要だと考えて従業員と丁寧に対話を重ね、体制の立て直しを図ってきました。撤退部門は、事業をきちんと譲渡して雇用を継続させることが最優先です。スムーズな譲渡を進めるためには、事業価値の維持や向上が重要ですので、従業員の皆さんの協力が非常に大事であり、最後まで全力で取り組みますのでご協力をお願いしますと話をしました。一方で継続する事業も残るから安心というわけではありません。厳しい状況だという認識の共有が不可欠です。販売に関しては、収益を意識して、狙うべき市場の分析、競合分析の精度を上げて競争優位性を見極める必要があります。また、生産技術の観点で言えば、高品質の製品を効率よく製造することができれば、しっかりと販売に結び付くので、製造が知恵を絞って、生産技術を向上させていくことが大事という話を従業員にしました。あとはさまざまなお取引先を訪問して、供給面は引き続きしっかり対応していくことをご説明しました。 今年が事業再生計画の初年度です。私たちがやるべきことは、まずは従業員一同、前を向いて計画を軌道に乗せること、その上で計画通り、あるいはそれ以上の結果をご報告できるように実績を出していくことに尽きると考えています。
創業から培ってきた独自の技術力、
ニーズ把握力を駆使して、常に先手を打つ企業へ。
祖業である繊維事業からは撤退しますが、当社グループのコア技術は、変わらず繊維を源泉とする技術です。ナイロンやポリエステル繊維などはチップを溶かして押し出し、糸にします。ガラス繊維も同様に、ガラスを溶かして糸にします。活性炭繊維も、原料を溶融しノズルから押し出し、繊維化します。製品によって工程の違いはありますが、いずれも溶かして押し出し、面状に加工することは、繊維の技術から継承した私たちのDNAそのものです。樹脂の重合やコンパウンドの後でポリマーをチップにする、フィルムを製膜する、これも溶かして押し出す工程です。どれも繊維をつくる技術と共通するものなのです。
こうした繊維を端緒とした私たちのコア技術の価値はこの先も変わりません。培ってきた技術を活かしてこれからも安全で安心、便利で快適、そして環境と共生する暮らしに貢献する製品を届けていきます。
当社グループのもう1つのDNAが製造・販売・開発、いわゆる「製・販・開」一体の企業文化です。三者のコンビネーション、風通しの良さは長年培ってきたものです。また、当社グループでは技術者が営業と一緒にお客様対応をする機会もあります。ニーズを聞き、保有技術でどう解決し、高付加価値の提案をできるか、技術者がその場にいると判断が早く非常に効率的です。
中長期的には、継続事業で主軸となる製品でも時代の変化と共にコモディティ化し、必ず価値は落ちていきますので、少しずつでも常に製品を改良することが必要だと考えています。そのためには開発と生産がうまく噛み合わないと事業再生は不可能だという危機感を持って、技術のブラッシュアップやマーケティングに注力していきます。
当社グループでは食品包装フィルムが最も大きな収益力を有していますので、まずは何としてもこれを死守します。それだけでなく、半導体分野を含む電気電子用資材や、インフラの老朽化でニーズの高まる建築土木資材の強化も行うなど、次の一手を常に打てる企業を目指します。
また、限られた経営資源を多様な選択肢の中でどこに投下するのか、客観的な判断が必要です。そしてメインプランがつまずいてもほかのプランで補えるようにしないといけません。そういったことは、(株)地域経済活性化支援機構(REVIC)から迎えた4人の経営陣の協力も得ながら、高精度かつ早い判断で行っていけると感じています。
競争優位性のある事業に資本を集約。
営業利益率約10%を再生計画の集大成に。
ユニチカグループのコアとなる技術は「樹脂をつくる」「糸をつくる」「布をつくる」「フィルムをつくる」と大きく4つあります。これらのコア技術に裏打ちされてできた製品が、当社グループにとっての「稼ぐ力」の源泉であり競争優位性と言えます。その中には私たちにしかつくれない非常にユニークな素材もあります。当社グループの再生とは、こうした製品をブラッシュアップしていくことに尽きます。さらに研究所では、単に材料を溶かして押し出すだけでなく、新しいものを合成することをはじめいろいろなアプローチを行っています。とはいえ研究開発に潤沢な資金を投じるのは現状では難しいので、将来性があるテーマに絞り注力する考えです。
人材面における競争優位性に関しては、ガラス繊維事業を例にしますと、この分野は独特の製造工程で確立された製造技術ゆえに保守的になりがちなのですが、誰かが疑問を抱き、新しい要素を取り入れることで現場がガラッと変わる経験を何度かしています。生産性が高まり、設備の稼働率も上がり、歩留まりも良くなるといった連鎖が現場に起こる。一度そういう経験をすると、みんなに「変えよう」という意識が浸透します。前例にとらわれずブレークスルーを促す“気づく人”が現場から出てくることが当社グループの強みです。
当社グループにおける開発は、事業部内の開発部隊で行う場合と、コーポレート案件として総合研究所が行う場合の2つがあります。各開発部の場合はお客様ニーズへの理解が深いため、利益が見込める案件で結果が早く出ます。逆に総合研究所の場合は短期で成就することはほぼありません。5年超のスパンの中で、初期的なテーマ設定から始まり、お客様とサンプルワークをして評価をいただき、次のステージへと進めれば、そこに開発費が付いてきます。研究所は開発費が肝ですので、案件を引っ張ってきて、工夫をして、お客様にアピールして、という競争原理が働いています。それが研究所の強みと言えます。
知的財産活動については、当社グループはかなり取り組めていると自負しています。知的財産は事業展開に対する強力なサポートになりますし、新しい市場開拓や用途開発のきっかけとなるような情報を提供してくれます。私たちの競争優位性の1つと言えます。
5年先、10年先もグループの競争優位性を維持し、高めていくためには、主力製品以外も稼ぐ力を強化して、収益基盤を底上げする必要があります。主力の包装フィルムは、食に関わるものですので、大きく収益が上下することは少ないと思いますが、それでも何かあったときにほかの事業で補完できる必要があります。
国内の市場だけを見ていると成長も限られるので、海外の仕向け地は意識せざるを得ません。ガラス繊維事業の場合、特に電子材料は海外比率が高いのですが、海外も国内も広げる余地はまだまだあると認識しています。フィルム事業で収益性の高い戦略素材である「エンブレムHG」もさらに海外へ仕向け先を広げる必要があると考えています。生産設備がフル稼働すれば、コスト効率も上がります。各事業においては、競争優位性や市場規模、市場成長性、保有技術の優位性などの観点より適切な資本投下の見極めを行っていきます。
直近の当社グループは、稼ぐ力が落ちていたことに尽きます。この度の再生計画で継続する事業は稼げる事業ですが、債権放棄や出資、融資など多様な金融支援を受けるとはいえ、残る債務の返済がありますので平均以上に、とにかく稼がないといけない。そしてキャッシュを創出する。そのために販売での利益創出と、コスト削減・効率化の両立が不可欠です。そこで、当社グループが今後さらに稼ぐ力を高めるために特に重視する財務指標が、営業利益率です。再生計画の最後となる5年後には営業利益率約10%を目指しています。売上高700億円、営業利益65億円が目標となります。
外部環境の変化に対応するため商品競争力をより一層高めます。
外部環境に関しては、まずは中国との価格競争の問題があります。当社グループの場合はインドネシアのフィルム関連子会社で非常に大きな影響を受けました。これ以上価格競争をするつもりはなく、経営資源を競争優位のところに集約して、高付加価値品にシフトして戦っていきます。
次に為替の問題ですが、変動はリスクに違いありませんが、円高なら円高、円安なら円安と一定の水準ならまだ対応のしようがあります。しかし、変動が激しいと価格転嫁のチャンスを逃してしまい、大幅な利益率低下につながる恐れがあります。したがって、為替変動は常に注視し、的確な対応に努めていきます。
また、原材料費についても地政学的な理由などから、同様に大きな変動は起こりえます。高騰は好ましくありませんが、高止まりしたとしても商品競争力があれば、そこは価格に反映することで問題は最小限にできると考えています。
加えて環境面からは、脱炭素化や化学物質規制の潮流も注視しています。特にPFAS(有機フッ素化合物)の問題は、当社の持つ知的財産情報も活用し用途開発も進めていきます。
REVICを迎えた新しい経営体制で、抜本的な構造改革を貫徹します。
今回撤退する事業の中のポリエステル関連事業において、岡崎事業所は生産の拠点です。販売量の増加に伴って規模を拡大してきた経緯があり、そこに例えば、国外製品との競争が激化して採算が悪くなり、汎用品の生産を絞り込んだことで、コストアップにより事業の継続が厳しくなりました。
2014年に構造改革を行った後、繊維事業が利益を出す時期もありましたが、コロナ禍で状況が悪くなると、再浮上できなくなりました。そして引き金を引いたのが、フィルム事業において中国との価格競争や投資した設備が過剰となり、廉価販売も相まって手元の資金の減少に歯止めがかからなかったこと。これらが今回の事業再生計画に至った原因だと考えています。
最近の業績を振り返ると、2023年度(2024年3月期)に連結決算が始まって以来、初めて営業赤字に転落しました。売上高は前期とほとんど変わらないのですが、2022年度に生産量が落ち製造コストが上がり、自社工場の高いコストでつくられた製品が在庫として大量に持ち越されたのが2023年度でした。
2024年度(2025年3月期)は一年を通して在庫が適正化され、なおかつ販売が回復しました。さらにはコスト面で、固定資産を減損、償却負担が減り、人件費も抑えました。販売としては食品包装フィルムのお客様の在庫調整が一巡して、当社グループの出荷が通常に戻りました。樹脂も販売が回復し、価格改定も行ったことで収益が改善しました。ガラス繊維事業では半導体市況自体は回復しきれていなかったのですが、携帯端末関連のハイエンドメモリを中心に高機能ガラスクロスの販売が一気に戻りました。
再生計画を進める上での新しい経営体制については、REVIC出身の経営陣も管掌部門を持って取り組んでいただいており、ガバナンスの効いた体制だと感じています。REVICは官民ファンドということもあり、企業や事業の状況に応じた支援に長けていて、良い関係が築けていると思っています。
取締役はREVICから4名が入られています。当社からは2名で、私以外に、以前より当社におられた銀行出身の方に経理全般や情報システム、法務コンプライアンスなどを担当してもらっています。副社長には、構造改革や撤退部門の不織布や産業繊維を担当していただいています。その他の方には繊維や存続事業、管理部門を見ていただいています。事業譲渡または資産売却がありますが、そういうことに関するノウハウを持っているのがREVICです。
計画通りの場合は何の問題もありませんが、そうでない場合も修正の方向性を出してもらえるので、非常に安心感があります。維持する事業部門に関しても、コスト面の構造的な問題をかなり突っ込んで議論できますので、非常に有効な体制だと感じています。
現場の人材は、専門性のある人を要所要所に配置しようと思っています。一方で属人化しないようにDXを活用するなど、会社全体を再構築する必要性を感じています。すでにお話しましたが前例にとらわれずブレークスルーを促す、専門性を備えつつビジョンを持って戦略を立てられる“気づく人”の育成に力を入れていきたいと考えています。中核人材については、各部門から候補者を出してもらって、スキルマップを活用しながら全社で育成していく。そうすれば意識の高い人たちが見えてきます。そんな人たちをさらなる高みに導いていけるように、企業として着実に人材育成に取り組んでいきます。
経営再建のための強固なガバナンス体制へ。環境規制強化は、
サステナブル素材拡充の好機。
経営再建のためにはガバナンスの強化が非常に重要です。当社では権限規定を全て見直して、取締役の担当領域を明確に決めました。経営が関わる会議は、経営連絡会で俎上に上がったものを社外取締役も参加する経営会議で理解度を高め、最終的には取締役会に諮る、という3段階にしています。意見を言いやすく、活発な議論ができていて、イエス・ノーが明確に出せる環境になっていますので、ガバナンスに問題はないと感じています。
事業再生計画は投資を受ける条件を維持することが大前提です。そのためには社内での徹底した対話が必要ですが、続投される社外取締役の方々からは、これまでの経緯を踏まえた経営的な視点での助言、また精神的な面での激励などがあり、大企業での代表で構造改革の経験がある方からの厳しいチェックやサステナビリティの専門家としての助言もあり、大きな助けになっています。
サステナビリティに関しては、事業としては植物由来の素材や、リサイクルといった長年のテーマを掘り下げるとともに、製造に使うエネルギーの低減などに引き続き注力していきます。また、環境規制強化という世界的な潮流を、当社グループが得意とするサステナブル素材を拡充する絶好の機会と捉え、経営資源を投下していくつもりです。サステナビリティ推進の基本的なスタンスは変えず引き続き進めていきます。グローバルな視点でのサステナビリティは競争戦略として非常に重要と捉えています。先ほどPFASの話もしましたが、海外に対して積極的に発信していこうと考えています。
ステークホルダーの皆様へ。
私がユニチカに残ったこと、そして社長を託されたことに対して、何かしらの意味を感じています。それは何かと自問自答すれば「ユニチカをよく知っている」ということに尽きると思います。その意味を胸に刻みながら、REVIC、そして従業員の方々と同じ目線で、まずは社内的にユニチカグループを立て直していきたい。幸い2025年度3Qでは計画を上回る水準で推移しており、従業員が自信を持って再生への道を歩んでいける雰囲気を実感しています。
そして対外的には、再生計画通りに進んでいるというご報告になるよう最善を尽くします。そのために不退転の決意で社長という任務を全ういたします。当社グループの活動へのご理解とご支援を賜りますよう、お願い申し上げます。
代表取締役社長執行役員
藤井 実
